聖女♂でございます。

拝詩ルルー

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新たな仲間

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 王都を出立してから約一ヶ月。
 いろいろと分かったことがある。

 ゲームとは違って、好感度が上がっていない仲間とのイベントがスキップされるということはなく、全員平等に全てのイベントが発生した。

 まぁ、一緒に旅してるんだ。当たり前か。

 そして、選択肢はゲームと変わりなかった。

 選択ミス——すなわち、バッドエンド! そして、この世界の滅亡!! ……の可能性がある限り、選択ミスをわざと選んで様子を見る、という勇気も出なかった……

 もうどうしようもなくて、「全員攻略ルート」に進むしかなかった。

 そして女言葉の選択肢を選んだ時は、なぜか俺の口から出てくる言葉も女言葉になった——他のメンバーからは一瞬「あれ?」って顔をされるけど、流石にもう慣れてきたのか流してもらっている……

 おのれ、ゲームの強制力めぇえっ!!!

 もちろん、好感度が高くなった時の特別ブーストイベント……ちょっぴりエッチなラッキースケベイベントも発生した——全員、総スカンだったがなっ!!!
 多少好感度が下がったが、普段マメに好感度を上げてた分、大きな影響は無かった。俺のメンタルを除いてな……ぐふっ……


 ある日、ディーターが困ったように眉を下げ、ボロ雑巾のような物を掴んで持って来た。

「エトムント、こんなのがいたんだが……」

 好感度が高まるにつれて、俺たちは互いに敬称無しで呼び合うようになっていた。

「? これは……?」

「キュキュウ……」

 ボロ雑巾が鳴いた!?

 ボロ雑巾がむくりと頭を上げた。うるると涙ぐんだ青い瞳が、薄汚れた毛の間からこちらを見つめている。

 もしかして、これって聖獣じゃないか?

 不意に俺の脳内に、いつもの選択肢が現れた。

======
▷「元いた場所に捨てて来なさい」
 「可哀想に。迷子かしら? 連れて行きましょう」
 「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」
 「連れて行きましょう。弾除けにちょうどいいわ。ニヤリ」
======

「ちょっと待って。今、浄化魔法をかけるわ!」

 俺はそう言ってボロ雑巾を受け取ると、浄化魔法をかけた。語尾が女性らしくなってしまうのは、ゲームの強制力のせいだ。決して、そう決して俺の趣味じゃない。

 ディーターが残念そうな目を俺に向けてくるが、そんなことは気にしてられない。

「キュキュウ!」

 聖獣は、薄汚れたボロ雑巾のような色から、洗い立ての洗濯物のような目に眩しい程に真っ白な色に変わった。
 心なしか、嬉しそうに鳴いている。

 だが、やはり毛むくじゃらのモップ犬みたいだ。

 モップ犬な聖獣は、尻尾っぽい毛の房をブンブンと振って、俺の足にじゃれついてきた。

「エトムントのことを気に入ったみたいだな」

 ディーターがくすりと笑った。
 甘いマスクのイケメンってこともあるが、なんだかその笑顔がキラキラと綺麗に見えた。流石、攻略対象者。

======
 ディーターの好感度が三あがった。
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