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2部 2章
特訓
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ワタクシは新しくワタクシ達のパーティに入ったレンと共に森へと来ておりました。
というのも、この間、レンさんが武器屋の親父さんに貰った新しい武器の練習の為ですの。
「レンさん、そっちに行きましたわよ!」
「了解した!」
練習がてらに受けた依頼は、コボルトの討伐ですわ。
コボルトとはランクFの魔物…つまり、魔物の中では最弱の部類に入る魔物ですわ。
レンが使う武器は銃とちょっと形の変わった弓ですわ。
最初のうちは思うように使えないだろうと思いランクFの魔物の討伐にしたのですが……。
「ここだ!」
レンさんはそう叫ぶとコボルトに近づき……ん、近づき?
持っていた爆弾をコボルトの口に叩き込み、体内で爆発させた。
もちろん、レンさんも一緒に爆発しておりますわ……。
「良し」
「良しじゃありませんわ!!」
頭だけになったレンにワタクシはハリセンを叩き込む。
ええ、手加減一切なしフルパワーで叩いてあげましたわ!
「なぜだ?」
「何で一点の曇りもなく聞き返せますの!レンさん、貴方ここに何しに来ましたの!」
「む、新しい武器の練習を……はっ!」
「気づいてくれましたのね……でも、それだけじゃありませんわ……コボルト相手に自分まで行動不能になってどうしますの?」
「む……」
レンさんは現在、頭と体がバラバラになっております。
必死に、頭のもとに集まろうとしている体をみるとちょっとかわいい……ではなくて、気持ち悪いですわっ。
「レンさん、貴方のスキルがすごいのはワタクシにも解りますわ……でも、そのスキルに頼ってばかりでは冒険者としてやっていけないんじゃありませんの?」
「……すまない」
「今日一日、再生スキルに頼るのは禁止いたしますわ」
「了解した……エリンシア、感謝する」
「んなっ……な、仲間として当然のことをしているだけですわよ!」
変に素直なのでやりにくいですわねぇ……。
「仲間か……良いものだ」
「ふと気になりましたけど、レンさんこの街に来る前は何をしていらしたんですの?」
「俺は傭兵をしていた」
「傭兵ですの?」
傭兵というと、確か依頼主からお金を貰って、魔物や人相手に戦う者たちでしたわよね。
それ程、冒険者と変わらないと思いますけれどなんで転職したんでしょう?
「なぜ冒険者になったのですの?……と、聞いても?」
「肯定だ……といっても、単純なことだ……俺はヘマをして逃げ出した。それだけだ。」
レンさんはそう言うと、とても辛そうな顔をいたしました。
確かに、レンさんはちょっと変わり者ですので、何かしらヘマをしたのかもしれませんわね……現に、コボルト相手に全力で戦って行動不能になっておりますもの……その時も別に敵がいたのを気づかず、行動不能になってしまったのかもしれませんわね。……いえ、もしかしたら……駄目ですわね。仲間の過去を探るような勘繰り……レンさんに失礼ですわ。
「まあ、いいですわ……それより、新しい武器の練習ですわね……そろそろ体もくっついたみたいですし」
「肯定だ」
「ところで、レンさんの持っている爆薬はその弓や銃に使えませんの?」
「ん?どういうことだ?」
ワタクシは思いついたことをレンさんに説明しました。
と言っても、簡単な話ですわ……レンさんの持っている爆弾や爆薬を、矢の矢じりや銃の弾丸に付けて、相手に着弾したときに爆発させるということは出来ないのでしょうかということです。
「なるほど……そうすれば、遠距離でも威力を出すことが出来るな」
「ですわ……ちょっと試してみませんこと?そうですわね、あそこの木に向かって撃ってみてくださいませ」
「ふむ……」
「無理そうですの?」
ワタクシが木を指さして言うと、レンさんは少し困った顔をする。
「弓の方は行けると思うが……銃の方は難しいだろう」
「何でですの?」
「この銃という武器は撃つときに撃鉄というものを弾に当て発射するのだが……爆発物を弾に取り付けると撃鉄が当たった時に銃の中で爆発するだろう……」
ああ、確かにそうかもしれませんわね……撃とうとした瞬間自分の目の前で大爆発……それでは意味がありませんわ。
「いや……量を調整すれば爆発は出来なくなるが発射スピードを上げることは出来るかもしれないか……ううむ……」
残念ですわと思っていると、レンさんは何か一人でブツブツと言い始めました。
ワタクシはそのレンさんの様子を見て心底……体が元に戻っていて良かったと思いましたわ……首だけでブツブツと呟かれた日にはさすがのワタクシも恐怖でレンさんを吹き飛ばしてしまいそうですもの……。
「ふむ、いけそうだ」
「あら、何か思いつきましたの?」
「肯定だ、銃に関してはなかなかいいアイディアを思いついた。エリンシアのお陰だ……感謝する」
「気にしないでくださいまし、仲間が強くなることは良いことですわ」
「だが、少し時間が掛かりそうだ……今日の所はその作業をするために一度帰ろうと思うのだが」
「あら、そうなんですの?なら、また明日出直しですわね」
「明日も協力してくれるのか?」
「当然ですわよ、慣れない武器は危険ですもの……慣れるまでお付き合いいたしますわ」
「感謝する」
「それじゃ、帰りましょうですわ」
そう言うと、レンさんは「肯定だ」と頷き、ワタクシたちは移動を始めました。
すると……。
「おや、アンタらは……」
「エリンシアさんにレンさん!」
見知った顔が森の中から現れました。
クルードさんとシルネアさんですわ。
「あら、お二人とも奇遇ですわね」
「ですね、エリンシアさんたちも依頼ですか?」
「ええ、新しく手に入れたレンさんの武器を試すついでですけれど」
「そうなんですね」
「シルネアさんたちも依頼ですの?」
「ああ、と言ってもただの薬草採取だけどな」
そう言って、持っている籠を見せてくるクルード。
確かに、籠の中にはいろいろな薬草が入っておりました。
「そういや、今日はあのとんでもない嬢ちゃんとは一緒じゃないのか?」
「とんでもない?……ああ、カモメさんですの?」
「もう、兄さん失礼ですよ」
「カモメさんは今日は一緒じゃありませんわよ、カモメさんも新しい武器を試したいでしょうからワタクシがレンさんに付き合いましたの」
「そうなんですか……ってあれ?」
ワタクシと話していたシルネアさんが何かに気づいたように森の奥を見る。
「どうしましたの?」
「あ、いえ、何か話し声が聞こえたような気がしたので……」
そう言われて、ワタクシも耳を澄ましますと……確かに話し声が聞こえますわね。
「……っ」
普通でしたら、他の冒険者が依頼をしているのかもと思いますが……ワタクシの耳に聞き逃せない単語が聞こえてきました……。その単語は「闇の魔女」「殺す」という単語ですの……少し離れているところで話しているのでしょう、ワタクシの耳でも会話の全部は聞こえてきません……ですが……。
「………ちょっと行ってきますわ」
「え、エリンシアさん?」
ワタクシがそちらに向かうとシルネアさん達もついてきた。
もしかしたらワタクシ達の命を狙うものかもしれないので出来ればついてこない方が嬉しんですけれどシルネアさんを留まらせる為に時間を割いてしまって逃がしてしまっては元も子もありませんし……仕方ありませんわ……とりあえずは様子を見ることにしましょう。
ワタクシ達は少し奥に進むと、森の中の少し開けた場所で男と女が会話をしていた。
会話といっても、男女が静かな森を楽しんでいるというようなほほえましい様子ではない。
それに、あの男は……。
「あれは昨日、武器屋の帰りに見た男じゃないか?」
レンさんも気づいたのでしょう、ワタクシが思ったことを口に出していってくれましたわ。
レンさんの言う通り、あの男は昨日の武器屋の帰りに見た男……ワタクシもカモメさんたちもあの男の異様な雰囲気に嫌な感じを受けておりました。
やっぱり、怪しいですわね……少し会話を聞いてみましょうですわ。
「それで、メリッサ王女の暗殺に失敗した上、その闇の魔女を敵に回したということよね?」
「ああ」
「はあ……凄腕の暗殺者が聞いてあきれるわね……で、どうするのかしら?」
「闇の魔女の腕は想像以上だ……俺一人では殺せないだろう」
「なるほど、それで増援ね……仕方ないわね……メリッサ王女に生きていられては困るもの……解ったわ、あの方に伝えて手を打ってもらうわ」
「頼む……っ!誰だ!!」
しまった、気づかれましたわ……でも、十分情報は聞けましたわね。
「シルネアさんたちはここにいてくださいまし、危険ですので」
「は、はい……」
「レンさん、シルネアさんたちを頼みますわ」
「了解した」
そう言って、ワタクシは一人で木の陰から出ていきます。
「何者だ?」
「あら、ワタクシを知りませんの?カモメさんの事は知っておりますのにその仲間の顔も知らないなんて暗殺者にしては情報不足じゃありません?」
「闇の魔女の仲間ですって?グレイブ、尾けられたの!」
「違いますわよ、たまたま今日は別行動でこの森にいただけですわ。貴方達ツイていないんじゃありません?」
「ちっ、ふざけたやつ!グレイブ、殺しなさい!」
女の人の言葉と同時にグレイブと呼ばれた男がこちらに向かってくる。
かなりのスピードだが……。
「クオンさんの足元にも及びませんわね」
「何っ!?ぐはっ!!」
相手のショートソードを躱すと、ワタクシは思いっきり男のお腹を蹴り飛ばしてあげましたわ。
「その程度の腕でカモメさんを殺す?百万回挑戦しても無理ですわよ!」
「ちっ……グレイブの言う通り、闇の魔女とその仲間は危険なようね」
「さあ、降参しなさいませ……でないと、痛い目を見ますわよ?」
ワタクシは魔導銃を取り出すと、女の方に向けて降参を促す。
「はっ……調子にお乗りじゃないよ小娘」
女がそう言った瞬間……ワタクシの目の前にグレイブとは別の男が出現した。
「なっ……きゃっ!」
目の前に現れた男は魔導銃を持ったワタクシの腕を掴むと思いっきり持ち上げる。
男はワタクシより一回り大きいため、腕を持ち上げられるとそれに引っ張られた状態でワタクシは地面から足が離れ、ぶら下がる状態になってしまった。
「放しなさい……ですわ!」
ワタクシは蹴りを男の顔面に放つと、その衝撃で緩んだ手から逃げ出す。
「いきなりなんですの!」
「あらあら、じゃじゃ馬ね……でも私のペットに勝てるかしら?」
「ペット?」
「さあ、私のペットとグレイブ二人相手に生きていられるかしら?」
「舐めないでくださいまし!」
ワタクシは魔導銃を大男に放つ……が。
「あははは!ワタクシのペットの天啓スキルは「皮膚硬化」よ!そんなおもちゃじゃダメージなんてないわ!」
「くっ!」
大男の陰からグレイブがショートソードで攻撃を仕掛けてくる……厄介ですわ!
ワタクシは一度距離をとることしにしました。
接近戦では不利ですわね……とはいえ、魔導銃の魔弾は大男には効かない……フルブラスターならダメージを与えられるかもしれませんが消耗を考えるとじり貧になりかねませんわね……さあ、どうしましょう。
ワタクシは新しくワタクシ達のパーティに入ったレンと共に森へと来ておりました。
というのも、この間、レンさんが武器屋の親父さんに貰った新しい武器の練習の為ですの。
「レンさん、そっちに行きましたわよ!」
「了解した!」
練習がてらに受けた依頼は、コボルトの討伐ですわ。
コボルトとはランクFの魔物…つまり、魔物の中では最弱の部類に入る魔物ですわ。
レンが使う武器は銃とちょっと形の変わった弓ですわ。
最初のうちは思うように使えないだろうと思いランクFの魔物の討伐にしたのですが……。
「ここだ!」
レンさんはそう叫ぶとコボルトに近づき……ん、近づき?
持っていた爆弾をコボルトの口に叩き込み、体内で爆発させた。
もちろん、レンさんも一緒に爆発しておりますわ……。
「良し」
「良しじゃありませんわ!!」
頭だけになったレンにワタクシはハリセンを叩き込む。
ええ、手加減一切なしフルパワーで叩いてあげましたわ!
「なぜだ?」
「何で一点の曇りもなく聞き返せますの!レンさん、貴方ここに何しに来ましたの!」
「む、新しい武器の練習を……はっ!」
「気づいてくれましたのね……でも、それだけじゃありませんわ……コボルト相手に自分まで行動不能になってどうしますの?」
「む……」
レンさんは現在、頭と体がバラバラになっております。
必死に、頭のもとに集まろうとしている体をみるとちょっとかわいい……ではなくて、気持ち悪いですわっ。
「レンさん、貴方のスキルがすごいのはワタクシにも解りますわ……でも、そのスキルに頼ってばかりでは冒険者としてやっていけないんじゃありませんの?」
「……すまない」
「今日一日、再生スキルに頼るのは禁止いたしますわ」
「了解した……エリンシア、感謝する」
「んなっ……な、仲間として当然のことをしているだけですわよ!」
変に素直なのでやりにくいですわねぇ……。
「仲間か……良いものだ」
「ふと気になりましたけど、レンさんこの街に来る前は何をしていらしたんですの?」
「俺は傭兵をしていた」
「傭兵ですの?」
傭兵というと、確か依頼主からお金を貰って、魔物や人相手に戦う者たちでしたわよね。
それ程、冒険者と変わらないと思いますけれどなんで転職したんでしょう?
「なぜ冒険者になったのですの?……と、聞いても?」
「肯定だ……といっても、単純なことだ……俺はヘマをして逃げ出した。それだけだ。」
レンさんはそう言うと、とても辛そうな顔をいたしました。
確かに、レンさんはちょっと変わり者ですので、何かしらヘマをしたのかもしれませんわね……現に、コボルト相手に全力で戦って行動不能になっておりますもの……その時も別に敵がいたのを気づかず、行動不能になってしまったのかもしれませんわね。……いえ、もしかしたら……駄目ですわね。仲間の過去を探るような勘繰り……レンさんに失礼ですわ。
「まあ、いいですわ……それより、新しい武器の練習ですわね……そろそろ体もくっついたみたいですし」
「肯定だ」
「ところで、レンさんの持っている爆薬はその弓や銃に使えませんの?」
「ん?どういうことだ?」
ワタクシは思いついたことをレンさんに説明しました。
と言っても、簡単な話ですわ……レンさんの持っている爆弾や爆薬を、矢の矢じりや銃の弾丸に付けて、相手に着弾したときに爆発させるということは出来ないのでしょうかということです。
「なるほど……そうすれば、遠距離でも威力を出すことが出来るな」
「ですわ……ちょっと試してみませんこと?そうですわね、あそこの木に向かって撃ってみてくださいませ」
「ふむ……」
「無理そうですの?」
ワタクシが木を指さして言うと、レンさんは少し困った顔をする。
「弓の方は行けると思うが……銃の方は難しいだろう」
「何でですの?」
「この銃という武器は撃つときに撃鉄というものを弾に当て発射するのだが……爆発物を弾に取り付けると撃鉄が当たった時に銃の中で爆発するだろう……」
ああ、確かにそうかもしれませんわね……撃とうとした瞬間自分の目の前で大爆発……それでは意味がありませんわ。
「いや……量を調整すれば爆発は出来なくなるが発射スピードを上げることは出来るかもしれないか……ううむ……」
残念ですわと思っていると、レンさんは何か一人でブツブツと言い始めました。
ワタクシはそのレンさんの様子を見て心底……体が元に戻っていて良かったと思いましたわ……首だけでブツブツと呟かれた日にはさすがのワタクシも恐怖でレンさんを吹き飛ばしてしまいそうですもの……。
「ふむ、いけそうだ」
「あら、何か思いつきましたの?」
「肯定だ、銃に関してはなかなかいいアイディアを思いついた。エリンシアのお陰だ……感謝する」
「気にしないでくださいまし、仲間が強くなることは良いことですわ」
「だが、少し時間が掛かりそうだ……今日の所はその作業をするために一度帰ろうと思うのだが」
「あら、そうなんですの?なら、また明日出直しですわね」
「明日も協力してくれるのか?」
「当然ですわよ、慣れない武器は危険ですもの……慣れるまでお付き合いいたしますわ」
「感謝する」
「それじゃ、帰りましょうですわ」
そう言うと、レンさんは「肯定だ」と頷き、ワタクシたちは移動を始めました。
すると……。
「おや、アンタらは……」
「エリンシアさんにレンさん!」
見知った顔が森の中から現れました。
クルードさんとシルネアさんですわ。
「あら、お二人とも奇遇ですわね」
「ですね、エリンシアさんたちも依頼ですか?」
「ええ、新しく手に入れたレンさんの武器を試すついでですけれど」
「そうなんですね」
「シルネアさんたちも依頼ですの?」
「ああ、と言ってもただの薬草採取だけどな」
そう言って、持っている籠を見せてくるクルード。
確かに、籠の中にはいろいろな薬草が入っておりました。
「そういや、今日はあのとんでもない嬢ちゃんとは一緒じゃないのか?」
「とんでもない?……ああ、カモメさんですの?」
「もう、兄さん失礼ですよ」
「カモメさんは今日は一緒じゃありませんわよ、カモメさんも新しい武器を試したいでしょうからワタクシがレンさんに付き合いましたの」
「そうなんですか……ってあれ?」
ワタクシと話していたシルネアさんが何かに気づいたように森の奥を見る。
「どうしましたの?」
「あ、いえ、何か話し声が聞こえたような気がしたので……」
そう言われて、ワタクシも耳を澄ましますと……確かに話し声が聞こえますわね。
「……っ」
普通でしたら、他の冒険者が依頼をしているのかもと思いますが……ワタクシの耳に聞き逃せない単語が聞こえてきました……。その単語は「闇の魔女」「殺す」という単語ですの……少し離れているところで話しているのでしょう、ワタクシの耳でも会話の全部は聞こえてきません……ですが……。
「………ちょっと行ってきますわ」
「え、エリンシアさん?」
ワタクシがそちらに向かうとシルネアさん達もついてきた。
もしかしたらワタクシ達の命を狙うものかもしれないので出来ればついてこない方が嬉しんですけれどシルネアさんを留まらせる為に時間を割いてしまって逃がしてしまっては元も子もありませんし……仕方ありませんわ……とりあえずは様子を見ることにしましょう。
ワタクシ達は少し奥に進むと、森の中の少し開けた場所で男と女が会話をしていた。
会話といっても、男女が静かな森を楽しんでいるというようなほほえましい様子ではない。
それに、あの男は……。
「あれは昨日、武器屋の帰りに見た男じゃないか?」
レンさんも気づいたのでしょう、ワタクシが思ったことを口に出していってくれましたわ。
レンさんの言う通り、あの男は昨日の武器屋の帰りに見た男……ワタクシもカモメさんたちもあの男の異様な雰囲気に嫌な感じを受けておりました。
やっぱり、怪しいですわね……少し会話を聞いてみましょうですわ。
「それで、メリッサ王女の暗殺に失敗した上、その闇の魔女を敵に回したということよね?」
「ああ」
「はあ……凄腕の暗殺者が聞いてあきれるわね……で、どうするのかしら?」
「闇の魔女の腕は想像以上だ……俺一人では殺せないだろう」
「なるほど、それで増援ね……仕方ないわね……メリッサ王女に生きていられては困るもの……解ったわ、あの方に伝えて手を打ってもらうわ」
「頼む……っ!誰だ!!」
しまった、気づかれましたわ……でも、十分情報は聞けましたわね。
「シルネアさんたちはここにいてくださいまし、危険ですので」
「は、はい……」
「レンさん、シルネアさんたちを頼みますわ」
「了解した」
そう言って、ワタクシは一人で木の陰から出ていきます。
「何者だ?」
「あら、ワタクシを知りませんの?カモメさんの事は知っておりますのにその仲間の顔も知らないなんて暗殺者にしては情報不足じゃありません?」
「闇の魔女の仲間ですって?グレイブ、尾けられたの!」
「違いますわよ、たまたま今日は別行動でこの森にいただけですわ。貴方達ツイていないんじゃありません?」
「ちっ、ふざけたやつ!グレイブ、殺しなさい!」
女の人の言葉と同時にグレイブと呼ばれた男がこちらに向かってくる。
かなりのスピードだが……。
「クオンさんの足元にも及びませんわね」
「何っ!?ぐはっ!!」
相手のショートソードを躱すと、ワタクシは思いっきり男のお腹を蹴り飛ばしてあげましたわ。
「その程度の腕でカモメさんを殺す?百万回挑戦しても無理ですわよ!」
「ちっ……グレイブの言う通り、闇の魔女とその仲間は危険なようね」
「さあ、降参しなさいませ……でないと、痛い目を見ますわよ?」
ワタクシは魔導銃を取り出すと、女の方に向けて降参を促す。
「はっ……調子にお乗りじゃないよ小娘」
女がそう言った瞬間……ワタクシの目の前にグレイブとは別の男が出現した。
「なっ……きゃっ!」
目の前に現れた男は魔導銃を持ったワタクシの腕を掴むと思いっきり持ち上げる。
男はワタクシより一回り大きいため、腕を持ち上げられるとそれに引っ張られた状態でワタクシは地面から足が離れ、ぶら下がる状態になってしまった。
「放しなさい……ですわ!」
ワタクシは蹴りを男の顔面に放つと、その衝撃で緩んだ手から逃げ出す。
「いきなりなんですの!」
「あらあら、じゃじゃ馬ね……でも私のペットに勝てるかしら?」
「ペット?」
「さあ、私のペットとグレイブ二人相手に生きていられるかしら?」
「舐めないでくださいまし!」
ワタクシは魔導銃を大男に放つ……が。
「あははは!ワタクシのペットの天啓スキルは「皮膚硬化」よ!そんなおもちゃじゃダメージなんてないわ!」
「くっ!」
大男の陰からグレイブがショートソードで攻撃を仕掛けてくる……厄介ですわ!
ワタクシは一度距離をとることしにしました。
接近戦では不利ですわね……とはいえ、魔導銃の魔弾は大男には効かない……フルブラスターならダメージを与えられるかもしれませんが消耗を考えるとじり貧になりかねませんわね……さあ、どうしましょう。
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