Infinity pure

SHIZU

文字の大きさ
上 下
30 / 36
始まり

旅立ちの日

しおりを挟む
俺と星矢は空港にいた。

一足先にタイに帰るリオンを見送るためだ。

「とりあえず時間まだあるから飯でも食べるか」

「そうだね。リオン何が食べたい?」

「うどん!」

「よし、じゃあうどん屋探そう」

俺たちはうどん屋でご飯を食べた。

多分こうして3人で食事をするのは、これが最後になると思う。

やっぱり少し寂しかった。

「なぁ? 聞いてもいい?」

「何?」

「星矢とリオンは付き合うことにしたの?」

「えっ?」

2人とも驚いている。

「いや、やっぱいい。聞いちゃ悪いよな」

2人は顔を見合わせて、ふふっと笑い合う。

「付き合うことにしたって言ったら、李音は俺たちを祝福してくれる?」

星矢が俺の顔を覗き込んで言う。

「そりゃあ2人が幸せなら嬉しいよ」

「ふーん」


~~~~~~~~~~


フライトの時間が近付く。

俺はずっと心の中のもやもやを消そうと必死になっていた。

「というかなんで動画撮ってんの?」

俺はスマホを起動して、動画を撮っている星矢に聞いた。

「だって俺はともかく、お前はもうしばらくリオンに会えないんだぞ? 思い出して寂しくなった時に要るだろ? だから俺の時は李音が撮りながら俺を見送ってくれ」

「やだよー」

「まあまあ。俺のは冗談だけど……リオンになんか言いたいことないのか?」

「言いたいこと……少しの間だったけど、一緒に仕事ができて本当に楽しかった! おかげで少しタイ語もわかるようになったし、3人で恋バナしたり、料理したり、酒飲んだり……」

思い出しただけでちょっと泣きそう。

「離れてても連絡はできるし、時々遊びに来てくれてもいいし、俺もまた行くし。だから……」

「……うん。バイバイじゃないよ。また会える」

そう言ってリオンは俺を抱きしめた。

我慢していた涙が一気に溢れる。

俺を抱きしめながらリオンがタイ語でなんか言ってる。

「本当は友達としてじゃなくて、恋人としてお前を抱きしめたかった。あとどれだけこの気持ちを伝えたら、俺を見てくれたかな。たとえ叶わない想いでも、俺はずっとお前だけだから。この心は全部李音のものだから。心を返してくれなくていいから、せめて持っててくれ」

「ねぇ、なんて言ったの?」

話す言葉が難しいのと速いのとで、何も聞き取れなかった。

ただそう言った後、俺の手を開いて何かを乗せた。

「これ……」

俺と一緒に選びに行った指輪。

「向こうでは必要ないから」

「でも……」

「じゃあ! そろそろ行くわ」

「おう。2週間後、俺も行くから待ってて」

「うん。じゃあまた」

そう言い残しリオンはタイに帰ってしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

イケメンモデルと新人マネージャーが結ばれるまでの話

タタミ
BL
新坂真澄…27歳。トップモデル。端正な顔立ちと抜群のスタイルでブレイク中。瀬戸のことが好きだが、隠している。 瀬戸幸人…24歳。マネージャー。最近新坂の担当になった社会人2年目。新坂に仲良くしてもらって懐いているが、好意には気付いていない。 笹川尚也…27歳。チーフマネージャー。新坂とは学生時代からの友人関係。新坂のことは大抵なんでも分かる。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

処理中です...