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始まり
サプラーイズ
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「お前までいなくなったら、うちの営業所が困っちゃうよー」
と社長は言った。
「少しの間だけでいいんです。自分の気持ちを伝えるだけなんで、どうかお願いします!」
「うーん。困ったなぁ……なんてな!」
「へ?」
「いいねぇ。青春だねぇ。離ればなれになって相手の大切さに気付いて、海外まで追いかけるなんてドラマみたいじゃん」
「し、社長?」
「星矢からね、ちょっと聞いてたよ。タイ支店の開店が早まったって言った時に」
「星矢が?」
「ちょうど李音は接客中だったんじゃないかな? 李音か星矢のどっちかに、リオンと一緒に行ってもらうつもりで話そうとしたら、"とりあえず俺が行く予定にしておいてください"って、星矢がさ」
「予定?」
「うん。"今あいつ大事な時期なんです。本当は他に大切な人が出来たのに、まだそのことに気付いてない。あいつ、他人の気持ちには敏感なのに、自分の気持ちには鈍感だから"って笑ってたよー」
「星矢が……」
「"もし李音が自分の気持ちに気付いてタイに行くって言ったら、俺の代わりにあいつが行けるように、俺がちゃんと準備しとくんで"って言ってた。持つべきものは友だねー。まああっちも人手足らないから、落ち着くまで半年から1年は2人とも行ってもらうのもありかと思ってるけどね」
「良いんですか?」
「まぁこっちはベテランばっかだし、4月に新人も入ってくるし、大丈夫じゃない?」
と言いながら社長は笑っていた。
「ありがとうございます」
「だから後悔しないようにしろよ。向こうに行く準備とかはマネージャーに相談してな」
「承知しました。本当にありがとうございます!」
~~~~~~~~~~
2週間後。
俺たちはタイの空港にいた。
「リオン迎えにくるって?」
「いや、店のインテリアとかまだやらなきゃいけないことあるから、自分で来てって言われた」
「そっか……俺も行くって言ったらなんか言ってた?」
「まだ何も言ってない」
「はっ!?俺が行くこと言ってないの?」
「うん! サプラーイズ」
「えぇ……伝えとくって言ってたじゃん」
「サプラーイズ」
「サプラーイズじゃないよ。会えなかったらどうすんだよ?」
「会えるよ。今日は店の内装の件で業者待ってるって言ってたから。だから直接店に来てって」
「そっか」
「お兄さんのレストランから割と近いって言ってた」
「そうなんだ。お兄さん達も元気かな」
「お前、緊張してる?」
「何で?」
「ちょっといつもより早口」
と言って星矢は笑った。
居てくれて良かった。
じゃなかったら、逃げ出しそうなくらい緊張してる。
タクシーに荷物を載せて、俺たちは行き先を告げた。
と社長は言った。
「少しの間だけでいいんです。自分の気持ちを伝えるだけなんで、どうかお願いします!」
「うーん。困ったなぁ……なんてな!」
「へ?」
「いいねぇ。青春だねぇ。離ればなれになって相手の大切さに気付いて、海外まで追いかけるなんてドラマみたいじゃん」
「し、社長?」
「星矢からね、ちょっと聞いてたよ。タイ支店の開店が早まったって言った時に」
「星矢が?」
「ちょうど李音は接客中だったんじゃないかな? 李音か星矢のどっちかに、リオンと一緒に行ってもらうつもりで話そうとしたら、"とりあえず俺が行く予定にしておいてください"って、星矢がさ」
「予定?」
「うん。"今あいつ大事な時期なんです。本当は他に大切な人が出来たのに、まだそのことに気付いてない。あいつ、他人の気持ちには敏感なのに、自分の気持ちには鈍感だから"って笑ってたよー」
「星矢が……」
「"もし李音が自分の気持ちに気付いてタイに行くって言ったら、俺の代わりにあいつが行けるように、俺がちゃんと準備しとくんで"って言ってた。持つべきものは友だねー。まああっちも人手足らないから、落ち着くまで半年から1年は2人とも行ってもらうのもありかと思ってるけどね」
「良いんですか?」
「まぁこっちはベテランばっかだし、4月に新人も入ってくるし、大丈夫じゃない?」
と言いながら社長は笑っていた。
「ありがとうございます」
「だから後悔しないようにしろよ。向こうに行く準備とかはマネージャーに相談してな」
「承知しました。本当にありがとうございます!」
~~~~~~~~~~
2週間後。
俺たちはタイの空港にいた。
「リオン迎えにくるって?」
「いや、店のインテリアとかまだやらなきゃいけないことあるから、自分で来てって言われた」
「そっか……俺も行くって言ったらなんか言ってた?」
「まだ何も言ってない」
「はっ!?俺が行くこと言ってないの?」
「うん! サプラーイズ」
「えぇ……伝えとくって言ってたじゃん」
「サプラーイズ」
「サプラーイズじゃないよ。会えなかったらどうすんだよ?」
「会えるよ。今日は店の内装の件で業者待ってるって言ってたから。だから直接店に来てって」
「そっか」
「お兄さんのレストランから割と近いって言ってた」
「そうなんだ。お兄さん達も元気かな」
「お前、緊張してる?」
「何で?」
「ちょっといつもより早口」
と言って星矢は笑った。
居てくれて良かった。
じゃなかったら、逃げ出しそうなくらい緊張してる。
タクシーに荷物を載せて、俺たちは行き先を告げた。
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