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2部 3章
災厄の手先
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場所は変わり、エルフの集落の広場である。
広場には数人のエルフの石像とエリンシアの石像、そして、エリンシアの近くにはレンが警戒を続けながら立っていた。
「ディータ、異常はないか?」
レンは上を向くと、風の魔法で上空に飛んでいるディータに話しかける。
「今のところは無いわね」
彼女が上空にいるのは、集落の中心であるこの広場の上空から集落全体を見渡すためである。
いつ敵が襲ってきてもすぐに察知できるようにするためだ。
「集落入り口の根暗坊主も特に問題ないみたいね……」
「メリッサとローラは?」
「あの二人も大丈夫そうよ」
クオンは集落の入り口で襲撃に備えている。
敵の狙いがディータではなく石像にされたもの全てである以上、集落全体を護らなければならない。
そして、もし襲撃があるのならば集落の入り口であるクオンのいる場所を通ることになるだろうという予測からだった……ただし、必ずしもそうとは限らない。もし、ローラのように他者を召喚する能力や魔法だったとすれば集落の中に突然湧き出てくる可能性もあるのだ。そうなった場合、クオンだけでは対処できない為、メリッサとローラには集落内を見回ってもらっている。
ただし、メリッサはまだ未熟の為、ローラと一緒に行動をしてもらっている。
ディータ的にはローラとメリッサが一緒に行動すると言うのは一抹の不安を覚えるのだが、メリッサ自身が大丈夫だと言っているので大丈夫だろう……彼女の天啓スキルは『看破』……嘘を見破ることの出来る力だと言う。ならば、少なくともローラが嘘をついていない……もう、メリッサに危害を加えるつもりが無いと言うのは本当の事だろうと思うことにした。
戦力の少ない今、元は敵だった相手でも信用するしかないのだ。
「………?」
ディータが空から辺りを見回していると、違和感に気づいた。
「あれは……っ!爆発炎弾!!」
突如、上空に向かって炎の魔法を撃つディータ。
その魔法が上空で弾け飛び、警戒をしている他のメンバーに合図を送ったのだ。
上空に爆発炎弾が放たれた場合の合図は『敵襲』である。
「敵はどこだ!」
「集落の西よ!恐らく魔物ね!骨の魔物がいきなり現れたわ!」
そう、地面から白い何かが生えているのに気付いたディータが目を凝らして見てみると、地面から白い骨の魔物が這い出てきていた。
「私が行くわ!レン、エリンシアをお願い!」
「了解した!」
ディータは骸骨の魔物が出てきた西側へと急ぐ、そこにも石像となったエルフがいるからだ……恐らく、奴らの狙いはエルフの石像だろう。
「させないわよ、闇の刃!」
ディータの繰り出した闇の刃が、骨の魔物を斬り裂くと、魔物はその場で消滅した。
「魔石が出ない……?ということは魔物じゃないのかしら……っ!?」
出てきた一匹の骸骨の魔物を倒し、魔石が出ないことに疑問を思っていたディータの周りに、今度は数匹の同じ骸骨の魔物が現れた。
「数で来られるとマズいわね……」
ディータは舌打ちをすると、再び、闇の魔法でその骸骨たちを一掃する。
そして、次に出てきたのはただの骸骨ではなかった。
「こっちが本命ってことかしらね」
出てきたのは鎧を装着し、手に大剣を持った大柄の骸骨であった。
見るからに、先ほどまでの骸骨とは違う。
恐らく強さも格段に強いだろう……。
「……嫌な魔力を放っているわね」
他の弱い骸骨からも微弱ながら赤い魔力を感じだが、この鎧を着た骸骨は他の骸骨より大きな魔力を感じた………その魔力を感じることでやはりこの敵が災厄の魔女の手先だと言うことがわかる。
「それにしてもこの魔力……魔女以外にも似たようなものを感じたことがある気がするんだけど……どこだったかしら……」
赤い魔力に何かしらの覚えを感じるディータであるが、それが何だったのか思い出せない。
「おっと!?」
鎧の骸骨が、ディータ目掛けて大剣を振るう。
どうやら他の骸骨と違い、石像を狙うわけではなく、ディータを敵として認識しているようだ。
「闇の刃!」
闇の刃が鎧の骸骨へと襲い掛かる……だが、ディータの放った闇の刃は鎧の骸骨の持つ大剣で一刀両断されてしまった。
「……嘘!?」
闇の魔法である闇の刃がこうもあっさりとしかもたかが鎧を着た骸骨に防がれるとは思わず、驚きの声を上げるディータ。
そのディータに向かって再び、鎧の骸骨が大剣を振るう。
ディータはその場を飛びのき、地面を転がりながらその攻撃を躱すが、その躱した先に再び骸骨たちが現れた。
「ちっ……数が多いわよ!闇の牢爆!」
周りに現れた骸骨を闇の魔法で吹き飛ばす……だが、次の瞬間、鎧の骸骨がディータの目の前へと迫っていた。
「なっ!?」
咄嗟に鎧の骸骨の攻撃を風の結界で防ぐ、だが、風の結界は鎧の骸骨の攻撃を防ぎきれず破壊され、避けきれなかったディータの二の腕に傷をつけた。
「やってくれたわね……」
予想以上の強さを持っている鎧の骸骨に、油断もあっただろう、エルフの石像が狙われている為、集中力も欠いていたのだろうが、それでもダメージを受けるとは思っていなかったディータである。
己の考えの甘さを叱咤し、目の前の敵に集中することにした。
先ほどから、他の場所でも戦闘の音も聞こえてくる。
敵が出現したのはここだけではないのだ……なら、目の前の敵を少しでも早く倒し、次の敵へと向かわなければならない。
その為にも、今は目の前の敵に集中である。
ディータの周りに、黒い魔力があふれ出す。
そのディータへ、鎧の骸骨が再び大剣を振り上げる……が。
「エリンシア、貴方の戦い方、真似させてもらうわよ」
普段から、魔法で戦うため、あまり敵との距離を詰めないディータである。
そのディータが、敵へと足を踏み出し、懐へ潜り込んだ。
そして、骸骨の顔面へ掌を向けると……。
「闇魔滅砲!!」
至近距離で闇の魔法をぶっ放したのだ。
これならば、骸骨は大剣で防ぐことも、避けることも出来ない。
頭をなくした鎧の骸骨は、赤い粒子へと変わり、消滅したのだった。
ディータはそんな敵を見ることもなく、周りに他の敵がいないことを確認すると、上空へ飛びあがり次の敵を探すのであった。
広場には数人のエルフの石像とエリンシアの石像、そして、エリンシアの近くにはレンが警戒を続けながら立っていた。
「ディータ、異常はないか?」
レンは上を向くと、風の魔法で上空に飛んでいるディータに話しかける。
「今のところは無いわね」
彼女が上空にいるのは、集落の中心であるこの広場の上空から集落全体を見渡すためである。
いつ敵が襲ってきてもすぐに察知できるようにするためだ。
「集落入り口の根暗坊主も特に問題ないみたいね……」
「メリッサとローラは?」
「あの二人も大丈夫そうよ」
クオンは集落の入り口で襲撃に備えている。
敵の狙いがディータではなく石像にされたもの全てである以上、集落全体を護らなければならない。
そして、もし襲撃があるのならば集落の入り口であるクオンのいる場所を通ることになるだろうという予測からだった……ただし、必ずしもそうとは限らない。もし、ローラのように他者を召喚する能力や魔法だったとすれば集落の中に突然湧き出てくる可能性もあるのだ。そうなった場合、クオンだけでは対処できない為、メリッサとローラには集落内を見回ってもらっている。
ただし、メリッサはまだ未熟の為、ローラと一緒に行動をしてもらっている。
ディータ的にはローラとメリッサが一緒に行動すると言うのは一抹の不安を覚えるのだが、メリッサ自身が大丈夫だと言っているので大丈夫だろう……彼女の天啓スキルは『看破』……嘘を見破ることの出来る力だと言う。ならば、少なくともローラが嘘をついていない……もう、メリッサに危害を加えるつもりが無いと言うのは本当の事だろうと思うことにした。
戦力の少ない今、元は敵だった相手でも信用するしかないのだ。
「………?」
ディータが空から辺りを見回していると、違和感に気づいた。
「あれは……っ!爆発炎弾!!」
突如、上空に向かって炎の魔法を撃つディータ。
その魔法が上空で弾け飛び、警戒をしている他のメンバーに合図を送ったのだ。
上空に爆発炎弾が放たれた場合の合図は『敵襲』である。
「敵はどこだ!」
「集落の西よ!恐らく魔物ね!骨の魔物がいきなり現れたわ!」
そう、地面から白い何かが生えているのに気付いたディータが目を凝らして見てみると、地面から白い骨の魔物が這い出てきていた。
「私が行くわ!レン、エリンシアをお願い!」
「了解した!」
ディータは骸骨の魔物が出てきた西側へと急ぐ、そこにも石像となったエルフがいるからだ……恐らく、奴らの狙いはエルフの石像だろう。
「させないわよ、闇の刃!」
ディータの繰り出した闇の刃が、骨の魔物を斬り裂くと、魔物はその場で消滅した。
「魔石が出ない……?ということは魔物じゃないのかしら……っ!?」
出てきた一匹の骸骨の魔物を倒し、魔石が出ないことに疑問を思っていたディータの周りに、今度は数匹の同じ骸骨の魔物が現れた。
「数で来られるとマズいわね……」
ディータは舌打ちをすると、再び、闇の魔法でその骸骨たちを一掃する。
そして、次に出てきたのはただの骸骨ではなかった。
「こっちが本命ってことかしらね」
出てきたのは鎧を装着し、手に大剣を持った大柄の骸骨であった。
見るからに、先ほどまでの骸骨とは違う。
恐らく強さも格段に強いだろう……。
「……嫌な魔力を放っているわね」
他の弱い骸骨からも微弱ながら赤い魔力を感じだが、この鎧を着た骸骨は他の骸骨より大きな魔力を感じた………その魔力を感じることでやはりこの敵が災厄の魔女の手先だと言うことがわかる。
「それにしてもこの魔力……魔女以外にも似たようなものを感じたことがある気がするんだけど……どこだったかしら……」
赤い魔力に何かしらの覚えを感じるディータであるが、それが何だったのか思い出せない。
「おっと!?」
鎧の骸骨が、ディータ目掛けて大剣を振るう。
どうやら他の骸骨と違い、石像を狙うわけではなく、ディータを敵として認識しているようだ。
「闇の刃!」
闇の刃が鎧の骸骨へと襲い掛かる……だが、ディータの放った闇の刃は鎧の骸骨の持つ大剣で一刀両断されてしまった。
「……嘘!?」
闇の魔法である闇の刃がこうもあっさりとしかもたかが鎧を着た骸骨に防がれるとは思わず、驚きの声を上げるディータ。
そのディータに向かって再び、鎧の骸骨が大剣を振るう。
ディータはその場を飛びのき、地面を転がりながらその攻撃を躱すが、その躱した先に再び骸骨たちが現れた。
「ちっ……数が多いわよ!闇の牢爆!」
周りに現れた骸骨を闇の魔法で吹き飛ばす……だが、次の瞬間、鎧の骸骨がディータの目の前へと迫っていた。
「なっ!?」
咄嗟に鎧の骸骨の攻撃を風の結界で防ぐ、だが、風の結界は鎧の骸骨の攻撃を防ぎきれず破壊され、避けきれなかったディータの二の腕に傷をつけた。
「やってくれたわね……」
予想以上の強さを持っている鎧の骸骨に、油断もあっただろう、エルフの石像が狙われている為、集中力も欠いていたのだろうが、それでもダメージを受けるとは思っていなかったディータである。
己の考えの甘さを叱咤し、目の前の敵に集中することにした。
先ほどから、他の場所でも戦闘の音も聞こえてくる。
敵が出現したのはここだけではないのだ……なら、目の前の敵を少しでも早く倒し、次の敵へと向かわなければならない。
その為にも、今は目の前の敵に集中である。
ディータの周りに、黒い魔力があふれ出す。
そのディータへ、鎧の骸骨が再び大剣を振り上げる……が。
「エリンシア、貴方の戦い方、真似させてもらうわよ」
普段から、魔法で戦うため、あまり敵との距離を詰めないディータである。
そのディータが、敵へと足を踏み出し、懐へ潜り込んだ。
そして、骸骨の顔面へ掌を向けると……。
「闇魔滅砲!!」
至近距離で闇の魔法をぶっ放したのだ。
これならば、骸骨は大剣で防ぐことも、避けることも出来ない。
頭をなくした鎧の骸骨は、赤い粒子へと変わり、消滅したのだった。
ディータはそんな敵を見ることもなく、周りに他の敵がいないことを確認すると、上空へ飛びあがり次の敵を探すのであった。
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