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1章

10話

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 リリィ殿と共にアンリープベリーの街に戻ってきた主殿と拙者。
 仮登録証があったことで今回は問題なく街の中へと入ることが出来たでござる。
 早速、ギルドへ戻ってくるとセレナ殿が慌ててこちらに走ってきた。

「アウラさん!よかった無事だったんですね!」
「ええ、もちろんですわ!」


 セレナ殿の声を聴いて周りにいた冒険者たちがこちらに嫌悪の視線を向けてくる。


「本当にレッドオーガの討伐に向かわれたんじゃないかと心配だったんですよ」
「あら、それなら……」
「おんやぁ?依頼を受けたのに討伐に向かわないとは冒険者としてあるまじき行為ですねぇ?」


 サブマスターの男がいやらしい笑みを浮かべてこちらにやってくる。


「やはり半獣ごときに冒険者など無理なのでは?」
「グラコスさん!あれはなったばかりの冒険者に渡す依頼ではありません!」


 サブマスターの名前はグラコスというらしい。
 やはり、あれは嫌がらせの依頼でござったか、予想通りでござるな。
 

「たかが、平職員が私に口答えをするんじゃないですよ」
「しかし!」
「あのー……」


 セレナ殿がグラコスに食って掛かる。だが、その言葉を遮ったのはリリィ殿であった。
 リリィ殿はおずおずと手を上げると申し訳なさそうに言葉を続ける。


「アウラさんレッドオーガ倒しましたよ?」
「はあ?誰ですかあなたは!適当なことを言うんじゃありませんよ!!」
「えっと、ランク3冒険者のリリィさんですよね?本当にレッドオーガをアウラさんが?」
「はい!この目で見ましたし間違いありません!すっごいカッコよかったんですよ!」


 自分のギルドに所属している冒険者を記憶していないサブマスターとランクまで正確に覚えているセレナ殿。
 どちらの方が優秀なのかは言うまでもないでござるな。
 そして、まさかリリィ殿がフォローしてくれるとは思わなかったでござる。


「アウラさん、レッドオーガの角を見せたらいいと思います!」
「あ、そうでしたわ。これが討伐証明なのでしたわね」


 アウラ殿がレッドオーガの角を取り出すと、周りの冒険者たちに動揺が走る。
 冒険者たちはその角を一目見ればレッドオーガの物だと解ったのだろう。
 まあ、若干一名解ってないのがいるでござるが。


「はん!そんな偽物で騙されませんよ!」
「うるせぇな、何を騒いでんだ?」


 ギルド内部につながる扉から巨体の男が現れる。
 このギルドのマスターである。


「ギルドマスター!聞いてくださいよ、この半獣がレッドオーガを討伐したなんて言うホラ話を!」
「あん?……ほお、こりゃ本物のレッドオーガの角じゃねぇか。嬢ちゃんがやったのか?」
「そうですわ!」
「へぇ、やるじゃねぇか。呪いを受けてるって聞いてたのにありゃ間違いか?」


 ギルドマスターの男がセレナ殿を見る。
 どうやら、呪いのことを報告していたらしい。


「いえ、お兄様に呪いを掛けられたのは本当ですわ」
「なんてことをあっけらかんと……だが、呪われた状態でレッドオーガを倒すなんて優秀じゃねぇか」


 ギルドマスターが主殿の背中を叩くと主殿が軽く吹き飛ぶ。


「あ、すまん」
「もう、マスター!気を付けてください!アウラ殿はステータスが低いんですから!」
「そうだったな、早く神官を呼んでやれ」
「もう呼んであります。それではアウラさん、依頼達成の手続きをしますのでカウンターの方に」
「解りましたわ」


 セレナ殿に促されて、カウンターへ足を進めると周りにいた冒険者たちが道を開ける。
 冒険者たちの目は未だに嫌悪の目もあるが中に驚きや畏怖の目もあった。
 目論見は成功でござるな。これで主を侮る者や主に牙をむくものを減らせるでござる。


「それでは、こちらが討伐報酬の10万Gになります」
「10万Gですの!?」


 うおお、所持金2000Gから一気に増えたでござるな。
 これなら、今日の寝床とご飯には困らないでござる。


「それと、明日には神官の方が来られますので午前中に一度ギルドにお立ち寄りください」
「解りましたわ」


 これで呪いが解ければ万々歳でござるな。
 それにしても、今日もハードな一日でござった。


(主殿今日はゆっくりと休むでござるよ)
「はいですわ!」


 懐も潤い、レッドオーガ討伐の達成感に酔い。
 最高の気分でギルドを後にした拙者たちは、この街で一番高い宿屋へと足を向けた。
 そして、ゆっくりと休むことが……


「半獣なんて泊められるわけないだろ!二度と来るな!」
「ひっ、半獣!!」
「いやあああ、こないでええええ!!!」


 どこの宿からも追い出され、結局、昨日と同じ安宿に泊まることになったのだ。
 ゆっくり休ませてあげて欲しいでござるううううううう!!!!
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