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2部 1章
いざゆかん!
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「う~~っ、お腹に染み渡るよぉ~!」
私達は小さな小舟の上にぎゅうぎゅうに詰めながらスープを飲んでいた。
スープはお爺さんが水筒に入れて持ってきていた為、まだまだ暖かい。
良い塩加減のミソのスープだった。
「よっぽど腹が減っておったんじゃのう?」
自分の水稲の中に入っていたスープを全部飲み干され、呆れた表情で言うお爺さん。
チャーミングな白いお髭を指で撫でながら、私たちを見ていた。
「しかし、アンタら一体どこから来たんじゃ?」
「んー、ツァインだよ~」
私が素直に答えると、お爺さんは頭にハテナを浮かべる。
「ツァイン?そりゃあ、どこの国の村だ?」
「え?村じゃなくて国だけど………」
そこまで言って私は思い出す。
そうだ、私達は結界の外を目指して船を出したのだ。
もし、航海に失敗して元の陸地に戻されたんじゃないのであれば、ここはもう結界の外、そして、このお爺さんは結界の外の住人ということになる。
「ふーむ、聞いたことないのう」
「お爺さん、この海の向こう側ってどうなってるか知ってます?」
クオンが話を変える。
そうだ、この大地の人達が私たちの事をどう思っているか分からない。
もし、『世界』が『魔』を封印したことをしっているのであれば結界の中から来た私達を『魔』と勘違いしていしまうかもしれないのだ。
「そりゃおめぇ、この先には神様が封じ込めた化け物がいるっていう話じゃ……魔海とよばれるくらいじゃからのう」
………『魔海』、この大陸の人達にはそう呼ばれているのか……。
「まあ、行こうと思っても、神様の封印があるからのう、魔海がどうなっておるのかなんて誰も分からないしのう……それに、ワシはこの近くに住んで居るが、化け物なんて一回も見たことないぞい……化け物も本当にいるかどうかわからんもんじゃ」
なるほど……このお爺さんの話だけで判断するのは早計かもしれないけど、結界の中、私たちのいた場所は魔海と呼ばれ、化け物がいると言われているのか……そして、神様って言うのが『世界』の事なのかな……?
「まさかお主等、魔海を調査でもするつもりかい?」
「あ、ううん、そんなつもりはないよ」
調査も何も私達そこから来たんだしね……でも、魔海なんて呼ばれているならそのことは言わない方がいいよね?
私がそう言う意味を含めて皆の顔を見ると、皆も同じことを思ったのか頷いて返してくれた。
「そうなのかの?しかし、それなら、なんだってあんなでっかい船でこんな場所におるんじゃ?」
うぐっ……確かに、あんなでっかい船で魔海なんて呼ばれる場所の近くにいれば不思議に思われるのも仕方がない……いや、そもそも、その魔海から来たのだし……どうしよう、なんて誤魔化す?それともやっぱり正直に言ったほうがいいのかな?
私が迷っていると、ディータが助け船を出してくれた。
「ちょっとした乗りで冒険しようと思ったら迷子になったのよ、魔海はどうせ結界で入れないし、その周辺に冒険できそうな島でもないかなって……でもそしたら、自分たちが何処にいるか分からなくなっちゃって……その上、食料も積み忘れたみたいでね」
「ふぉっふぉっふぉっ、なるほどのう……うむうむ、若い頃は好奇心を抑えられないもんじゃ……しかし、食料を積み忘れるとは間抜けじゃのう」
「返す言葉もないわ」
ディータの説明をお爺さんは疑うことなく信じてくれた。
まあ、たった四人で未知の場所を調査するなんてことも普通はないだろうしね。
「それでお爺さん、私達、一度、陸に戻ろうと思うんだけど、小舟でお爺さんがいるってことは近くに陸地があるのよね?」
「うむ、あるぞい……というか、アンタ等完全に方向を見失っておるんじゃのう……見てみい後ろを」
お爺さんが後ろを指さすので私達は来た方向を振り返ってみる……すると………。
「なん……ですって………」
目で見える場所に陸地が広がっていた………。
なんで誰も気付かなかったのだろう……いや、よくよく考えたら、お腹が空いて皆、ちゃんと回りを見てなかったような?………あうう……。
「アンタら海に出る場合はもうちっとしっかりした方がええんじゃないかのう?」
「うぐっ……」
いや、私達も私達だけで海出るつもりなかったんだよ……本当は……乗る船間違えただけで……。
ああ、そう言えば、港にいたツァインの人達どうしてるんだろう……私たちが来ないから待ちぼうけ?
それとも、私たちが船を間違えて出港したところを見て呆然としてたのかな……ごめんね。
「ところでお爺さん、ここから大きな街にいくとしたらどっちに向かえばいいんでしょうか?」
「おお、それなら東に向かうと言い、ラリアスっつう街があるぞい……アンタら冒険者じゃろ?ラリアスなら冒険者ギルドもあるし、元いた街にも戻れるじゃろう」
「ありがとうございます」
!!!!!!!!!!!!!!!
結界の外も冒険者ギルドあるんだ!!!
うわほほほ~い!それなら冒険が出来るってことだよね!んふふふ~結界の中じゃ冒険できなかったもんねぇ……ダンジョンとかモンスター討伐とかいっぱい仕事するぞー!
私は冒険者ギルドの存在を聞き、テンションが上がる、そんな私をエリンシアが引きずりながらお爺さんにお礼を言って、私達は自分たちの船へと戻り、視界に映る陸地へと向かった。
………船は結局、思ったように進まなかったので帆に風の魔法をぶっつけ、無理やり向かった……それを見たお爺さんが眼を丸くしていたのは見なかったことにしよう……船の操縦って難しい!
私達は小さな小舟の上にぎゅうぎゅうに詰めながらスープを飲んでいた。
スープはお爺さんが水筒に入れて持ってきていた為、まだまだ暖かい。
良い塩加減のミソのスープだった。
「よっぽど腹が減っておったんじゃのう?」
自分の水稲の中に入っていたスープを全部飲み干され、呆れた表情で言うお爺さん。
チャーミングな白いお髭を指で撫でながら、私たちを見ていた。
「しかし、アンタら一体どこから来たんじゃ?」
「んー、ツァインだよ~」
私が素直に答えると、お爺さんは頭にハテナを浮かべる。
「ツァイン?そりゃあ、どこの国の村だ?」
「え?村じゃなくて国だけど………」
そこまで言って私は思い出す。
そうだ、私達は結界の外を目指して船を出したのだ。
もし、航海に失敗して元の陸地に戻されたんじゃないのであれば、ここはもう結界の外、そして、このお爺さんは結界の外の住人ということになる。
「ふーむ、聞いたことないのう」
「お爺さん、この海の向こう側ってどうなってるか知ってます?」
クオンが話を変える。
そうだ、この大地の人達が私たちの事をどう思っているか分からない。
もし、『世界』が『魔』を封印したことをしっているのであれば結界の中から来た私達を『魔』と勘違いしていしまうかもしれないのだ。
「そりゃおめぇ、この先には神様が封じ込めた化け物がいるっていう話じゃ……魔海とよばれるくらいじゃからのう」
………『魔海』、この大陸の人達にはそう呼ばれているのか……。
「まあ、行こうと思っても、神様の封印があるからのう、魔海がどうなっておるのかなんて誰も分からないしのう……それに、ワシはこの近くに住んで居るが、化け物なんて一回も見たことないぞい……化け物も本当にいるかどうかわからんもんじゃ」
なるほど……このお爺さんの話だけで判断するのは早計かもしれないけど、結界の中、私たちのいた場所は魔海と呼ばれ、化け物がいると言われているのか……そして、神様って言うのが『世界』の事なのかな……?
「まさかお主等、魔海を調査でもするつもりかい?」
「あ、ううん、そんなつもりはないよ」
調査も何も私達そこから来たんだしね……でも、魔海なんて呼ばれているならそのことは言わない方がいいよね?
私がそう言う意味を含めて皆の顔を見ると、皆も同じことを思ったのか頷いて返してくれた。
「そうなのかの?しかし、それなら、なんだってあんなでっかい船でこんな場所におるんじゃ?」
うぐっ……確かに、あんなでっかい船で魔海なんて呼ばれる場所の近くにいれば不思議に思われるのも仕方がない……いや、そもそも、その魔海から来たのだし……どうしよう、なんて誤魔化す?それともやっぱり正直に言ったほうがいいのかな?
私が迷っていると、ディータが助け船を出してくれた。
「ちょっとした乗りで冒険しようと思ったら迷子になったのよ、魔海はどうせ結界で入れないし、その周辺に冒険できそうな島でもないかなって……でもそしたら、自分たちが何処にいるか分からなくなっちゃって……その上、食料も積み忘れたみたいでね」
「ふぉっふぉっふぉっ、なるほどのう……うむうむ、若い頃は好奇心を抑えられないもんじゃ……しかし、食料を積み忘れるとは間抜けじゃのう」
「返す言葉もないわ」
ディータの説明をお爺さんは疑うことなく信じてくれた。
まあ、たった四人で未知の場所を調査するなんてことも普通はないだろうしね。
「それでお爺さん、私達、一度、陸に戻ろうと思うんだけど、小舟でお爺さんがいるってことは近くに陸地があるのよね?」
「うむ、あるぞい……というか、アンタ等完全に方向を見失っておるんじゃのう……見てみい後ろを」
お爺さんが後ろを指さすので私達は来た方向を振り返ってみる……すると………。
「なん……ですって………」
目で見える場所に陸地が広がっていた………。
なんで誰も気付かなかったのだろう……いや、よくよく考えたら、お腹が空いて皆、ちゃんと回りを見てなかったような?………あうう……。
「アンタら海に出る場合はもうちっとしっかりした方がええんじゃないかのう?」
「うぐっ……」
いや、私達も私達だけで海出るつもりなかったんだよ……本当は……乗る船間違えただけで……。
ああ、そう言えば、港にいたツァインの人達どうしてるんだろう……私たちが来ないから待ちぼうけ?
それとも、私たちが船を間違えて出港したところを見て呆然としてたのかな……ごめんね。
「ところでお爺さん、ここから大きな街にいくとしたらどっちに向かえばいいんでしょうか?」
「おお、それなら東に向かうと言い、ラリアスっつう街があるぞい……アンタら冒険者じゃろ?ラリアスなら冒険者ギルドもあるし、元いた街にも戻れるじゃろう」
「ありがとうございます」
!!!!!!!!!!!!!!!
結界の外も冒険者ギルドあるんだ!!!
うわほほほ~い!それなら冒険が出来るってことだよね!んふふふ~結界の中じゃ冒険できなかったもんねぇ……ダンジョンとかモンスター討伐とかいっぱい仕事するぞー!
私は冒険者ギルドの存在を聞き、テンションが上がる、そんな私をエリンシアが引きずりながらお爺さんにお礼を言って、私達は自分たちの船へと戻り、視界に映る陸地へと向かった。
………船は結局、思ったように進まなかったので帆に風の魔法をぶっつけ、無理やり向かった……それを見たお爺さんが眼を丸くしていたのは見なかったことにしよう……船の操縦って難しい!
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