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始まり
愛を誓える?
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部長と別れた次の日。
俺の指からはあの指輪が消えていた。
何人の人がそれに気付いたのかわからない。
でもこんなご時世だから、根掘り葉掘り聞いてくる人は居なかった。
こいつ以外は。
「李音! なんで? なんで指輪無くなってんの?」
「星矢、落ち着いて。明日休みだろ? 今日カラオケ行こう! そこで話すから。だから会社では大人しくしてて」
数日前に、多分幸せだなんて言っていた俺の指から指輪が消えたんだ。
星矢のパニックにも納得は出来る。
「俺も行っていい?」
リオンが聞いてきた。
「うん。誘うつもりでいたよ」
~~~~~~~~~~
その夜。
「で? どうゆうこと? この数日で何があったの?」
「別れた」
「……うん。そうでしょうね。でも上手く行ってるって言ってたよな?」
俺もそのはずだったよ。
「あの後すぐ、なんか色々あって別れることにした」
なんとなく居心地が悪そうなリオンが可哀想だった。
「部長は納得したのか?」
「うん。俺がそばにいてくれるならそれでいいって言ってくれたけど、やっぱりそれはケジメだから……」
あれ?
今、"部長は"って言った?
リオンが星矢をすごい顔で見てる。
「なんちゅう顔してんだ、お前ら……」
「だって今……」
「知らないと思ってたのか? 心友の俺が、お前の付き合ってる相手に何も気づかないと?」
「でも今まで全然そんなこと……」
「そりゃそうだろ。妻子持ちの上司が同期の男と付き合ってるって思ったとして、お前あの人と付き合ってんのか?って、どんな顔して聞くんだよ」
確かに、おっしゃる通り。
「お前が幸せそうだったから何も言わなかったけど、もし傷付けられたなら、今度こそ退職願書いて1発殴りに行くけど?」
「いやいや、俺が決めたことなんだ」
「ごめん。李音」
その時リオンが俺に謝ってきた。
「リオンのせいじゃないよ。自分で決めたことだって言ったろ?」
「なんでリオンが謝るんだ?」
「初めて俺たちの関係を知られちゃったんだ。あ、星矢は知ってたんなら初めてじゃないか!」
ふっと俺が笑うと、
「だからってなんで急にそんなことに?」
と星矢は俺の顔を両手で挟んで、自分の方に向けて聞いてきた。
「誰か1人でも俺たちの関係に気付いたら別れようって思ってたんだよ」
「でも本当に好きだったんだろ?」
「好きだったよ。奥さんが羨ましかったし、せめて俺が女性なら略奪でもなんでもしようとしたかも」
「だったら……部長だってお前がそばにいてくれるならって言ったんだろ?」
「うん。でも奥さんと別れて俺を選んだとして。その後何も感じずに幸せに暮らせるかって考えたら、俺には無理だ。罪悪感を感じずにはいられないし、俺が彼を失うより、彼が俺のせいで何かを失う方がやだよ」
「それで自分から?」
「うん。でも最後に本当に俺を好きでいてくれてたのがわかったから、それで良かったよ」
「後悔してないか?」
「別れたこと? してないよ! 出逢えたことも、好きになったことも。彼との間に後悔はひとつもない」
「そうか。じゃあ晴れてお前はフリーなわけだ?」
「そうだね。これでみんなフリーだ」
「じゃあ俺が口説いても問題ないわけだ」
「は!? 星矢、何言ってんの?」
隣を見ると、同じくらいリオンもびっくりしている。
「だからぁ。俺がお前を好きになって口説いても、何も問題はないってことだろ?」
「いや、星矢はそういうんじゃないじゃん」
「ひどいねぇ。でも俺はお前なら永遠の愛を誓えるよ?」
「もう……変なこと言わ…」
「俺も! 俺も李音が好きだ」
みんなして何言ってんの?
突然の2人の訳のわからない発言に驚いた俺は、
「はいはい。冗談はそこまでにして歌おう!」
と2人にマイクを渡して言った。
俺の指からはあの指輪が消えていた。
何人の人がそれに気付いたのかわからない。
でもこんなご時世だから、根掘り葉掘り聞いてくる人は居なかった。
こいつ以外は。
「李音! なんで? なんで指輪無くなってんの?」
「星矢、落ち着いて。明日休みだろ? 今日カラオケ行こう! そこで話すから。だから会社では大人しくしてて」
数日前に、多分幸せだなんて言っていた俺の指から指輪が消えたんだ。
星矢のパニックにも納得は出来る。
「俺も行っていい?」
リオンが聞いてきた。
「うん。誘うつもりでいたよ」
~~~~~~~~~~
その夜。
「で? どうゆうこと? この数日で何があったの?」
「別れた」
「……うん。そうでしょうね。でも上手く行ってるって言ってたよな?」
俺もそのはずだったよ。
「あの後すぐ、なんか色々あって別れることにした」
なんとなく居心地が悪そうなリオンが可哀想だった。
「部長は納得したのか?」
「うん。俺がそばにいてくれるならそれでいいって言ってくれたけど、やっぱりそれはケジメだから……」
あれ?
今、"部長は"って言った?
リオンが星矢をすごい顔で見てる。
「なんちゅう顔してんだ、お前ら……」
「だって今……」
「知らないと思ってたのか? 心友の俺が、お前の付き合ってる相手に何も気づかないと?」
「でも今まで全然そんなこと……」
「そりゃそうだろ。妻子持ちの上司が同期の男と付き合ってるって思ったとして、お前あの人と付き合ってんのか?って、どんな顔して聞くんだよ」
確かに、おっしゃる通り。
「お前が幸せそうだったから何も言わなかったけど、もし傷付けられたなら、今度こそ退職願書いて1発殴りに行くけど?」
「いやいや、俺が決めたことなんだ」
「ごめん。李音」
その時リオンが俺に謝ってきた。
「リオンのせいじゃないよ。自分で決めたことだって言ったろ?」
「なんでリオンが謝るんだ?」
「初めて俺たちの関係を知られちゃったんだ。あ、星矢は知ってたんなら初めてじゃないか!」
ふっと俺が笑うと、
「だからってなんで急にそんなことに?」
と星矢は俺の顔を両手で挟んで、自分の方に向けて聞いてきた。
「誰か1人でも俺たちの関係に気付いたら別れようって思ってたんだよ」
「でも本当に好きだったんだろ?」
「好きだったよ。奥さんが羨ましかったし、せめて俺が女性なら略奪でもなんでもしようとしたかも」
「だったら……部長だってお前がそばにいてくれるならって言ったんだろ?」
「うん。でも奥さんと別れて俺を選んだとして。その後何も感じずに幸せに暮らせるかって考えたら、俺には無理だ。罪悪感を感じずにはいられないし、俺が彼を失うより、彼が俺のせいで何かを失う方がやだよ」
「それで自分から?」
「うん。でも最後に本当に俺を好きでいてくれてたのがわかったから、それで良かったよ」
「後悔してないか?」
「別れたこと? してないよ! 出逢えたことも、好きになったことも。彼との間に後悔はひとつもない」
「そうか。じゃあ晴れてお前はフリーなわけだ?」
「そうだね。これでみんなフリーだ」
「じゃあ俺が口説いても問題ないわけだ」
「は!? 星矢、何言ってんの?」
隣を見ると、同じくらいリオンもびっくりしている。
「だからぁ。俺がお前を好きになって口説いても、何も問題はないってことだろ?」
「いや、星矢はそういうんじゃないじゃん」
「ひどいねぇ。でも俺はお前なら永遠の愛を誓えるよ?」
「もう……変なこと言わ…」
「俺も! 俺も李音が好きだ」
みんなして何言ってんの?
突然の2人の訳のわからない発言に驚いた俺は、
「はいはい。冗談はそこまでにして歌おう!」
と2人にマイクを渡して言った。
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