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地下ドルオオカミとオタずきん
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むかしむかし、森の奥深く、さらに地下深いライブハウスにたくさんの女の子が集まっていました。女の子たちの目線の先には素敵な男の子たち。
その名も地下アイドル「いそっぷ⭐︎スター」。
顔良し、家柄良し、パフォーマンス良しのメジャーデビュー秒読みグループとは彼らのことです。
王子様のような煌びやかなアイドルにきゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げる集団の中に1人、慣れない手つきでペンライトを揺らす女の子がいました。
彼女の名前は赤ずきんちゃん。
友達に連れられ、初めてアイドルのライブにやってきたのです。
「赤ずきんちゃんは誰と握手する?」
ライブが終わると友達は赤ずきんちゃんに聞きました。どうやら、終演後に好きなメンバーと握手をして少し話せるようです。
「わからないわ、皆素敵だったし…あら?」
悩む赤ずきんちゃんはふとあることに気づきました。一ヶ所だけ、ガラガラのレーンがあるではありませんか。
「ああ、あのレーンはオオカミさんね」
「オオカミさん?」
友達は納得したような顔でレーンを見ています。
そして赤ずきんちゃんに説明しました。
「とても怖い顔で踊っていたのを見たでしょう?体も大きくてお話しても全く返事をしてくれなくて、威圧感がすごいのよ。1番人気がないんじゃないかしら」
そういえば、後ろで怖い顔をしているオオカミがいたなと赤ずきんちゃんは思い出しました。レーンの先には、寂しそうにじっと机を眺めているオオカミさんの姿があります。
赤ずきんちゃんは、なんだかその姿を放ってはおけませんでした。
握手券を握りしめた赤ずきんちゃんは、オオカミさんの元へ歩いて行きます。
「初めましてオオカミさん」
オオカミは突然目の前に少女が現れ、驚きました。
そして、黙ったまま彼女と握手をしました。
「ライブ、とても楽しかったわ」
「……ああ」
友達が言うように、オオカミさんの対応はそっけないものでした。しかし赤ずきんちゃんは続けます。
「後ろに人がいないからもうちょっと話してもいい?」
オオカミさんはまた驚きましたが、小さな声で「ああ」と返事をしました。
赤ずきんちゃんはオオカミさんにたくさん質問をしました。
「どうしてそんなに耳が大きいの?」
「みんなの声を聞くためさ」
「どうしてそんなに目が大きいの?」
「みんなの顔をよく見るためさ」
「どうしてそんなにお口が大きいの?」
「大きな声で歌ってみんなに届いてほしいからさ」
オオカミさんの返事はどれも素敵なものでした。
赤ずきんちゃんはオオカミさんのことが大好きになりました。
「オオカミさんにまた会いにくるね。応援してる」
赤ずきんちゃんはすっかりオオカミ推しとなり、友達と一緒にライブハウスに通うようになりました。
その後赤ずきんちゃんの接触レポが森中に広まり、
オオカミさんはクールな不器用癒し系アイドルとして人気になったのでした。
赤ずきんちゃんはオオカミさんのトップオタとして、いつまでも最前ガッツで彼のパフォーマンスを応援するのでした。
オオカミさんは今日もその姿を見つけ、嬉しそうな顔で照れながらファンサをするのです。
めでたしめでたし。
その名も地下アイドル「いそっぷ⭐︎スター」。
顔良し、家柄良し、パフォーマンス良しのメジャーデビュー秒読みグループとは彼らのことです。
王子様のような煌びやかなアイドルにきゃあきゃあと黄色い悲鳴を上げる集団の中に1人、慣れない手つきでペンライトを揺らす女の子がいました。
彼女の名前は赤ずきんちゃん。
友達に連れられ、初めてアイドルのライブにやってきたのです。
「赤ずきんちゃんは誰と握手する?」
ライブが終わると友達は赤ずきんちゃんに聞きました。どうやら、終演後に好きなメンバーと握手をして少し話せるようです。
「わからないわ、皆素敵だったし…あら?」
悩む赤ずきんちゃんはふとあることに気づきました。一ヶ所だけ、ガラガラのレーンがあるではありませんか。
「ああ、あのレーンはオオカミさんね」
「オオカミさん?」
友達は納得したような顔でレーンを見ています。
そして赤ずきんちゃんに説明しました。
「とても怖い顔で踊っていたのを見たでしょう?体も大きくてお話しても全く返事をしてくれなくて、威圧感がすごいのよ。1番人気がないんじゃないかしら」
そういえば、後ろで怖い顔をしているオオカミがいたなと赤ずきんちゃんは思い出しました。レーンの先には、寂しそうにじっと机を眺めているオオカミさんの姿があります。
赤ずきんちゃんは、なんだかその姿を放ってはおけませんでした。
握手券を握りしめた赤ずきんちゃんは、オオカミさんの元へ歩いて行きます。
「初めましてオオカミさん」
オオカミは突然目の前に少女が現れ、驚きました。
そして、黙ったまま彼女と握手をしました。
「ライブ、とても楽しかったわ」
「……ああ」
友達が言うように、オオカミさんの対応はそっけないものでした。しかし赤ずきんちゃんは続けます。
「後ろに人がいないからもうちょっと話してもいい?」
オオカミさんはまた驚きましたが、小さな声で「ああ」と返事をしました。
赤ずきんちゃんはオオカミさんにたくさん質問をしました。
「どうしてそんなに耳が大きいの?」
「みんなの声を聞くためさ」
「どうしてそんなに目が大きいの?」
「みんなの顔をよく見るためさ」
「どうしてそんなにお口が大きいの?」
「大きな声で歌ってみんなに届いてほしいからさ」
オオカミさんの返事はどれも素敵なものでした。
赤ずきんちゃんはオオカミさんのことが大好きになりました。
「オオカミさんにまた会いにくるね。応援してる」
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その後赤ずきんちゃんの接触レポが森中に広まり、
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赤ずきんちゃんはオオカミさんのトップオタとして、いつまでも最前ガッツで彼のパフォーマンスを応援するのでした。
オオカミさんは今日もその姿を見つけ、嬉しそうな顔で照れながらファンサをするのです。
めでたしめでたし。
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