Infinity pure

SHIZU

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始まり

月が綺麗

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カラオケの帰りに3人で並んで歩いていた。

「あ、月が綺麗だな」

とリオンが言った。

俺と星矢は思わず目が合った。

「そんなのどこで覚えたんだよ?」

「は? 何が?」

リオンは何も知らずに言ったらしい。

純粋に月を見て綺麗だと思ったんだろう。

「じゃあ俺は、星の方が綺麗ですよって言っとこうかな」

と星矢がニヤついて言った。

「じゃあ俺は、手が届かないから綺麗なんですよってところか」

「え、何?」

「日本では"月が綺麗ですね"って言う愛の告白の仕方もあるんだよ」

「???」

「日本人はシャイな人が多いから、直接貴方が好きですなんて言えないだろうってことで、昔の作家がI love youを月が綺麗ですねとでも訳しておきなさい。それで伝わるからって言ったっていう話からきてるんだって」

「なんか面倒じゃないか?」

リオンが怪訝そうに言った。

「そうかも。でもそこに趣きを感じるのも日本人ならではの感性かな。俺は好きだけど」

と俺は笑った。

"届かないから綺麗なんですよ"

自分で言ったものの、なんかまだ彼が心にいることを改めて感じさせられた。

完全に手に入らないものほど、眩しくて、美しくて……

「この後、うち来る? みんな明日休みだし。飲み直そ」

「行く!」

「じゃあ俺も!」


~~~~~~~~~~


「そういえば、星矢はどうして李音の相手が部長だって気付いたの?」

帰りにスーパーで買った酒とつまみを開けながらリオンが言った。

「こいつ嘘つけないんだよ。全部顔に出る。定例会の片付け担当を決めるゲームで、愛してるよゲームっていうのやったろ?」

「うん。あの時は俺は見てるだけだったけど」

「誰とやっても同じだけど、宮原部長との対戦の時は速攻でやられちゃうんだよ。だから、あー我慢できないほど好きなんだろうなって思ってた」

「そんなことないよ」

「いや、お前、秒だぞ?」

そうだったんだ。めっちゃ恥ずかしい……

「リオンも一回やってみるか? 来月あたりまたあのゲーム廻ってくるだろ?」

「やってみる」

「じゃあ、俺に向かって愛してるよって言ってみな。李音、計ってて」

「わかった」

しばらくお互い見つめ合って、

「愛してるよ」

星矢はピクリともしない。もちろん言ったリオンも。

「じゃあ今度は逆な……愛してるよ」

やっぱり結果は同じ。

「全然笑わないじゃん。2人とも」

「じゃあ、次、李音とやってみ?」

「わかった」

リオンが俺の顔を見て、

「愛してるよ」

とタイ語で言った。

俺でもわかる。

なぜかわかんないけど、顔が熱くなるのを感じた。

今多分俺の顔、真っ赤な気がする。

「え!! そんなのズルい!」

「顔真っ赤じゃねぇか。じゃあ次、李音な」

「あ、愛してるよ」

1、2、3

「ふふっ」

と俺もリオンも笑ってしまった。

「言った李音がなんで笑うんだよ。こりゃ次も李音の負けだな……」


~~~~~~~~~~


1人ずつ風呂に入ろうってことになった。

もう泊まっていけばってなって。

リオンが風呂に入ってる間、俺は星矢に聞いた。

「俺、そんなにわかりやすかった?」

「うん。かなりな」

「そっか。他の人にもバレてるかな?」

「どうかな。ともねぇくらいは怪しんでるかもだけど、他の人は気付いてないんじゃない?」

「じゃあ、結果的にいいタイミングだったんだな」

「……まぁ指輪いきなり外してきた時は、多分みんなびっくりしたと思うよ。聞いてはこないだろうけど」

「そうだよね……また、恋出来るかな?」

「いるじゃん。ここに」

「またまたぁ」

「言っただろ? お前が相手なら永遠の愛を誓えるって」

「ありがとう」

星矢は俺の目を見た。

「愛してるよ」

なんだろう……冗談だってわかってるのに、目が離せない。

「もう!」

と俺は星矢を押しのけ、目を逸らした。

「やっぱ弱いな、お前」

「やっぱりからかったんだね!」

「ふっ」

星矢は少し笑って目を逸らした。

「でも、一緒にいてくれてありがと」

と俺が言うと、

「心友だからな」

とビールを飲みながら星矢が言った。













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