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青年期・カサード多忙編
70話 シュティーナ商人ギルド長と会食したが……
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カサードは街で美味しそうな店を探している最中に、サルベール国の商人ギルド長シュテーナさんと偶然? 遭遇し、声をかける。
シュティーナさんもこちらに気づいていた様で、スススッとカサードのそばに寄ってきて耳元で囁く。
「カサード殿下、何か新しい事業を始める様ですね? 今度は木工製品……ですかね?」
「おやぁ?! な……何のことでしょう?」
「とぼけても無駄です。商人ギルドの情報網を甘く見て貰っては困りますよ」
うわぁ……インターネットも携帯電話も普及していない、この世界でこの情報収集力……異世界の商人ギルド、恐るべし。
「シュ……シュティーナさん。その話は別の所でしましょう」
カサードは冷や汗をかきながら、自分がたまに食べに来ているビストロ的な店まで、シュティーナさんを案内する。
「シュテーナさん、ここはボクがたまに食事に来ている美味しいお店なんです。おすすめはこの『ハンバーグランチセット』ですよ」
『ハンバーグランチ』とは、熱々のプレートにハンバーグが乗っていて、付け添えの小皿にサラダとパンが出てくる、誰もが大満足のセットメニューだ。
カサードはそれを2つ注文し、しばらく待つとハンバーグランチセットが、ジュウジュウと音を立てながら運ばれてくる。
「ほほぅ……この料理は熱いままに出てくるのだな。勿論、これはそなたが考案したものであろうな」
「!? ははは……まさかー……そそそそんなことはないですよぉ……」
「ふふふ、動揺しておるぞ?カサード殿下」
ギクリと精神的に驚くカサード。
この人は本当にどこまで言い当てるんだろうか、とハラハラしながら出された料理に口を付ける。
「うん、ジューシーで食べごたえがあって美味しい……」
「うむ、確かに……しかし、こんな焼きたての熱々で食べられるとは……ん! 答えはこの熱されたプレートじゃな?」
シュテーナが鉄製のプレートに手をかざしながら、カサードを問い詰める。
「はい、種明かしするとそうで……あ」
カサードが口を滑らせて途中で気づくが時すでに遅し、シュティーナがニヤリとほくそ笑む。
しまった! 誘導尋問に引っかかった?!
「カサード殿下、貴殿のその嘘の付けない性格。嫌いではないぞ」
何か微妙に慰められてる? と思いつつ、ハンバーグを食べながら話を続ける。
「まぁ、確かにドライアドの森のそばで、木工製品を作る為の村を造る事は本当です。そして森の主との交渉も成功し、許可を習得済みです」
「ほぅ、あの森の主によく会えたな。そいつは滅多に会えないという噂だったが……ほぅ、このはんばーぐとやらは、肉を細かくし加工して、丸く固めて焼いた物なのか。普通の料理人では思いつかない発想だな。実に素晴らしく美味だ」
えっと……どっちに反応すればいいかな? と、戸惑いつつも。
「いやぁ、偶然その森の守り人の長と顔も見知りだったので、案内していただきました。」
ドライアドの森の件に絞って答えることにした。
「カサード殿下、ワタシは『はんばーぐ』とやらを褒めているのに冷たい反応だな?』
えっ? 褒めてくれてたのか。気持ちがこそばゆい……。
「あっ ありがとうございます。色々と苦労しました」
褒められたら礼を言う、これ大事な事ね。
「シュティーナさん、レシピは後で紙に書いて渡します。本題はどの様な話なのですか?」
「うむ、単刀直入に言わせていただく。カサード殿下、例の森の近辺に造る製造拠点の話に、我々サルベーヌ国商人ギルドにも一枚かませて頂きたいと思っております」
あぁ、儲け話にまぜて欲しいと言う事だったのか。
「あっ はい、構いませんよ。丁度、距離的に其方の国の方に近いので、村の管理と製品流通の方を任せてみようかな?」
「おぉ! 有難い! このシュティーナ、ギルド長の名に賭けて頑張らせて頂きます!」
生産拠点の管理と製品流通を、サルベーヌ共和国の商人ギルドに任せるという提案を出す。
すると、シュテーナが急にガタっと立ち上ったので、カサードは驚きシュティーナの顔を見つめる。
どうやらもう決まったような雰囲気である。
「えっと……まだ提案の段階なので決まったわけじゃ……」
「カサード殿下! 馳走になった! これからワタシは早急に戻りギルド内で話を纏めるゆえ、村が出来次第連絡をよろしく頼む!」
シュティーナが、カサードの話もよく聞かずにハンバーグランチのお代だけを置いて、疾風の如く走って店から出ていった。
「おーい、ハンバーグのレシピと挽肉機の図面ー。それと、ハンバーグランチを全部食べてってー……ってもう聞こえないか……食べ残したのを食べて処理しなきゃ……それとレシピと図面を、執務室に戻った時に封をしてサルベール共和国商人ギルド宛に送るしかないなこりゃ……」
怒涛の行動力にカサードは、呆然とハンバーグランチを食べながら、独り言のように呟くしかなかった。
シュティーナさんもこちらに気づいていた様で、スススッとカサードのそばに寄ってきて耳元で囁く。
「カサード殿下、何か新しい事業を始める様ですね? 今度は木工製品……ですかね?」
「おやぁ?! な……何のことでしょう?」
「とぼけても無駄です。商人ギルドの情報網を甘く見て貰っては困りますよ」
うわぁ……インターネットも携帯電話も普及していない、この世界でこの情報収集力……異世界の商人ギルド、恐るべし。
「シュ……シュティーナさん。その話は別の所でしましょう」
カサードは冷や汗をかきながら、自分がたまに食べに来ているビストロ的な店まで、シュティーナさんを案内する。
「シュテーナさん、ここはボクがたまに食事に来ている美味しいお店なんです。おすすめはこの『ハンバーグランチセット』ですよ」
『ハンバーグランチ』とは、熱々のプレートにハンバーグが乗っていて、付け添えの小皿にサラダとパンが出てくる、誰もが大満足のセットメニューだ。
カサードはそれを2つ注文し、しばらく待つとハンバーグランチセットが、ジュウジュウと音を立てながら運ばれてくる。
「ほほぅ……この料理は熱いままに出てくるのだな。勿論、これはそなたが考案したものであろうな」
「!? ははは……まさかー……そそそそんなことはないですよぉ……」
「ふふふ、動揺しておるぞ?カサード殿下」
ギクリと精神的に驚くカサード。
この人は本当にどこまで言い当てるんだろうか、とハラハラしながら出された料理に口を付ける。
「うん、ジューシーで食べごたえがあって美味しい……」
「うむ、確かに……しかし、こんな焼きたての熱々で食べられるとは……ん! 答えはこの熱されたプレートじゃな?」
シュテーナが鉄製のプレートに手をかざしながら、カサードを問い詰める。
「はい、種明かしするとそうで……あ」
カサードが口を滑らせて途中で気づくが時すでに遅し、シュティーナがニヤリとほくそ笑む。
しまった! 誘導尋問に引っかかった?!
「カサード殿下、貴殿のその嘘の付けない性格。嫌いではないぞ」
何か微妙に慰められてる? と思いつつ、ハンバーグを食べながら話を続ける。
「まぁ、確かにドライアドの森のそばで、木工製品を作る為の村を造る事は本当です。そして森の主との交渉も成功し、許可を習得済みです」
「ほぅ、あの森の主によく会えたな。そいつは滅多に会えないという噂だったが……ほぅ、このはんばーぐとやらは、肉を細かくし加工して、丸く固めて焼いた物なのか。普通の料理人では思いつかない発想だな。実に素晴らしく美味だ」
えっと……どっちに反応すればいいかな? と、戸惑いつつも。
「いやぁ、偶然その森の守り人の長と顔も見知りだったので、案内していただきました。」
ドライアドの森の件に絞って答えることにした。
「カサード殿下、ワタシは『はんばーぐ』とやらを褒めているのに冷たい反応だな?』
えっ? 褒めてくれてたのか。気持ちがこそばゆい……。
「あっ ありがとうございます。色々と苦労しました」
褒められたら礼を言う、これ大事な事ね。
「シュティーナさん、レシピは後で紙に書いて渡します。本題はどの様な話なのですか?」
「うむ、単刀直入に言わせていただく。カサード殿下、例の森の近辺に造る製造拠点の話に、我々サルベーヌ国商人ギルドにも一枚かませて頂きたいと思っております」
あぁ、儲け話にまぜて欲しいと言う事だったのか。
「あっ はい、構いませんよ。丁度、距離的に其方の国の方に近いので、村の管理と製品流通の方を任せてみようかな?」
「おぉ! 有難い! このシュティーナ、ギルド長の名に賭けて頑張らせて頂きます!」
生産拠点の管理と製品流通を、サルベーヌ共和国の商人ギルドに任せるという提案を出す。
すると、シュテーナが急にガタっと立ち上ったので、カサードは驚きシュティーナの顔を見つめる。
どうやらもう決まったような雰囲気である。
「えっと……まだ提案の段階なので決まったわけじゃ……」
「カサード殿下! 馳走になった! これからワタシは早急に戻りギルド内で話を纏めるゆえ、村が出来次第連絡をよろしく頼む!」
シュティーナが、カサードの話もよく聞かずにハンバーグランチのお代だけを置いて、疾風の如く走って店から出ていった。
「おーい、ハンバーグのレシピと挽肉機の図面ー。それと、ハンバーグランチを全部食べてってー……ってもう聞こえないか……食べ残したのを食べて処理しなきゃ……それとレシピと図面を、執務室に戻った時に封をしてサルベール共和国商人ギルド宛に送るしかないなこりゃ……」
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