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第6話
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カルラ姉さんが王都に出発する日になった。学園にはニーナがついて行くことになっている。学園は8、9月と2、3月に長い休みがあってそれ以外は帰って来られないらしい。王都ではその月にもイベントがあるから帰ってこないこともあるとか。
「荷物は全部積めたかい?学園でもしっかりやるんだよ。」
「カルラ、頑張りなさいね。」
「来年は僕も入学だからよろしくね。」
「姉さん頑張ってね。」
ハインツとアレクシアが激励の言葉を贈る。続いて、クラウスとマティアスも見送りの言葉をかけた。カルラは笑顔で返事し、ニーナを連れて出発した。
「そういえば新しいメイドはいつから来るの?」
姉さんを見送った後、新しいメイドについて父さんに聞いた。
「3月末頃に到着予定と聞いているから、あと2週間くらいかな。」
「ふぅん。」
どんな人が来るか楽しみに思っている。考えていても仕方ないので、今日も村に遊びに行くことにしよう。
昼食後、すぐに屋敷を飛び出してリネット村に向かった。リネット村には頻繁に来るのも慣れたものだ。いつもカミルと遊んでいる場所に向かう。
「マティアス遅い。寒かった」
「そんなに遅くないよ。急いできたから。カミルの家の方が近いから仕方ないよ。」
既に来ていたカミルに文句を言われる。こちら急いできたのだと言い返す。いつもこんな言い合いをしてから遊び始める。
「カミル、今日は何するの。」
「石投げをする。父さんに的を作ってもらった。石も集めておいた。」
今日やることも決まったのでカミルについて行く。石投げは的に向かって石を投げて的の中心に近い方が勝ちの遊び。
「カミルも大人になったらここで畑するの?」
「いや、畑はしないよ。」
僕たちは石を投げながら話をする。カミルはお父さんの畑をすると思っていたから少しびっくりした。
「俺は騎士になるんだ。」
「へぇなんで騎士?」
「なんでって、かっこいいだろ。」
あまり何も考えてないってことか。僕も大人になったときのことなんて何も考えてないけど。あ、的の真ん中に当たった、などと思いながら話を続ける。
「騎士ってどうやってなるの?」
「知らない。強かったらなれるんじゃないか。」
結局騎士のなり方もわからないまま石投げを続けたが、寒くなって来たので遊ぶのをやめて帰ることにした。
屋敷に帰るとクラウス兄さんが庭にいた。さっきまで素振りをしていたのか木剣が足元に置かれ、汗をかいている。
「兄さん、ただいま帰りました。」
「おかえり。」
クラウス兄さんは笑顔で迎えてくれた。今日の出来事を話した。
「兄さん、騎士ってどうやったらなれるの?」
「僕もあまり詳しくはないけれど、騎士団の入団試験に合格したらなれるよ。」
僕たちがわからなかったことを兄さんはあっさり答えてくれた。さすがクラウス兄さんだ。
「ん?マティアスは騎士になりたいの?」
「僕じゃなくて、カミルが大人になったら騎士になりたいんだって。」
「そうなんだ。王都の学園でも騎士になるための勉強をできるって姉さんから聞いたよ。3年通った後にもう3年騎士になるために勉強するところがあるみたい。」
そういえばカルラ姉さんは騎士を目指していると言っていた。あれ?姉さんは6年間学園に行くってことになるのか?
「剣の稽古をしているけれど、兄さんも騎士になるの?」
「僕は騎士にはならないよ。父様の後を継いでここの領主になるんじゃないかな。剣の稽古をしているのは少しでも自分を守れるようになるためだよ。」
「僕も父さんの後を継ぐの?」
「僕かマティアスのどちらか一人だけが継ぐことになるんじゃないかな。長男の僕が継ぐと思うけど、マティアスは領主になりたいの?」
「うーん。よくわからないや。」
今日は兄さんとも将来の話をした。自分のことはよくわからないけど、兄さんもカミルも、カルラ姉さんでさえ先のことを考えている。僕も少しは考えないといけないのかな。
カミルが騎士になるなら僕は魔法使いにでもなろうかな。
父さんに買ってもらった本に出てきた魔法使いが印象的だった僕は何となくそんなことを思った。本に出てきた魔法使いは白の魔法使いと呼ばれていて、黒の剣士と同じくらい強かった。最後には黒の剣士と協力して街の危機を救っていた。
再来年の4月には魔法の適性属性を調べる検査があることを思い出して少し楽しみになる。僕も本に出てくるような魔法使いになれるだろうか。
3月も終わりが近くなったころ、屋敷の横の使用人の宿舎に荷物が運び込まれていた。その翌日、僕らは屋敷のホールに集められた。どうやら新しいメイドの就任のあいさつらしい。ホールへ行くと見知ら女の子が立っていた。
「みんなにも紹介しておくね。新しいメイドのベルタだ。」
父さんの紹介に続いて、女の子が挨拶した。
「新しく参りました。メイドのベルタ・ブランクと申します。今年学園を卒業したばかりの若輩者ではございますが皆様よろしくお願いいたします。」
ついに新しいメイド、ベルタがやってきた。
「荷物は全部積めたかい?学園でもしっかりやるんだよ。」
「カルラ、頑張りなさいね。」
「来年は僕も入学だからよろしくね。」
「姉さん頑張ってね。」
ハインツとアレクシアが激励の言葉を贈る。続いて、クラウスとマティアスも見送りの言葉をかけた。カルラは笑顔で返事し、ニーナを連れて出発した。
「そういえば新しいメイドはいつから来るの?」
姉さんを見送った後、新しいメイドについて父さんに聞いた。
「3月末頃に到着予定と聞いているから、あと2週間くらいかな。」
「ふぅん。」
どんな人が来るか楽しみに思っている。考えていても仕方ないので、今日も村に遊びに行くことにしよう。
昼食後、すぐに屋敷を飛び出してリネット村に向かった。リネット村には頻繁に来るのも慣れたものだ。いつもカミルと遊んでいる場所に向かう。
「マティアス遅い。寒かった」
「そんなに遅くないよ。急いできたから。カミルの家の方が近いから仕方ないよ。」
既に来ていたカミルに文句を言われる。こちら急いできたのだと言い返す。いつもこんな言い合いをしてから遊び始める。
「カミル、今日は何するの。」
「石投げをする。父さんに的を作ってもらった。石も集めておいた。」
今日やることも決まったのでカミルについて行く。石投げは的に向かって石を投げて的の中心に近い方が勝ちの遊び。
「カミルも大人になったらここで畑するの?」
「いや、畑はしないよ。」
僕たちは石を投げながら話をする。カミルはお父さんの畑をすると思っていたから少しびっくりした。
「俺は騎士になるんだ。」
「へぇなんで騎士?」
「なんでって、かっこいいだろ。」
あまり何も考えてないってことか。僕も大人になったときのことなんて何も考えてないけど。あ、的の真ん中に当たった、などと思いながら話を続ける。
「騎士ってどうやってなるの?」
「知らない。強かったらなれるんじゃないか。」
結局騎士のなり方もわからないまま石投げを続けたが、寒くなって来たので遊ぶのをやめて帰ることにした。
屋敷に帰るとクラウス兄さんが庭にいた。さっきまで素振りをしていたのか木剣が足元に置かれ、汗をかいている。
「兄さん、ただいま帰りました。」
「おかえり。」
クラウス兄さんは笑顔で迎えてくれた。今日の出来事を話した。
「兄さん、騎士ってどうやったらなれるの?」
「僕もあまり詳しくはないけれど、騎士団の入団試験に合格したらなれるよ。」
僕たちがわからなかったことを兄さんはあっさり答えてくれた。さすがクラウス兄さんだ。
「ん?マティアスは騎士になりたいの?」
「僕じゃなくて、カミルが大人になったら騎士になりたいんだって。」
「そうなんだ。王都の学園でも騎士になるための勉強をできるって姉さんから聞いたよ。3年通った後にもう3年騎士になるために勉強するところがあるみたい。」
そういえばカルラ姉さんは騎士を目指していると言っていた。あれ?姉さんは6年間学園に行くってことになるのか?
「剣の稽古をしているけれど、兄さんも騎士になるの?」
「僕は騎士にはならないよ。父様の後を継いでここの領主になるんじゃないかな。剣の稽古をしているのは少しでも自分を守れるようになるためだよ。」
「僕も父さんの後を継ぐの?」
「僕かマティアスのどちらか一人だけが継ぐことになるんじゃないかな。長男の僕が継ぐと思うけど、マティアスは領主になりたいの?」
「うーん。よくわからないや。」
今日は兄さんとも将来の話をした。自分のことはよくわからないけど、兄さんもカミルも、カルラ姉さんでさえ先のことを考えている。僕も少しは考えないといけないのかな。
カミルが騎士になるなら僕は魔法使いにでもなろうかな。
父さんに買ってもらった本に出てきた魔法使いが印象的だった僕は何となくそんなことを思った。本に出てきた魔法使いは白の魔法使いと呼ばれていて、黒の剣士と同じくらい強かった。最後には黒の剣士と協力して街の危機を救っていた。
再来年の4月には魔法の適性属性を調べる検査があることを思い出して少し楽しみになる。僕も本に出てくるような魔法使いになれるだろうか。
3月も終わりが近くなったころ、屋敷の横の使用人の宿舎に荷物が運び込まれていた。その翌日、僕らは屋敷のホールに集められた。どうやら新しいメイドの就任のあいさつらしい。ホールへ行くと見知ら女の子が立っていた。
「みんなにも紹介しておくね。新しいメイドのベルタだ。」
父さんの紹介に続いて、女の子が挨拶した。
「新しく参りました。メイドのベルタ・ブランクと申します。今年学園を卒業したばかりの若輩者ではございますが皆様よろしくお願いいたします。」
ついに新しいメイド、ベルタがやってきた。
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