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始まり
突然の異動
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「すみません。お待たせしました」
俺は部長の前に座って言った。
「固いな。もう仕事終わったんだから、もっと楽にしろよ」
「うん」
「話したいことって、この前の返事?」
「はい」
「聞かせて?」
「こんなに長く放っておくつもりはなかったんです。でも自分の気持ちを整理しようとしてたところだったから、どうしていいかわからなくなって……」
「そうだよな。ごめんな。俺がもっと早く決断していれば李音を困らせること無かったのにな」
「ううん。もう1度俺を選んでくれたら、もう2度と後悔させないって言ってくれて嬉しかった」
「それは本気で言った」
「うん。ありがとう。部長のことは今でも好きです。でも前と同じ気持ちとは違う気もする。こんな気持ちで部長とまた付き合っていいのかなって」
「……わかった。じゃあこうしないか? もう1度俺と恋をしよう」
「どういうことですか?」
「前と同じ……いや前よりもっと俺のことを好きになるように頑張るよ。だからもしそうなったら、今度は2人でお揃いの指輪を選びに行こう」
「……もしならなかったら?」
「その時は潔く諦めるさ」
「……わかりました」
その夜俺たちはハグをして家に帰った。
~~~~~~~~~~
「李音、話があるんだけど……」
数日後、会社の帰りに真剣な顔でリオンに言われた。
星矢も隣にいる。
「どうしたの?」
「部長とはどうなったか聞いてもいい?」
「あー、えーっと……うん。一応ヨリを戻すことになったのかな?」
「一応?」
「うん。もう1度俺と恋をしようって言われた。前より俺を好きになったら、その時は2人でお揃いの指輪を選びに行こうって」
「そっか……良かったな」
星矢が言った。
「で?リオンの話って何?」
「俺、1年間の研修予定だっただろ?」
「うん。3月までだよね?」
「そうなんだけど、父さんの知り合いが空きの不動産を社長に安く貸してくれるってことで、予定より早くタイの支店を動かすことになったんだ」
「え?」
「だから年明けからタイに帰るよ」
「今年いっぱいって……あと2ヶ月もないじゃん」
「うん。少し前に社長に言われた。李音も大変そうだったから落ち着いたら言おうと思って」
「向こうの従業員は? もう決まったの?」
「全員はまだなんだ。だから落ち着くまでこっちの営業所から人を貸してくれるって言われた」
「そ、そうなんだ。なんか急でびっくりした。誰が行くか決まってるの?」
「俺だよ」
その時、ずっと黙って隣で話を聞いていた星矢が口を開いた。
「なんで? なんで星矢?」
「俺が選んだんだ」
リオンが星矢を見ながら言った。
ど、どういうこと?
「それって……」
「俺なら独身で身軽だし、英語ならなんとなくわかるし話せるからいいんじゃないかなって、社長に言われて俺にしたんだと」
最近急に距離が近くなったと思ったら、そういうこと?
「独身なら俺だって……」
「でも李音は部長とのことがあったからさ」
とリオンが言った。
てか、俺だってってなんだよ。
俺なんでこんなに焦ってんだ?
予定より研修が終わるのが早くなったから?
それとも自分を選んでもらえなかったから?
もし2人がそういう関係になって、向こうで新しい生活を始めるなら、俺に止める権利はない。
だって俺は結局、部長を選んだ。
でもなんか……なんか苦しい。
俺は部長の前に座って言った。
「固いな。もう仕事終わったんだから、もっと楽にしろよ」
「うん」
「話したいことって、この前の返事?」
「はい」
「聞かせて?」
「こんなに長く放っておくつもりはなかったんです。でも自分の気持ちを整理しようとしてたところだったから、どうしていいかわからなくなって……」
「そうだよな。ごめんな。俺がもっと早く決断していれば李音を困らせること無かったのにな」
「ううん。もう1度俺を選んでくれたら、もう2度と後悔させないって言ってくれて嬉しかった」
「それは本気で言った」
「うん。ありがとう。部長のことは今でも好きです。でも前と同じ気持ちとは違う気もする。こんな気持ちで部長とまた付き合っていいのかなって」
「……わかった。じゃあこうしないか? もう1度俺と恋をしよう」
「どういうことですか?」
「前と同じ……いや前よりもっと俺のことを好きになるように頑張るよ。だからもしそうなったら、今度は2人でお揃いの指輪を選びに行こう」
「……もしならなかったら?」
「その時は潔く諦めるさ」
「……わかりました」
その夜俺たちはハグをして家に帰った。
~~~~~~~~~~
「李音、話があるんだけど……」
数日後、会社の帰りに真剣な顔でリオンに言われた。
星矢も隣にいる。
「どうしたの?」
「部長とはどうなったか聞いてもいい?」
「あー、えーっと……うん。一応ヨリを戻すことになったのかな?」
「一応?」
「うん。もう1度俺と恋をしようって言われた。前より俺を好きになったら、その時は2人でお揃いの指輪を選びに行こうって」
「そっか……良かったな」
星矢が言った。
「で?リオンの話って何?」
「俺、1年間の研修予定だっただろ?」
「うん。3月までだよね?」
「そうなんだけど、父さんの知り合いが空きの不動産を社長に安く貸してくれるってことで、予定より早くタイの支店を動かすことになったんだ」
「え?」
「だから年明けからタイに帰るよ」
「今年いっぱいって……あと2ヶ月もないじゃん」
「うん。少し前に社長に言われた。李音も大変そうだったから落ち着いたら言おうと思って」
「向こうの従業員は? もう決まったの?」
「全員はまだなんだ。だから落ち着くまでこっちの営業所から人を貸してくれるって言われた」
「そ、そうなんだ。なんか急でびっくりした。誰が行くか決まってるの?」
「俺だよ」
その時、ずっと黙って隣で話を聞いていた星矢が口を開いた。
「なんで? なんで星矢?」
「俺が選んだんだ」
リオンが星矢を見ながら言った。
ど、どういうこと?
「それって……」
「俺なら独身で身軽だし、英語ならなんとなくわかるし話せるからいいんじゃないかなって、社長に言われて俺にしたんだと」
最近急に距離が近くなったと思ったら、そういうこと?
「独身なら俺だって……」
「でも李音は部長とのことがあったからさ」
とリオンが言った。
てか、俺だってってなんだよ。
俺なんでこんなに焦ってんだ?
予定より研修が終わるのが早くなったから?
それとも自分を選んでもらえなかったから?
もし2人がそういう関係になって、向こうで新しい生活を始めるなら、俺に止める権利はない。
だって俺は結局、部長を選んだ。
でもなんか……なんか苦しい。
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