星狩る人

仙崎 楓

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いちゃついてるつもりはない②

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どう断ろうかと悩んでいると思いきり腕を引っ張られて、オレはズッコケそうになった。
「君、僕を差し置いていい度胸してるね。
 ちょっといい?」
叶多は男に断りを入れるとオレを乱暴に引っ張って会場を離れた。
男はオレと叶多に取り合いをされたような状況にまんざらでもなさそうな顔をしていた。
 
叶多は会場から随分と離れた何にも使われていない部屋を見つけた。
覗いてみると、何かに使う予定はなさそうで、披露宴に使うような机や椅子が端に寄せられている。
「馬鹿かお前!!」
鍵をかけた途端、オレは叶多に怒鳴り散らされた。
「いいか、俺のことは構うな!
 じゃなきゃお前まで同じ目に遭う」
「馬鹿でもいいよ!
 あんなセクハラ見過ごせるわけねえだろうが、バーカ!」
「このっ」
「だってオレは、叶多を助けるためにここに来たんだぜ。
 ずっと助けてもらってばっかだけど、オレだってお前を助けたい」
叶多は長い間悩んだ挙句、くそっと悪態をつくと自分の頭をぐしゃぐしゃとかいた。
そしてオレを引き寄せると、噛み付くようなキスをした。
「お互い毒消し」
叶多は離れると唇を尖らせて呟いた。
「俺は慣れてるけど、お前は気をつけろよ。
 ・・・結構見られてた」
「え~?
 着物着た新顔だったからじゃねえの?
 まさかオレが狙われることは」
「どっかのお坊ちゃまに見えるかと思って着物にしたら仕上がりが良すぎた。
お前がモテるとは予想外だった」
叶多の表情は本気だった。。
「それ、失礼じゃね?」
「お前がいるとほんと調子狂う。
 こんな事二度と御免だぜ」
「じゃ、とっとと片付けようぜ。
 ・・・そろそろ全額集まったんじゃないか」
「ああ。 滝と大門が二人になったときが、そいつの出番だ」 
 オレは着物の袖からそっとカメラを取り出した。
叶多の顔に緊張が走った。
オレもカメラをしっかりと抱えた。

これでオレの夢はまた消える。

 オレはなるべく明るい感じで切り出した。
「叶多ごめんな。
オレさっき叶多に、自分を一番にって言われたけど、約束できない。
 オレ、写真辞めるわ」
スクープ写真を撮って大門を消さなければ、叶多は自由を取り戻せない。
けどスクープを公表すれば、叶多は枕営業をした芸能人として好奇の目に晒される。
だから写真は絶対に撮らなきゃいけないけど、表には出せない。
おそらく写真を渡さなければオレの賞は抹消されるだろう。
それでも渡さない。そして叶多の解放を誓わせる。
オレだけが何事もなく夢を追い続けるなんてできない。
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