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1章

1章 最終話 闇の魔女の苦難

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「レディ!いたら返事して!!」


私は兵士を無視してレディを探す。
すると・・・


「あらぁん、その声はカモメちゃんねぇん」
「レディ!」


レディを見つけた、見張りの兵士の人には悪いけどクオンが当身を一発入れて気絶させてくれた。
っていうか・・・やっぱりクオン強いよね・・・お城の兵士を一発って・・・。


「レディ、逃げるよ!」
「あらぁん、でも逃げちゃっていいのん?エリンシアちゃんに迷惑掛からないん?」
「多分大丈夫な筈だよ!」


あの大臣だってあそこまで言われたらグラシアールに責任を取らせようとはしないと思う・・・多分。
もし、しそうだったらきっとラインハルトさんが何とかしてくれるだろう。


「分かったわぁん・・・出口はどっちの方かしらん?」
「えっと、確かこっちが城の入り口だったからこっちの方?」


私は斜め上を指さす。
逃げるには先ず地下から出ないといけないよね、となるとまず階段を・・・。
さっきみたいに風の魔法で穴をあけると床の時なら人に当たる心配はなかったが天井だと人まで傷つけちゃう可能性がある。
まあ、落ちてきた床が当たる可能性はあるかもしれないけど・・・ね。
とはいえ、魔法が当たると怪我では済まない可能性が高い、そう考えるとその方法は使えないし・・・あけた穴から戻ると兵士に囲まれそうだしなぁ。
私がそう考えているとレディちゃんが口を開いた。


「カモメちゃん、空飛べたわよねぇん」
「うん、飛べるけど穴から戻ると兵士に・・・」
「了解ぃん!ならついてきてぇん!」


レディはそう言うと、先ほど私が指を指したほうにジャンプした。
そして、天井に体当たりをしぶち抜いた・・・いや、レディからしてみればただ空中を走っているってだけなのかもしれない・・・いや空中を走るってのもおかしな話だが。
私がぽかんと口を開けていると・・・。


『でたらめね・・・』
「と、とにかく後を追いかけよう」


闇の女神をもってしても出鱈目と言わしめるレディ・・・とんでもないね。
私はクオンを抱えて、風の魔法で空を飛んだ。
クオンに抱き着かれてちょっと顔を赤くしたのは内緒だ。


天井をぶち破り、地上へとでる私達。
地上に出た時にいた兵士の人はまるで悪魔でも見たかのようにレディを見て泡を吹いて気絶した。
そして、近くにいた兵士の人はレディのキッスを受けて同じく泡を吹いて気絶した・・・顔が良かったのが災難を呼んだのだ・・・どんまい。


レディはそのまま私達をに槍を構えていた兵士たちを、ジャンプ一つで飛び越えた。
私はそのまま魔法で空中を飛んでいく。


「レディ、街の外で落ち合おう!」
「わかったわぁん!」


そう言うとレディはすごい勢いで走り出す。
今まで私たちに合わせてゆっくりと走っていたのか・・・。

私は下にいる兵士たちの弓や魔法が届かなくなるくらい高度を上げる。
そして、そのまま街に外に逃げるのだった。




私達は、街道からそれた少し丘になっている場所にいた。
レディは粉塵をあげながら移動していたのでとってもわかりやすかった・・・兵士たちにも気づかれてるんじゃと思うくらいとってもわかりやすかった。
その為、一度合流した後、街道から外れて今の場所までゆっくりと移動したのだ。

それにしても・・・。


「はあ・・・これで完全にお尋ね者かぁ・・・」
「あらぁん、もしかして私を助けたせいかしらぁん?・・・だとしたらごめんなさぁい・・・」
「あ、ううん、レディのせいじゃないよ!それとは別の件で濡れ衣着せられちゃって・・・」
「そうなのぉん?」


それにしても、これからどうしよう・・・行く当てもないし・・・。


「ところでぇん、カモメちゃんたちはこれからどうするのぉん?」
「どうしようかなぁ・・・とにかく兵士から逃げないとだし・・・クオンどうしたらいいかな?」
「そうだね・・・とにかくグランルーン王国にはもういられないかな・・・他の国に行くしかないと思う」


そっか・・・そうだよね・・・うう・・・いつかは他の国も見て回りたいと思ってたけど・・・まさかこんな形で行くことになるとは・・・とほほ。
とはいえ、この国にいたら捕まっちゃうだろうしなぁ・・・。


「レディはどうする?私たちと一緒に来る?」
「駄目よぉん、私が一緒だと目立ち過ぎちゃうでしょん?」


う・・・確かに、レディは嫌でも目立つ・・・正直フードとかをかぶせたくらいじゃ誤魔化せないくらい目立つもんねぇ・・・。


「でも、それじゃレディはどうするの?」
「実はカモメちゃんたちにあった後でやりたいことを見つけたのよぉん」
「やりたいこと?」


ま、まさか、またイケメン探しとか言わないよね・・・よね?


「安心してぇん、変な事じゃないわよぉん」
「あ、そ、そう?」
「私と同じような異常種の魔物を探してみようと思うのぉん、きっと私と同じように悩みを抱えてると思うしぃん人間と友達になりたいと思ってると思うわぁん♪」


なるほど、そういう魔物と一緒になって人間と友好を築いていこうってことだね・・・。


「おお、それじゃあ、見つけたら私にも紹介してね♪」
「ありがとぉん♪カモメちゃんはやっぱりやさしいわぁん」
「それはレディもだよ」


ホント、あの大臣より全然っ優しいと思う。
あの大臣めぇ・・・絶対、闇の魔女って言ったこと撤回させてやるんだから!


「それじゃ・・・ここでお別れだね・・・」
「そうねぇん・・・カモメちゃん」
「ん、なぁに?」
「私はあなたのお友達よぉん・・・なにがあっても、どんな時も・・・それを忘れないでねぇん」
「あ・・・・うん、ありがとう」


目頭がちょっと熱くなった。
レディのやさしさがとっても暖かいよ・・・。


「それじゃ、また会いましょん♪」
「うん、またね!」
「そっちのイケメン君もぉん♪」
「はい」


そう言うとレディは去っていった。
かなりのスピードで・・・。


さて・・・本当・・・どうしようかなぁ・・・。


「カモメ」


私がどこに行こうか悩んでいるとクオンが真剣な顔でこちらを見てくる。


「ん?」
「あの時、僕まで置いていこうとしただろ?」


あの時・・・ラインハルトさんに濡れ衣が行かないようにした時かな・・・。
確かに、私はあの時クオンにも濡れ衣が行かないよう私一人で汚名を被るつもりだった。
だって、闇の魔女なんて言われてるのは私だけだし・・・クオンだって私に騙されたことにすれば何とかなったかもしれない。


「だって・・・クオンまで濡れ衣で追われることになっちゃうと思ったんだもん・・・そうなっちゃったし・・・」
「馬鹿」
「馬鹿ってひどいよ!」
「馬鹿だよ君は!だってそうだろう?僕は君の家族じゃなかったのかい?一緒のパーティは家族のようなものだって君とヴィクトールさんが言ったんじゃないか!」


う・・・そうだけど・・・でも、だからこそ・・・。


「僕は君の家族だ!君が辛い目にあうなら僕も一緒だ!嬉しい時も悲しい時も僕は君と一緒にいる・・・」
「あう・・・嬉しいけど・・・今後どうなるか・・・もしかしたら死んじゃうかも・・・」
「僕だって冒険者だ・・・覚悟くらいはある・・・それに、そんな状況で君を一人になんて出来ない・・・。」


クオンは目に涙をいっぱいに溜めながら言ってくれた・・・嬉しいよう。
いいのかな・・・クオンに甘えてしまっても・・・きっとここでクオンに甘えるとクオンはもう引き返せなくなる。
私と一緒にグランルーンから追われる立場になってしまうだろう・・・きっともう冒険者の資格も剥奪されるはずだ・・・だって、犯罪者だもん。


「ホントに・・・いいの?」
「一緒にいる・・・君は何もしてないんだ・・・君から離れる必要がどこにあるのさ・・・きっといつか、無実を証明する・・・そしてまた、冒険しよう。君のお父さんとお母さんの分も」
「う・・・うわああああああああん」


私はもう我慢できなかった。


「わたし・・・闇の魔女なんかじゃない・・・」
「うん、知ってる」
「わたし・・・王様に呪いなんてかけてない・・・」
「当たり前だよ」
「わたし・・・お父さん・・・ころして・・・ないよぉお・・・」
「君はヴィクトールさんの大事な宝だよ」
「わああああああああああああああ!!!」


涙が止まらなかった・・・ここに来てお父さんはもういないんだってことも実感し始めた・・・この最悪の状況でいつも大きな背中で私の前を歩いてくれたお父さんはもういない。
私を導いてくれていた大きな背中がもう、見ることはできないんだ・・・。
私は、悲しくて・・・悔しくて・・・どうしようもないくらい泣き喚いた・・・。
クオンはそんな私にずっと優しい言葉をかけてくれていた・・・。





もう、一生分泣いたんじゃないだろうか、そう思えるくらい私は泣いた。
ほんと、これでもかってくらい泣いてしまった。


「カモメ、落ち着いた?」
「うん・・・ありがとう」


えへへ、と笑いながら私はクオンにお礼を言った。
って、あれ?何か忘れているような・・・あ!


「あれ、そういえばディータ、ずっと喋ってないけどどうしたの?」
『い、いや・・・その・・・なんて言っていいのか分からなくて・・・』


私が声を掛けるとオロオロとした声でディータが答えた。
あはは、ディータ泣いてる私になんて声かけていいか分からなかったみたい。
『余計傷つけないか心配で』とか『優しい言葉思いつかなくて』とか『抱きしめたくなったけど体が無くて』とかそんなことを言っていた・・・最後、ちょっとおかしい気もするけど気のせいかな?
まあ、全力で泣いたおかげで少しすっきりしたよ・・・うじうじ考えたってしようがないしね、とにかくどっか別の国に行こう!


「クオン、ここから近い国だとどこがある?」
「そうだね、帝国かボードかな?」


帝国は亜人差別の激しい国で私はあまり好きではない。
ボードって確か小さな国で自然の多く人口はそんなにいない国だったかな?
それなら、隠れるにはちょうどいいかな?


「帝国はあんまり好きじゃないんだ・・・とりあえず、ボードに逃げようか?」
「そうだね、ボードなら自然も多いし隠れる場所もあるかもしれない」
『そうね、それにカモメは闇の魔法の訓練もしないとね』


そうだね、今よりもっと強くなるためにも闇の魔法練習しないと!
ディータの言う魔王がくるかもしれないし、そうでなくてもこれからどんなことが起こるかわからないんだ・・・強くなって損はないよね。


「うん、頑張るよ!」
『ああ~カモメはやっぱりかわいいわぁ』
「ほぇ、ど、どうしたのいきなり・・・」


ディータの雰囲気が変わる。
なんというか、いつも毅然とした態度をとる女性が犬とか猫を見て癒されているようなそんな感じの雰囲気になった。


『あ、あら・・・ごめんなさい。気にしないで』
「どうしたの?」


クオンが不思議な顔で聞いてきた。
そうだった・・・ディータの声は私にしか聞こえないんだった・・・。


「あ、ディータがいきなり私の事かわいいとかいうから驚いちゃって」
『はっ、根暗坊主にはわからないわよ!』
「もう、根暗坊主とか言っちゃ駄目だって!」


そう私がディータに注意すると・・・。


「ね、根暗・・・はあ・・・どうやら闇の女神は変態女神らしいね、カモメに変態がうつらないと良いけど・・・」
『あああん!?』


私の中でどすのきいた声が聞こえる。
って、だから私を通してケンカしないでえええええ!!!

その後しばらくはディータとクオンの言い合いは続いていた・・・あう。
この先が思いやられるよ・・・。



こうして、私はグランルーンの大臣に濡れ衣を着せられ、国を追われることになったのだ。
一体誰が何のために王様を殺して、私に罪を擦り付けたのか・・・。
それともすべては偶然で偶々そういう結果になっただけなのかな・・・さすがにそれはないよね・・・。
正直、この国の未来を考えると色々と不安である。
それに、エリンシアともお別れが言えなかった・・・一緒のパーティになろうって約束したのに・・・ごめんね。
でも、もうグランルーンに戻ることは出来ない・・・もし、濡れ衣を晴らすことが出来たら・・・また、この私の故郷に帰ってこれるのかな・・・。
帰ってこれたらいいな・・・。


私のこれからはどうなるのだろうか・・・まあ、平穏な日常とはいかないんだろうな・・・。
それに何より・・・冒険者として活動ができないのが辛い!
私の夢は立派な冒険者になってダンジョンなどに潜ってお宝を手に入れたりする・・・そんな冒険がしたいのに!
そうだ、冒険をする為にも濡れ衣は絶対に晴らさないと!そう思うと元気が出てきた気がするよ!
よ~っし!ぜぇ~~ったい、また冒険者になってやるうううう!!!!



                             1章     おわり
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