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やっと外に出られました。
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オレってジェットコースターに乗ったんだっけ?
叶多ときたら、自前のスポーツカーを飛ばす飛ばす。
前の車と車の間をガンガンすり抜けていく。
…あ、ドアの開け方が分からない。
なんか、斜め上に開いてた気がするけど。叶多はオレが試行錯誤しているのに気づくと、俺の上に乗っかるように助手席のドアに手を伸ばした。
叶多の体重が感じられて、心臓がびくっと震えた。
一気に顔が熱くなる。
「どうぞ、お嬢様」
「!
またバカにしやがって!」
オレは車から飛び降りた。
くそっ。
あんな奴にからかわれてドギマギするなんて馬鹿みたいだ。
しかも相手は男だぞ、男!
錆びた赤い階段を昇って、二階の角部屋の鍵を開ける。
ドアを開けると、ギイ、ときしんだ音がする。
玄関から全てが見渡せる小さな部屋がある。
家具はないけど、叶多の部屋と違って、畳の部屋にカメラの機材や本の入ったダンボールなんかがいくつも置いてある。
「散らかってるけど、どっか座って待ってて」
叶多は無言のまま部屋に上がった。
そして、ノートパソコンが開かれたままの机の前に胡坐をかいて座った。
オレは冷蔵庫を開けた。
うん、見事に空っぽだ。
見る前から何もないとは思ってたけど、もしかしたら何かあるかもと一縷の望みをもって中身を確認してみた。
やっぱり叶多に出せるようなお茶のようなものは一本もなかった。
それどころか、コンビニ弁当についてた調味料程度しか見当たらなかった。
「悪い、何もない」
「そもそも期待してない。
入った瞬間に肖像権料払えそうもないことも悟った」
「取るつもりだったのかよ!」
もてなすつもりが落ち込んでさらに腹が立っただだけだった。
とっとと要るものだけ用意するか。
「お、すげえ」
「あ、勝手に見るなよ」
叶多はオレのパソコンをいじって昔のフォルダを開いていた。
無数の天体写真が画面いっぱいに広がっている。
「何で?
いいじゃん。
極秘エロ画像とか出てくるとか?」
「出てこねえよ」
「これ撮ったのお前?」
「………そうだよ。
オレが、学生のときに撮った大事な写真だ」
「・・・すっげえ綺麗」
叶多はモニターに食い入るように写真を見ている。
「・・・ありがとう」
「パパラッチよりこっちのほうがお前っぽい。
お前のこと良く知らないから何となくだけど」
叶多の言葉を聞いて、オレは思わず身を乗り出した。
「本当か?
オレも!
…オレも本当は星撮って食っていきたいんだ」
「この写真で応募とかすればいいじゃん・・・、て応募してるし」
フォルダに保存された応募票を開かれている。
「昔の一枚にこだわるんじゃなくて、これからもっといいやつ撮ろうと思ってさ」
「ふうん」
「ホイ!」
オレはマウスをクリックして、ウインドウを閉じると、さっさとシャットダウンした。
「充電器も持ったし、準備オッケー。
じゃあ叶多のマンションに」
「あ、ヤベ。
仕事行く時間だ」
「お前またかよっ!」
ホントに寝る間もない男だな。
…まあ、邪魔してるオレも悪いんだけどさ。
「ここから直に行くから、お前も連れてく」
「え、どこに」
「スタジオ。
これから雑誌の撮影だ」
…おいおい、大丈夫かよ~!
叶多ときたら、自前のスポーツカーを飛ばす飛ばす。
前の車と車の間をガンガンすり抜けていく。
…あ、ドアの開け方が分からない。
なんか、斜め上に開いてた気がするけど。叶多はオレが試行錯誤しているのに気づくと、俺の上に乗っかるように助手席のドアに手を伸ばした。
叶多の体重が感じられて、心臓がびくっと震えた。
一気に顔が熱くなる。
「どうぞ、お嬢様」
「!
またバカにしやがって!」
オレは車から飛び降りた。
くそっ。
あんな奴にからかわれてドギマギするなんて馬鹿みたいだ。
しかも相手は男だぞ、男!
錆びた赤い階段を昇って、二階の角部屋の鍵を開ける。
ドアを開けると、ギイ、ときしんだ音がする。
玄関から全てが見渡せる小さな部屋がある。
家具はないけど、叶多の部屋と違って、畳の部屋にカメラの機材や本の入ったダンボールなんかがいくつも置いてある。
「散らかってるけど、どっか座って待ってて」
叶多は無言のまま部屋に上がった。
そして、ノートパソコンが開かれたままの机の前に胡坐をかいて座った。
オレは冷蔵庫を開けた。
うん、見事に空っぽだ。
見る前から何もないとは思ってたけど、もしかしたら何かあるかもと一縷の望みをもって中身を確認してみた。
やっぱり叶多に出せるようなお茶のようなものは一本もなかった。
それどころか、コンビニ弁当についてた調味料程度しか見当たらなかった。
「悪い、何もない」
「そもそも期待してない。
入った瞬間に肖像権料払えそうもないことも悟った」
「取るつもりだったのかよ!」
もてなすつもりが落ち込んでさらに腹が立っただだけだった。
とっとと要るものだけ用意するか。
「お、すげえ」
「あ、勝手に見るなよ」
叶多はオレのパソコンをいじって昔のフォルダを開いていた。
無数の天体写真が画面いっぱいに広がっている。
「何で?
いいじゃん。
極秘エロ画像とか出てくるとか?」
「出てこねえよ」
「これ撮ったのお前?」
「………そうだよ。
オレが、学生のときに撮った大事な写真だ」
「・・・すっげえ綺麗」
叶多はモニターに食い入るように写真を見ている。
「・・・ありがとう」
「パパラッチよりこっちのほうがお前っぽい。
お前のこと良く知らないから何となくだけど」
叶多の言葉を聞いて、オレは思わず身を乗り出した。
「本当か?
オレも!
…オレも本当は星撮って食っていきたいんだ」
「この写真で応募とかすればいいじゃん・・・、て応募してるし」
フォルダに保存された応募票を開かれている。
「昔の一枚にこだわるんじゃなくて、これからもっといいやつ撮ろうと思ってさ」
「ふうん」
「ホイ!」
オレはマウスをクリックして、ウインドウを閉じると、さっさとシャットダウンした。
「充電器も持ったし、準備オッケー。
じゃあ叶多のマンションに」
「あ、ヤベ。
仕事行く時間だ」
「お前またかよっ!」
ホントに寝る間もない男だな。
…まあ、邪魔してるオレも悪いんだけどさ。
「ここから直に行くから、お前も連れてく」
「え、どこに」
「スタジオ。
これから雑誌の撮影だ」
…おいおい、大丈夫かよ~!
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