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5章

作戦?

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「とにかく、私は王女なんてごめんだからね!」
「そ、そんな・・・」
「私は冒険者として自分の故郷を取り戻す戦いをするの!」


 王女様なんて冗談じゃない、そんなのになったらクオン達と冒険ができなくなっちゃうじゃない!
 それならまだ、闇の魔女として追われている方がマシである。


「殿下、そう急がずともヴィクトールの娘は戦いには参加してくれるのです、今はそれで」
「そうですね・・・」


 ラインハルトさん今はとか言わなかった?今でも後でも答えは一緒だよ?


「先ずは祖国を取り戻すことを目標としましょう」
「それで、作戦はあるの?」
「すみません、作戦と呼べるものはありません」
「うぉいっ」


 今回は魔族だけが相手では無く、大臣とそれに従っている者たちがいるのだ。
 無策に飛び込んだら悪戯に被害を増やすだけだろう。


「正直な話、グランルーンの民を人質に取られているようなものなのです、真正面から行けば民が盾にされるかもしれません」
「何か作戦を立てて攻め込むという事が出来ないんですわね」


 なるほど、そう言う事か・・・となると。


「はい、そして、私やラインハルトではすぐに身元がバレてしまいます」
「そこで、ヴィクトールの娘たちに潜入してもらい、民を解放したのちに我々が攻め込むという形になった」


 ふむ、子供の頃にしかいなかった私達は兵士さんたちに顔が割れていないということか・・・あれ、ちょっと待って。


「でも私達って指名手配されてるよ?顔バレてないの?」
「いや、ほぼ国民中が知っているぞ?」


 うぉいっ、それじゃ駄目じゃん・・・。


「姉上達には秘密裏に侵入してもらうわけではありません、闇の魔女が襲来したという体で殴り込みをかけてもらいます」
「・・・・・・・え゛」
「そして、その隙に我々が民を先導し、国から逃がすのです」


 ああ・・・囮ってことね・・・。


「でもそれでは、結局国民を盾に使われるのではありませんの?」
「いえ、闇の魔女は極悪非道で有名です、人質など無意味と思ってくれるでしょう」
「グランルーンでの私ってどんだけヒドイ言われようなの!?」
「そもそも、指名手配をした国だからね、色々尾ひれがついているんだろうさ」


 クオンの言う通りである、そうだった、あの大臣が指名手配させたんだ、色々とあることないこと言っているに違いない。


「ちょっと待ちなさい、それじゃ、余りにもカモメが危険じゃないの!」
「ぬいぐるみが喋った!?」
「魔物か!?」


 先ほどまで、驚かせまいとぬいぐるみの振りをしていたディータがあまりの話に我慢が出来ず文句を言う。


「ディータ!?」
「・・・ディータ?その名は確か、君の中にいる闇の女神の名ではなかったか?」


 魔物かと思い剣を抜きかけたラインハルトさんが、ディータの名を聞いて気が付く。


「ええ、そうよ、あなたと話すのは初めてではないわね」
「なぜ、そのような姿に・・・」
「色々あったのよ!それより、そんな危険な真似カモメにはさせないわよ!」
「いや、危険ではない、現在わが国はゴリアテが指揮を執っている、その為魔族がいないのだ」


 魔族がいない・・・?
 どうして?それだけ大臣を信用しているってこと?


「故に、現在わが国を守るのは兵士のみ、ヴィクトールの娘であれば敵ではないだろう」
「確かに・・・」


 確かに、お城の兵士だけなら大丈夫だと思うけど、本当に魔族がいないの?
 普通、占領した場所をそのまま任せる?
 何人かは置いてくるものだと思うけど・・・・。


「それならば、カモメの力を借りる必要はないのでは?ラインハルトさんなら一人でもできるでしょう?」
「うぐっ」


 クオンの言う通りである、多少歳をとったとはいえ、お父さんと同じパーティにいた人だ、ラインハルトさんなら一人で忍び込んで国民を逃がすくらいやってのけそうだが・・・。


「なにか、隠しているんですの?」
「ううん、多分、企んでいるって言う方が正しいんじゃないかな?」
「うぐぐっ」


 企んでいる?一体何を?


「例えば、カモメが戦っている姿を国民に見せて、あれが我が国の王女だ!とか言って国民に知れ渡してカモメの逃げ場を無くすとかね」
「よし、カモメ国ごと壊しちゃいなさい」
「まっかせて♪」
「待て待て待て待て待て待て!!」
「やだー♪」


 私は笑顔ではっきりと断る。王女になんてされてたまるか!


「解った!絶対そのようなことはしない!約束するから国を壊さないでくれ!」
「姉上、お願いします!」
「姉上じゃないっての・・・まったく」


 一国の王子と騎士団長が見事な土下座をし、懇願してくる。
 なんというか形振り構ってないね・・・。


「それで、それじゃあどうするの?」
「いや、やることは変わらぬ、ヴィクトールの娘たちには囮をしてもらい、その間に私達で国民を逃がす」
「僕は戦いが苦手で、足手まといになってしまいます。ですが、僕自身の手で国民を救いたい」
「私は殿下の護衛をしなければならい、なので囮を頼めないか?」


 真剣なまなざしでお願いをしてくるラインハルトさん。
 まあ、ここまで来て何もしないなんて言わないけど・・・本当に王女に祭り上げたりしないだろうか・・・ちょっと心配である。やだよ、王女なんて・・・。


「はあ、解ったよ、でも、絶対王女なんてならないからね」
「ああ、承知した・・・協力感謝する、闇の魔女」
「ありがとうございます、姉う・・・カモメさん」


 はあ・・・とりあえず、やることは決まった。
 といっても、私達にしてみればいつも通りである、乗り込んで暴れて、ぶったおす!

 単純だけど、これって結構効果的なんだよね♪




 細かい作戦を打ち合わせ、私達はグランルーンに潜入する為、ベラリッサを後にした。
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