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第11話
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「マティアス、そろそろ出発するよ。」
準備を終えたハインツがマティアスに声をかける。今日のネルフューア邸は朝からほんの少しだけ忙しい。
「はぁ~い。」
あくびをしながら間延びした返事をする。今日は領内にある教会に行く。なにをするかというと、待ちに待った適性属性の検査だ。
準備を終えた僕は足早に玄関へ向かう。
「準備できました。」
既に準備を終えた父さんと馬車に乗り出発する。
――――
「マティアスはどの魔法が使いたい?」
「んー、全部使ってみたいです。」
「あはは、マティアスは欲張りだね。全部使えるといいね。」
僕の返事が面白かったのか父さんが笑う。
そんなこんなで父さんと話をしているうちに教会についた。馬車から降りると適性検査を受けに来た子供の親と思われる人がたくさんいた。領主の息子だからか、僕や父さんが降りると視線が集まる。
「じゃあマティアス、私は中に入れないから。一人で大丈夫だね?」
「はい、大丈夫です。行ってきます。」
教会に入ることができるのは適性検査を受ける子供だけらしく、馬車から降りると父さんに見送られる。
教会の中に入ると領内の同い年の子供がたくさんいた。教会の中では子供だけだからか僕に視線が集まるようなことはなかった。
「マティアス、遅かったな。」
その中で一人だけ僕に話しかけてくる子供がいた。
「カミル、おはよう。」
リネット村でよく一緒に遊んでいるカミルだった。
「おはよう。ネルフューア領にはこんなに同い年の子供がいたんだな。」
「そうだね。僕も領内を回ったことはあるけど、遊んだことがあるのはカミルだけだし少し驚いてたんだ。」
同い年の子供の多さにカミルも驚いていた。少し不安だったから速めにカミルに会えてよかった。
「こほん。」
40代くらいの司祭が咳払いをすると、会場が静かになった。
「皆さんこんにちは。魔法の適性属性検査を開始します。皆さんが今日という日を迎えられたことを嬉しく思います。四大属性の火、水、風、土、そして稀少属性の光、闇。魔法にはこの6属性があります。これから皆さんはどの魔法属性に適性があるかを確かめます。魔力がなく、魔法の適性を得られない人もいるかもしれません。しかしこれらはあなたたちの人としての価値を決める物ではないということを覚えておいてください。」
司祭はあいさつを終えると適性属性検査の儀式について話し始めた。
「これから一人ずつ検査の間に入ってもらいます。そこにある水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
司祭は説明が終わると検査の間に入っていき、中からは助祭らしき男が出てきた。
「マティアス様、検査の間へどうぞ。」
「はい。じゃあ、カミル。また今度。」
「あぁ。」
助祭に呼ばれた僕はカミルに声をかけて検査の間へ入った。
中には司祭一人だけがいて、検査用の水晶が台に乗せられていた。
台の上に手を置くと、何か不思議な感覚があった。台は黄色に光った。
「マティアス様は土属性ですね。」
一緒に水晶を確認して司祭が適性属性を教えてくれた。検査が終わった僕は父さんのもとへ戻る。
「マティアス、早かったね。」
馬車の外で待っていた父さんに声をかけられ、一緒に乗り込む。
「どうだった?」
「はい。土属性でした。」
「そうか。僕と一緒だね。僕はあまり魔法が得意ではないけれどなんでも聞いていいからね。」
マティアスの適性属性の報告を受け、ハインツは嬉しそうに笑う。
「僕は全員分の適性属性の結果を聞かなきゃならないから終わるまでしばらく待つけど大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。」
ハインツは領地全員分の適性属性の報告を受ける必要がある。ハインツに限らずどこの領主も領民の適性については報告を受けている。これは、稀少属性の子供が魔法師団等の支援を受けて学園に入る際に事前に魔法師団に書状を送らなければならないためだ。同然学園や魔法師団でも適性検査を行うことはできるが、それらの手配をスムーズに行うためにもこのような形式がとられている。
今年の適性検査は全員おわり、報告を受けたハインツが馬車に戻ってきた。ハインツも馬車に乗り込み、ネルフューア邸に向かった。
帰りの馬車では魔法の話や最近の僕の勉強の話をしながら帰った。
――――
「ただいま」「ただいま帰りました。」
父さんと僕が屋敷に帰るとエマを抱いた母さんと兄さんとが迎えに出てくれていた。
「「おかえりなさい」」
「マティアス、適性検査はどうだった?」
「はい、土属性の適性でした。」
母さんと兄さんにも適性属性の報告をした。
「そっか、マティアスは父さんと同じ属性なんだね。」
兄さんは笑顔を浮かべながら父さんと同じことを言った。
「姉さんは火、兄さんは水、僕は土だから兄弟で同じ属性はいないね。」
順番に四大属性が出ているということは、エマは風だったりして。
「じゃあ、ようやくマティアスも魔法の練習を始められるのね。」
「本当ですか!?」
アレクシアの提案にマティアスは目を輝かせた。
「早速明日から始めましょうか。」
準備を終えたハインツがマティアスに声をかける。今日のネルフューア邸は朝からほんの少しだけ忙しい。
「はぁ~い。」
あくびをしながら間延びした返事をする。今日は領内にある教会に行く。なにをするかというと、待ちに待った適性属性の検査だ。
準備を終えた僕は足早に玄関へ向かう。
「準備できました。」
既に準備を終えた父さんと馬車に乗り出発する。
――――
「マティアスはどの魔法が使いたい?」
「んー、全部使ってみたいです。」
「あはは、マティアスは欲張りだね。全部使えるといいね。」
僕の返事が面白かったのか父さんが笑う。
そんなこんなで父さんと話をしているうちに教会についた。馬車から降りると適性検査を受けに来た子供の親と思われる人がたくさんいた。領主の息子だからか、僕や父さんが降りると視線が集まる。
「じゃあマティアス、私は中に入れないから。一人で大丈夫だね?」
「はい、大丈夫です。行ってきます。」
教会に入ることができるのは適性検査を受ける子供だけらしく、馬車から降りると父さんに見送られる。
教会の中に入ると領内の同い年の子供がたくさんいた。教会の中では子供だけだからか僕に視線が集まるようなことはなかった。
「マティアス、遅かったな。」
その中で一人だけ僕に話しかけてくる子供がいた。
「カミル、おはよう。」
リネット村でよく一緒に遊んでいるカミルだった。
「おはよう。ネルフューア領にはこんなに同い年の子供がいたんだな。」
「そうだね。僕も領内を回ったことはあるけど、遊んだことがあるのはカミルだけだし少し驚いてたんだ。」
同い年の子供の多さにカミルも驚いていた。少し不安だったから速めにカミルに会えてよかった。
「こほん。」
40代くらいの司祭が咳払いをすると、会場が静かになった。
「皆さんこんにちは。魔法の適性属性検査を開始します。皆さんが今日という日を迎えられたことを嬉しく思います。四大属性の火、水、風、土、そして稀少属性の光、闇。魔法にはこの6属性があります。これから皆さんはどの魔法属性に適性があるかを確かめます。魔力がなく、魔法の適性を得られない人もいるかもしれません。しかしこれらはあなたたちの人としての価値を決める物ではないということを覚えておいてください。」
司祭はあいさつを終えると適性属性検査の儀式について話し始めた。
「これから一人ずつ検査の間に入ってもらいます。そこにある水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
司祭は説明が終わると検査の間に入っていき、中からは助祭らしき男が出てきた。
「マティアス様、検査の間へどうぞ。」
「はい。じゃあ、カミル。また今度。」
「あぁ。」
助祭に呼ばれた僕はカミルに声をかけて検査の間へ入った。
中には司祭一人だけがいて、検査用の水晶が台に乗せられていた。
台の上に手を置くと、何か不思議な感覚があった。台は黄色に光った。
「マティアス様は土属性ですね。」
一緒に水晶を確認して司祭が適性属性を教えてくれた。検査が終わった僕は父さんのもとへ戻る。
「マティアス、早かったね。」
馬車の外で待っていた父さんに声をかけられ、一緒に乗り込む。
「どうだった?」
「はい。土属性でした。」
「そうか。僕と一緒だね。僕はあまり魔法が得意ではないけれどなんでも聞いていいからね。」
マティアスの適性属性の報告を受け、ハインツは嬉しそうに笑う。
「僕は全員分の適性属性の結果を聞かなきゃならないから終わるまでしばらく待つけど大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。」
ハインツは領地全員分の適性属性の報告を受ける必要がある。ハインツに限らずどこの領主も領民の適性については報告を受けている。これは、稀少属性の子供が魔法師団等の支援を受けて学園に入る際に事前に魔法師団に書状を送らなければならないためだ。同然学園や魔法師団でも適性検査を行うことはできるが、それらの手配をスムーズに行うためにもこのような形式がとられている。
今年の適性検査は全員おわり、報告を受けたハインツが馬車に戻ってきた。ハインツも馬車に乗り込み、ネルフューア邸に向かった。
帰りの馬車では魔法の話や最近の僕の勉強の話をしながら帰った。
――――
「ただいま」「ただいま帰りました。」
父さんと僕が屋敷に帰るとエマを抱いた母さんと兄さんとが迎えに出てくれていた。
「「おかえりなさい」」
「マティアス、適性検査はどうだった?」
「はい、土属性の適性でした。」
母さんと兄さんにも適性属性の報告をした。
「そっか、マティアスは父さんと同じ属性なんだね。」
兄さんは笑顔を浮かべながら父さんと同じことを言った。
「姉さんは火、兄さんは水、僕は土だから兄弟で同じ属性はいないね。」
順番に四大属性が出ているということは、エマは風だったりして。
「じゃあ、ようやくマティアスも魔法の練習を始められるのね。」
「本当ですか!?」
アレクシアの提案にマティアスは目を輝かせた。
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