異世界食道楽アドベンチャー

海鼠腸

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幼少期~青年期・国外外遊編

第52話 いい加減お米食べたいなー……

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 次の日の朝、ボク達は再び商人ギルドの前までやってきた。
 
「すいません、ギルド長のシュティーナ氏はいますか? ちょっとお話があるのですが……」
 中に入り、受付の人にギルド長に会えないかと聞いてみた。
 
「あっ、今大丈夫か訊いてきますので、暫くお待ちください」
 受付さんはそう言い残し、奥の部屋に入りギルド長に訊きに言った様だ。
 
 暫く待つと、奥の部屋から受付さんが出てきた。
「大丈夫だそうです。では奥の部屋へどうぞ」
 奥の部屋へ入るように促されて、ボク達は部屋に入る。
 
「うむ、カサード様達か。して、今日は何用で参った?」
 書類作業の最中だったのか、顔を上げ、ボク達の顔を確認し、そう言った。
 
「えぇ、今日はちょっと儲け話として、話したい事があって来ました」
「ほぅ? 話したい事とは何ぞや?」
「はい、塩は何処から仕入れているのかなー? と思いまして」
「ん?岩塩の事か? 岩塩の仕入れなら、チャギバ国から船で輸入しているが、どうかしたのか? 私は忙しいんだ、つまらない話なら、つまみ出すからな」
 シュティーナが、少しイラついた声色で返答する。
「そうですか。わざわざ輸入せずとも、海の水で塩は作れますよ? 上げ浜式製塩法と言う手法なのですが、聞きますか?」
「何だと?! それはどんな方法なのだ?! 是非聞かせてくれないか!?」
 シュティーナはガタッ! と椅子から立ち上がり、前のめりになった。
 
 ボクは商人ギルド長であるシュティーナに、前世知識の中から、上げ浜式の製塩方法を、黒板にチョークで図式を書いて、丁寧に塩の作り方の説明する。
「ほぅ……ほぅ……。なるほど! 目の前の海が宝の山に見えてきたぞ」
 話を聞いていたシュティーナが、嬉しそうな声色になっている。
 
「でもまぁ、岩塩は岩塩で色々と使い道があるので、そのまま仕入れを続けた方がいいと思います。それと、シュティーナギルド長に、仕入れて貰いたいも物があるんだが、頼まれてくれないか?」
 ボクはおもむろに、商売の話を振って見る。
 
「なんだ? 良い儲け話を聞かせてくれた礼だ。何でも申すと良いぞ」
 上機嫌のシュティーナが答える。
 
「コーヒー豆という物と米……ライスという物を仕入れて欲しいのだが……えっと、こんな形の物なんだが……」
 ボクは再び、黒板にコーヒー豆と米(種籾)の絵を描いて説明する。
 
「ほう、それ位の頼みならお安い御用だ。して、仕入れたら、何処に連絡すれば良いのだ?」
 ギルド長は、顎を両手で挟んだ体制で、聞いて来る。
 
「う~ん、近日中に、エタンダール国に戻るつもりなので、エタンダール国の商人ギルド長宛でお願いします。出来れば一年以内で」
「うむ、解った! 希望の品を仕入れたら、即時にエタンダール国の商人ギルドに、仕入れた物を送ろう」
「ありがとうございます」
 ボクはシュティーナに礼を言い、ギルド長室を出て、商人ギルドを後にする。
 
「カサード様、こーひーまめ、とか、こめ、とはどんな食べ物なのでしょうか?」
 シャロミーが困惑して聞いてきた。
 
「う~ん、今説明するよりも、届いた時の方が、ボクも詳しく説明できるから、その時まで待っててくれないか? 『百聞は一見にしかず』とも言うしな」
 ボクがそう言うと、シャロミーはどうも腑に落ちなかったらしく、キョトンとした顔をしている。
 
「カサード様、ひゃくぶんはいっけんにしかず、とは何ですか?」
 今度はリリアーナが、その言葉に食いついてきた。
 
「リリアーナ、『百聞は一見にしかず』という言葉の意味は、百回聞いても解らない事が一度見れば解る、と言う意味だ」
 ボクはリリアーナに、その諺の意味を説明してあげた。
 
「う~ん? 解ったような……解らないような……」
 どうやら、リリアーナを困らせてしまった様だ。
 ボクはタハハと苦笑するしかなかった。
 
 ボク達は、おしゃべりしながら、次の目的地のマルシェに向かう。
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