8 / 11
第8話
しおりを挟む
エマが産まれてから2か月近くたち、11月になった。クラウス兄さんも学園の入学試験のために王都に向けて出発した。そして、今日からマティアスも魔法の授業が始まる。
「マティアス様、旦那様から本日から魔法の授業を始めるようにと仰せつかっております。」
「やった!」
ベルタがネルフューア家にやって来てから早7か月。ベルタの授業は難しいが、聞けばなんでも返してくれるので、勉強自体は楽しくなっていた。そして、ついに魔法の授業をしてくれることになった。
「マティアス様はまだ、魔法を使える年齢ではありませんのであくまでも座学です。魔法の基礎知識をお教えします。」
「うん、わかってる。」
そう、僕はまだ4歳で適性検査が終了していない。5か月後にある適性検査が終わるまで魔法は使えないのだ。
「それでは本日の授業を始めます。まずは、魔法とはどんなものだと思いますか?」
「え?うーん…。」
最初から質問され、僕は考え込んでしまう。ベルタの授業はいつもこうだ。最初から僕に問題を出して考えさせる。
「質問を少し変えましょう。今までにどのような魔法をご覧になりましたか?」
僕が答えにくそうにすると質問を変えてくれたり、ヒントをくれたりする。授業自体は難しいがベルタの授業は受けていてわかりやすいし、楽しいと感じるのはこの進め方が理由だろう。
「水を出したり、風を吹かせたり、火を着けたり?」
見たままのことを答えた。
「魔法はそういった魔力を使って自然的な現象を引き起こすことを指します。そして、その自然的な力で分類したものを属性と呼びます。属性についてはご存知ですか?」
属性については昔ラインハルトから聞いたような気がする。
「『火』『水』『土』『風』『光』『闇』の6属性があるんだよね。」
「その通りです。『火』『水』『土』『風』は四大属性と呼ばれ、練習次第では誰でも使える属性とされています。『光』『闇』属性は稀少属性と呼ばれています。この二つの属性が稀少属性と呼ばれる理由は、適性を持つ人間が極端に少ないことと、適性を持たない人間が練習しても『光』『闇』属性の魔法は使えないからです。」
「へぇー。ちなみに、どのくらい少ないの?」
「はい、光属性か闇属性を持つものどちらかがハイルムベルク王国では1年に二人生まれるかどうかといったところでしょうか。そのため、稀少属性持ちは魔法師団の研究協力を条件に、魔法師団からの推薦や学園の費用負担などの待遇を受けられます。」
そういえばこれも昔聞いたことがあった気がするぞ。
「ベルタは何属性なの?」
「私は土属性と風属性です。それでは授業を再開します。」
「はい。」
話が少しそれてしまっていた。
ベルタが仕切りなおして授業を再開する。
「先ほど四大属性は練習次第で誰でも習得できるとお伝えしました。しかし、この習得の速さや度合いには属性の相性があるとされています。」
「相性?」
「はい。火と風、土と水の組み合わせは互いに相性がよく、火と水、土と風の組み合わせは互いに相性が悪いです。適性属性以外の習得のしやすさはそれぞれこのようになっています。」
―――――――――――――――――
火:風>土>水 ・ 風:火>水>土
土:水>火>風 ・ 水:土>風>火
―――――――――――――――――
ベルタが紙を指しながら説明した。
「ここまで説明したことはあくまで基本に沿ったお話です。例外というのは存在しますし、実際はまだはっきりと分かっていない部分もあります。」
「そうなんだ。」
まだ、魔法の属性の話だけなのに知らなきゃいけないことが多くて大変だ。
ベルタはそのまま授業を続ける。
「この属性の習得の相性ですが、私のような複数適性にも適用されると思っていただいて大丈夫です。しかし、適性が複数ある場合は少々複雑ですので順を追って説明いたします。」
そういってベルタは紙を見せながら説明を始めた。
「この話を進めるにはまず適性属性とは何かを説明する必要があります。適性属性が何かはご存知ですか?」
「習得しやすい属性のことでしょう?」
「はい。基本的にはその認識で間違いありません。というより、実際のところそれ以上のことはまだよくわかっていません。今わかっているのは、複数適性がある場合は適性属性の中でも優先順位があるということです。」
「優先順位?」
「はい。例えば私は土と風の属性に適性があります。しかし、どちらも同じくらい上手に使えるわけではありません。私の場合は土属性の方が速く習得できました。とはいえ、適性属性がない人よりは風魔法の習得も速く、上手に使えますが。」
なんだかよくわからなくなってきたぞ。
少し複雑になって来てマティアスは頭が追い付かなくなっていた。
「失礼しました。ここまでは大丈夫でしょうか?」
「最後の方がちょっとよくわからないかな。」
僕は素直にわからないことを伝えた。するとベルタは一瞬だけ考える素振を見せてもう一度話し始めた。
「そうですね、もう少し広い範囲で例えますね。カルラ様は運動が得意だと伺っておりますが間違いありませんか?」
「うん、そうだね。あっているよ。」
「カルラ様には長剣と双剣の才能があり、他の人に比べどちらの扱いも圧倒的に上手です。しかし、カルラ様の中では双剣より長剣の方が覚えるのが簡単だったし、使っていてしっくりくる。というようなイメージです。」
「何となくわかった気がするよ。ありがとう。」
「いえ、少し複雑な話をしましたし、ここからも複雑な話が続きますので今日はここまでといたしましょう。」
こうして、初めての魔法の授業は終わった。
「マティアス様、旦那様から本日から魔法の授業を始めるようにと仰せつかっております。」
「やった!」
ベルタがネルフューア家にやって来てから早7か月。ベルタの授業は難しいが、聞けばなんでも返してくれるので、勉強自体は楽しくなっていた。そして、ついに魔法の授業をしてくれることになった。
「マティアス様はまだ、魔法を使える年齢ではありませんのであくまでも座学です。魔法の基礎知識をお教えします。」
「うん、わかってる。」
そう、僕はまだ4歳で適性検査が終了していない。5か月後にある適性検査が終わるまで魔法は使えないのだ。
「それでは本日の授業を始めます。まずは、魔法とはどんなものだと思いますか?」
「え?うーん…。」
最初から質問され、僕は考え込んでしまう。ベルタの授業はいつもこうだ。最初から僕に問題を出して考えさせる。
「質問を少し変えましょう。今までにどのような魔法をご覧になりましたか?」
僕が答えにくそうにすると質問を変えてくれたり、ヒントをくれたりする。授業自体は難しいがベルタの授業は受けていてわかりやすいし、楽しいと感じるのはこの進め方が理由だろう。
「水を出したり、風を吹かせたり、火を着けたり?」
見たままのことを答えた。
「魔法はそういった魔力を使って自然的な現象を引き起こすことを指します。そして、その自然的な力で分類したものを属性と呼びます。属性についてはご存知ですか?」
属性については昔ラインハルトから聞いたような気がする。
「『火』『水』『土』『風』『光』『闇』の6属性があるんだよね。」
「その通りです。『火』『水』『土』『風』は四大属性と呼ばれ、練習次第では誰でも使える属性とされています。『光』『闇』属性は稀少属性と呼ばれています。この二つの属性が稀少属性と呼ばれる理由は、適性を持つ人間が極端に少ないことと、適性を持たない人間が練習しても『光』『闇』属性の魔法は使えないからです。」
「へぇー。ちなみに、どのくらい少ないの?」
「はい、光属性か闇属性を持つものどちらかがハイルムベルク王国では1年に二人生まれるかどうかといったところでしょうか。そのため、稀少属性持ちは魔法師団の研究協力を条件に、魔法師団からの推薦や学園の費用負担などの待遇を受けられます。」
そういえばこれも昔聞いたことがあった気がするぞ。
「ベルタは何属性なの?」
「私は土属性と風属性です。それでは授業を再開します。」
「はい。」
話が少しそれてしまっていた。
ベルタが仕切りなおして授業を再開する。
「先ほど四大属性は練習次第で誰でも習得できるとお伝えしました。しかし、この習得の速さや度合いには属性の相性があるとされています。」
「相性?」
「はい。火と風、土と水の組み合わせは互いに相性がよく、火と水、土と風の組み合わせは互いに相性が悪いです。適性属性以外の習得のしやすさはそれぞれこのようになっています。」
―――――――――――――――――
火:風>土>水 ・ 風:火>水>土
土:水>火>風 ・ 水:土>風>火
―――――――――――――――――
ベルタが紙を指しながら説明した。
「ここまで説明したことはあくまで基本に沿ったお話です。例外というのは存在しますし、実際はまだはっきりと分かっていない部分もあります。」
「そうなんだ。」
まだ、魔法の属性の話だけなのに知らなきゃいけないことが多くて大変だ。
ベルタはそのまま授業を続ける。
「この属性の習得の相性ですが、私のような複数適性にも適用されると思っていただいて大丈夫です。しかし、適性が複数ある場合は少々複雑ですので順を追って説明いたします。」
そういってベルタは紙を見せながら説明を始めた。
「この話を進めるにはまず適性属性とは何かを説明する必要があります。適性属性が何かはご存知ですか?」
「習得しやすい属性のことでしょう?」
「はい。基本的にはその認識で間違いありません。というより、実際のところそれ以上のことはまだよくわかっていません。今わかっているのは、複数適性がある場合は適性属性の中でも優先順位があるということです。」
「優先順位?」
「はい。例えば私は土と風の属性に適性があります。しかし、どちらも同じくらい上手に使えるわけではありません。私の場合は土属性の方が速く習得できました。とはいえ、適性属性がない人よりは風魔法の習得も速く、上手に使えますが。」
なんだかよくわからなくなってきたぞ。
少し複雑になって来てマティアスは頭が追い付かなくなっていた。
「失礼しました。ここまでは大丈夫でしょうか?」
「最後の方がちょっとよくわからないかな。」
僕は素直にわからないことを伝えた。するとベルタは一瞬だけ考える素振を見せてもう一度話し始めた。
「そうですね、もう少し広い範囲で例えますね。カルラ様は運動が得意だと伺っておりますが間違いありませんか?」
「うん、そうだね。あっているよ。」
「カルラ様には長剣と双剣の才能があり、他の人に比べどちらの扱いも圧倒的に上手です。しかし、カルラ様の中では双剣より長剣の方が覚えるのが簡単だったし、使っていてしっくりくる。というようなイメージです。」
「何となくわかった気がするよ。ありがとう。」
「いえ、少し複雑な話をしましたし、ここからも複雑な話が続きますので今日はここまでといたしましょう。」
こうして、初めての魔法の授業は終わった。
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~
芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。
駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。
だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。
彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。
経験値も金にもならないこのダンジョン。
しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。
――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる