リピートライフ

花畑 空間

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第3章

#18 2日目終了

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「今日はカレーライスよ~!」
キイックが昨日と同じように夕飯を持ってきた、お昼ごはんが無かったからその分お腹ぺこぺこだ。
「はい、どうぞ~…」
僕の番になるとキイックから少し笑顔が消え、僕の方を見て真剣な顔で頷いてきた。
きっと、みたいなことだろう。
「キイックぅ!めっちゃうめぇ!」
砕は笑顔でキイックに向かって叫んだ、まるで子供のようだ。
「よかったよ~、ふふふっ」
キイックは優しい表情をしていた、ほんとに機械なのか疑えるほどに穏やかな笑顔だ。
僕達はまた昨日と同じように夕飯食べ終わり、作業を始めた。
明日は他の班とも相談して、軽くリハーサルをすることにした。
もう道具も揃ったし、本番でウコイックにような演技をしないとだしね。
「今からお風呂に入っていいけど~、入るのは自由だからね~、めんどくさいなら入らないでいいよ~」
お風呂に入れるのか、サッパリするし入っておくか。
「みんな、お風呂入りに行こうよ」
「おうぅ!とも会えるかもだしなぁ」
たしかに情報共有とかしたいし、京君達に会いたいな。
僕らはお風呂に向かった。砕と僕は脱衣所に入るや否や、浴槽を覗いた。
お、京君がいるぞ。
「おーい、京…君…?」
様子が変だ。
「……」
京君は一点を見つめていた。
とりあえず僕と砕は服を脱ぎ、風呂へ向かった。
「どうしたんだぁ?具合でも悪いのかぁ?」
「……」
あんないた京君がここまで暗くなるのはおかしいぞ。
「おい、2人とも、こっち来い…」
北条さんがもう1つあった小さな風呂から手招きしてきた。
「何かあったんですか?」
「あのな…俺も正直やっと立ち直れたんだけどよ…メンバーがちまったんだ… 」
落とされた…そんな…
「あいつはああ見えて仲間思いでよ、だからなっちまったんだ、アオイックが「とりあえずてめぇら風呂入ってこい」って言うから京をとりあえず連れてきたんだけどな」
「そうだったんですね、なんて声をかけたらいいか…」
「お前が気にすることはねぇ、はバカなとこがあってよ、ちょっとしたことでアオイックと喧嘩になっちまってそのまま…くっ…」
北条さんは目頭を押さえた、よっぽど心に来たのだろう、出会ってまだ少ししか立ってないとはいえ、だったから。
「あんま聞いちゃ悪ぃかもだけどよぉ、落とされたのってチームのどんなやつだぁ?」
「ふっ、泣いてるのに聞くなんてお前らしいな、そっちのと戦ってたやつだ」
あの筋肉のある女性か…少し元気な印象だったが、少しおバカなところもあったんだな。
「すみません掘り下げるような聞き方して、今はそっとしておいた方が良いですかね?」
「京はそうだな、今は泣けるだけ泣かせてやろう、無理に触らないのも大事だからな」
僕と砕はそっと着替えてお風呂を出た。
一緒にお風呂に行った櫻さんと日向ちゃんはもう上がって待っていた。
「長かったわね、のぼせたんじゃない?」
「実は対抗戦の時戦ったチームの女性1人が落とされたらしいんです…」
「あら…それは残念ね…」
「たしかに対抗戦の時にお姉ちゃんと戦ってた人いなかったかも…朝に入った時は2人で仲良さそうにしてたから…」
「「……」」
少し重い空気が流れたが、とりあえず勝利側の部屋に着いた。
お風呂の方をチラッと見ると、北条さんに抱えられた京君がいた。
京君は来る時もこんな感じで入ったのだろうか、それより京君の脱力感がすごい、力が完全に抜けている。
「とりあえず入りましょう…」
僕達は部屋に入った。
「君たちおかえり~、お風呂どうだった~?気持ちよかった~?」
お風呂はたしかに良かったんだが、何より空気が重い。
「あれ、大丈夫~?何かあった~?」
「なんでもないわ、キイック」
「そう~?分かった~とりあえず歯磨きしてね~」
僕達は何か喋ることも無く歯を磨き、僕達の部屋に入った。
コンコンっ!
扉がノックされた、人が用事なんて珍しい。
扉を開けるとそこにはキイックがいた。
「君達、稗田君から何か?」
僕が秘密をバラしてないか聞きに来たのだろう。
「え、何も聞いてないけど」
「私も何も、なんかあったんですか?」
「なんだなんだぁ、怖いじゃねえかキイックぅ」
みんな演技力すごいな…これが噂の演技力か、自然すぎる…ん?砕は元々聞いてなかったのか。
「そうか、もう君も隠すの辛いだろうしここのチームには僕から伝えるね、実は行方不明者はもう見つかってるんだ、それも僕の部屋で、今は何かおかしくなってて、まともに話せない状態だから僕がどうにかするまでこの事は黙っていてくれ」
結局言うんかい、とも思ったが僕からばらすのではまた違うのだろう。
「…!見つかってるのね、でも何かおかしいなんて…心配ね…」
「まじかよぉ、俺ずっと心配してたんだぜぇ、見つかって良かったぁ」
「ちょっと安心しました、おかしいの治るといいですね」
「まあ、僕も頑張るから君達も明日と明後日の本番頑張ってね~」
「ちなみに先に君がみんなに言ってたら怒ってたからね~」
キイックはそう言い残し、部屋を去った。
怖…ここで咄嗟に2人が演技してくれてなかったらかもしれないなんて。
僕は少しだけ怯えつつ、布団に入った。
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