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2部 2章

情報と尋問

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 私達は領主の館を後にすると冒険者ギルドへ来ていた。
 もちろん、メリッサも一緒である。
 もし私達と離れて、また襲われたら大変だもんね。
 いつ危険になるか分からないし出来るだけそばにいるようにしないと……。


 ギルドの中に入ると、カウンターにもう、なじみとなりかけているミオンの顔を見つける。


「ミオン」
「あら、カモメさん。」
「今、ギルドマスターっている?」
「はい、いらっしゃいますけど……どうかされたんですか?」
「ちょっとね……アンリエッタが呼んでいるから来てほしんだけど」
「領主さまが?……解りました、今お呼びしますので少々お待ちくださいませ」


 そう言うと、ミオンはカウンターから立ち、奥の部屋へと入っていく。
 

「そういえば、カモメ。ギルドに用事ってなんなの?」
「ああ、エリンシア達が討伐終わったらここに来るだろうから、領主の館まで来てほしいって伝言頼もうと思って」
「なるほど」


 エリンシア達は武器の練習がてらに依頼を受けていったって言っていたので必ずここに戻ってくるだろう。宿屋に戻っても私達はいないだろうからエリンシア達にもアンリエッタの所に来てもらおうと思ったのだ。

 私達が会話で時間を潰していると、ミオンがギルドマスターのフランクさんを連れて戻ってきた。


「魔女殿か……アンリエッタが呼んでいると言っていたがどんな要件なんだ?」
「ちょっと色々あってね……詳しくは向こうで」
「ふむ……解った」


 それではいこうとギルドマスターが言うのと同時に、ギルドの扉が開かれる。
 そこにいたのは白くきれいな服を赤く染めたエリンシアの姿であった。


「エリンシア!?」
「あら、カモメさんこちらにいましたのね?」
「どうしたの!?大丈夫!?」


 エリンシアの服についているのは見るからに血である……エリンシアがあんな大量に血を流すなんて絶対ただ事ではない!
 私は心配になってエリンシアに駆け寄った。


「ああ、これですの?大半はレンさんの血ですので問題ないですわ」


 その言葉を聞いて少し安堵するがレンがそれだけの血を流したということでもあることに気づき、私はある不安がよぎる……。


「………一体どんなスパルタな武器の訓練をしたの?」
「ワタクシが傷付けたわけではありませんわよ!!」

 恐る恐る聞く私に、エリンシアの隠し持っていたハリセンが頭目掛けて振り落とされた。
 ……そうだった、これ元々は私用に用意されたんだった……痛い。

「エリンシアの特訓でレンが傷ついたわけじゃないとすると、また自爆?」


 今度はクオンが聞く。


「でも、それでエリンシアにレンの血がつくのはおかしくない?」


 ディータの言う通りだ、レンは出来るだけ味方を巻き込むような自爆の仕方はしない。
 となると……どういうこと?


「自爆なのは間違いありませんが……」
「敵に襲われたのさ」
「クルード、それにシルネアも……」


 女の人を担いだクルードがギルドの中に入ってきた。
 女性は気絶しているのか、動かない。
 だが、要人の為かロープで縛られている。

 二人に続いてレンも入ってきた。
 よかった、すでに元通りの姿になっている。


「この人は?」
「昨日、武器屋の帰りに出くわした男を覚えております?」
「うん、覚えてるよ」


 忘れるわけもない、メリッサを襲っていた奴だ。
 その男とこの女の人が関係あるのかな?


「その男とこの女がカモメさんを殺すとか言っておりましたのでちょっとお仕置きをしたんですの」


 私を殺す!?
 って、そうか…‥あの男からしたら私は邪魔者だもんね……そうなるか……。

 その後、何があったのかをエリンシアは説明してくれた。
 エリンシアが背中に傷を負っているのを見つけたので、私はその背中を治療しながらエリンシアの話を聞く。

 エリンシアの話では、メリッサを襲って私に撃退された男……グレイブというらしいが、そのグレイブがこの女の人と森の中で話をしているところに出くわしたらしいね……そして、私を殺す計画を立てているようだったからエリンシアが立ち向かったと……そして、レンの超再生にも弱点があることが分かった……核になる部分が壊されると再生できないんだね……気を付けないと。

 そして、この気絶している女の人から情報を聞くために、ふん縛ってここまで連れてきたと……。


「さすがエリンシアね。こいつの口から色々な情報が聞けるんじゃない?」
「そうだね、アンダールシアっていう国が今どんな状況なのか詳しく知っておく必要がある。この人には目を覚ましたら色々聞こう」


 となると、この人が目を覚ました時のために誰か近くにいないといけないよね。


「ワタクシがここに残りますわ……カモメさんたちはアンリエッタさんの所で今後を話し合ってくださいまし」
「なら、私も残るわよ……根暗坊主がいればそっちは大丈夫でしょう?」

 確かに、クオンがいてくれれば大丈夫だろう……。


「解ったよ、じゃあこっちは二人に任せるね」
「待て、俺もここに残ろう」
「レン?」
「貴方が残ったところで何か役に立つのかしら?」
「肯定だ。俺は尋問が得意だ」


 いや、そんなに堂々と言われても……ちょっと怖いよ?
 さすがのディータもレンの言葉にちょっと引いている。


「元は傭兵だったからな、戦争で敵兵士をとらえて情報を聞くということは日常的にしていた」
「ならいいんじゃありませんこと?それならこちらはワタクシとレンさんで十分ですわ。ディータさんもカモメさんの方に行っていいですわよ」
「そう?まあ、エリンシアがそう言うのなら大丈夫でしょう」


 ディータからしてみれば、まだレンは信用しきれていないのかもしれない。
 悪い人だと思っているというわけではないだろうし、仲間と思っていないわけでもないだろう。
 ただ、まだレンの能力がどれほどの物か分からない以上、完全に一人前と見ていないのだろう。

 確かに、私達とレンには力に歴然の差があると思うけど……エリンシアがああいうのならば問題ないだろう。


「じゃあ、エリンシアとレンに任せて私達はアンリエッタの所に戻ろう!」
「ええ、任されましたわ」


 そう言って私はギルドを後にした。
 レンの事はエリンシアに任せよう……私はレンの表情が少し暗かったことが気になってはいたが、何となくエリンシアが任せろと言っているような気がしたので何も言わずにいたのだった。
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