Infinity pure

SHIZU

文字の大きさ
上 下
11 / 36
始まり

愛を誓える?

しおりを挟む
部長と別れた次の日。

俺の指からはあの指輪が消えていた。

何人の人がそれに気付いたのかわからない。

でもこんなご時世だから、根掘り葉掘り聞いてくる人は居なかった。

こいつ以外は。

「李音! なんで? なんで指輪無くなってんの?」

「星矢、落ち着いて。明日休みだろ? 今日カラオケ行こう! そこで話すから。だから会社では大人しくしてて」

数日前に、多分幸せだなんて言っていた俺の指から指輪が消えたんだ。

星矢のパニックにも納得は出来る。

「俺も行っていい?」

リオンが聞いてきた。

「うん。誘うつもりでいたよ」


~~~~~~~~~~


その夜。

「で? どうゆうこと? この数日で何があったの?」

「別れた」

「……うん。そうでしょうね。でも上手く行ってるって言ってたよな?」

俺もそのはずだったよ。

「あの後すぐ、なんか色々あって別れることにした」

なんとなく居心地が悪そうなリオンが可哀想だった。

「部長は納得したのか?」

「うん。俺がそばにいてくれるならそれでいいって言ってくれたけど、やっぱりそれはケジメだから……」

あれ?

今、"部長は"って言った?

リオンが星矢をすごい顔で見てる。

「なんちゅう顔してんだ、お前ら……」

「だって今……」

「知らないと思ってたのか? 心友の俺が、お前の付き合ってる相手に何も気づかないと?」

「でも今まで全然そんなこと……」

「そりゃそうだろ。妻子持ちの上司が同期の男と付き合ってるって思ったとして、お前あの人と付き合ってんのか?って、どんな顔して聞くんだよ」

確かに、おっしゃる通り。

「お前が幸せそうだったから何も言わなかったけど、もし傷付けられたなら、今度こそ退職願書いて1発殴りに行くけど?」

「いやいや、俺が決めたことなんだ」

「ごめん。李音」

その時リオンが俺に謝ってきた。

「リオンのせいじゃないよ。自分で決めたことだって言ったろ?」

「なんでリオンが謝るんだ?」

「初めて俺たちの関係を知られちゃったんだ。あ、星矢は知ってたんなら初めてじゃないか!」

ふっと俺が笑うと、

「だからってなんで急にそんなことに?」

と星矢は俺の顔を両手で挟んで、自分の方に向けて聞いてきた。

「誰か1人でも俺たちの関係に気付いたら別れようって思ってたんだよ」

「でも本当に好きだったんだろ?」

「好きだったよ。奥さんが羨ましかったし、せめて俺が女性なら略奪でもなんでもしようとしたかも」

「だったら……部長だってお前がそばにいてくれるならって言ったんだろ?」

「うん。でも奥さんと別れて俺を選んだとして。その後何も感じずに幸せに暮らせるかって考えたら、俺には無理だ。罪悪感を感じずにはいられないし、俺が彼を失うより、彼が俺のせいで何かを失う方がやだよ」

「それで自分から?」

「うん。でも最後に本当に俺を好きでいてくれてたのがわかったから、それで良かったよ」

「後悔してないか?」

「別れたこと? してないよ! 出逢えたことも、好きになったことも。彼との間に後悔はひとつもない」

「そうか。じゃあ晴れてお前はフリーなわけだ?」

「そうだね。これでみんなフリーだ」

「じゃあ俺が口説いても問題ないわけだ」

「は!? 星矢、何言ってんの?」

隣を見ると、同じくらいリオンもびっくりしている。

「だからぁ。俺がお前を好きになって口説いても、何も問題はないってことだろ?」

「いや、星矢はそういうんじゃないじゃん」

「ひどいねぇ。でも俺はお前なら永遠の愛を誓えるよ?」

「もう……変なこと言わ…」

「俺も! 俺も李音が好きだ」

みんなして何言ってんの?

突然の2人の訳のわからない発言に驚いた俺は、

「はいはい。冗談はそこまでにして歌おう!」

と2人にマイクを渡して言った。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

上司と俺のSM関係

雫@3日更新予定あり
BL
タイトルの通りです。

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...