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始まり
旅立ちの日
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俺と星矢は空港にいた。
一足先にタイに帰るリオンを見送るためだ。
「とりあえず時間まだあるから飯でも食べるか」
「そうだね。リオン何が食べたい?」
「うどん!」
「よし、じゃあうどん屋探そう」
俺たちはうどん屋でご飯を食べた。
多分こうして3人で食事をするのは、これが最後になると思う。
やっぱり少し寂しかった。
「なぁ? 聞いてもいい?」
「何?」
「星矢とリオンは付き合うことにしたの?」
「えっ?」
2人とも驚いている。
「いや、やっぱいい。聞いちゃ悪いよな」
2人は顔を見合わせて、ふふっと笑い合う。
「付き合うことにしたって言ったら、李音は俺たちを祝福してくれる?」
星矢が俺の顔を覗き込んで言う。
「そりゃあ2人が幸せなら嬉しいよ」
「ふーん」
~~~~~~~~~~
フライトの時間が近付く。
俺はずっと心の中のもやもやを消そうと必死になっていた。
「というかなんで動画撮ってんの?」
俺はスマホを起動して、動画を撮っている星矢に聞いた。
「だって俺はともかく、お前はもうしばらくリオンに会えないんだぞ? 思い出して寂しくなった時に要るだろ? だから俺の時は李音が撮りながら俺を見送ってくれ」
「やだよー」
「まあまあ。俺のは冗談だけど……リオンになんか言いたいことないのか?」
「言いたいこと……少しの間だったけど、一緒に仕事ができて本当に楽しかった! おかげで少しタイ語もわかるようになったし、3人で恋バナしたり、料理したり、酒飲んだり……」
思い出しただけでちょっと泣きそう。
「離れてても連絡はできるし、時々遊びに来てくれてもいいし、俺もまた行くし。だから……」
「……うん。バイバイじゃないよ。また会える」
そう言ってリオンは俺を抱きしめた。
我慢していた涙が一気に溢れる。
俺を抱きしめながらリオンがタイ語でなんか言ってる。
「本当は友達としてじゃなくて、恋人としてお前を抱きしめたかった。あとどれだけこの気持ちを伝えたら、俺を見てくれたかな。たとえ叶わない想いでも、俺はずっとお前だけだから。この心は全部李音のものだから。心を返してくれなくていいから、せめて持っててくれ」
「ねぇ、なんて言ったの?」
話す言葉が難しいのと速いのとで、何も聞き取れなかった。
ただそう言った後、俺の手を開いて何かを乗せた。
「これ……」
俺と一緒に選びに行った指輪。
「向こうでは必要ないから」
「でも……」
「じゃあ! そろそろ行くわ」
「おう。2週間後、俺も行くから待ってて」
「うん。じゃあまた」
そう言い残しリオンはタイに帰ってしまった。
一足先にタイに帰るリオンを見送るためだ。
「とりあえず時間まだあるから飯でも食べるか」
「そうだね。リオン何が食べたい?」
「うどん!」
「よし、じゃあうどん屋探そう」
俺たちはうどん屋でご飯を食べた。
多分こうして3人で食事をするのは、これが最後になると思う。
やっぱり少し寂しかった。
「なぁ? 聞いてもいい?」
「何?」
「星矢とリオンは付き合うことにしたの?」
「えっ?」
2人とも驚いている。
「いや、やっぱいい。聞いちゃ悪いよな」
2人は顔を見合わせて、ふふっと笑い合う。
「付き合うことにしたって言ったら、李音は俺たちを祝福してくれる?」
星矢が俺の顔を覗き込んで言う。
「そりゃあ2人が幸せなら嬉しいよ」
「ふーん」
~~~~~~~~~~
フライトの時間が近付く。
俺はずっと心の中のもやもやを消そうと必死になっていた。
「というかなんで動画撮ってんの?」
俺はスマホを起動して、動画を撮っている星矢に聞いた。
「だって俺はともかく、お前はもうしばらくリオンに会えないんだぞ? 思い出して寂しくなった時に要るだろ? だから俺の時は李音が撮りながら俺を見送ってくれ」
「やだよー」
「まあまあ。俺のは冗談だけど……リオンになんか言いたいことないのか?」
「言いたいこと……少しの間だったけど、一緒に仕事ができて本当に楽しかった! おかげで少しタイ語もわかるようになったし、3人で恋バナしたり、料理したり、酒飲んだり……」
思い出しただけでちょっと泣きそう。
「離れてても連絡はできるし、時々遊びに来てくれてもいいし、俺もまた行くし。だから……」
「……うん。バイバイじゃないよ。また会える」
そう言ってリオンは俺を抱きしめた。
我慢していた涙が一気に溢れる。
俺を抱きしめながらリオンがタイ語でなんか言ってる。
「本当は友達としてじゃなくて、恋人としてお前を抱きしめたかった。あとどれだけこの気持ちを伝えたら、俺を見てくれたかな。たとえ叶わない想いでも、俺はずっとお前だけだから。この心は全部李音のものだから。心を返してくれなくていいから、せめて持っててくれ」
「ねぇ、なんて言ったの?」
話す言葉が難しいのと速いのとで、何も聞き取れなかった。
ただそう言った後、俺の手を開いて何かを乗せた。
「これ……」
俺と一緒に選びに行った指輪。
「向こうでは必要ないから」
「でも……」
「じゃあ! そろそろ行くわ」
「おう。2週間後、俺も行くから待ってて」
「うん。じゃあまた」
そう言い残しリオンはタイに帰ってしまった。
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