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4章
クレイジュとクオン
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聖剣クレイジュを構え、屍龍と対峙するクオン。
そのクオンの表情にはランクSSの魔物を相手にしていると言うのに余裕があった。
クオンは自分が手にしている聖剣クレイジュの強さを感覚で理解していた、この剣があれば、勝てると。
「行くよ、クレイジュ」
(おうよ、久しぶりに大暴れさせてもらうぜ相棒!)
クオンは駆ける、地を蹴り、瞬時にして屍龍の懐へと走りこんだ。
もとより、超人的なスピードを持つクオンであったが、今のクオンは以前の数段疾い。
この場にコハクたちが居れば、その動きを捉えることが出来ず、驚いていたであろう。
そして、一振り、クオンは聖剣クレイジュを振り抜いた。
次の瞬間、屍龍の右半身が消し飛ぶ。
「すごい・・・」
(はっ!相棒の剣技もいい味出してるぜ!それ、もう一振りだ!)
クレイジュの指示に従い、振り上げた剣を再び振り下ろす。
すると、まるでバターを斬るかのように屍龍は真っ二つとなった。
そして、二度と動くことは無く、その体は魔石へと姿を変えるのであった。
「すごい、切れ味だ・・・」
(当然よ!俺様は聖剣とうたわれた剣だからな!)
一人と一本しかいない空間に高笑いが木霊する。
この場に他の人間がいれば、きっと剣を相手に話をしている危ない人に見えるんじゃないだろうか?とそう思うクオンではあったが、彼・・・聖剣クレイジュとの出会いはクオンにとってかけがえのないものとなるのだった。
「クレイジュ・・・これから、力を貸してくれるかい?」
(おうよ!相棒の事は気に入ったからな!)
「ありがとう」
クオンがお礼を言うと、クレイジュは(いーって事よ)と笑い返した。
クオンは屍龍がいた場所に近づくと魔石を回収する、ランクSSの魔石だ、あのぬいぐるみ女神にあげればかなりの魔力量が上がるはずである。仕方ないから持って帰ってあげよう。
(ところで相棒、仲間がいるんだろ?)
「ああ、このまま4階層に戻ろうと思う」
(おお、だったら俺様の能力を使いな!)
「ああ、そうさせてもらうよ」
クレイジュの能力、クオンはクレイジュから直接、クレイジュの能力を装備したときに自動的に理解している。その中の一つ、装備したときにも感じた身体能力の向上を使えば、いつもより早く走ることができるだろう。
だが、問題は4階層に戻るまでにある罠なのだが・・・これはもし引っ掛かったらすべて叩き切ればいいだろう・・・クレイジュを装備した僕なら難なくできると思う。
「それじゃ、行くよクレイジュ」
(おうよ!)
その言葉と同時にクオンは走り出した、屍龍が護っていた扉を抜けて4階層へと向かった。
4階層へと続く道には様々なトラップがあった。
槍や矢が飛んでくる典型的な罠や、硫酸が降ってきたり、魔物を大量に召喚する罠もあった。
だが、そのすべてをクオンはクレイジュを振り、斬り飛ばした。
驚くことに硫酸ですらクレイジュを一振りすれば消し飛んだのだから振った本人のクオンもびっくりである。
「クレイジュ・・・硫酸を斬ったりしてしまったけど、君は大丈夫?」
(カカカ!聖剣である俺様が硫酸なんかで傷ついたりするかよ!モーマンタイだぜ!)
「そ、そう・・・」
4階層へと向かう道の間で改めてクレイジュがとんでもない剣だという事を理解してしまう。
これなら、魔族との戦いもかなり楽になるだろう・・・。
カモメの足を引っ張ってしまうなんてことも無いはずだ・・・。
(安心しろよ相棒!俺を装備した相棒は魔族になんて負けやしねぇよ!)
「ああ・・・絶対に負けない」
(おう、その意気だ!)
クオンは再び、高速で4階層へと向かった、そして、5階層から走り出してからものの五分ほどで4階層へと辿り着く、常人であれば走って進めば1時間かかる・・・罠を警戒して進むのであれば3時間はかかるであろうその道を全ての罠や魔物を斬り伏せながら超人的なスピードで踏破してしまったのだ。
「皆、無事かい!」
クオンは4階層に着くと、その眼に仲間の姿を確認する。
「クオン殿!?」
「クオンさん無事だったんですね!」
コハクとソフィーナがこちらを向き声を掛けてきた。
二人は、傷つきながらもどこか達成感のある顔をしていた。
「酷い傷だ・・・二人とも大丈夫ですか?」
「ああ・・・私は問題ない、鎧や服はあちこち破れてはいるが傷の方はもうほとんど治っている」
「俺はまだ・・・ボロボロですけど、命に係わるほどの怪我は無さそうです」
よかったと、安堵するクオン。
(おいおい、鎧が砕けるほどのダメージを受けて傷が殆ど治ってるって、回復魔法が使えるならそっちのエルフの坊ちゃんにも掛けてやればいいだろうに?)
「いや、私は回復魔法を使っているわけではないぞ・・・って誰だ?」
(回復魔法無しで治ってるって・・・化け物じゃねぇのかねーちゃん?)
「誰が化け物だ!・・・というかどこにいる!!!」
辺りをキョロキョロしながら剣を構えるソフィーナさん、確かにあの鎧の壊れ方ですでに怪我が治ってるって言うのは異常だと思うけどね。
「リーナとヒスイは大丈夫なのかい?」
そんなソフィーナさんを放っておいて、クオンはコハクたちの後ろで倒れているリーナとヒスイの心配をした。コハクの様子から恐らく大丈夫だろうとは思っているが念の為である。
「はい、持っていたポーションで傷は治したので大丈夫だと思います・・・目を覚ますまでは心配ですが」
コハクは持っていたポーションを自分には使わず、リーナとヒスイに使ったようだった。
彼の傷もかなりの物だったのでクオンは持っていたポーションをコハクへと渡す。
「いいんですか?」
「当然」
(相棒は怪我らしい怪我を負ってないからな)
「また聞こえた!?」
クレイジュの声にソフィーナは再び辺りを見回す。
「今の声は?」
「ああ・・・5階層で見つけた聖武具・・・聖剣クレイジュの声だよ」
「「え!?」」
クオンが説明をすると、二人は目を丸くして驚いた。
「聖武具って・・・それじゃ、クオンさん5階層のボスを一人で?」
「いや、このクレイジュのお陰で勝てたんだ・・・僕一人だったら危なかった」
(もっとも、相棒の攻撃が効かなかっただけで相棒の方があの屍龍なんかより強かったけどな)
「屍龍・・・相手は龍だったのか・・・」
「さすがクオンさんです・・・それに聖武具って喋るんですね?」
「いや、クレイジュが特殊なんだと思う」
(おう、俺様はスペシャルな武器だからな!)
そう言うと、再びクレイジュの笑い声が部屋に木霊したのだった。
そのクオンの表情にはランクSSの魔物を相手にしていると言うのに余裕があった。
クオンは自分が手にしている聖剣クレイジュの強さを感覚で理解していた、この剣があれば、勝てると。
「行くよ、クレイジュ」
(おうよ、久しぶりに大暴れさせてもらうぜ相棒!)
クオンは駆ける、地を蹴り、瞬時にして屍龍の懐へと走りこんだ。
もとより、超人的なスピードを持つクオンであったが、今のクオンは以前の数段疾い。
この場にコハクたちが居れば、その動きを捉えることが出来ず、驚いていたであろう。
そして、一振り、クオンは聖剣クレイジュを振り抜いた。
次の瞬間、屍龍の右半身が消し飛ぶ。
「すごい・・・」
(はっ!相棒の剣技もいい味出してるぜ!それ、もう一振りだ!)
クレイジュの指示に従い、振り上げた剣を再び振り下ろす。
すると、まるでバターを斬るかのように屍龍は真っ二つとなった。
そして、二度と動くことは無く、その体は魔石へと姿を変えるのであった。
「すごい、切れ味だ・・・」
(当然よ!俺様は聖剣とうたわれた剣だからな!)
一人と一本しかいない空間に高笑いが木霊する。
この場に他の人間がいれば、きっと剣を相手に話をしている危ない人に見えるんじゃないだろうか?とそう思うクオンではあったが、彼・・・聖剣クレイジュとの出会いはクオンにとってかけがえのないものとなるのだった。
「クレイジュ・・・これから、力を貸してくれるかい?」
(おうよ!相棒の事は気に入ったからな!)
「ありがとう」
クオンがお礼を言うと、クレイジュは(いーって事よ)と笑い返した。
クオンは屍龍がいた場所に近づくと魔石を回収する、ランクSSの魔石だ、あのぬいぐるみ女神にあげればかなりの魔力量が上がるはずである。仕方ないから持って帰ってあげよう。
(ところで相棒、仲間がいるんだろ?)
「ああ、このまま4階層に戻ろうと思う」
(おお、だったら俺様の能力を使いな!)
「ああ、そうさせてもらうよ」
クレイジュの能力、クオンはクレイジュから直接、クレイジュの能力を装備したときに自動的に理解している。その中の一つ、装備したときにも感じた身体能力の向上を使えば、いつもより早く走ることができるだろう。
だが、問題は4階層に戻るまでにある罠なのだが・・・これはもし引っ掛かったらすべて叩き切ればいいだろう・・・クレイジュを装備した僕なら難なくできると思う。
「それじゃ、行くよクレイジュ」
(おうよ!)
その言葉と同時にクオンは走り出した、屍龍が護っていた扉を抜けて4階層へと向かった。
4階層へと続く道には様々なトラップがあった。
槍や矢が飛んでくる典型的な罠や、硫酸が降ってきたり、魔物を大量に召喚する罠もあった。
だが、そのすべてをクオンはクレイジュを振り、斬り飛ばした。
驚くことに硫酸ですらクレイジュを一振りすれば消し飛んだのだから振った本人のクオンもびっくりである。
「クレイジュ・・・硫酸を斬ったりしてしまったけど、君は大丈夫?」
(カカカ!聖剣である俺様が硫酸なんかで傷ついたりするかよ!モーマンタイだぜ!)
「そ、そう・・・」
4階層へと向かう道の間で改めてクレイジュがとんでもない剣だという事を理解してしまう。
これなら、魔族との戦いもかなり楽になるだろう・・・。
カモメの足を引っ張ってしまうなんてことも無いはずだ・・・。
(安心しろよ相棒!俺を装備した相棒は魔族になんて負けやしねぇよ!)
「ああ・・・絶対に負けない」
(おう、その意気だ!)
クオンは再び、高速で4階層へと向かった、そして、5階層から走り出してからものの五分ほどで4階層へと辿り着く、常人であれば走って進めば1時間かかる・・・罠を警戒して進むのであれば3時間はかかるであろうその道を全ての罠や魔物を斬り伏せながら超人的なスピードで踏破してしまったのだ。
「皆、無事かい!」
クオンは4階層に着くと、その眼に仲間の姿を確認する。
「クオン殿!?」
「クオンさん無事だったんですね!」
コハクとソフィーナがこちらを向き声を掛けてきた。
二人は、傷つきながらもどこか達成感のある顔をしていた。
「酷い傷だ・・・二人とも大丈夫ですか?」
「ああ・・・私は問題ない、鎧や服はあちこち破れてはいるが傷の方はもうほとんど治っている」
「俺はまだ・・・ボロボロですけど、命に係わるほどの怪我は無さそうです」
よかったと、安堵するクオン。
(おいおい、鎧が砕けるほどのダメージを受けて傷が殆ど治ってるって、回復魔法が使えるならそっちのエルフの坊ちゃんにも掛けてやればいいだろうに?)
「いや、私は回復魔法を使っているわけではないぞ・・・って誰だ?」
(回復魔法無しで治ってるって・・・化け物じゃねぇのかねーちゃん?)
「誰が化け物だ!・・・というかどこにいる!!!」
辺りをキョロキョロしながら剣を構えるソフィーナさん、確かにあの鎧の壊れ方ですでに怪我が治ってるって言うのは異常だと思うけどね。
「リーナとヒスイは大丈夫なのかい?」
そんなソフィーナさんを放っておいて、クオンはコハクたちの後ろで倒れているリーナとヒスイの心配をした。コハクの様子から恐らく大丈夫だろうとは思っているが念の為である。
「はい、持っていたポーションで傷は治したので大丈夫だと思います・・・目を覚ますまでは心配ですが」
コハクは持っていたポーションを自分には使わず、リーナとヒスイに使ったようだった。
彼の傷もかなりの物だったのでクオンは持っていたポーションをコハクへと渡す。
「いいんですか?」
「当然」
(相棒は怪我らしい怪我を負ってないからな)
「また聞こえた!?」
クレイジュの声にソフィーナは再び辺りを見回す。
「今の声は?」
「ああ・・・5階層で見つけた聖武具・・・聖剣クレイジュの声だよ」
「「え!?」」
クオンが説明をすると、二人は目を丸くして驚いた。
「聖武具って・・・それじゃ、クオンさん5階層のボスを一人で?」
「いや、このクレイジュのお陰で勝てたんだ・・・僕一人だったら危なかった」
(もっとも、相棒の攻撃が効かなかっただけで相棒の方があの屍龍なんかより強かったけどな)
「屍龍・・・相手は龍だったのか・・・」
「さすがクオンさんです・・・それに聖武具って喋るんですね?」
「いや、クレイジュが特殊なんだと思う」
(おう、俺様はスペシャルな武器だからな!)
そう言うと、再びクレイジュの笑い声が部屋に木霊したのだった。
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