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終わり
歓迎会
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部長が俺たちの休みを合わせてくれたから、休みの前の日に曲を選んでお互いそれぞれ歌詞を直してくる。
次の休みにカラオケに行くのが習慣になった。
「ごめん。リオンが来てから1ヶ月近く経つのに、歓迎会ができてなかったな。社長から預かってる分と、積み立てしてる分で行けるとこ、どっか探してくれるか?」
部長が俺たちに声をかけた。
俺とリオンと星矢は店を探す。
1週間後、社長がまたタイに出張になる。
それまでの間にどこか歓迎会が出来る店を探した。
「ないな…」
「ないよ…」
30人以上の予約が取れる店が、近くにもうない。
「リオン何食べたい?」
「日本の食べ物食べたい」
「日本食……だと、寿司、天ぷら、粉もん。星矢、他には?」
「肉じゃが? だし巻き?」
もう居酒屋だな…
「それなら会社でやれば?」
たまたま隣で畠中さんと話をしていた経理の前田智子こと、ともねぇが言った。
「会社でですか?」
「そうそう。あの食堂兼カフェスペース使えば全員入るでしょ?月例会と一緒にしちゃえば?」
「月例会?」
聞いたことない言葉だったようで、リオンの頭の上に?が見える。
「うん。うちは月の最終金曜日、第一と第二営業部合同で仕事終わりにお菓子を食べながらミーティングするんだ」
これも仲がギスギスしていた両営業部を、ひとつにまとめるために部長が言い出したことらしい。
毎回参加できる人だけする感じだし、今でもコミュニケーションの場になるからと5年以上続いているんだとか。
「でも料理とかお酒は?」
「そんなもの買ってくればいいのよ。料理はデリバリーでもいいし、食堂のキッチン借りて作るでもいいじゃない?他の人もいないから騒げるし、保安に言えば問題ないでしょ」
「へぇ!それ楽しいかも」
星矢はノリノリだ。
「せっかくの歓迎会なのに? 月例会ついでに食堂って……」
「俺はいいよ! ご飯作る。タイ料理」
「え? 作れんの?」
「うん。ここにくる前は兄のレストラン手伝ってた。料理人だったんだ」
「へぇ! すごーい!」
みんなもノリノリだ。
「リオンがいいならいいよ」
「じゃあ俺は保安に……」
と言って星矢は電話をした。
「じゃあ食材やデリバリーの手配は俺が……」
「あ、それならここ使えばいいよ! 料理も食材も運んでくれて、ポイントも貯まるから!」
ともねぇ。そのポイントが目当てなんじゃ……
まあいいか。
~~~~~~~~~~
歓迎会の日。
俺と星矢は少し早めに仕事を切り上げて、会場の準備をしていた。
キッチンでは、リオンが主役のくせに食堂の人かと思うくらいフライパンを振っている。
俺たちも手伝うことにした。
終業時間になりみんなが会場に集まってくる。
「リオン!私たちの仲間になってくれてありがとう」
と社長が挨拶をして乾杯した。
今日の月例会は他の部署にも声をかけて、リオンの歓迎会ということで盛大にやった。
ほとんど喋ったことない別の部署の人に囲まれて、少し困惑しながらもリオンは楽しそうだった。
そんな時、ともねぇが俺と星矢のとこにきて、
「あんたたち、どうなってんの? 最近」
「なんですか? その変な質問」
と星矢が返す。
「そうですよ。そんな質問の仕方、俺たちが付き合ってるみたいじゃないですか」
俺が慌ててフォローする。
「まぁ仲いいもんね、あんたたち。でもそうじゃないことは、私にはわかるわよ」
「なんでじゃないってわかるんすか?」
星矢が質問した。
その話題、掘り下げなくていいよ……
「李音は3年前くらいから、その2つの指輪つけてるでしょ。一個は部長からのしきたり用でもらったやつで、もう一個は恋人からのプレゼントだって」
「うん」
「もしあんたたちが付き合ってるなら、星矢もお揃いの指輪してるはずだしね。隠さなくてもいいんだし」
「なるほど」
星矢が納得して頷いている。
なるほどじゃねぇよ。
「いや、もしそうなら隠すでしょ。相手男なんだから……」
「男だって関係ないわよ。悪いことしてないし……」
「でもみんながともねぇみたいに思ってはくれないよ」
「そうね。どんなことにも否定的な意見はあるし、悪気がなくても人を傷つけることはある。でも李音の気持ちは李音だけのものでしょ」
「うん」
「ってことはやっぱり李音の恋人は別にいるってことよ。なのに私たちに紹介してくれないじゃない? 3年も付き合ってるのに」
あ、諦めてなかった。
「まぁ相手が恥ずかしがりやで……」
「って言ったって私たち家族みたいなもんでしょ?」
「うん。そのうち紹介するから……」
「電話は? 電話もダメ?」
「ともねぇ! 酔っ払いすぎじゃない? あんまり言うとセクハラになるぞぉ」
星矢が一言。
「確かにそうだね。そっとしとくわ。でもいつか紹介してね?」
「…うん」
そしてともねぇは別の人のところへ去っていった。
「星矢。ありがとう」
「俺とお前の仲だろ?」
「うん。だからありがとう」
と俺は星矢にハグをした。
次の休みにカラオケに行くのが習慣になった。
「ごめん。リオンが来てから1ヶ月近く経つのに、歓迎会ができてなかったな。社長から預かってる分と、積み立てしてる分で行けるとこ、どっか探してくれるか?」
部長が俺たちに声をかけた。
俺とリオンと星矢は店を探す。
1週間後、社長がまたタイに出張になる。
それまでの間にどこか歓迎会が出来る店を探した。
「ないな…」
「ないよ…」
30人以上の予約が取れる店が、近くにもうない。
「リオン何食べたい?」
「日本の食べ物食べたい」
「日本食……だと、寿司、天ぷら、粉もん。星矢、他には?」
「肉じゃが? だし巻き?」
もう居酒屋だな…
「それなら会社でやれば?」
たまたま隣で畠中さんと話をしていた経理の前田智子こと、ともねぇが言った。
「会社でですか?」
「そうそう。あの食堂兼カフェスペース使えば全員入るでしょ?月例会と一緒にしちゃえば?」
「月例会?」
聞いたことない言葉だったようで、リオンの頭の上に?が見える。
「うん。うちは月の最終金曜日、第一と第二営業部合同で仕事終わりにお菓子を食べながらミーティングするんだ」
これも仲がギスギスしていた両営業部を、ひとつにまとめるために部長が言い出したことらしい。
毎回参加できる人だけする感じだし、今でもコミュニケーションの場になるからと5年以上続いているんだとか。
「でも料理とかお酒は?」
「そんなもの買ってくればいいのよ。料理はデリバリーでもいいし、食堂のキッチン借りて作るでもいいじゃない?他の人もいないから騒げるし、保安に言えば問題ないでしょ」
「へぇ!それ楽しいかも」
星矢はノリノリだ。
「せっかくの歓迎会なのに? 月例会ついでに食堂って……」
「俺はいいよ! ご飯作る。タイ料理」
「え? 作れんの?」
「うん。ここにくる前は兄のレストラン手伝ってた。料理人だったんだ」
「へぇ! すごーい!」
みんなもノリノリだ。
「リオンがいいならいいよ」
「じゃあ俺は保安に……」
と言って星矢は電話をした。
「じゃあ食材やデリバリーの手配は俺が……」
「あ、それならここ使えばいいよ! 料理も食材も運んでくれて、ポイントも貯まるから!」
ともねぇ。そのポイントが目当てなんじゃ……
まあいいか。
~~~~~~~~~~
歓迎会の日。
俺と星矢は少し早めに仕事を切り上げて、会場の準備をしていた。
キッチンでは、リオンが主役のくせに食堂の人かと思うくらいフライパンを振っている。
俺たちも手伝うことにした。
終業時間になりみんなが会場に集まってくる。
「リオン!私たちの仲間になってくれてありがとう」
と社長が挨拶をして乾杯した。
今日の月例会は他の部署にも声をかけて、リオンの歓迎会ということで盛大にやった。
ほとんど喋ったことない別の部署の人に囲まれて、少し困惑しながらもリオンは楽しそうだった。
そんな時、ともねぇが俺と星矢のとこにきて、
「あんたたち、どうなってんの? 最近」
「なんですか? その変な質問」
と星矢が返す。
「そうですよ。そんな質問の仕方、俺たちが付き合ってるみたいじゃないですか」
俺が慌ててフォローする。
「まぁ仲いいもんね、あんたたち。でもそうじゃないことは、私にはわかるわよ」
「なんでじゃないってわかるんすか?」
星矢が質問した。
その話題、掘り下げなくていいよ……
「李音は3年前くらいから、その2つの指輪つけてるでしょ。一個は部長からのしきたり用でもらったやつで、もう一個は恋人からのプレゼントだって」
「うん」
「もしあんたたちが付き合ってるなら、星矢もお揃いの指輪してるはずだしね。隠さなくてもいいんだし」
「なるほど」
星矢が納得して頷いている。
なるほどじゃねぇよ。
「いや、もしそうなら隠すでしょ。相手男なんだから……」
「男だって関係ないわよ。悪いことしてないし……」
「でもみんながともねぇみたいに思ってはくれないよ」
「そうね。どんなことにも否定的な意見はあるし、悪気がなくても人を傷つけることはある。でも李音の気持ちは李音だけのものでしょ」
「うん」
「ってことはやっぱり李音の恋人は別にいるってことよ。なのに私たちに紹介してくれないじゃない? 3年も付き合ってるのに」
あ、諦めてなかった。
「まぁ相手が恥ずかしがりやで……」
「って言ったって私たち家族みたいなもんでしょ?」
「うん。そのうち紹介するから……」
「電話は? 電話もダメ?」
「ともねぇ! 酔っ払いすぎじゃない? あんまり言うとセクハラになるぞぉ」
星矢が一言。
「確かにそうだね。そっとしとくわ。でもいつか紹介してね?」
「…うん」
そしてともねぇは別の人のところへ去っていった。
「星矢。ありがとう」
「俺とお前の仲だろ?」
「うん。だからありがとう」
と俺は星矢にハグをした。
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