Journey to the West -タケル編-

甲斐枝

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第8話 ~ ヒロイン登場?! ~ つボイノリオ 名古屋はええよ!やっとかめ

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上記の曲が性に合わない方は、
mooriders - 花咲く乙女よ穴をほれ 
ということでお願い申し上げます

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 猿たちに先導されて進む。名古屋にも遺跡はなかった。
 多分大津波が日本のかなりの部分を覆い尽くしたんではないだろうか。それに東海地震が発生したのか、とも思われる。
 未来の荒廃した世界って、もっと荒野感とか廃墟感とかあってもいいように思われるが、そうではない。見渡す限り緑緑緑。目に青葉。美しい。
 唐突に河。大河?対岸が見えない。名古屋らへんには川が多かったような記憶がある。鵜飼の長良川とかね。
M「本来大きな川が3つありました。木曽川、長良川、揖斐川です。他にも日光川、善田川、宝川、その他運河など、大変河川の多い平野でした」
「まとまったのかな?」
M「その可能性は高いですね。踏破してきた地帯にその他の川は見当たりませんでしたから」
「川といえば、川魚。もしかしたら鰻とかいるかな。でも醤油もないし、ブドウ糖も心もとないし、蒲焼きは無理だからねぇ、どうするかな」
モ「 鰻を取るためには、何らかの仕掛けが必要です。河原の葦などを使い、筒状の簀を作るなどが有効です」
「ありだな」

 水、持ってきたものはすぐに無くなっている。
 シェルターにステンレスボトルはあったのだが、パッキンがみんなだめになっていて使えない。しかしペットボトルは大丈夫だった。そこで、ちょうどよい大きさにアルミを削って、テグスのような糸を巻き付け、簡易的な蓋を作成したが結構保っている。これで川があれば継ぎ足し、利用している。
 実は、海水を直飲みしても大丈夫な体になっていて、最悪はそれでなんとかなるのだが、いかんせん塩っぱくて辛い。この辺も汽水域なのかやはり塩っぱい。水はもっと上流で汲むことにする。

 川べりを北上するようだ。どこまで連れて行かれるのかわからない。なら、食料調達ということで貝掘りと魚釣り、そしてその処理で1日潰す。そのうちにさらに猿がやってくる。
 猿はみな帯のようにわら縄を腰に巻き、多分藁で細かく編んだ袋を下げている。これに籾が入っているのだ。
「NNNG、NNNG」と猿たちはバラバラと籾を寄越すが、拾うのが大変である。ビニール袋をに入れるように手で教えたが、小さいのに引っ張られて早々に破れてしまう。もったいないので以後は出さない。アルミのトレーを出してそこに集める。

 さて、米だコメダ。たくさんの籾を集めたが、籾殻を落とさねばならない。サピアに教えてもらいながら籾摺りをする。といって、道具が殆どないので、大きめで平らに近い石をベースに、上から石を当てて壊さないように石の重みでぐりぐりする。横にはみ出したものを寄せてはグリグリ寄せてはグリグリ。手で囲いながら息を吹きかけ、殻を飛ばす。
 出来た玄米は1カップ分くらいかな。多少は精米したいが、同じようにするしか無いか。いや。ステンレスで出来た300ccくらいのマグカップ状の実験器具にいれて、木の棒で突く。突く。無心で突く。30分くらい突く。水で洗う。水を捨てようとしたらμミュータンに止められた。
μ「それはぜひ摂取したほうがいいよ!」
「わかった」
 糠臭い水をごくごく飲み干す。たしかに栄養の塊だろうしね。
 石を適当に組んで枯れ木を集める。
 猿や犬がこちらを伺う中、飯盒もないのでそのまま水の適量を教えてもらって石で蓋をし、火にかける。その間に貝や魚を大量に焼く。猿と犬に配る。猿が狂喜している。正直やかましい。
 米は、涙が出るほど美味かった。
 おこげ、美味かった。これは猿にも犬にもやれない。泣きながら塩をかけたり魚と食べる。猿に感謝だ。
 籾があるということは、どこかに田んぼがあるんだろう。
 期待を膨らませながら猿について行く。

 川沿いに歩く。気がつくと日が傾きつつあり、枯れ木を集めて火を熾す。
 割と歩いてはいるが、ペースが遅い。猿たちが気ままに餌をとったりフラフラするので、今ひとつ歩みが定まらない。猿は色々話しているようだが、論理だっているわけでもなく、単語をいくつか話す程度なのだ。最初の猿が一番マシだ。多分お猿のかごやをエッサホイサ歌っている。
 微妙に集まってきた米だが、いかんせん量が少ない。なので貯めている。
 適当に干した小魚で出汁をとり、筍と椎茸らしき茸を煮てみる。塩で調整するとそれなりに美味い。
 アブラナっぽいものがそれなりに生えていたが、まだ実が生っていない。おひたしで菜の花を食べた記憶があるので、花のところをちぎって煮てみると、苦いが食える。
 別に腹は減らないのだが、口寂しい。
 体内のプラントがよほど効率がいいのか、あるいは何か調整されているのか、本当に腹は減らない。でも何も食べないというわけにはいかないし、できるだけ午前と午後の二食くらいは食べるようにしてる。固形の排泄物は実はまだない。

 もう二泊目だが、まだ到着しない。夜は犬と思春期程度の猿が数匹寄ってくるので暖かく眠ることができる。これは間違ったかなと思うが、目的の福井県方面には向かってはいるので、のんびり歩く。

 既に猿は二十匹を超えている。猿の軍団。猿の軍団。猿の軍団……

 不意に川をそれて小山に登る。いよいよか。と、すぐに穴だ。また穴ですか。猿たちが続々と穴に入っていく。
 直径1mくらい。下に向かって空いている。
「これは……どうしよう?」
モ「 入らないほうが良いと思われます。内部の環境が不明です」
M「 おそらく電波が通じなくなり、即応での対処ができなくなります」
μ「大丈夫じゃないかなぁ」
「わかった」

 しばらくサピアと付き合ってわかってきたことがある。
 いずれにせよ、コイツラの人格は、パラレルCPU、今は違う呼び方かもしれないが、AIによる疑似人格はそれそのものがおそらく独立している。最低3つ、もしかしたら何十何百、いやそれ以上かもしれない。独立採算と言うか、おそらく医学的なことはMが働いていて、エコモードというのはそれのみが動く状態。いくつものAIが何らかの能力に特化している。問題に対してそれらの合議、もっといえばデジタルな処理、ジャッジする基準に照らして決定される。これがフル稼働したら、ここまで人間臭い適当な判断はないのではないか。そして、μは、おそらくその統合判断する直感とでも言うべき機能性を持ったAIではなかろうか。
 決して少女だから、理想的な孫だからこう思っているわけではない。決して無い。
 素直に納得できるのが、μの短い言葉だからだ。
 声なんてどうにでもなるし、アバター的にもそうだ。私が納得できる言葉を納得しやすく発言しているとしか思えない。
 思考誘導されているとは感じるが、不快感がほぼ無いのも変な話だしね。

 3つくらいのCPU、あるいはAIがコンピューターの中で判断を競り合うなんて、大昔からいろんなフィクションであった話だ。いや、それこそPSYCHO-PASSだのであった、多重並列思考そのものではないのか。でなければこんなに個性に富んだキャラクターを演じるのは、困難なように思われる。いや、それすら問題ないレベルのAIという可能性もあるが、その場合、現状のエコモードという制限下で出来てしまっていることになる。フル稼働するとどういうことになるのか、全く予想がつかない。エネルギー不足を賄うための存在として、自由に動ける道具として私を初めから騙している可能性すらあるのだ。監視しつつ、行動を誘導させるための演技の可能性。

 実際、MATRIXのように、全てが脳内Visual、Virtual Realityの可能性だってある、もっと単純に夢に過ぎない可能性だってある。不可知なことの可能性を論じても仕方ないというのが私の元々の考え方ではあるが、今となっては、考えることくらいしか出来ないからね。

 ということで、猿に続いて穴に潜り込む。犬たちも付いてくる。ケンはいない、念の為。
 緩やかな傾斜が続くが、薄明かりがすぐ先に見えている。当然四つん這いだが、それでも狭い。
 這うようにして10mほど進むと、やや広くなる。二畳ほどの空間。天井も1.5mくらいで、中腰だ。そこには小さな明かり、LEDのような白い光がぼんやり漏れている。照らされているのは1mくらいの穴。エアロックの穴?丸くて頑丈そうな扉が開いている。
 ああ、文明の灯り、文化の扉。

モ「扉の刻印から、これは五百年前の一般市販されていた汎用シェルターであると考えられます」
「あ、スタンドアローンモードだね」
M「そうです。フル稼働で現状40時間程度のバッテリー残量となっております。一応LED電燈としても使用可能ですが、最大照度で照らし続けた場合、1時間で消耗します」
「先に言えよ!夜とか便利だったのに」
μ「ごめんねー。緊急用途以外で使うと場合によっては熱で壊れたり、実際にバッテリーが損耗すると連絡がつかなくなることも考えられたの」
「わかった」

 さて。こういうときは、鬼が出るか蛇が出るか、とでも言うのかね。
 急に明るさを増す。影がでてくる。

 ゴリラだ。
「あ、ど、どうも。はじめまして。ボノ江です。いきなりすみません」
「いえいえ、こちらこそはじめまして。後宮尊うしろくたけるです。どうぞお見知り置きください」

 ボノボですか。でもちゃんと挨拶したよ。

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これでタケルくんもちょっとは生活が楽になればいいのだけれど。

PKディックのマイノリティー・リポート、3人の生体コンピューターというかプレコグがしきってますね。小説読んでから映画見ましたが、トム・クルーズってのは何でもトム・クルーズになってしまうところがすごいんだけれど残念なところですか。まあ面白いしストリーもちょっと違うけど似たようなもんだけど違う作品感は高いという不思議な感じですね。

ボノボ、ピグミーチンパンジーっていう名前のほうが好きかなあ。WIKI見たら、脳がチンパンジーよりちっさいとかちょっとディスられてる感じだけど、優しそうで好き。

すみません、ちょっと更新が開くかもしれません。書けたら発表しますが、このペースだと週2回位かもしれないです
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