ダークチョコレート

仙崎 楓

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離れたくない

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「何を言ってこようが俺達には関係ない。
   お前に漬け込む余地はない」
和哉に言葉を吐き捨てると鍵を開けて家に入った。

強気に出たものの、気が気ではなかった。
いつまでたっても和哉の動向が気になって、夜になっても寝付けず、ビールでも飲めば寝れるかと思いコンビニに行こうと外に出ると、もう和哉の姿はなかった。
俺はただ、先生が俺だけを信じてくれるよう祈るしかなかった。

 翌朝いつもの時間に病院の前を通ると、先生が日課の掃き掃除をしていた。
普段通りに生活している姿が見えて、ほっとした。

「先生、おはよう」
「おはようございます。
昨日はバーベキューありがとうございました。
片付けまで全部引き受けてもらって」
「全然。
また行こうよ。
あれ…、今日はタートルネックなんだ」
先生の朝の姿は決まってオフホワイトのトレーナーなのに、今日に限って同色のタートルネックになっている。
「朝、コーヒーを溢してしまったんです」
「大丈夫?
火傷しなかった?」
「それはないです。
ありがとう」
「ならいいけど。
俺 、先生の肌綺麗で好きだから傷つくのは嫌だからね。
今度チェックするから」
「タケル君は、ほんと心配性ですね」
苦笑する先生は照れて赤くなっていた。
ずっと一緒にいたい気持ちを抑えて俺は駅に向かった。
先生と会った後のふわふわとした甘い余韻に浸っているうちに、俺の中にあった危機感はいつの間にか消え失せていた。


  オフィスワークの週始めは何かと雑用で忙しい。
土日の間に溜まっていたメールを片付け、一気に押し寄せる案件の計画を立てて粗方目処がつく頃には昼休みが始まっていた。

  今から食べに言っても行列に並ぶだけだ。
それならもう少し時間をおいて空いた頃に掻き込みに行こうかと、頭の中で予定を立てた。
午後の予定でも組もうとパソコンでウインドウをひとつ立ち上げたとき、来客対応の女の子がやって来た。

「高木さーん。
弟って言ってる子が来てますけど、通していいですか?」

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