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始まり
迎えにいくよ
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次の日俺たちは荷物をまとめてコテージを出た。
帰りの飛行機までだいぶ時間があったから、リオンの家に寄ってみんなに挨拶をして帰ろう。
社長はまだこっちでやることがあるからと2、3日滞在を延ばした。
本当かなぁ? リオンのお父さんと、ただ酒を飲みたいだけじゃないか?
「社長、気を付けてくださいよ? 一回倒れてるんだから」
俺の言葉にリオンもうんうんと頷く。
「ありがとう! 大丈夫だよ。あの時は異常な暑さだったからなぁ? リオン」
「確かに」
「じゃあみんなのお土産は先に俺たち買って帰るんで、社長はご家族の分だけお願いします」
「うん。ありがとう」
俺たちはみんなに礼を言って家を出た。
「じゃあお土産買って帰るか?」
「おう」
俺たちは2人とも両手いっぱいの土産をもって空港へ向かった。
「俺、タイ初めてだったけど、すごい楽しかった!」
「そうか。また来ればいいよ」
「うん」
俺たちは夜の最終の便で日本に帰った。
着くのは夜中になる。
「俺が2人を迎えに行くよ」
タイに行く前に部長がそう言ってくれた。
俺たちを家まで送ってくれる予定になっていた。
日本に着いてスマホを確認する。
星矢からのすごい数の着信だった。
「ねぇ、リオン見て。星矢の着信。そんなにお土産待てなかったのかな?」
「本当だ」
2人で笑っていると、そこにまた星矢からの着信。
「もしもし? 星矢? お土産待てなかったの? すごい電話して……」
えっ? 今なんて言った?
電話の向こうの星矢の声が遠のく。
「李音?」
俺の様子を変に思ったリオンが、俺のスマホを取り上げて代わりに電話に出た。
「えっ? どこの病院? 意識は? そっか……今から2人で行く。お前は社長にも電話と、念のためメールを」
電話を切ったリオンはタクシーを止めた。
「運転手さん! 〇〇総合病院わかります?」
「わかるよ」
「じゃあ最短でそこまでお願いします! 李音、早く乗って!」
「あ、うん……」
俺は促されるままタクシーに乗った。
"お前たちを迎えに行くために空港に向かう途中、高速の玉突き事故に巻き込まれて部長が重体だ"
電話から聞こえた星矢の声はそう言っていた。
病院に着くと、手術を担当した先生が説明をしてくれた。
頭を少し打っていたこと。
すぐの検査では問題ないが、経過観察は必要ということ。
骨折が何箇所かあること。
薬で眠っていて今は意識がないが、命に関わる怪我ではないこと。
明日の朝には目が覚めるだろうということ。
良かった。
部長の事故の話を聞いてからずっと怖かった。
部長が死んだらどうしよう。
自分から別れようと言ったのに。
居なくなると思うと怖くて仕方がなかった。
「明日また来よう?」
そう言って俺の手を掴んだリオンの手を払って
「やだ! 今日はここにいる」
と俺は言った。
目を離した隙に、部長にもしものことがあったら……
そんな考えが頭をよぎったからだ。
目が覚めるまで。
この人の瞳をもう一度見つめるまで、離れるのが怖かった。
「わかった……明日まで仕事休みだし、ついててあげて。朝の9時ぐらいに俺も様子を見に来るよ」
その言葉に返事を返したかは覚えてない。
気がつけば椅子の上に、汗をかいたミネラルウォーターのペットボトルが置いてあった。
帰りの飛行機までだいぶ時間があったから、リオンの家に寄ってみんなに挨拶をして帰ろう。
社長はまだこっちでやることがあるからと2、3日滞在を延ばした。
本当かなぁ? リオンのお父さんと、ただ酒を飲みたいだけじゃないか?
「社長、気を付けてくださいよ? 一回倒れてるんだから」
俺の言葉にリオンもうんうんと頷く。
「ありがとう! 大丈夫だよ。あの時は異常な暑さだったからなぁ? リオン」
「確かに」
「じゃあみんなのお土産は先に俺たち買って帰るんで、社長はご家族の分だけお願いします」
「うん。ありがとう」
俺たちはみんなに礼を言って家を出た。
「じゃあお土産買って帰るか?」
「おう」
俺たちは2人とも両手いっぱいの土産をもって空港へ向かった。
「俺、タイ初めてだったけど、すごい楽しかった!」
「そうか。また来ればいいよ」
「うん」
俺たちは夜の最終の便で日本に帰った。
着くのは夜中になる。
「俺が2人を迎えに行くよ」
タイに行く前に部長がそう言ってくれた。
俺たちを家まで送ってくれる予定になっていた。
日本に着いてスマホを確認する。
星矢からのすごい数の着信だった。
「ねぇ、リオン見て。星矢の着信。そんなにお土産待てなかったのかな?」
「本当だ」
2人で笑っていると、そこにまた星矢からの着信。
「もしもし? 星矢? お土産待てなかったの? すごい電話して……」
えっ? 今なんて言った?
電話の向こうの星矢の声が遠のく。
「李音?」
俺の様子を変に思ったリオンが、俺のスマホを取り上げて代わりに電話に出た。
「えっ? どこの病院? 意識は? そっか……今から2人で行く。お前は社長にも電話と、念のためメールを」
電話を切ったリオンはタクシーを止めた。
「運転手さん! 〇〇総合病院わかります?」
「わかるよ」
「じゃあ最短でそこまでお願いします! 李音、早く乗って!」
「あ、うん……」
俺は促されるままタクシーに乗った。
"お前たちを迎えに行くために空港に向かう途中、高速の玉突き事故に巻き込まれて部長が重体だ"
電話から聞こえた星矢の声はそう言っていた。
病院に着くと、手術を担当した先生が説明をしてくれた。
頭を少し打っていたこと。
すぐの検査では問題ないが、経過観察は必要ということ。
骨折が何箇所かあること。
薬で眠っていて今は意識がないが、命に関わる怪我ではないこと。
明日の朝には目が覚めるだろうということ。
良かった。
部長の事故の話を聞いてからずっと怖かった。
部長が死んだらどうしよう。
自分から別れようと言ったのに。
居なくなると思うと怖くて仕方がなかった。
「明日また来よう?」
そう言って俺の手を掴んだリオンの手を払って
「やだ! 今日はここにいる」
と俺は言った。
目を離した隙に、部長にもしものことがあったら……
そんな考えが頭をよぎったからだ。
目が覚めるまで。
この人の瞳をもう一度見つめるまで、離れるのが怖かった。
「わかった……明日まで仕事休みだし、ついててあげて。朝の9時ぐらいに俺も様子を見に来るよ」
その言葉に返事を返したかは覚えてない。
気がつけば椅子の上に、汗をかいたミネラルウォーターのペットボトルが置いてあった。
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