11 / 11
第11話
しおりを挟む
「マティアス、そろそろ出発するよ。」
準備を終えたハインツがマティアスに声をかける。今日のネルフューア邸は朝からほんの少しだけ忙しい。
「はぁ~い。」
あくびをしながら間延びした返事をする。今日は領内にある教会に行く。なにをするかというと、待ちに待った適性属性の検査だ。
準備を終えた僕は足早に玄関へ向かう。
「準備できました。」
既に準備を終えた父さんと馬車に乗り出発する。
――――
「マティアスはどの魔法が使いたい?」
「んー、全部使ってみたいです。」
「あはは、マティアスは欲張りだね。全部使えるといいね。」
僕の返事が面白かったのか父さんが笑う。
そんなこんなで父さんと話をしているうちに教会についた。馬車から降りると適性検査を受けに来た子供の親と思われる人がたくさんいた。領主の息子だからか、僕や父さんが降りると視線が集まる。
「じゃあマティアス、私は中に入れないから。一人で大丈夫だね?」
「はい、大丈夫です。行ってきます。」
教会に入ることができるのは適性検査を受ける子供だけらしく、馬車から降りると父さんに見送られる。
教会の中に入ると領内の同い年の子供がたくさんいた。教会の中では子供だけだからか僕に視線が集まるようなことはなかった。
「マティアス、遅かったな。」
その中で一人だけ僕に話しかけてくる子供がいた。
「カミル、おはよう。」
リネット村でよく一緒に遊んでいるカミルだった。
「おはよう。ネルフューア領にはこんなに同い年の子供がいたんだな。」
「そうだね。僕も領内を回ったことはあるけど、遊んだことがあるのはカミルだけだし少し驚いてたんだ。」
同い年の子供の多さにカミルも驚いていた。少し不安だったから速めにカミルに会えてよかった。
「こほん。」
40代くらいの司祭が咳払いをすると、会場が静かになった。
「皆さんこんにちは。魔法の適性属性検査を開始します。皆さんが今日という日を迎えられたことを嬉しく思います。四大属性の火、水、風、土、そして稀少属性の光、闇。魔法にはこの6属性があります。これから皆さんはどの魔法属性に適性があるかを確かめます。魔力がなく、魔法の適性を得られない人もいるかもしれません。しかしこれらはあなたたちの人としての価値を決める物ではないということを覚えておいてください。」
司祭はあいさつを終えると適性属性検査の儀式について話し始めた。
「これから一人ずつ検査の間に入ってもらいます。そこにある水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
司祭は説明が終わると検査の間に入っていき、中からは助祭らしき男が出てきた。
「マティアス様、検査の間へどうぞ。」
「はい。じゃあ、カミル。また今度。」
「あぁ。」
助祭に呼ばれた僕はカミルに声をかけて検査の間へ入った。
中には司祭一人だけがいて、検査用の水晶が台に乗せられていた。
台の上に手を置くと、何か不思議な感覚があった。台は黄色に光った。
「マティアス様は土属性ですね。」
一緒に水晶を確認して司祭が適性属性を教えてくれた。検査が終わった僕は父さんのもとへ戻る。
「マティアス、早かったね。」
馬車の外で待っていた父さんに声をかけられ、一緒に乗り込む。
「どうだった?」
「はい。土属性でした。」
「そうか。僕と一緒だね。僕はあまり魔法が得意ではないけれどなんでも聞いていいからね。」
マティアスの適性属性の報告を受け、ハインツは嬉しそうに笑う。
「僕は全員分の適性属性の結果を聞かなきゃならないから終わるまでしばらく待つけど大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。」
ハインツは領地全員分の適性属性の報告を受ける必要がある。ハインツに限らずどこの領主も領民の適性については報告を受けている。これは、稀少属性の子供が魔法師団等の支援を受けて学園に入る際に事前に魔法師団に書状を送らなければならないためだ。同然学園や魔法師団でも適性検査を行うことはできるが、それらの手配をスムーズに行うためにもこのような形式がとられている。
今年の適性検査は全員おわり、報告を受けたハインツが馬車に戻ってきた。ハインツも馬車に乗り込み、ネルフューア邸に向かった。
帰りの馬車では魔法の話や最近の僕の勉強の話をしながら帰った。
――――
「ただいま」「ただいま帰りました。」
父さんと僕が屋敷に帰るとエマを抱いた母さんと兄さんとが迎えに出てくれていた。
「「おかえりなさい」」
「マティアス、適性検査はどうだった?」
「はい、土属性の適性でした。」
母さんと兄さんにも適性属性の報告をした。
「そっか、マティアスは父さんと同じ属性なんだね。」
兄さんは笑顔を浮かべながら父さんと同じことを言った。
「姉さんは火、兄さんは水、僕は土だから兄弟で同じ属性はいないね。」
順番に四大属性が出ているということは、エマは風だったりして。
「じゃあ、ようやくマティアスも魔法の練習を始められるのね。」
「本当ですか!?」
アレクシアの提案にマティアスは目を輝かせた。
「早速明日から始めましょうか。」
準備を終えたハインツがマティアスに声をかける。今日のネルフューア邸は朝からほんの少しだけ忙しい。
「はぁ~い。」
あくびをしながら間延びした返事をする。今日は領内にある教会に行く。なにをするかというと、待ちに待った適性属性の検査だ。
準備を終えた僕は足早に玄関へ向かう。
「準備できました。」
既に準備を終えた父さんと馬車に乗り出発する。
――――
「マティアスはどの魔法が使いたい?」
「んー、全部使ってみたいです。」
「あはは、マティアスは欲張りだね。全部使えるといいね。」
僕の返事が面白かったのか父さんが笑う。
そんなこんなで父さんと話をしているうちに教会についた。馬車から降りると適性検査を受けに来た子供の親と思われる人がたくさんいた。領主の息子だからか、僕や父さんが降りると視線が集まる。
「じゃあマティアス、私は中に入れないから。一人で大丈夫だね?」
「はい、大丈夫です。行ってきます。」
教会に入ることができるのは適性検査を受ける子供だけらしく、馬車から降りると父さんに見送られる。
教会の中に入ると領内の同い年の子供がたくさんいた。教会の中では子供だけだからか僕に視線が集まるようなことはなかった。
「マティアス、遅かったな。」
その中で一人だけ僕に話しかけてくる子供がいた。
「カミル、おはよう。」
リネット村でよく一緒に遊んでいるカミルだった。
「おはよう。ネルフューア領にはこんなに同い年の子供がいたんだな。」
「そうだね。僕も領内を回ったことはあるけど、遊んだことがあるのはカミルだけだし少し驚いてたんだ。」
同い年の子供の多さにカミルも驚いていた。少し不安だったから速めにカミルに会えてよかった。
「こほん。」
40代くらいの司祭が咳払いをすると、会場が静かになった。
「皆さんこんにちは。魔法の適性属性検査を開始します。皆さんが今日という日を迎えられたことを嬉しく思います。四大属性の火、水、風、土、そして稀少属性の光、闇。魔法にはこの6属性があります。これから皆さんはどの魔法属性に適性があるかを確かめます。魔力がなく、魔法の適性を得られない人もいるかもしれません。しかしこれらはあなたたちの人としての価値を決める物ではないということを覚えておいてください。」
司祭はあいさつを終えると適性属性検査の儀式について話し始めた。
「これから一人ずつ検査の間に入ってもらいます。そこにある水晶に手をかざすと適性属性がわかります。」
司祭は説明が終わると検査の間に入っていき、中からは助祭らしき男が出てきた。
「マティアス様、検査の間へどうぞ。」
「はい。じゃあ、カミル。また今度。」
「あぁ。」
助祭に呼ばれた僕はカミルに声をかけて検査の間へ入った。
中には司祭一人だけがいて、検査用の水晶が台に乗せられていた。
台の上に手を置くと、何か不思議な感覚があった。台は黄色に光った。
「マティアス様は土属性ですね。」
一緒に水晶を確認して司祭が適性属性を教えてくれた。検査が終わった僕は父さんのもとへ戻る。
「マティアス、早かったね。」
馬車の外で待っていた父さんに声をかけられ、一緒に乗り込む。
「どうだった?」
「はい。土属性でした。」
「そうか。僕と一緒だね。僕はあまり魔法が得意ではないけれどなんでも聞いていいからね。」
マティアスの適性属性の報告を受け、ハインツは嬉しそうに笑う。
「僕は全員分の適性属性の結果を聞かなきゃならないから終わるまでしばらく待つけど大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です。」
ハインツは領地全員分の適性属性の報告を受ける必要がある。ハインツに限らずどこの領主も領民の適性については報告を受けている。これは、稀少属性の子供が魔法師団等の支援を受けて学園に入る際に事前に魔法師団に書状を送らなければならないためだ。同然学園や魔法師団でも適性検査を行うことはできるが、それらの手配をスムーズに行うためにもこのような形式がとられている。
今年の適性検査は全員おわり、報告を受けたハインツが馬車に戻ってきた。ハインツも馬車に乗り込み、ネルフューア邸に向かった。
帰りの馬車では魔法の話や最近の僕の勉強の話をしながら帰った。
――――
「ただいま」「ただいま帰りました。」
父さんと僕が屋敷に帰るとエマを抱いた母さんと兄さんとが迎えに出てくれていた。
「「おかえりなさい」」
「マティアス、適性検査はどうだった?」
「はい、土属性の適性でした。」
母さんと兄さんにも適性属性の報告をした。
「そっか、マティアスは父さんと同じ属性なんだね。」
兄さんは笑顔を浮かべながら父さんと同じことを言った。
「姉さんは火、兄さんは水、僕は土だから兄弟で同じ属性はいないね。」
順番に四大属性が出ているということは、エマは風だったりして。
「じゃあ、ようやくマティアスも魔法の練習を始められるのね。」
「本当ですか!?」
アレクシアの提案にマティアスは目を輝かせた。
「早速明日から始めましょうか。」
1
お気に入りに追加
7
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……


スマートシステムで異世界革命
小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 ///
★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★
新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。
それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。
異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。
スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします!
序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです
第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練
第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い
第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚
第4章(全17話)ダンジョン探索
第5章(執筆中)公的ギルド?
※第3章以降は少し内容が過激になってきます。
上記はあくまで予定です。
カクヨムでも投稿しています。

錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。
いいたか
ファンタジー
小説家になろうにて130万PVを達成!
この世界『アレスディア』には天職と呼ばれる物がある。
戦闘に秀でていて他を寄せ付けない程の力を持つ剣士や戦士などの戦闘系の天職や、鑑定士や聖女など様々な助けを担ってくれる補助系の天職、様々な天職の中にはこの『アストレア王国』をはじめ、いくつもの国では不遇とされ虐げられてきた鍛冶師や錬金術師などと言った生産系天職がある。
これは、そんな『アストレア王国』で不遇な天職を賜ってしまった違う世界『地球』の前世の記憶を蘇らせてしまった一人の少年の物語である。
彼の行く先は天国か?それとも...?
誤字報告は訂正後削除させていただきます。ありがとうございます。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで連載中!
現在アルファポリス版は5話まで改稿中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

カフェ・ユグドラシル
白雪の雫
ファンタジー
辺境のキルシュブリューテ王国に店長が作る料理に舌鼓を打つ、様々な種族が集う店があった。
店の名前はカフェ・ユグドラシル。
そのカフェ・ユグドラシルを経営しているのは、とある準男爵夫妻である。
準男爵はレイモンドといい、侯爵家の三男であるが故に家を継ぐ事が出来ず高ランクの冒険者になった、自分の人生に悩んでいた青年だ。
準男爵の妻である女性は紗雪といい、数年前に九尾狐を倒した直後にウィスティリア王国による聖女召喚に巻き込まれた挙句、邪心討伐に同行させられたのだ。
しかも邪心討伐に同行していた二人の男によって、聖女を虐げたという濡れ衣を着せられた紗雪は追放されてしまう。
己の生きる道に迷っている青年と、濡れ衣を着せられて国を追われた女が出会った時、停滞していた食文化が、国が、他種族が交流の道を歩み始める───。
紗雪は天女の血を引くとも言われている(これは事実)千年以上続く官人陰陽師の家系に生まれた巫女にして最強の退魔師です。
篁家や羽衣の力を借りて九尾を倒した辺りは、後に語って行こうかと思っています。
紗雪が陰陽師でないのは、陰陽師というのが明治時代に公的に廃されたので名乗れないからです。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる