4 / 7
新たな仲間
しおりを挟む
王都を出立してから約一ヶ月。
いろいろと分かったことがある。
ゲームとは違って、好感度が上がっていない仲間とのイベントがスキップされるということはなく、全員平等に全てのイベントが発生した。
まぁ、一緒に旅してるんだ。当たり前か。
そして、選択肢はゲームと変わりなかった。
選択ミス——すなわち、バッドエンド! そして、この世界の滅亡!! ……の可能性がある限り、選択ミスをわざと選んで様子を見る、という勇気も出なかった……
もうどうしようもなくて、「全員攻略ルート」に進むしかなかった。
そして女言葉の選択肢を選んだ時は、なぜか俺の口から出てくる言葉も女言葉になった——他のメンバーからは一瞬「あれ?」って顔をされるけど、流石にもう慣れてきたのか流してもらっている……
おのれ、ゲームの強制力めぇえっ!!!
もちろん、好感度が高くなった時の特別ブーストイベント……ちょっぴりエッチなラッキースケベイベントも発生した——全員、総スカンだったがなっ!!!
多少好感度が下がったが、普段マメに好感度を上げてた分、大きな影響は無かった。俺のメンタルを除いてな……ぐふっ……
ある日、ディーターが困ったように眉を下げ、ボロ雑巾のような物を掴んで持って来た。
「エトムント、こんなのがいたんだが……」
好感度が高まるにつれて、俺たちは互いに敬称無しで呼び合うようになっていた。
「? これは……?」
「キュキュウ……」
ボロ雑巾が鳴いた!?
ボロ雑巾がむくりと頭を上げた。うるると涙ぐんだ青い瞳が、薄汚れた毛の間からこちらを見つめている。
もしかして、これって聖獣じゃないか?
不意に俺の脳内に、いつもの選択肢が現れた。
======
▷「元いた場所に捨てて来なさい」
「可哀想に。迷子かしら? 連れて行きましょう」
「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」
「連れて行きましょう。弾除けにちょうどいいわ。ニヤリ」
======
「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」
俺はそう言ってボロ雑巾を受け取ると、浄化魔法をかけた。語尾が女性らしくなってしまうのは、ゲームの強制力のせいだ。決して、そう決して俺の趣味じゃない。
ディーターが残念そうな目を俺に向けてくるが、そんなことは気にしてられない。
「キュキュウ!」
聖獣は、薄汚れたボロ雑巾のような色から、洗い立ての洗濯物のような目に眩しい程に真っ白な色に変わった。
心なしか、嬉しそうに鳴いている。
だが、やはり毛むくじゃらのモップ犬みたいだ。
モップ犬な聖獣は、尻尾っぽい毛の房をブンブンと振って、俺の足にじゃれついてきた。
「エトムントのことを気に入ったみたいだな」
ディーターがくすりと笑った。
甘いマスクのイケメンってこともあるが、なんだかその笑顔がキラキラと綺麗に見えた。流石、攻略対象者。
======
ディーターの好感度が三あがった。
======
いろいろと分かったことがある。
ゲームとは違って、好感度が上がっていない仲間とのイベントがスキップされるということはなく、全員平等に全てのイベントが発生した。
まぁ、一緒に旅してるんだ。当たり前か。
そして、選択肢はゲームと変わりなかった。
選択ミス——すなわち、バッドエンド! そして、この世界の滅亡!! ……の可能性がある限り、選択ミスをわざと選んで様子を見る、という勇気も出なかった……
もうどうしようもなくて、「全員攻略ルート」に進むしかなかった。
そして女言葉の選択肢を選んだ時は、なぜか俺の口から出てくる言葉も女言葉になった——他のメンバーからは一瞬「あれ?」って顔をされるけど、流石にもう慣れてきたのか流してもらっている……
おのれ、ゲームの強制力めぇえっ!!!
もちろん、好感度が高くなった時の特別ブーストイベント……ちょっぴりエッチなラッキースケベイベントも発生した——全員、総スカンだったがなっ!!!
多少好感度が下がったが、普段マメに好感度を上げてた分、大きな影響は無かった。俺のメンタルを除いてな……ぐふっ……
ある日、ディーターが困ったように眉を下げ、ボロ雑巾のような物を掴んで持って来た。
「エトムント、こんなのがいたんだが……」
好感度が高まるにつれて、俺たちは互いに敬称無しで呼び合うようになっていた。
「? これは……?」
「キュキュウ……」
ボロ雑巾が鳴いた!?
ボロ雑巾がむくりと頭を上げた。うるると涙ぐんだ青い瞳が、薄汚れた毛の間からこちらを見つめている。
もしかして、これって聖獣じゃないか?
不意に俺の脳内に、いつもの選択肢が現れた。
======
▷「元いた場所に捨てて来なさい」
「可哀想に。迷子かしら? 連れて行きましょう」
「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」
「連れて行きましょう。弾除けにちょうどいいわ。ニヤリ」
======
「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」
俺はそう言ってボロ雑巾を受け取ると、浄化魔法をかけた。語尾が女性らしくなってしまうのは、ゲームの強制力のせいだ。決して、そう決して俺の趣味じゃない。
ディーターが残念そうな目を俺に向けてくるが、そんなことは気にしてられない。
「キュキュウ!」
聖獣は、薄汚れたボロ雑巾のような色から、洗い立ての洗濯物のような目に眩しい程に真っ白な色に変わった。
心なしか、嬉しそうに鳴いている。
だが、やはり毛むくじゃらのモップ犬みたいだ。
モップ犬な聖獣は、尻尾っぽい毛の房をブンブンと振って、俺の足にじゃれついてきた。
「エトムントのことを気に入ったみたいだな」
ディーターがくすりと笑った。
甘いマスクのイケメンってこともあるが、なんだかその笑顔がキラキラと綺麗に見えた。流石、攻略対象者。
======
ディーターの好感度が三あがった。
======
3
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

友人Aの俺は女主人公を助けたらハーレムを築いていた
山田空
ファンタジー
絶対に報われない鬱ゲーというキャッチコピーで売り出されていたゲームを買った俺はそのゲームの主人公に惚れてしまう。
ゲームの女主人公が報われてほしいそう思う。
だがもちろん報われることはなく友人は死ぬし助けてくれて恋人になったやつに裏切られていじめを受ける。
そしてようやく努力が報われたかと思ったら最後は主人公が車にひかれて死ぬ。
……1ミリも報われてねえどころかゲームをする前の方が報われてたんじゃ。
そう考えてしまうほど報われない鬱ゲーの友人キャラに俺は転生してしまった。
俺が転生した山田啓介は第1章のラストで殺される不幸の始まりとされるキャラクターだ。
最初はまだ楽しそうな雰囲気があったが山田啓介が死んだことで雰囲気が変わり鬱ゲーらしくなる。
そんな友人Aに転生した俺は半年を筋トレに費やす。
俺は女主人公を影で助ける。
そしたらいつのまにか俺の周りにはハーレムが築かれていて

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる