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なぜコイツと風呂に入らなきゃならないんだ
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こんなあったかい場所は久しぶりだ。
「そら」
名前を呼ばれてゆっくりと覚醒して、自分が寝てしまっていたことに気づく。
そうっと目を開けると、目の前には仕事に行ったはずの叶多がいた。
一気に今の状況を思い出し、オレは背筋をピン!と伸ばした。
「え…、ぎゃあ!!
かなた、わあ!!」
オレは叶多にお姫さま抱っこで持ち上げられた。
「軽」
「馬鹿にすんな!
下ろせよっ!」
と言うないなや思いきりベッドに落された。
ベッドで弾んで身動き取れないうちに叶多がオレの上に馬乗りになった。
めちゃくちゃ怒った顔をしている。
やっぱ物色したこと怒ってるのかな。
「なに、この格好。
誘ってんの?」
「はあ!?
オレ男だぞ。
んなわけねえだろ」
どうやらシャツを勝手に着たことを怒っているわけではなさそうだ。
「大門と俺を見て、相手してもらえるとでも思ったんだろ」
「バーカ!
芸能人だからって自惚れんなっ!
フロ掃除して濡れた服乾かしてんだよ!」
オレがバタバタと暴れると、叶多はオレの上から下りてベッドの上であぐらをかいた。
「じゃあ何で出て行ってないんだよ。
財布も取り返しておいて」
「は?
待ってるって言わせたのお前じゃんかよ」
叶多は思いきり顔をしかめた。
「お前、本気で言ってる?」
「もちろん、それだけじゃねえよ。
オレは、献金の証拠がほしい」
「別に献金にこだわらなくても、お前の持ってる写真を売れば終わりだろ」
「言ったじゃん。
献金の証拠を出してくれればキス写真は削除する。
お前との約束だから」
叶多はぽかんと口を開けて、呆気にとられた顔でオレを見ていた。
「お前は、どんだけ、馬鹿なんだ?」
「てめえこそ、どんだけ失礼なんだよ!」
オレは立ち上がるとズンズンと洗濯機に向かった。
服はとっくに乾いていて、温かくも何ともない。
ピッ、ゴーーーーーー。
オレについて来ていた叶多がバスタブにお湯を溜め始めた。
「着替えるから出て行けよ」
「風呂入れ」
「いらない」
「命令。」
オレはぐっと黙り込んだ。
………くそっ。
「オレは聞いてねえぞ」
ボコボコと泡が湧き上がるでっかいバスタブにもうかれこれ三十分以上入れられて、オレはのぼせきっていた。
「何が」
「何でお前と一緒に入らなきゃいけねえんだよ!」
バスタブの中で叶多が向かい合わせで浸かっている。
「ご主人様と一緒に入れてありがたく思え。
そしてしっかり温まるんだな」
「・・・オレじゃなくて、彼女と入ってろよ」
「彼女?
何週間も付きまとってたんならいないことくらい知ってるだろ」
「確かに女の子とは会ってなかったけど、洗面所に大量の化粧品が、あ…」
しまった、怒るかも。
けど、叶多は平然としたままだった。
「俺のだよ」
「え、マジ」
私物ということに驚きながらも、オレは心の中で確信していた。
叶多は家を詮索されるのが嫌で、金庫に証拠があるフリをしているわけじゃない。
つまり、家の中には献金の証拠はないんだ。
ということは…?
考えようとしたけど、頭がのぼせきって限界だった。
「もう十分あったまった!
いつもシャワーだからすぐのぼせるんだよ!」
ジャバッとバスタブから立ち上がると、頭がクラクラして、足元がふらついた。
「おい!」
倒れそうになったところを叶多が伸ばした腕に支えられる。
叶多の肌とオレの肌がぴったりとくついて、目が合った。
「げえええええ!
男なんかと抱き合っちゃった!」
「…おい、奴隷が助けてもらってその言い方はないだろうが」
「知ったこっちゃねえよ!」
オレは叶多を突き飛ばすと、地面を這いつくばってバスルームから脱出した。
「おいタオル」
オレを追いかけてきた叶多がタオルをとって渡してきた。
オレと叶多の姿が洗面所の鏡に映し出される。
裸で水滴が滴っている二人の姿が生々しくて、思わず鏡から目をそらした。
オレが照れていることに気づいた叶多は、
「鏡の裏からローションとって」
「は!?
どれだよ」
「一番下の右端の青いやつ」
オレは腰にタオルを巻いて、ローションとやらを探し始めた。
「そら」
名前を呼ばれてゆっくりと覚醒して、自分が寝てしまっていたことに気づく。
そうっと目を開けると、目の前には仕事に行ったはずの叶多がいた。
一気に今の状況を思い出し、オレは背筋をピン!と伸ばした。
「え…、ぎゃあ!!
かなた、わあ!!」
オレは叶多にお姫さま抱っこで持ち上げられた。
「軽」
「馬鹿にすんな!
下ろせよっ!」
と言うないなや思いきりベッドに落された。
ベッドで弾んで身動き取れないうちに叶多がオレの上に馬乗りになった。
めちゃくちゃ怒った顔をしている。
やっぱ物色したこと怒ってるのかな。
「なに、この格好。
誘ってんの?」
「はあ!?
オレ男だぞ。
んなわけねえだろ」
どうやらシャツを勝手に着たことを怒っているわけではなさそうだ。
「大門と俺を見て、相手してもらえるとでも思ったんだろ」
「バーカ!
芸能人だからって自惚れんなっ!
フロ掃除して濡れた服乾かしてんだよ!」
オレがバタバタと暴れると、叶多はオレの上から下りてベッドの上であぐらをかいた。
「じゃあ何で出て行ってないんだよ。
財布も取り返しておいて」
「は?
待ってるって言わせたのお前じゃんかよ」
叶多は思いきり顔をしかめた。
「お前、本気で言ってる?」
「もちろん、それだけじゃねえよ。
オレは、献金の証拠がほしい」
「別に献金にこだわらなくても、お前の持ってる写真を売れば終わりだろ」
「言ったじゃん。
献金の証拠を出してくれればキス写真は削除する。
お前との約束だから」
叶多はぽかんと口を開けて、呆気にとられた顔でオレを見ていた。
「お前は、どんだけ、馬鹿なんだ?」
「てめえこそ、どんだけ失礼なんだよ!」
オレは立ち上がるとズンズンと洗濯機に向かった。
服はとっくに乾いていて、温かくも何ともない。
ピッ、ゴーーーーーー。
オレについて来ていた叶多がバスタブにお湯を溜め始めた。
「着替えるから出て行けよ」
「風呂入れ」
「いらない」
「命令。」
オレはぐっと黙り込んだ。
………くそっ。
「オレは聞いてねえぞ」
ボコボコと泡が湧き上がるでっかいバスタブにもうかれこれ三十分以上入れられて、オレはのぼせきっていた。
「何が」
「何でお前と一緒に入らなきゃいけねえんだよ!」
バスタブの中で叶多が向かい合わせで浸かっている。
「ご主人様と一緒に入れてありがたく思え。
そしてしっかり温まるんだな」
「・・・オレじゃなくて、彼女と入ってろよ」
「彼女?
何週間も付きまとってたんならいないことくらい知ってるだろ」
「確かに女の子とは会ってなかったけど、洗面所に大量の化粧品が、あ…」
しまった、怒るかも。
けど、叶多は平然としたままだった。
「俺のだよ」
「え、マジ」
私物ということに驚きながらも、オレは心の中で確信していた。
叶多は家を詮索されるのが嫌で、金庫に証拠があるフリをしているわけじゃない。
つまり、家の中には献金の証拠はないんだ。
ということは…?
考えようとしたけど、頭がのぼせきって限界だった。
「もう十分あったまった!
いつもシャワーだからすぐのぼせるんだよ!」
ジャバッとバスタブから立ち上がると、頭がクラクラして、足元がふらついた。
「おい!」
倒れそうになったところを叶多が伸ばした腕に支えられる。
叶多の肌とオレの肌がぴったりとくついて、目が合った。
「げえええええ!
男なんかと抱き合っちゃった!」
「…おい、奴隷が助けてもらってその言い方はないだろうが」
「知ったこっちゃねえよ!」
オレは叶多を突き飛ばすと、地面を這いつくばってバスルームから脱出した。
「おいタオル」
オレを追いかけてきた叶多がタオルをとって渡してきた。
オレと叶多の姿が洗面所の鏡に映し出される。
裸で水滴が滴っている二人の姿が生々しくて、思わず鏡から目をそらした。
オレが照れていることに気づいた叶多は、
「鏡の裏からローションとって」
「は!?
どれだよ」
「一番下の右端の青いやつ」
オレは腰にタオルを巻いて、ローションとやらを探し始めた。
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