21 / 113
第3章
#20 キイック
しおりを挟む
「ただいま~…アオイックから聞いたよ…」
キイックが帰ってきた。
「みんなごめん…アオイックも悪いやつじゃないんだけど、守れなかった…」
キイックはすごい責任を感じているようだ、今更だけどキイック達は僕達をここへ閉じ込めた悪者のはずなのに、ここまで落ち込んでいると味方なのかなんなのか分からなくなってくる。
響子さんは下を向いたままこう言った。
「まあ、ちゃんとやらなかった蒼ちゃんも…いけなかったからね…」
その通りでもある、だけど、僕が…僕が…
「おい、稗田っち、震えてるぞ、安心しろ」
砕がそっと抱きしめてくれた。
「あの、さっきウコイック達と話し合ってて決めたことがあるんだ~…」
決めたこと…?
「良いことと悪いこと、どっちから聞きたい?」
「じゃあ先に良い方で、少しでも元気になるはずよ」
櫻さんはそう言った。
「行方不明になってた2人が見つかったんだ、いや、見つかってたんだ~…」
ついに話すのか、解決したのだろうか。
「良かったわね、それで…悪い方は?」
「申し訳ないけど、今会わすことは出来ないんだ」
それも言うのか。
「ちなみにそれは、なんで?」
櫻さんは冷静に質問している、櫻さんは僕から聞いているから冷静でいられるのだろう。
「…ごめん、稗田君、あれ、名前合ってるよね?」
キイックが僕に話しかけてきた。
「合ってるけど…」
「君にもまだ伝えてない嘘があるんだ」
「嘘…?」
「それはね…あの二人は…もう僕が落としてたんだ…」
えっ…
「ごめんねみんな、今まで黙っていて、僕の部屋に元々あの二人は隠れてて、それで、えーと、あの…」
キイックは焦りながらも説明を続けた。
「2人の様子がおかしくなってね、あの、稗田君は目撃したって言ってたから先に伝えてて、その、解決法が無くて…落としちゃったんだ…」
「ていうことは…もう洋一さんは戻ってこないんですか…?」
南島さんが青ざめた顔でキイックに問いかけた。
「うん…ほんとにごめん…これで責任が晴れるか分からないけどさ…」
キイックは涙を堪えた顔で正面を向いた。
「みんな…さよなら」
…パカッ
…キイックは…落ちていった。
「嘘だろぉ…」
砕は唖然とした表情で穴を見ていた。
櫻さんは両手で口を抑え驚いた表情だった、日向ちゃんは櫻さんの背中にしがみついていて表情すら見えない。
逆に僕は意識が戻った、色々ありすぎて。
少し経つと穴は閉じていった。
「お~いみんな~、あれ~?キイックは~?」
ウコイックが部屋に入ってきた。
「どうしたのみんな~、暗い顔して~」
「キイックが落ちた…」
「…はぁ~?いや、そんなん無い無い、絶対無~い」
ウコイックは少し動揺した様子だ。
「えーっと、こうか」
ウコイックは右耳を軽く捻った、何をしてるのだろう。
「あれ~?これでキイックと繋がるはずなのにな~無線」
ウコイックはまだ信じていないようだ。
「え……ねえ、ほんとなの?」
ウコイックは真剣な表情に変わった。
「うん…」
「…くっ…何やってんだよキイック…優しすぎるんだよ…参加者にはあくまで同情するなって言ったのに…」
ウコイックはポツリと呟いた。
「えーと、それで、キイックからは聞いたの?行方不明の話…」
「もう聞いたぜ、それも驚いたけど、まさかキイックが落ちるだなんてよぉ…」
「はぁ…もうしょうがないから僕が今日からリーダーね~…キイック…」
ウコイックはキイックが落ちたダメージが大きいようだ。
「もう明日本番でしょ、今やらないと…う~ん、どうしよう~」
「正直目安の人数まで達したし、これ以上追加で落とすのは無しね~、でも演技はやってもらうよ~、せっかく今まで頑張ったのに全部中止って訳にはいかないでしょ~?」
この状況でまた準備を再開できるのだろうか…
「う~ん、ほんと困ったなぁ~、キイックが落ちるなんてなぁ~、はぁ~あ」
ウコイックも想定してなかったのだろう、いつもの調子が出てない。
「台本はもう終わってるの~?」
「え、あ、はい」
台本班の女性が答えた。
「道具班…だっけ~?それは~?」
「こちらも終わりました」
次は南島さんが答えた。
「じゃあ演技する人たちは~?」
「まだ衣装は合わせてないわ」
櫻さんがそう言うと、ウコイックは机にあった服を一気に全て持ち上げて、櫻さん達の前に置いた。
「じゃ、衣装合わせようか~」
ウコイックはもう切り替えれたようだ、機械だからだろうか。
「ええ、さあみんな!もうこの際やりきっちゃいましょうー!!」
櫻さんは大声で叫んだ。
「うおおおぉぉ!!!…あれ?」
砕が叫んだ、が、他に誰も叫んだ人はいなかった。
「じゃ、なんかみんな乗り気じゃなさそうだけど、エイエイオーしとく~?」
ウコイックがみんなを手招きした。
みんなでとりあえず円陣を組んだ。
「えーと、あいつに変わりまして、リーダーになりました~っ、ウコイックで~す、みんな~、明日までの練習頑張っていくぞぉ~!エイ!エイ~?!!」
「「お…おおおおお!!!」」
円陣って本番の前にやるんじゃないのか、と思ったけど、まあいいか。
キイックが帰ってきた。
「みんなごめん…アオイックも悪いやつじゃないんだけど、守れなかった…」
キイックはすごい責任を感じているようだ、今更だけどキイック達は僕達をここへ閉じ込めた悪者のはずなのに、ここまで落ち込んでいると味方なのかなんなのか分からなくなってくる。
響子さんは下を向いたままこう言った。
「まあ、ちゃんとやらなかった蒼ちゃんも…いけなかったからね…」
その通りでもある、だけど、僕が…僕が…
「おい、稗田っち、震えてるぞ、安心しろ」
砕がそっと抱きしめてくれた。
「あの、さっきウコイック達と話し合ってて決めたことがあるんだ~…」
決めたこと…?
「良いことと悪いこと、どっちから聞きたい?」
「じゃあ先に良い方で、少しでも元気になるはずよ」
櫻さんはそう言った。
「行方不明になってた2人が見つかったんだ、いや、見つかってたんだ~…」
ついに話すのか、解決したのだろうか。
「良かったわね、それで…悪い方は?」
「申し訳ないけど、今会わすことは出来ないんだ」
それも言うのか。
「ちなみにそれは、なんで?」
櫻さんは冷静に質問している、櫻さんは僕から聞いているから冷静でいられるのだろう。
「…ごめん、稗田君、あれ、名前合ってるよね?」
キイックが僕に話しかけてきた。
「合ってるけど…」
「君にもまだ伝えてない嘘があるんだ」
「嘘…?」
「それはね…あの二人は…もう僕が落としてたんだ…」
えっ…
「ごめんねみんな、今まで黙っていて、僕の部屋に元々あの二人は隠れてて、それで、えーと、あの…」
キイックは焦りながらも説明を続けた。
「2人の様子がおかしくなってね、あの、稗田君は目撃したって言ってたから先に伝えてて、その、解決法が無くて…落としちゃったんだ…」
「ていうことは…もう洋一さんは戻ってこないんですか…?」
南島さんが青ざめた顔でキイックに問いかけた。
「うん…ほんとにごめん…これで責任が晴れるか分からないけどさ…」
キイックは涙を堪えた顔で正面を向いた。
「みんな…さよなら」
…パカッ
…キイックは…落ちていった。
「嘘だろぉ…」
砕は唖然とした表情で穴を見ていた。
櫻さんは両手で口を抑え驚いた表情だった、日向ちゃんは櫻さんの背中にしがみついていて表情すら見えない。
逆に僕は意識が戻った、色々ありすぎて。
少し経つと穴は閉じていった。
「お~いみんな~、あれ~?キイックは~?」
ウコイックが部屋に入ってきた。
「どうしたのみんな~、暗い顔して~」
「キイックが落ちた…」
「…はぁ~?いや、そんなん無い無い、絶対無~い」
ウコイックは少し動揺した様子だ。
「えーっと、こうか」
ウコイックは右耳を軽く捻った、何をしてるのだろう。
「あれ~?これでキイックと繋がるはずなのにな~無線」
ウコイックはまだ信じていないようだ。
「え……ねえ、ほんとなの?」
ウコイックは真剣な表情に変わった。
「うん…」
「…くっ…何やってんだよキイック…優しすぎるんだよ…参加者にはあくまで同情するなって言ったのに…」
ウコイックはポツリと呟いた。
「えーと、それで、キイックからは聞いたの?行方不明の話…」
「もう聞いたぜ、それも驚いたけど、まさかキイックが落ちるだなんてよぉ…」
「はぁ…もうしょうがないから僕が今日からリーダーね~…キイック…」
ウコイックはキイックが落ちたダメージが大きいようだ。
「もう明日本番でしょ、今やらないと…う~ん、どうしよう~」
「正直目安の人数まで達したし、これ以上追加で落とすのは無しね~、でも演技はやってもらうよ~、せっかく今まで頑張ったのに全部中止って訳にはいかないでしょ~?」
この状況でまた準備を再開できるのだろうか…
「う~ん、ほんと困ったなぁ~、キイックが落ちるなんてなぁ~、はぁ~あ」
ウコイックも想定してなかったのだろう、いつもの調子が出てない。
「台本はもう終わってるの~?」
「え、あ、はい」
台本班の女性が答えた。
「道具班…だっけ~?それは~?」
「こちらも終わりました」
次は南島さんが答えた。
「じゃあ演技する人たちは~?」
「まだ衣装は合わせてないわ」
櫻さんがそう言うと、ウコイックは机にあった服を一気に全て持ち上げて、櫻さん達の前に置いた。
「じゃ、衣装合わせようか~」
ウコイックはもう切り替えれたようだ、機械だからだろうか。
「ええ、さあみんな!もうこの際やりきっちゃいましょうー!!」
櫻さんは大声で叫んだ。
「うおおおぉぉ!!!…あれ?」
砕が叫んだ、が、他に誰も叫んだ人はいなかった。
「じゃ、なんかみんな乗り気じゃなさそうだけど、エイエイオーしとく~?」
ウコイックがみんなを手招きした。
みんなでとりあえず円陣を組んだ。
「えーと、あいつに変わりまして、リーダーになりました~っ、ウコイックで~す、みんな~、明日までの練習頑張っていくぞぉ~!エイ!エイ~?!!」
「「お…おおおおお!!!」」
円陣って本番の前にやるんじゃないのか、と思ったけど、まあいいか。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
国を、民を守るために、武田信玄は独裁者を目指す。
独裁国家が民主国家を数で上回っている現代だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 純粋に国を、民を憂う思いが、粛清の嵐を巻き起こす
【第弐章 川中島合戦】 甲斐の虎と越後の龍、激突す
【第参章 戦争の黒幕】 京の都が、二人の英雄を不倶戴天の敵と成す
【第四章 織田信長の愛娘】 清廉潔白な人々が、武器商人への憎悪を燃やす
【最終章 西上作戦】 武田家を滅ぼす策略に抗うべく、信長と家康打倒を決断す
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です))

怪談収集家は探偵じゃありません! 戸羽心里はホンモノに会いたい──《ひもろきサマ》
牛丸 ちよ
ホラー
怪談収集家のトンチキ女子大生・戸羽心里は全国に散る「塩に関する怪談」に興味を持つ。
《ひろきくんにノックされると不幸になる盛り塩団地》──SNSで知り合った「祟られた人」の部屋へ泊まりに行くと、説明のつかない恐怖体験に襲われる。
そのころ、心里の下宿先の大家であり和装ナイスミドルな作家・下哭善太郎は《塩に邪気を封じる巫女》を取材し、奇跡を目の当たりにしていた。
合流した二人は、好奇心から類似性のあるオカルトスポット巡りを始める。
《富弥町の盛り塩禁止アパート》
《学校七不思議・雪の日の花子さん》
《牛鬼と塩の奇祭があるひもろきの村》
《玄関外の盛り塩が途切れない廃屋》
──そんな中で、「私がつぐなう」という遺書と、首吊り死体を見つけてしまう。
怪談をたどるほど物語は【現在】に収束し、本物の怪異と人間の悪意とが交差する。
(オカルト要素メインのサイコライトミステリ)
(恋愛要素なし)
(謎の投げっぱなしは極力しない系)
神送りの夜
千石杏香
ホラー
由緒正しい神社のある港町。そこでは、海から来た神が祀られていた。神は、春分の夜に呼び寄せられ、冬至の夜に送り返された。しかしこの二つの夜、町民は決して外へ出なかった。もし外へ出たら、祟りがあるからだ。
父が亡くなったため、彼女はその町へ帰ってきた。幼い頃に、三年間だけ住んでいた町だった。記憶の中では、町には古くて大きな神社があった。しかし誰に訊いても、そんな神社などないという。
町で暮らしてゆくうち、彼女は不可解な事件に巻き込まれてゆく。

感染系口裂け女をハントせよ
影津
ホラー
隣に引っ越してきたブランドを身に着けた女性は口裂け女!?
そう言い張っていた親友も消えた。
私と幼馴染で親友を探しに怪しいお隣の女性のところに踏み込む。
小さな町で、口裂け女に感染! 口裂け女って移るんだっけ!? みんなマスクしてるから誰が口裂け女か分かんないよ! 大人が信じてくれないのなら学生の私達だけで戦ってみせる!
ホームセンターコメリで武器調達。日常の中で手に入るものだけで戦う!

それ、しってるよ。
eden
ホラー
それ、しってるよ――――。
高校2年生の山下未子(やました みこ)は、人の心を読むことができる。
その力をコントロールすることができないでいる未子は、できるだけ人と関わらないことで自分を守っていた。
何度となく転校を繰り返してきた未子は、新たな学校で、未子の力で心を読むことができない生徒――天城璃星(あまき りせ)に出会う。
璃星の周辺で不可解な事件が起きることに気付いた未子は、璃星の秘密に迫ることになって――?
秘密を暴くことは、秘密を握られること。
事実は記憶の中に、真実は心の中に。
怨念がおんねん〜祓い屋アベの記録〜
君影 ルナ
ホラー
・事例 壱
『自分』は真冬に似合わない服装で、見知らぬ集落に向かって歩いているらしい。
何故『自分』はあの集落に向かっている?
何故『自分』のことが分からない?
何故……
・事例 弍
??
──────────
・ホラー編と解決編とに分かれております。
・純粋にホラーを楽しみたい方は漢数字の話だけを、解決編も楽しみたい方は数字を気にせず読んでいただけたらと思います。
・フィクションです。

暗闇の記憶~90年代実録恐怖短編集~
MITT
ホラー
実話を元に再構成したホラー小説短編シリーズです。
90年代、仲間達と当時有名だった心霊スポット「相模外科」で体験した奇妙な出来事。
暗闇の恐怖……それを垣間見た記憶。
当時を懐かしく思いながら、書いた作品です。
今より、闇が多かった時代、1990年代の頃の実話ベースの作品集です。
なろう連載版では三編に分かれていたのを統合のうえで、アルファにて逐次投稿する予定です。
短期集中連載予定です。

君の左目
便葉
ライト文芸
それは、きっと、運命の歯車が狂っただけ。
純粋な子供の頃から惹かれ合っていた二人は、残酷な運命の波にのまれて、離れ離れになってしまう。
それもまた運命の悪戯…
二十五歳の春、 平凡な日々を一生懸命過ごしている私の目の前に、彼は現れた。
私の勤める区役所の大きな古時計の前で、彼は私を見つけた…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる