リピートライフ

花畑 空間

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第3章

#21衣装合わせ

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「じゃ、準備に移って~」
ウコイックがそう言うとみんな一斉に動き出した、中にはまだ表情が暗い人もいたけど。
過ぎてしまったものは仕方ない、そう思って僕は耐えている。
「ちょっとぉ!これって馬じゃねえのかぁ!?」
砕が着替えながら言った、たしかに馬だ、でもしょうがない、これ以外無かったから。
「ごめんね、それしか無かったんだよ」
「うーん、まあいっかぁ」
スポッ…
砕は馬の顔を被った。
…めちゃめちゃ面白い、ジワジワくる。
園児服に馬の顔は合わなすぎる。
「おい、前が見えないぞぉ」
砕は手を伸ばしバタバタさせながらうろちょろしている。
ちょっとなんかかわいらしいな、体はデカいけど。
「多分そこに穴が空いてるから、そこから見えるはずだよ、よいしょ」
僕は砕の被った馬の顔を少しずらした。
「お、見える見える、ありがとなぁ!」
砕はゆっくり他の衣装を着ていった。
女性陣はフリースペース、男はフリースペースの外で着替え中だ。
「あ、やばい、台本、フリースペースの中だ…」
1人の男性が言った。
さっきのを演技班が様子を見に来てた時に置いてきたのだろう、流れで着替えることになったから取りに行く時間も無さそうだったし。
「俺もだ」
「僕もです」
着替えてる人達が口を揃えて言った、どうしようか。
「なあ稗田っちぃ、台本持ってきてくれねえかぁ?俺ら着替えてるしよぉ」
いや、僕が?
「さすがにちょっと…」
「俺の馬のやつ被ってけよぉ、そしたら大丈夫だぁ」
被ったって前見えちゃうし…
「あ、裏にすればいいんじゃない?」
「お、そうしなよ、そしたら入れる!台本頼んだ!」
着替えてる人達が言った。
完全に僕が取りに行く流れだ。
僕は渋々、馬の被り物を被り、フリースペースの扉をノックした。
「あのー、ごめんください、みんなの台本を取りにやって参りましたんです」
緊張して言葉がおかしくなっている。
「あ、もしかして稗田君?じゃあ目瞑って、それなら入っていいわよ」
櫻さんが答えてくれた。
僕はそのままドアノブを探し、開けた。
「あのー、失礼します」
「「きゃぁ!」」
目には見えないが、多分僕ので驚いたのだろう。
園児服に180度首が回った馬の顔、そりゃ怖い。
「えーっと、ちょっと稗田君いいかしら?コホンっ…」
「ねえ、キュダキ、あなたはどうしてそんな姿になってしまったの…あなたはとても良い人なのに…どうかしら?」
櫻さんは僕を砕に見立ててちょっと練習したらしい。
の役名なのか、そのまんまだ、ちょっと変えただけ。
「あれ、そんなだったかしら?」
「いや、心に染みました、でもこの状況だから…」
「ふふっ…たしかにそうねっ」
櫻さんは笑いながら言った。
「あのー、台本は?」
「あ、ごめんごめん、忘れてたわ」
僕の手を引っ張り、机?に置いてある紙を触らせた。
「これが台本よ、それで男性達のは全部だから」
僕は左腕で抱えるようにして持った。
「ありがとうございます、あの、出口まで…」
「分かったわ、こっちよ」
僕の手を引っ張り、ドアノブを握らせた。
僕は扉を開けた。
「「うおお!!…あぁ」」
「誰か一緒に来るって期待してたんですか?残念でした、馬だけです。」
僕は呆れた目でみんなを見た。見えてないけど。こういう時の団結力って凄いよなぁ。
「なあ、見たのか?着替えてるとこ見たのか?」
「見てません、はい、これ台本です」
「ありがとうー」
「ありがとねぇ」
「サンキュー」
だんだん左腕が軽くなっていく。
「よいしょ」
僕は顔を前に回転させた。
「……あぁっ」
そこには変顔をする砕がいた。
「砕何やってるの」
「見えないからイタズラしちゃおうかなってよぉ、えへへぇ」
子供かっ。
「はい、台本っ」
僕は最後の1枚を砕に渡した。
「ありがとなぁ、みんなのも取ってきてくれてよぉ」
「いやいや、あと、これ返すよ」
馬の顔を渡した。
「お、ありがとう、これでいいんだっけかぁ?」
「違う、ここが目のとこ、そうそう」
「よし、これでいいよな、ありがとなぁ!」
「違う、そうじゃないって、こう!」
僕はまた砕の被った馬の顔を少しずらした。
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