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Untold Storys
五里霧中
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俺は川辺聡。28歳。
高校2年の時に付き合った彼女とは大学1年の秋に別れた。
同じクラスだった彼女に、好きだと言われて付き合い始めた。
それなりに楽しかったし、不満なんてなかった。
俺もあの時、確かに好きだった。
明るくて飾らない感じが、魅力的に見えた。
ずっと続くと思っていた関係も、大学に入った頃には距離が出来ていた。
そんな時、隣に座ったのが植本新だった。
意気投合した俺たちは、何人かの仲間とつるんでいた。
野外活動サークルに入って、新のことも巻き込んだ。
なんてことない日々だけど、毎日が楽しかった。
その頃、違う大学に入ってお互いに距離は感じていたけど、それを埋めるように、彼女はほぼ毎日電話やメールをくれた。
時間を見つけて会ったりもした。でも、会えば会うほど、俺の中のモヤモヤは増すばかりだった。
その理由に気付いたのは秋頃だ。
新に彼女が出来た。
バイトで知り合った子らしい。
俺はバイト先まで様子を見に行ったこともあった。
こんなのストーカーじゃねぇか…
馬鹿だな。見たら余計辛くなるだけなのに。
その気持ちがすぐに嫉妬だと気付いた俺は、同時に新への気持ちにも気付いた。
そして彼女と別れた。
自分の気持ちを伝える気はなかった。
本当の気持ちを隠して、友達として生きていくのがどんなに辛いか、その時の俺は知らなかったんだ。
1年半くらいして、新は彼女と別れた。
「何で別れた?」
「何でだろう?彼女と居ても、最近はただ時間をやり過ごすだけになってた気がして。向こうはしたい話をして、行きたいとこに僕を連れて行く。僕はしたい話をして、彼女の行きたいところについて行く。してることは今も昔も変わらないんだけど、昔はそういうのが楽しかったんだ。でも最近は楽しいフリをしていることに気付いた。たぶん僕も彼女も、気持ちに変化が出てきちゃったんだと思う。きっと、お互いにとって良くはない方向にさ」
と新は言った。
社会人になってからは、たまにみんなで集まってキャンプ行ったり、釣りしたり、飲みに行ったり、楽しく過ごしていた。
新とは家が近かったから、よく一緒に飲んだ。
新は2人ほど、付き合った人がいたが、すぐに別れていた。忙しかったりして、すれ違っていったのが別れの原因らしい。
彼女が出来るたび紹介される。
わざわざ紹介なんてしなくていいよ。
辛いだけだからさ…って心の中で思う。
「わざわざ毎回紹介しなくても…」
って言うと、
「だって、もし僕が誰かと結婚する時は、スピーチは聡にお願いするって決めてるからさ!」
と言った。
喜ぶべきか悲しむべきか。
そうして周りはどんどん結婚して家族を作っていった。
仲の良かったメンツの中で、独身はとうとう俺と新だけになった。
みんなのSNSの写真が、おすすめグルメや、旅行で行った景色の写真から、妻や夫、子供のはしゃぐ写真へと変わっていく。
たぶん、次に新が俺に紹介してくる子は、新の物語の本当のヒロインになる子なんだと思った。
「新。街コン行こう!」
「は?どうしたの急に」
突然誰かを紹介されるくらいなら、俺が手伝ってやろうと思った。
寂しいから彼女探しに付き合えというと、
「こないだ紹介してもらったんじゃないの?会社の先輩に」
と言われた。
確かに、紹介してもらった。
先輩に会わせたい子がいると言われて仕方なく。
明るくて、若くて、オシャレで、悪い子じゃなかった。
でも心がついていかなかった。
今まで悩んで色々試した。
男が好きなのか?何人かの女性と付き合えるか試してみたりもした。
普通に抱けたし、何が良いとか悪いとかもなかった。
そして、あいつ以外の男を抱きたいと思うことは、今のところなかった。
ただわかったのは、新といる時の胸の高揚とか喜び、哀しみとか切なさ、独占欲や嫉妬、そういったものを他の誰かに感じることはなくて、これが理由なんだと思った。
アウトドアは昔から好きだった。
だから新をサークルに誘った。
親が共働きで、しかも長男という立場から、料理は昔からしていた。
キャンプに行った時に作った料理を、
「美味い!」
と言って全部食べてくれた誰かさんを、もっと喜ばせたくて料理教室に通うことにした。
新が同じ料理教室に通い始めた時は、嬉しすぎて小躍りした。
あいつの腰にエプロンを巻いて、2人でイチャイチャしながら夕飯を作る姿を妄想した。
妄想が暴走すると…まあその先はご想像にお任せする。
自分で言うのもなんだけど、元々器用なタイプなせいか、そこそこ料理の腕も上がった。
あいつが酒を持って、家に来ることも増えた。
それでも俺は気持ちを伝えることはなかった。
拒絶されるのがオチだと思った。
街コン当日。
お互いいい人見つけようと健闘を祈る。
俺は怪しまれないように、話しかけてくれた女の子と、世間話をして時間を過ごす。
チラチラ新の方を見ていると、新に話しかける1人の男性が立っている。
爽やかイケメンだな。
女の子に話かけもせず、何やってんだあいつは…
しかも何気に連絡先を交換している。
その時、相手の男の電話が鳴って、会場の外に出て言った。
話をしていた子にトイレに行くと言うと、連絡先を聞かれた。
取り急ぎ連絡先を伝える。
その時、新と目が合ったから、早く女の子の連絡先を聞き出せよ!って携帯を見せた。
会場の外に出ると、新に話しかけていた男が、電話している。
「もしもし。…そのデータ、昼間に送りましたよ。…はい。大丈夫です。あ…先輩。僕、運命の人見つけたかもしれません…」
運命の人って、もしかして…いや、まさかな。
トイレに行った後、気を取り直して会場に戻った。
新はまた別の男と話をしている。
おい!どうしてそうなる。
あいつはローストビーフを食べながら、楽しそうにその人と話している。
もうすぐ終了という頃。新はその男と嬉しそうに連絡先を交換していた。
「なぁ?どうだった?」
と帰りに飲み直そうと寄った、いつものBARで新に聞いた。あいつは
「まずまずかな」
と言う。
嘘つけ。男とばっか話してたくせに。
きっと相手の男は新に気があるんだと思う。
けどそんなこと、こいつは微塵も考えてないんだろうな。
「…あ、そういえば来週の土曜日空いてる?」
「なんで?」
「今日知り合った人が陶器やガラスの食器のセレクトショップをやってるらしいんだけど、隣の工房で陶芸体験もやってるんだって!一緒に行かない?」
「…うん。行ってみたい」
「じゃあ予約出来るか聞いてみる」
多分2人目の人だ。陶芸か。修学旅行以来だな。
「大丈夫だって!空いてるって!」
「おー。良かったな」
「じゃあ来週〇〇駅で9時半に集合でよろしく!」
「わかった…」
ニコニコしながら酒を飲んでる新を、俺はただ見つめるだけだった。
「嬉しそうだな」
新は純粋に陶芸がしたいのだろうか。
もしかしたらその人に会いたいのかもしれない。
そうじゃないことを、ただ祈るしかなかった。
陶芸体験の日。
お店から顔を出して、俺たちを手招きしている男の人が見えた。
「川辺聡です。今日はお世話になります」
とぺこっとお辞儀した。
「田中蒼です。よろしくね」
とその人は言った。
店内にはいろんな手作りの陶器やガラスの食器が並んでいた。
「聡!見て。全部すげーかわいいな?」
「そうだな」
はしゃいでる新が可愛い。
これがデート呼べるものなら良かったのに。
体験は先生が前で見本を見せてくれて、僕たちはそれを真似しながら作品を作っていく。
「新は何作んの?」
と聞くと
「お猪口と徳利」
とニヤニヤしながら新は答えた。
「酒飲みだな。俺より弱いくせに。しかも何ニヤけてんだよ」
「これが完成したら、お前がこの間お土産でくれた日本酒、一緒に飲もうよ!」
「おう…」
幸せか?これが幸せってやつか?
「聡は?何作るの?」
「じゃあおつまみを盛るのに最適なお皿を作ってみるか!」
「お、いいじゃん!」
と話していると、順番にみんなの様子を見ていた先生が、俺らのとこにやってきた。
「新。今日はありがとう。実は本当に来てくれると思ってなかったから、連絡くれた時は嬉しかったよ。社交辞令じゃなくて良かった」
やっぱ狙ってんな?
「え?こちらこそありがとうございます!僕、陶芸やってみたかったんです!中学の修学旅行で陶芸体験があったんですけど、僕その時、指を骨折してて出来なくて。それからいつかやりたいって思ってたんで、今日すげー楽しいです!」
新は純粋に陶芸がしたかったらしい。安心した。
「新…楽しんでもらえて何よりだよ。お、ちょっと触るよ」
と言って新の後ろから、徳利の形を綺麗に直したあと、俺のところに来た。
何、ナチュラルに触ってんだよ。
「先生。ここどうしたら良いですか?」
と聞くと、
「ちょっといい?」
と言って隣から形を整えながら、
「先生じゃなくて、蒼で良いよ、川辺くん。あと、あんま睨まないでよ。新にはなんもしないから」
と小声で言った。
俺は蒼さんの顔を見た。いや、睨んだ?
「大丈夫だよ」
と一言だけ言った。なんとなく信じられる気がした。
「川辺くんは、新と違ってすごく器用だね」
「ありがとうございます。まーでもあの不器用さが新のいいとこでもあるんで」
と言った俺たちに
「ちょっとー!聞こえてるぞー!」
と口を尖らせて新は言った。
帰りに陶芸教室のチラシを見た新が通うと言い出して、俺も思わず通うと言ってしまった。
蒼さんの大丈夫を信じなかったわけではなく、ただ新といる時間が欲しかった。
次の土曜日、待ち合わせ場所に現れたのは、街コンで新に声をかけた1人目の男だった。一緒に陶芸教室に行くらしい。
彼は高岡総司と名乗った。
「どうも」
とお互いに挨拶をした。
お店に着くと、蒼さんにも高岡さんを紹介していた。
蒼さんが高岡さんに教えている姿を見ていた、絵付けを教えてくれている先生が、
「あらー!あの2人絵になるわねー」
と言った。
そうだ!そうだ!新とは似合わないぞ!
「でも私はあなたたちみたいな、ほのぼの仲良しカップルも好きよー」
先生…!ありがとう。
そう言った彼女は、蒼さんの美大の先輩で町田優子さんというらしい。お店は彼女のお店で、センスを見込んで蒼さんを引っ張ってきたと言っていた。
帰り、新は高岡さんを陶芸教室に誘っていた。
「へー通おうかな。そしたらまた新くんにも会えるし」
「ほんと!?楽しくなりますねー」
なんて話している。楽しくねーよ。
「この後僕たち料理街コンなんで、ここで失礼しますね」
と新が言うと
「あ!実は…」
と自分も同じ街コンに参加するのだと言った。
会場に着くと、男女2人ずつが1チームになると料理教室の先生が説明をしてくれた。
チーム分けはくじ引きか…
先生の持ってたい袋に手を入れ、紙を引くとDと書いてある…
ふと新達の方を見た。
「総司くん!見て。一緒!」
「うん!一緒」
神様…頼むよ。
俺はパンの生地を捏ねながら、新の方ばかり見ていた。
仲良さそうに喋ってんな。
「…じゃないです。その時誘ってくれた友達はあっちのテーブルにいる背の高い方です」
新がこっちを見ながらなんか言っている。
俺は慌てて視線を逸らした。
しばらくすると、高岡さんは女性陣に囲まれている。
よし!ん?よし!じゃない。
あんたがモテてどうする。
頼むからあいつの恋人作りの邪魔だけはするなよ。
1人で食材を選ぶあいつの姿がある。
話しかけに行こうかと思ったその時、1人の青年に先を越された。
また男かよ…どうなってるんだ。
カレーパンの中身を作りながら、2人の様子を観察する。
しばらく話して解散したから、ほっとしたのにあいつごまたすぐ来た。
また楽しそうに話し出したから、俺は大きく溜息をついた。
その時、
「何これ!?めっちゃうまい!」
同じグループの斉藤とかいう男が、つまみ喰いをして叫んだ。
女の子達も混じって、キャッキャしている。
なんか視線を感じだから、そっちを見ると新がこちらをじーっと見ている。
いいなー。カレーパンって顔だ。
思わず笑ってしまった。
上手くできたらあげるつもりでいた。
あいつ大学の時、近所のパン屋のカレーパンを、少なくとも週2以上で買いに行ってた。
食べやすい&分けやすいように、一口サイズにした。
揚げてみんなで味見をした。1人4つは持って帰れる。
先生は食べて帰っても、持って帰ってもいいと言っていた。
味見で今1つ食べたから、残りは新にあげよう。
帰り、また飯に行こうと誘った。
「ほら。お前の」
「何?聡達が作ったやつ?」
「そ。新、カレーパン好きだろ?」
「うまっ!何これ?」
「カレーパン」
「いや、それは知ってる。なんでこんな美味くなるの?」
「料理教室通ってる成果が出てるだろ?」
新への愛情が詰まってるからだぞ!なんてのは言えない。
「いやマジで。すげーよ」
その時、あの青年が声をかけてきた。
「新さん!良かったらこの後ご飯どうですか?もっと話したいし!」
「ごめん。この後、友達とご飯行こうと思ってて…」
「じゃあ、僕もご一緒させてもらってもいいですか?」
「友達がいいって言えば僕はいいよ」
と言って俺を見た。
「俺はいいよ」
「じゃあ僕もいい?」
と言って高岡さんまで参加すると言い出した。新の肩に手を回すんじゃないよ。
俺は持っていたウェットティッシュを一枚出して新に渡した。
パンの油が付いた指を拭きながら、
「じゃあ4人で行こうか!」
と新が言った。
教室の近くの居酒屋に行くことにした。
ここは日本酒の種類が多くて料理も美味い。
大将も面白いからしょっちゅう来ている。
「かんぱーい!」
「お疲れ様ー」
と4人で乾杯する。
「じゃあ僕から紹介するね。こちら藤原翼くん。で、翼くんの隣が高岡総司くん。僕の隣にいるのが川辺聡。で、一応僕は植本新です。翼くん以外はみんな同い年だね」
と新が全員を軽く紹介した。なんで男ばっかなんだよ。新は男ばっか寄せ付けるな…
「でも、こん中で1番若く見えるの、新くんですよね!」
と青年が言った。新は童顔だからな。
「…可愛いだろ?なんで彼女出来ないのか不思議なんだよなー」
と新の頭をなでながら言った。
普段はこんなことしないけど、君たちの出る幕はないということを、知らせたかった。頼むから新の邪魔はしないでくれ。
自己紹介の時に言っていた。
藤原くんは美容師らしい。
「じゃあ、僕の名刺渡しときますね。来週の土曜とかどうですか?」
もう早速行く流れになっている。
「朝イチとかなら行けるよ!」
「じゃあ9時半は?」
「うん。いいよ」
「じゃあ予約入れときます。お店の場所、名刺に書いてるんで、もし迷ったりしたら、迎えに行くんで連絡くださいね!」
「うん。ありがとう!急にごめんね?」
「いや!僕はめっちゃ嬉しいです!」
予約取るんかーい。
「俺ちょっとトイレ…」
と立ち上がると、
「じゃあ僕も…」
と美容師がついて来た。
新の死角に入った時、美容師が言った。
「川辺さんて…新さんのこと好きですよね?」
「どうして?」
「わかりますよ!ずっと見てるじゃないですかー。知り合ってどれくらいですか?」
「10年くらい。関係あんの?」
「ないですよ!10年も片思いしてるんですか?かわいそう…」
「なんで?10年も一緒だったんだ。君が知らない新を、俺はたくさん知ってるよ」
珍しくイラッとして、反論してしまった。
「じゃあ、新さんの言われて嬉しい言葉は?恋人にして欲しいことは?体のどこが1番感じるかは、知ってます?」
「知らないよ。君は知ってるの?会ったばかりの君が知ってるわけないよな?」
「今日会ったとこだろうか、10年の友達だろうが関係ないですよ。結局あなたは、引き下がることも出来ず、気持ちを打ち明けることもできないで、新さんをそばに置くことで、満足した気になってるんですよ」
反論は出来なかった。認めたくはないけどその通りだと思った。
とりあえず俺たちは席に戻った。
2人が仲良さそうに話している。
もうそのあと何を話したか、覚えていない。
俺、なんか気分が良くないな。
酔っ払ってとかじゃなく、俺の中の何かどす黒いものが、だんだん増えていって、飲み込まれそうになる感じ。
こういうの、前にもあった。知ってるよ。嫉妬って言うんだろ。
帰り道、無言のまま並んで歩く。しばらくして
「俺、飲み足りないから、もう少し飲んで帰るわ」
と駅に向かう方の信号を渡ろうとしたら、新が俺の腕を掴んで言った。
「僕も行く」
着いたのは、いつもの行きつけのBAR。2人の家から割と近いから、よく顔を出す。
「ちょっとトイレ行ってくる」
新がトイレに行ってる間に、俺はウイスキーと新のシャンディガフを注文した。
「良かった」
「何が?」
「さっきのお店にいる時、ちょっと変な感じしたから、具合が悪いのか、僕か他の何かに怒ってるのかなって不安になったんだ。今の聡がいつも通りで良かったって思っただけ」
「うん。いつも通りだよ。あんまり馴染みのないメンツだったから、少し居心地悪かったけどな。あんまり飲めなかったし」
嫉妬でおかしくなったとは言えない。
「今日どうだった?街コン」
「まー悪くはなかったと思うよ。みんな感じのいい人ばかりだったし。1人を除いて」
あの翼とかいう奴は好きになれそうにない。
「えー誰ー?」
「教えない」
「いじわる」
「もう会わないと思うし、俺に対してだけだろうから、気にすんなよ」
「そうなの?」
「うん。たぶんライバル認定されちゃったからだと思う」
それを聞いて、新は同じグループにいた、斉藤のことだと思っただろうな。
「大丈夫!僕だけは何があっても聡の友達だから!そんな奴、気にすんな!」
「うん。サンキュ」
俺は思い出していた。
「結局あなたは、引き下がることも出来ず、気持ちを打ち明けることもできないで、新さんをそばに置くことで、満足した気になってるんですよ」
というあの美容師の言葉を。
次の日、新に電話した。
「そういえば、昨日のメンバーの中で、恋人になれそうな子いた?」
「んーどうかな。恋人ってよりかは、友達の感じ?飲み友って感じかな」
「じゃあまた来週の土曜日、街コン行こう!ついて来てくれよ」
新に彼女が見つかるまで諦めないと決めた。
高校2年の時に付き合った彼女とは大学1年の秋に別れた。
同じクラスだった彼女に、好きだと言われて付き合い始めた。
それなりに楽しかったし、不満なんてなかった。
俺もあの時、確かに好きだった。
明るくて飾らない感じが、魅力的に見えた。
ずっと続くと思っていた関係も、大学に入った頃には距離が出来ていた。
そんな時、隣に座ったのが植本新だった。
意気投合した俺たちは、何人かの仲間とつるんでいた。
野外活動サークルに入って、新のことも巻き込んだ。
なんてことない日々だけど、毎日が楽しかった。
その頃、違う大学に入ってお互いに距離は感じていたけど、それを埋めるように、彼女はほぼ毎日電話やメールをくれた。
時間を見つけて会ったりもした。でも、会えば会うほど、俺の中のモヤモヤは増すばかりだった。
その理由に気付いたのは秋頃だ。
新に彼女が出来た。
バイトで知り合った子らしい。
俺はバイト先まで様子を見に行ったこともあった。
こんなのストーカーじゃねぇか…
馬鹿だな。見たら余計辛くなるだけなのに。
その気持ちがすぐに嫉妬だと気付いた俺は、同時に新への気持ちにも気付いた。
そして彼女と別れた。
自分の気持ちを伝える気はなかった。
本当の気持ちを隠して、友達として生きていくのがどんなに辛いか、その時の俺は知らなかったんだ。
1年半くらいして、新は彼女と別れた。
「何で別れた?」
「何でだろう?彼女と居ても、最近はただ時間をやり過ごすだけになってた気がして。向こうはしたい話をして、行きたいとこに僕を連れて行く。僕はしたい話をして、彼女の行きたいところについて行く。してることは今も昔も変わらないんだけど、昔はそういうのが楽しかったんだ。でも最近は楽しいフリをしていることに気付いた。たぶん僕も彼女も、気持ちに変化が出てきちゃったんだと思う。きっと、お互いにとって良くはない方向にさ」
と新は言った。
社会人になってからは、たまにみんなで集まってキャンプ行ったり、釣りしたり、飲みに行ったり、楽しく過ごしていた。
新とは家が近かったから、よく一緒に飲んだ。
新は2人ほど、付き合った人がいたが、すぐに別れていた。忙しかったりして、すれ違っていったのが別れの原因らしい。
彼女が出来るたび紹介される。
わざわざ紹介なんてしなくていいよ。
辛いだけだからさ…って心の中で思う。
「わざわざ毎回紹介しなくても…」
って言うと、
「だって、もし僕が誰かと結婚する時は、スピーチは聡にお願いするって決めてるからさ!」
と言った。
喜ぶべきか悲しむべきか。
そうして周りはどんどん結婚して家族を作っていった。
仲の良かったメンツの中で、独身はとうとう俺と新だけになった。
みんなのSNSの写真が、おすすめグルメや、旅行で行った景色の写真から、妻や夫、子供のはしゃぐ写真へと変わっていく。
たぶん、次に新が俺に紹介してくる子は、新の物語の本当のヒロインになる子なんだと思った。
「新。街コン行こう!」
「は?どうしたの急に」
突然誰かを紹介されるくらいなら、俺が手伝ってやろうと思った。
寂しいから彼女探しに付き合えというと、
「こないだ紹介してもらったんじゃないの?会社の先輩に」
と言われた。
確かに、紹介してもらった。
先輩に会わせたい子がいると言われて仕方なく。
明るくて、若くて、オシャレで、悪い子じゃなかった。
でも心がついていかなかった。
今まで悩んで色々試した。
男が好きなのか?何人かの女性と付き合えるか試してみたりもした。
普通に抱けたし、何が良いとか悪いとかもなかった。
そして、あいつ以外の男を抱きたいと思うことは、今のところなかった。
ただわかったのは、新といる時の胸の高揚とか喜び、哀しみとか切なさ、独占欲や嫉妬、そういったものを他の誰かに感じることはなくて、これが理由なんだと思った。
アウトドアは昔から好きだった。
だから新をサークルに誘った。
親が共働きで、しかも長男という立場から、料理は昔からしていた。
キャンプに行った時に作った料理を、
「美味い!」
と言って全部食べてくれた誰かさんを、もっと喜ばせたくて料理教室に通うことにした。
新が同じ料理教室に通い始めた時は、嬉しすぎて小躍りした。
あいつの腰にエプロンを巻いて、2人でイチャイチャしながら夕飯を作る姿を妄想した。
妄想が暴走すると…まあその先はご想像にお任せする。
自分で言うのもなんだけど、元々器用なタイプなせいか、そこそこ料理の腕も上がった。
あいつが酒を持って、家に来ることも増えた。
それでも俺は気持ちを伝えることはなかった。
拒絶されるのがオチだと思った。
街コン当日。
お互いいい人見つけようと健闘を祈る。
俺は怪しまれないように、話しかけてくれた女の子と、世間話をして時間を過ごす。
チラチラ新の方を見ていると、新に話しかける1人の男性が立っている。
爽やかイケメンだな。
女の子に話かけもせず、何やってんだあいつは…
しかも何気に連絡先を交換している。
その時、相手の男の電話が鳴って、会場の外に出て言った。
話をしていた子にトイレに行くと言うと、連絡先を聞かれた。
取り急ぎ連絡先を伝える。
その時、新と目が合ったから、早く女の子の連絡先を聞き出せよ!って携帯を見せた。
会場の外に出ると、新に話しかけていた男が、電話している。
「もしもし。…そのデータ、昼間に送りましたよ。…はい。大丈夫です。あ…先輩。僕、運命の人見つけたかもしれません…」
運命の人って、もしかして…いや、まさかな。
トイレに行った後、気を取り直して会場に戻った。
新はまた別の男と話をしている。
おい!どうしてそうなる。
あいつはローストビーフを食べながら、楽しそうにその人と話している。
もうすぐ終了という頃。新はその男と嬉しそうに連絡先を交換していた。
「なぁ?どうだった?」
と帰りに飲み直そうと寄った、いつものBARで新に聞いた。あいつは
「まずまずかな」
と言う。
嘘つけ。男とばっか話してたくせに。
きっと相手の男は新に気があるんだと思う。
けどそんなこと、こいつは微塵も考えてないんだろうな。
「…あ、そういえば来週の土曜日空いてる?」
「なんで?」
「今日知り合った人が陶器やガラスの食器のセレクトショップをやってるらしいんだけど、隣の工房で陶芸体験もやってるんだって!一緒に行かない?」
「…うん。行ってみたい」
「じゃあ予約出来るか聞いてみる」
多分2人目の人だ。陶芸か。修学旅行以来だな。
「大丈夫だって!空いてるって!」
「おー。良かったな」
「じゃあ来週〇〇駅で9時半に集合でよろしく!」
「わかった…」
ニコニコしながら酒を飲んでる新を、俺はただ見つめるだけだった。
「嬉しそうだな」
新は純粋に陶芸がしたいのだろうか。
もしかしたらその人に会いたいのかもしれない。
そうじゃないことを、ただ祈るしかなかった。
陶芸体験の日。
お店から顔を出して、俺たちを手招きしている男の人が見えた。
「川辺聡です。今日はお世話になります」
とぺこっとお辞儀した。
「田中蒼です。よろしくね」
とその人は言った。
店内にはいろんな手作りの陶器やガラスの食器が並んでいた。
「聡!見て。全部すげーかわいいな?」
「そうだな」
はしゃいでる新が可愛い。
これがデート呼べるものなら良かったのに。
体験は先生が前で見本を見せてくれて、僕たちはそれを真似しながら作品を作っていく。
「新は何作んの?」
と聞くと
「お猪口と徳利」
とニヤニヤしながら新は答えた。
「酒飲みだな。俺より弱いくせに。しかも何ニヤけてんだよ」
「これが完成したら、お前がこの間お土産でくれた日本酒、一緒に飲もうよ!」
「おう…」
幸せか?これが幸せってやつか?
「聡は?何作るの?」
「じゃあおつまみを盛るのに最適なお皿を作ってみるか!」
「お、いいじゃん!」
と話していると、順番にみんなの様子を見ていた先生が、俺らのとこにやってきた。
「新。今日はありがとう。実は本当に来てくれると思ってなかったから、連絡くれた時は嬉しかったよ。社交辞令じゃなくて良かった」
やっぱ狙ってんな?
「え?こちらこそありがとうございます!僕、陶芸やってみたかったんです!中学の修学旅行で陶芸体験があったんですけど、僕その時、指を骨折してて出来なくて。それからいつかやりたいって思ってたんで、今日すげー楽しいです!」
新は純粋に陶芸がしたかったらしい。安心した。
「新…楽しんでもらえて何よりだよ。お、ちょっと触るよ」
と言って新の後ろから、徳利の形を綺麗に直したあと、俺のところに来た。
何、ナチュラルに触ってんだよ。
「先生。ここどうしたら良いですか?」
と聞くと、
「ちょっといい?」
と言って隣から形を整えながら、
「先生じゃなくて、蒼で良いよ、川辺くん。あと、あんま睨まないでよ。新にはなんもしないから」
と小声で言った。
俺は蒼さんの顔を見た。いや、睨んだ?
「大丈夫だよ」
と一言だけ言った。なんとなく信じられる気がした。
「川辺くんは、新と違ってすごく器用だね」
「ありがとうございます。まーでもあの不器用さが新のいいとこでもあるんで」
と言った俺たちに
「ちょっとー!聞こえてるぞー!」
と口を尖らせて新は言った。
帰りに陶芸教室のチラシを見た新が通うと言い出して、俺も思わず通うと言ってしまった。
蒼さんの大丈夫を信じなかったわけではなく、ただ新といる時間が欲しかった。
次の土曜日、待ち合わせ場所に現れたのは、街コンで新に声をかけた1人目の男だった。一緒に陶芸教室に行くらしい。
彼は高岡総司と名乗った。
「どうも」
とお互いに挨拶をした。
お店に着くと、蒼さんにも高岡さんを紹介していた。
蒼さんが高岡さんに教えている姿を見ていた、絵付けを教えてくれている先生が、
「あらー!あの2人絵になるわねー」
と言った。
そうだ!そうだ!新とは似合わないぞ!
「でも私はあなたたちみたいな、ほのぼの仲良しカップルも好きよー」
先生…!ありがとう。
そう言った彼女は、蒼さんの美大の先輩で町田優子さんというらしい。お店は彼女のお店で、センスを見込んで蒼さんを引っ張ってきたと言っていた。
帰り、新は高岡さんを陶芸教室に誘っていた。
「へー通おうかな。そしたらまた新くんにも会えるし」
「ほんと!?楽しくなりますねー」
なんて話している。楽しくねーよ。
「この後僕たち料理街コンなんで、ここで失礼しますね」
と新が言うと
「あ!実は…」
と自分も同じ街コンに参加するのだと言った。
会場に着くと、男女2人ずつが1チームになると料理教室の先生が説明をしてくれた。
チーム分けはくじ引きか…
先生の持ってたい袋に手を入れ、紙を引くとDと書いてある…
ふと新達の方を見た。
「総司くん!見て。一緒!」
「うん!一緒」
神様…頼むよ。
俺はパンの生地を捏ねながら、新の方ばかり見ていた。
仲良さそうに喋ってんな。
「…じゃないです。その時誘ってくれた友達はあっちのテーブルにいる背の高い方です」
新がこっちを見ながらなんか言っている。
俺は慌てて視線を逸らした。
しばらくすると、高岡さんは女性陣に囲まれている。
よし!ん?よし!じゃない。
あんたがモテてどうする。
頼むからあいつの恋人作りの邪魔だけはするなよ。
1人で食材を選ぶあいつの姿がある。
話しかけに行こうかと思ったその時、1人の青年に先を越された。
また男かよ…どうなってるんだ。
カレーパンの中身を作りながら、2人の様子を観察する。
しばらく話して解散したから、ほっとしたのにあいつごまたすぐ来た。
また楽しそうに話し出したから、俺は大きく溜息をついた。
その時、
「何これ!?めっちゃうまい!」
同じグループの斉藤とかいう男が、つまみ喰いをして叫んだ。
女の子達も混じって、キャッキャしている。
なんか視線を感じだから、そっちを見ると新がこちらをじーっと見ている。
いいなー。カレーパンって顔だ。
思わず笑ってしまった。
上手くできたらあげるつもりでいた。
あいつ大学の時、近所のパン屋のカレーパンを、少なくとも週2以上で買いに行ってた。
食べやすい&分けやすいように、一口サイズにした。
揚げてみんなで味見をした。1人4つは持って帰れる。
先生は食べて帰っても、持って帰ってもいいと言っていた。
味見で今1つ食べたから、残りは新にあげよう。
帰り、また飯に行こうと誘った。
「ほら。お前の」
「何?聡達が作ったやつ?」
「そ。新、カレーパン好きだろ?」
「うまっ!何これ?」
「カレーパン」
「いや、それは知ってる。なんでこんな美味くなるの?」
「料理教室通ってる成果が出てるだろ?」
新への愛情が詰まってるからだぞ!なんてのは言えない。
「いやマジで。すげーよ」
その時、あの青年が声をかけてきた。
「新さん!良かったらこの後ご飯どうですか?もっと話したいし!」
「ごめん。この後、友達とご飯行こうと思ってて…」
「じゃあ、僕もご一緒させてもらってもいいですか?」
「友達がいいって言えば僕はいいよ」
と言って俺を見た。
「俺はいいよ」
「じゃあ僕もいい?」
と言って高岡さんまで参加すると言い出した。新の肩に手を回すんじゃないよ。
俺は持っていたウェットティッシュを一枚出して新に渡した。
パンの油が付いた指を拭きながら、
「じゃあ4人で行こうか!」
と新が言った。
教室の近くの居酒屋に行くことにした。
ここは日本酒の種類が多くて料理も美味い。
大将も面白いからしょっちゅう来ている。
「かんぱーい!」
「お疲れ様ー」
と4人で乾杯する。
「じゃあ僕から紹介するね。こちら藤原翼くん。で、翼くんの隣が高岡総司くん。僕の隣にいるのが川辺聡。で、一応僕は植本新です。翼くん以外はみんな同い年だね」
と新が全員を軽く紹介した。なんで男ばっかなんだよ。新は男ばっか寄せ付けるな…
「でも、こん中で1番若く見えるの、新くんですよね!」
と青年が言った。新は童顔だからな。
「…可愛いだろ?なんで彼女出来ないのか不思議なんだよなー」
と新の頭をなでながら言った。
普段はこんなことしないけど、君たちの出る幕はないということを、知らせたかった。頼むから新の邪魔はしないでくれ。
自己紹介の時に言っていた。
藤原くんは美容師らしい。
「じゃあ、僕の名刺渡しときますね。来週の土曜とかどうですか?」
もう早速行く流れになっている。
「朝イチとかなら行けるよ!」
「じゃあ9時半は?」
「うん。いいよ」
「じゃあ予約入れときます。お店の場所、名刺に書いてるんで、もし迷ったりしたら、迎えに行くんで連絡くださいね!」
「うん。ありがとう!急にごめんね?」
「いや!僕はめっちゃ嬉しいです!」
予約取るんかーい。
「俺ちょっとトイレ…」
と立ち上がると、
「じゃあ僕も…」
と美容師がついて来た。
新の死角に入った時、美容師が言った。
「川辺さんて…新さんのこと好きですよね?」
「どうして?」
「わかりますよ!ずっと見てるじゃないですかー。知り合ってどれくらいですか?」
「10年くらい。関係あんの?」
「ないですよ!10年も片思いしてるんですか?かわいそう…」
「なんで?10年も一緒だったんだ。君が知らない新を、俺はたくさん知ってるよ」
珍しくイラッとして、反論してしまった。
「じゃあ、新さんの言われて嬉しい言葉は?恋人にして欲しいことは?体のどこが1番感じるかは、知ってます?」
「知らないよ。君は知ってるの?会ったばかりの君が知ってるわけないよな?」
「今日会ったとこだろうか、10年の友達だろうが関係ないですよ。結局あなたは、引き下がることも出来ず、気持ちを打ち明けることもできないで、新さんをそばに置くことで、満足した気になってるんですよ」
反論は出来なかった。認めたくはないけどその通りだと思った。
とりあえず俺たちは席に戻った。
2人が仲良さそうに話している。
もうそのあと何を話したか、覚えていない。
俺、なんか気分が良くないな。
酔っ払ってとかじゃなく、俺の中の何かどす黒いものが、だんだん増えていって、飲み込まれそうになる感じ。
こういうの、前にもあった。知ってるよ。嫉妬って言うんだろ。
帰り道、無言のまま並んで歩く。しばらくして
「俺、飲み足りないから、もう少し飲んで帰るわ」
と駅に向かう方の信号を渡ろうとしたら、新が俺の腕を掴んで言った。
「僕も行く」
着いたのは、いつもの行きつけのBAR。2人の家から割と近いから、よく顔を出す。
「ちょっとトイレ行ってくる」
新がトイレに行ってる間に、俺はウイスキーと新のシャンディガフを注文した。
「良かった」
「何が?」
「さっきのお店にいる時、ちょっと変な感じしたから、具合が悪いのか、僕か他の何かに怒ってるのかなって不安になったんだ。今の聡がいつも通りで良かったって思っただけ」
「うん。いつも通りだよ。あんまり馴染みのないメンツだったから、少し居心地悪かったけどな。あんまり飲めなかったし」
嫉妬でおかしくなったとは言えない。
「今日どうだった?街コン」
「まー悪くはなかったと思うよ。みんな感じのいい人ばかりだったし。1人を除いて」
あの翼とかいう奴は好きになれそうにない。
「えー誰ー?」
「教えない」
「いじわる」
「もう会わないと思うし、俺に対してだけだろうから、気にすんなよ」
「そうなの?」
「うん。たぶんライバル認定されちゃったからだと思う」
それを聞いて、新は同じグループにいた、斉藤のことだと思っただろうな。
「大丈夫!僕だけは何があっても聡の友達だから!そんな奴、気にすんな!」
「うん。サンキュ」
俺は思い出していた。
「結局あなたは、引き下がることも出来ず、気持ちを打ち明けることもできないで、新さんをそばに置くことで、満足した気になってるんですよ」
というあの美容師の言葉を。
次の日、新に電話した。
「そういえば、昨日のメンバーの中で、恋人になれそうな子いた?」
「んーどうかな。恋人ってよりかは、友達の感じ?飲み友って感じかな」
「じゃあまた来週の土曜日、街コン行こう!ついて来てくれよ」
新に彼女が見つかるまで諦めないと決めた。
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