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5章

魔鬼再び

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「あらぁん、大分、住民がいなくなったわねぇん♪」


 レディは周りを見渡すと、そこには逃げ惑う住民の姿が殆ど無くなっていた。
 居るのはレディによってこの世の生き地獄だろうと思えるほどのキッスを受け、地面の上に泡を吐きながら横たわる哀れな兵士たちだけである。


「私もそろそろ、城に向かおうかしらぁん?」


 レディが城にカモメ達の援護に向かおうとしたその時、絹を裂くような女性の悲鳴が響き渡った。


「あらぁん?」


 悲鳴のした方を見ると、ひとりの兵士がこちらにゆっくりと歩いてくるのが見える。


「……どういうことぉん?」


 レディが訝しがるのも無理はない、その兵士の手には女性の上半身だと思われる死体を引きずっていたのだ。
 いや、それだけではない、ゆっくりと歩いてくる男性は先ほど、レディが吹き飛ばしたこの辺りを仕切っていた兵士だ。


「結構本気でやったから死んじゃったと思ったわぁん……結構丈夫じゃなぁい」


 ラインハルトに言われ、出来る限りの兵士を殺さないようにしているレディであったがそれでもあの男を残虐さに腹を据えかね本気で攻撃をしてしまった。その為、確実に殺してしまっただろうと思っていたのだが…。


「た、隊長、助けてください!」


 恐らく死んだふりでもしていたのだろう、地面に転がっていた兵士がいきなり起き上がりこちらに近づいてくる隊長と呼ばれた兵士に縋りつく。


「隊長!アイツは化け物でキス魔で!とにかく最悪の化け物なんです!……隊長?」
「ギ……ギギ」
「ぎゃああああああああああああああああああ!!!」


 自分の言葉に何も答えを返してくれない隊長に疑問を持った兵士が、隊長の方を振り向くと、隊長と呼ばれた男は持っていた剣をその兵士へと突き立てた。


「なっ!?」


 最初の一撃で恐らく心臓の近くを刺したのだろう悲鳴を上げた後、少しして動かなくなった兵士だったが、そんなのお構いなしと言わんばかりに、何度も何度も兵士に剣を突き立てる隊長と呼ばれた男。


「なにをしてるのぉん!!その子もう死んでるじゃなぁい!!」


 あまりの光景に耐え兼ね、レディは男を制止する言葉を放つ・・・が。


「ギギギ」


 男から帰ってきたのは言葉にならない音だった。
 よく見ると、男の目は赤く染まっており様子がおかしい。


「やめなさいっていってるでしょぉん!!」


 レディは耐え兼ね背中に担いでいたウォーアクスを構えると、それを振りかぶり思いっきり男に向かって振り下ろした。


「ギィ!!」


 男はその攻撃を受け、弾け飛ぶ。


「どうしてぇん?」


 レディが驚いたのは男が何か行動をしたからではないし、男の非道な行いにでもない。
 男がはじけ飛んだことに対してであった。

 レディは男を真っ二つに斬るつもりでウォーアクスを振るったのだ。
 もし、相手が普通の人間であれば……いや、それどころかランクAの魔物だったとして真っ二つになっていたかもしれないその一撃だったのだ。
 なのに、男は弾け飛び、悲鳴を上げながら転がるだけであった。


「ギ……ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!」


 男は達があると、悲鳴のような雄たけびを上げる……そして、男の体が隆起すると、ドス黒い筋肉質の体へと変貌を遂げた。


「な、何が起こってるのぉん?」


 あまりの出来事に普段、恐怖など見せないレディですら一歩退いてしまう。


「ギィイ!」


 化け物のような姿になった男がレディへと突進を始めた。
 身体が大きくなったため然程のスピードではなかったので、一歩退いてしまっていたレディはなんとかその突進を躱す。


「赤い瞳に黒い身体って、カモメちゃんたちが言っていた魔鬼とかいうのにそっくりねぇん」


 レディは、カモメ達にグランルーンの牢屋から脱出した際、五年前の出来事をある程度聞いていた。
 その為、男の姿を見て、男が魔鬼という化け物になったのだという事に気付く。


「これって、まずいわよねぇん」


 魔鬼というのは魔族が生きた人間に自分の魔力を埋め込み、死んだあと自分の手ごまとして使う化け物だという。つまり、この男に魔力を埋め込んだ魔族がいるということだ。


「嫌な感じねぇん」


 魔族がいる可能性はカモメ達も考えていた、グランルーンからいなくなったと王子たちは言っていたがそれをそのまま鵜呑みにするほどカモメ達も抜けてはいない。
 そう見せかけ、未だ潜伏している可能性だってあるのだと、クオンが言い、エリンシアやディータが同意したのだ……そして、カモメもそれに倣って同意していた。


 その為、魔族のいる可能性を警戒はしていたが……魔鬼の存在は予想外である。

 魔鬼と言うのは魔族が作る化け物、そう先ほど言ったが、今まで戦ってきた魔族で魔鬼を使ったのは五年前にあらわれたヘインズという魔物だけだった。
 その為、魔鬼の存在を徐々に忘れ始めていたのだ。
 いや、カモメ達からすれば嫌な思い出に直結する為、思い出したくも無かったのだろう。


 だが、ここに来て、依然と同じグランルーンで魔族が魔鬼を使うというのは、レディには嫌な予感を感じさせたのだ。


「早く、カモメちゃんたちと合流したわぁん、出来ればあなたみたいなのをカモメちゃんとあわせたくないものぉん」


 そう言うと、レディはウォーアクスを構えなおし、魔鬼を睨みつけるの
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