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終わり
出逢わなければ
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一通り説明したあと、宮原部長に言われた。
「李音。今日はもう上がっていいから、あれ買うの手伝ってあげて」
「あ、はい。あ、でも今日14時アポなんですけど……」
「いいよ。そのお客様、俺が代わるよー」
と隣で話を聞いていた星矢が言った。
「いいのか?」
「うん。いつも手伝って貰ってるから、こういう時くらいはなー」
「ありがとう!星矢。じゃあリオン、行こうか」
「うん」
俺たちの会話は拙い英語と、リオンが分かる日本語のやり取りだ。
とはいえリオンの日本語は、よくここまで話せるようになったな、と感心するくらいだった。
会社の外に出るとリオンが聞いてきた。
「アレ買うってなに?」
「指輪だよ。自分のなんかいいの持ってる?」
「……何も。どうして指輪がいるの?」
俺は昔話を始めた。
昔、1組のカップルが会社に訪れた。
そのカップルの新婦さんが、独身の男性プランナーに恋をしてしまったらしい。
そんな話自体たまにあることらしいが、そのプランナーはハッキリと断ったのに、1度壊れてしまった気持ちは戻らなくて、そのカップルは破談になったんだとか。
その時から結婚してようがしてまいが、薬指に指輪をして、パートナーがいるように見せるというルールが出来たらしい。
結婚していなければ、その指輪を教育係が一緒に選ぶというのが、うちの会社の面白ルールだ。
まあ予算はある程度会社が出してくれるから俺たちの負担はない。
一緒に買いに行けば、仲良くなるしいいだろうと。
「新婦がさ。そのプランナーに、あなたにさえ出逢わなければよかったって言ったんだって。なんか悲しいよな」
「自分が悪いのに?」
「悪いか……けど、でも誰かを好きになるってのは防ぎようがないし、一度好きになったら元には簡単に戻れないよ。俺はどんなに辛い恋でも、出逢わなければ良かったなんて思わないよ」
「そうかな…」
「うん……ってか指輪どんなのがいい?」
「李音が選んでくれるの?」
「選ぶのは自分で選んでいいよ!俺はそれをサポートするだけだから」
「OK.じゃあシンプルなのがいいな。それか李音がしてるようなかっこいいのがいい。2つ付けてるの?」
「これ?……うん。かっこいいだろ?」
俺は左手の薬指に2つ付けている。
1つは入社してすぐに教育係だった宮原さんが選んでくれたものだ。
当時は右手にしていた。
そしてもう1つは、恋人ができた時にその人がくれたもの。
付け替えるべきか悩んだけど、
「宮原さんがくれた指輪は、今まで俺が頑張ってきた証だから外したくない」
というと、
「じゃあそれと一緒に付けても合うものを、一緒に選びに行こう」
と言ってくれた。
そういうところが好きなんだ。
俺は今は左手の薬指に移した指輪を触りながら、その話をした。
「恋人いるんだね。大事にしてるし、されてるみたいだ」
「そうかな。そうだといいな。リオンは?恋人いないの?急に日本に来ることになって大丈夫だった?」
「ずっと前に別れたから、今はいないよ」
「というかだいぶ日本語勉強したの?」
「レウっていう兄がいるんだ。兄たち教えてもらった」
「お兄さん、日本語話せるの?」
「兄の友達に日本人がいるんだ。2人に教えてもらった」
「どうやって覚えたの?」
「有名なタイの曲や英語の曲の歌詞を、兄たちが日本語に変えてくれて意味がわかるようにしてくれたんだよ」
「へぇ!じゃあさ、同じやり方で、俺にタイ語を教えてよ!2人が知ってる英語の曲をお互いに日本語とタイ語に訳す。それを教え合う。いいじゃん!どう?」
「うん。そうしよう!」
俺たちは指輪を選んで、お互いの家庭教師になる約束をした。
「李音。今日はもう上がっていいから、あれ買うの手伝ってあげて」
「あ、はい。あ、でも今日14時アポなんですけど……」
「いいよ。そのお客様、俺が代わるよー」
と隣で話を聞いていた星矢が言った。
「いいのか?」
「うん。いつも手伝って貰ってるから、こういう時くらいはなー」
「ありがとう!星矢。じゃあリオン、行こうか」
「うん」
俺たちの会話は拙い英語と、リオンが分かる日本語のやり取りだ。
とはいえリオンの日本語は、よくここまで話せるようになったな、と感心するくらいだった。
会社の外に出るとリオンが聞いてきた。
「アレ買うってなに?」
「指輪だよ。自分のなんかいいの持ってる?」
「……何も。どうして指輪がいるの?」
俺は昔話を始めた。
昔、1組のカップルが会社に訪れた。
そのカップルの新婦さんが、独身の男性プランナーに恋をしてしまったらしい。
そんな話自体たまにあることらしいが、そのプランナーはハッキリと断ったのに、1度壊れてしまった気持ちは戻らなくて、そのカップルは破談になったんだとか。
その時から結婚してようがしてまいが、薬指に指輪をして、パートナーがいるように見せるというルールが出来たらしい。
結婚していなければ、その指輪を教育係が一緒に選ぶというのが、うちの会社の面白ルールだ。
まあ予算はある程度会社が出してくれるから俺たちの負担はない。
一緒に買いに行けば、仲良くなるしいいだろうと。
「新婦がさ。そのプランナーに、あなたにさえ出逢わなければよかったって言ったんだって。なんか悲しいよな」
「自分が悪いのに?」
「悪いか……けど、でも誰かを好きになるってのは防ぎようがないし、一度好きになったら元には簡単に戻れないよ。俺はどんなに辛い恋でも、出逢わなければ良かったなんて思わないよ」
「そうかな…」
「うん……ってか指輪どんなのがいい?」
「李音が選んでくれるの?」
「選ぶのは自分で選んでいいよ!俺はそれをサポートするだけだから」
「OK.じゃあシンプルなのがいいな。それか李音がしてるようなかっこいいのがいい。2つ付けてるの?」
「これ?……うん。かっこいいだろ?」
俺は左手の薬指に2つ付けている。
1つは入社してすぐに教育係だった宮原さんが選んでくれたものだ。
当時は右手にしていた。
そしてもう1つは、恋人ができた時にその人がくれたもの。
付け替えるべきか悩んだけど、
「宮原さんがくれた指輪は、今まで俺が頑張ってきた証だから外したくない」
というと、
「じゃあそれと一緒に付けても合うものを、一緒に選びに行こう」
と言ってくれた。
そういうところが好きなんだ。
俺は今は左手の薬指に移した指輪を触りながら、その話をした。
「恋人いるんだね。大事にしてるし、されてるみたいだ」
「そうかな。そうだといいな。リオンは?恋人いないの?急に日本に来ることになって大丈夫だった?」
「ずっと前に別れたから、今はいないよ」
「というかだいぶ日本語勉強したの?」
「レウっていう兄がいるんだ。兄たち教えてもらった」
「お兄さん、日本語話せるの?」
「兄の友達に日本人がいるんだ。2人に教えてもらった」
「どうやって覚えたの?」
「有名なタイの曲や英語の曲の歌詞を、兄たちが日本語に変えてくれて意味がわかるようにしてくれたんだよ」
「へぇ!じゃあさ、同じやり方で、俺にタイ語を教えてよ!2人が知ってる英語の曲をお互いに日本語とタイ語に訳す。それを教え合う。いいじゃん!どう?」
「うん。そうしよう!」
俺たちは指輪を選んで、お互いの家庭教師になる約束をした。
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