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2部 2章
看破
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「エリンシア!」
「あら、カモメさんお帰りなさいですわ」
「レンもただいま」
「ああ」
私達がギルドに戻ると、奥の部屋でエリンシア達が尋問をしていると聞き、私はその部屋へとやってきた。
「んもぅ、レンさん。こういう時は『ああ』ではなくて『おかえり』というものですわよ」
「む、そうか……おかえり、カモメ」
「うん、ただいま!」
少し不愛想であるレンであるが、それは彼の真面目さから来るものなので私は気にしていない。
だけど、確かにおかえりと言われると嬉しいものである。
なので満面の笑みでもう一度ただいまと言った。
「それで、この人は何か喋った?」
「ええ、色々と教えてくださいましたわ」
「わっ、ホント?よかった!」
私が喜んでいると、エリンシアが何かに気づいたようにあたりを見回す。
「ところで、クオンさんとディータさんはどうなさいましたの?」
私の周りに二人がいないことに気が付いたのだ。
「んとね……」
二人が情報収集のためアンダールシアの王都へと向かったことを教えると、エリンシアが頭を抱えた。
「行動速すぎですわよ……困りましたわねぇ」
「ん?どったの?」
「いえ、ローラさんに情報を色々聞いたんですけれどメリッサさんに話すべきか迷ってしまいまして……二人の意見が聞きたかったんですのよ」
エリンシアが顔を近づけてくると、小声でしゃべりだした。
メリッサに聞かせるかどうか迷うと言うことはアンダールシアの王様の事なのかな……それもあまり良い情報というわけではないようだ。
私の後ろにはメリッサがついてきている。ここで話せばメリッサにも聞かれてしまうだろう。
「あら、あなたが魔女のお嬢ちゃんね?」
「ん?あれ?」
私とエリンシアが困っていると、椅子に座って足を組んでいる女性がいた。
「あの人って尋問した人だよね?縄で縛ってなかったっけ?」
「ああ、そうでしたわ。そちらの説明もしないといけませんわね」
そう言うと、エリンシアは尋問の時に知った敵の戦力、そして、その条件に彼女の身を護ることを承諾したことを教えてくれた。
「傭兵団か……でも、レンの知り合いがいるってことはレンはちょっとやりにくい?出来れば話し合いで解決した方がいいかな?」
「否定だ。奴らに話し合いなど意味をなさない。それに奴らが俺を見たら真っ先に殺しに来るだろう……俺は奴らにとって裏切り者だからな……」
「そうなの?」
裏切り者ってレンの過去に何があったんだろう。
それにエリンシアの話を聞く限り、両方ともあまり良くない傭兵団みたいだね……。
「肯定だ。だから俺の事は気にしなくていい」
「気にしないっていうのは無理だけど……それじゃあ、白の傭兵団に友達とかはいないんだね?」
「肯定だ。友と呼べるものは一人たりともいない」
「解った」
それなら少しはやり易い……けど、レンが狙われているとなると白の傭兵団との戦いになった時は、レンを近づけない方がいいのかな?………レンがそう簡単にやられるとは思わないけどね。
「とーこーろーでー、私の条件はちゃんと守ってくれるのかしら?」
ローラが早く私の口から確認したいのか、話を急かしてくる。
「ああ、敵から貴方を護るってこと?」
「そうよ~、私としてはそれが大事なのよ!」
「うん、貴方が裏切らない限り約束は守るよ」
「本当ね!嘘じゃないわよね!」
「うん」
心底安堵したのか、ローラは机の上に突っ伏した。
「ま、魔女様……よろしいんですか?その方は敵だったのでしょう?」
「うんと、完全に信用したわけじゃないけど……もし変な事をしようとしたら、その時は容赦しないよ」
「あはは、なら安全ね。私が大事なのは自分の命だけですもの……貴方達を裏切った瞬間、私死んじゃうから裏切ったりしないわよ♪」
「その代わり、ちゃんと協力してもらうからね?」
「解ってるわよー」
とりあえず、ローラはそれでいいとして……問題は敵の戦力の一端を教えてもらったが、それだけでもかなりきつい相手である。その上、レンシアが黒幕だというのも解ったのだ……つまり、レンシアの軍隊も敵ということになる。そうなれば、さすがに私達だけで倒すのは厳しいだろう……いや、私達だけなら、奇襲でもかければいいのだろうが、私達がいない間にラリアスの街に敵が来たらラリアスは滅んでしまう。
そう簡単には動けないのだ。
まあ、その為、クオン達が危険を承知で別行動をとってくれているんだけど……。
こちらの味方も増やさないと駄目だよね……とはいえ、ツァインを戦争に巻き込むわけには行かないので結界の中の人達に援軍を頼むわけには行かない。
となれば、こちらの大陸で仲間を増やしていくしかないのかな……まずはヴァルガンの国が協力してくれることを祈ろう。それだけでも大分違うはずだ。
私は今後の事を考えながら頭を捻った。
とりあえず、今日の所は宿に戻ることになったのだった。
ローラの事は私達に一任された為、宿屋に連れて行く。
念のため、私とエリンシア、そしてメリッサが同じ部屋で寝ることになった。
隣の部屋にはレンを、そしてレンを挟んでさらに隣にローラが泊っている。
一応、ローラを警戒しての事であるがローラが襲われる可能性もあるのであんまり遠くにしておきたくもなかったのだ。
その夜……メリッサが真剣な顔をしてエリンシアに話しかけた。
「あの、エリンシアさん」
「ん、なんですの?」
「私に……何か隠してますよね?」
「んぇ!?」
驚くエリンシア……無理もない。
私から見ても、エリンシアは別段メリッサに変な態度をとっていたわけではないのだ。
とったとすれば、私達がギルドに戻った時にクオン達がいなくて頭を抱えたことくらいである。
でもその内容がメリッサに関係することだとメリッサが気づけるとは思えない……それとも、私に小声で言った時に聞こえてしまっていたのだろうか?
「あの……すみません。私は「看破」の天啓スキルを持っているのです……嘘や隠し事を見抜いてしまいます……その……すみません」
とっても申し訳なさそうに言うメリッサ。
そのメリッサを見てエリンシアはあきらめたように溜息をついた。
「そう……なんですの……まったく本当に天啓スキルというのはデタラメですわね……」
そう言って、あきらめたように口を開いたのだった。
「あら、カモメさんお帰りなさいですわ」
「レンもただいま」
「ああ」
私達がギルドに戻ると、奥の部屋でエリンシア達が尋問をしていると聞き、私はその部屋へとやってきた。
「んもぅ、レンさん。こういう時は『ああ』ではなくて『おかえり』というものですわよ」
「む、そうか……おかえり、カモメ」
「うん、ただいま!」
少し不愛想であるレンであるが、それは彼の真面目さから来るものなので私は気にしていない。
だけど、確かにおかえりと言われると嬉しいものである。
なので満面の笑みでもう一度ただいまと言った。
「それで、この人は何か喋った?」
「ええ、色々と教えてくださいましたわ」
「わっ、ホント?よかった!」
私が喜んでいると、エリンシアが何かに気づいたようにあたりを見回す。
「ところで、クオンさんとディータさんはどうなさいましたの?」
私の周りに二人がいないことに気が付いたのだ。
「んとね……」
二人が情報収集のためアンダールシアの王都へと向かったことを教えると、エリンシアが頭を抱えた。
「行動速すぎですわよ……困りましたわねぇ」
「ん?どったの?」
「いえ、ローラさんに情報を色々聞いたんですけれどメリッサさんに話すべきか迷ってしまいまして……二人の意見が聞きたかったんですのよ」
エリンシアが顔を近づけてくると、小声でしゃべりだした。
メリッサに聞かせるかどうか迷うと言うことはアンダールシアの王様の事なのかな……それもあまり良い情報というわけではないようだ。
私の後ろにはメリッサがついてきている。ここで話せばメリッサにも聞かれてしまうだろう。
「あら、あなたが魔女のお嬢ちゃんね?」
「ん?あれ?」
私とエリンシアが困っていると、椅子に座って足を組んでいる女性がいた。
「あの人って尋問した人だよね?縄で縛ってなかったっけ?」
「ああ、そうでしたわ。そちらの説明もしないといけませんわね」
そう言うと、エリンシアは尋問の時に知った敵の戦力、そして、その条件に彼女の身を護ることを承諾したことを教えてくれた。
「傭兵団か……でも、レンの知り合いがいるってことはレンはちょっとやりにくい?出来れば話し合いで解決した方がいいかな?」
「否定だ。奴らに話し合いなど意味をなさない。それに奴らが俺を見たら真っ先に殺しに来るだろう……俺は奴らにとって裏切り者だからな……」
「そうなの?」
裏切り者ってレンの過去に何があったんだろう。
それにエリンシアの話を聞く限り、両方ともあまり良くない傭兵団みたいだね……。
「肯定だ。だから俺の事は気にしなくていい」
「気にしないっていうのは無理だけど……それじゃあ、白の傭兵団に友達とかはいないんだね?」
「肯定だ。友と呼べるものは一人たりともいない」
「解った」
それなら少しはやり易い……けど、レンが狙われているとなると白の傭兵団との戦いになった時は、レンを近づけない方がいいのかな?………レンがそう簡単にやられるとは思わないけどね。
「とーこーろーでー、私の条件はちゃんと守ってくれるのかしら?」
ローラが早く私の口から確認したいのか、話を急かしてくる。
「ああ、敵から貴方を護るってこと?」
「そうよ~、私としてはそれが大事なのよ!」
「うん、貴方が裏切らない限り約束は守るよ」
「本当ね!嘘じゃないわよね!」
「うん」
心底安堵したのか、ローラは机の上に突っ伏した。
「ま、魔女様……よろしいんですか?その方は敵だったのでしょう?」
「うんと、完全に信用したわけじゃないけど……もし変な事をしようとしたら、その時は容赦しないよ」
「あはは、なら安全ね。私が大事なのは自分の命だけですもの……貴方達を裏切った瞬間、私死んじゃうから裏切ったりしないわよ♪」
「その代わり、ちゃんと協力してもらうからね?」
「解ってるわよー」
とりあえず、ローラはそれでいいとして……問題は敵の戦力の一端を教えてもらったが、それだけでもかなりきつい相手である。その上、レンシアが黒幕だというのも解ったのだ……つまり、レンシアの軍隊も敵ということになる。そうなれば、さすがに私達だけで倒すのは厳しいだろう……いや、私達だけなら、奇襲でもかければいいのだろうが、私達がいない間にラリアスの街に敵が来たらラリアスは滅んでしまう。
そう簡単には動けないのだ。
まあ、その為、クオン達が危険を承知で別行動をとってくれているんだけど……。
こちらの味方も増やさないと駄目だよね……とはいえ、ツァインを戦争に巻き込むわけには行かないので結界の中の人達に援軍を頼むわけには行かない。
となれば、こちらの大陸で仲間を増やしていくしかないのかな……まずはヴァルガンの国が協力してくれることを祈ろう。それだけでも大分違うはずだ。
私は今後の事を考えながら頭を捻った。
とりあえず、今日の所は宿に戻ることになったのだった。
ローラの事は私達に一任された為、宿屋に連れて行く。
念のため、私とエリンシア、そしてメリッサが同じ部屋で寝ることになった。
隣の部屋にはレンを、そしてレンを挟んでさらに隣にローラが泊っている。
一応、ローラを警戒しての事であるがローラが襲われる可能性もあるのであんまり遠くにしておきたくもなかったのだ。
その夜……メリッサが真剣な顔をしてエリンシアに話しかけた。
「あの、エリンシアさん」
「ん、なんですの?」
「私に……何か隠してますよね?」
「んぇ!?」
驚くエリンシア……無理もない。
私から見ても、エリンシアは別段メリッサに変な態度をとっていたわけではないのだ。
とったとすれば、私達がギルドに戻った時にクオン達がいなくて頭を抱えたことくらいである。
でもその内容がメリッサに関係することだとメリッサが気づけるとは思えない……それとも、私に小声で言った時に聞こえてしまっていたのだろうか?
「あの……すみません。私は「看破」の天啓スキルを持っているのです……嘘や隠し事を見抜いてしまいます……その……すみません」
とっても申し訳なさそうに言うメリッサ。
そのメリッサを見てエリンシアはあきらめたように溜息をついた。
「そう……なんですの……まったく本当に天啓スキルというのはデタラメですわね……」
そう言って、あきらめたように口を開いたのだった。
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