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始まり
失って気付くもの
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翌日、俺達は海辺周辺の偵察をしていた。
式やパーティはできそうか。
何人くらい呼べるのか。
色々シュミレーションしていると、
「今日は2人にはこのコテージに泊まってもらうから」
とリオンのお父さんが鍵をくれた。
「1番綺麗な部屋で、新郎新婦に泊まってもらう用にしようと思うからよろしく」
と社長が言って、2人でどっか行ってしまった。
「あっちだな」
とリオンが指を刺した。
案内された部屋はとても綺麗でリゾートって感じ。
日本から新婚旅行も兼ねてここにくるのも良いな。
部屋を色々見ているとリオンが言った。
「ちょっとゆっくりすれば?」
「うん。もうちょっと見てから」
「あのさ……朝、兄さんと何話してた?」
「えっ? 聞いてたの?」
「いや話の内容はわかんなかったけど、なんか話してるっぽい感じだったから」
嘘をつくのは嫌だけど、本当のことを話すわけにもいかない。
「特に何もないけど、うちのリオンはどうですか? ちゃんとやれてますか?って。あとは星矢のお土産になるような最近流行ってるお菓子とか雑貨とかあるかなーって聞いてた」
「なるほど」
「心配しなくても、すごく頑張ってますって言っといたから」
「心配なんかしてないけど……うん。ありがとう」
「うん」
夜。
風呂に入った後、ベッドに横たわる俺達。
天井を見ながら何を話そうか考えていた。
ふとリオンが口を開く。
「兄さんはどう思ってたんだろう?」
「なんのこと?」
「賢一のこと」
「どうして?」
「賢一は兄さんを本当に好きだった。俺が兄さんの結婚を賢一に伝えたんだけど、慌ててフランスから帰って来てさ。でも賢一は身を引いた。でも思うんだ。兄さんもきっと賢一が好きだったんだろうなって」
「……どうだろうな」
「でも、なんとも思ってないただの友達に、愛してるなんて冗談でも言わないよな?」
「えっ?」
「電話越しに言ってるの聞いたんだよ。彼女でもできたのかと思ってたけど、次の日それとなく相手を聞いたら賢一だって言うから」
「へぇ……もしかしたら仲のいい間柄ならあるのかもよ? 冗談で愛してるって言うことも」
「……じゃあ李音もあるんだ? 冗談で愛してるって言うこと」
「俺は……ない。ゲームの時だけ」
「なんだそれ」
とリオンは笑った。
少し間が空いて
「あのさ。俺は愛してるよ。李音のこと。冗談でも嘘でもなく、真剣に好きだよ」
とリオンは横を向き、俺の目を見て言った。
ドキっとした。
でも俺もとは言えなかった。
ただ一言。
「ありがとう」
それが今の俺の精一杯だった。
「……兄さんたちは多分両想いだったのに、なんで上手くいかなかったんだろう」
「でも2人が付き合ってたら、リオンが辛かったんじゃない?」
「かもしれないけど、兄さんと賢一が幸せな方が嬉しい」
「それはわかるよ」
「俺、兄さんになりたかったんだ。賢一が唯一愛した兄さんに」
「賢一さん。リオンのことちゃんと好きになろうとしてたと思うよ。お兄さんの代わりじゃなくて、ありのままのリオンを……」
「そうか。あの時そのことに気付けていたら良かったのかな」
人間って、なんで失ってから気付くんだろう。
式やパーティはできそうか。
何人くらい呼べるのか。
色々シュミレーションしていると、
「今日は2人にはこのコテージに泊まってもらうから」
とリオンのお父さんが鍵をくれた。
「1番綺麗な部屋で、新郎新婦に泊まってもらう用にしようと思うからよろしく」
と社長が言って、2人でどっか行ってしまった。
「あっちだな」
とリオンが指を刺した。
案内された部屋はとても綺麗でリゾートって感じ。
日本から新婚旅行も兼ねてここにくるのも良いな。
部屋を色々見ているとリオンが言った。
「ちょっとゆっくりすれば?」
「うん。もうちょっと見てから」
「あのさ……朝、兄さんと何話してた?」
「えっ? 聞いてたの?」
「いや話の内容はわかんなかったけど、なんか話してるっぽい感じだったから」
嘘をつくのは嫌だけど、本当のことを話すわけにもいかない。
「特に何もないけど、うちのリオンはどうですか? ちゃんとやれてますか?って。あとは星矢のお土産になるような最近流行ってるお菓子とか雑貨とかあるかなーって聞いてた」
「なるほど」
「心配しなくても、すごく頑張ってますって言っといたから」
「心配なんかしてないけど……うん。ありがとう」
「うん」
夜。
風呂に入った後、ベッドに横たわる俺達。
天井を見ながら何を話そうか考えていた。
ふとリオンが口を開く。
「兄さんはどう思ってたんだろう?」
「なんのこと?」
「賢一のこと」
「どうして?」
「賢一は兄さんを本当に好きだった。俺が兄さんの結婚を賢一に伝えたんだけど、慌ててフランスから帰って来てさ。でも賢一は身を引いた。でも思うんだ。兄さんもきっと賢一が好きだったんだろうなって」
「……どうだろうな」
「でも、なんとも思ってないただの友達に、愛してるなんて冗談でも言わないよな?」
「えっ?」
「電話越しに言ってるの聞いたんだよ。彼女でもできたのかと思ってたけど、次の日それとなく相手を聞いたら賢一だって言うから」
「へぇ……もしかしたら仲のいい間柄ならあるのかもよ? 冗談で愛してるって言うことも」
「……じゃあ李音もあるんだ? 冗談で愛してるって言うこと」
「俺は……ない。ゲームの時だけ」
「なんだそれ」
とリオンは笑った。
少し間が空いて
「あのさ。俺は愛してるよ。李音のこと。冗談でも嘘でもなく、真剣に好きだよ」
とリオンは横を向き、俺の目を見て言った。
ドキっとした。
でも俺もとは言えなかった。
ただ一言。
「ありがとう」
それが今の俺の精一杯だった。
「……兄さんたちは多分両想いだったのに、なんで上手くいかなかったんだろう」
「でも2人が付き合ってたら、リオンが辛かったんじゃない?」
「かもしれないけど、兄さんと賢一が幸せな方が嬉しい」
「それはわかるよ」
「俺、兄さんになりたかったんだ。賢一が唯一愛した兄さんに」
「賢一さん。リオンのことちゃんと好きになろうとしてたと思うよ。お兄さんの代わりじゃなくて、ありのままのリオンを……」
「そうか。あの時そのことに気付けていたら良かったのかな」
人間って、なんで失ってから気付くんだろう。
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