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第3章
#12 1日目終了
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それから僕達は長いこと作業を続けた。
砕達は台本を熟読し、キイックから役が割り振られるのを待った。
台本班は細かい誤字脱字のチェックをずっとしている。
そして、「みんな~ご飯よ~~!」の声。
キイックが警官帽ではなくバンダナを頭に巻いてキイックの部屋から出てきた。
キイックはワゴンを押していて、その上には1つのプレートにご飯とかおかずとかが乗ってるのがいくつも用意されている、人数分だろうか。
重いはずだしワゴンで体が見えなくなるほどの小ささだが軽々押している、キイックも機械なんだなぁと思った。
…キイックの部屋ってどんな部屋なんだろ。
キイックがみんなに1プレートずつ配っていく、しばらく何も口にしていなかったのもあり、口の中に痛くなるほどヨダレが出ている。
「はい、ど~ぞ~」
やっと配られた、ご飯の上にふりかけ、ハンバーグにポテトが三本、小さなサラダもある。
子供の好きそうなプレートだが、もちろん大人でも大好き。
僕は無我夢中に食べた。
「おかわりってあるかぁ?!」
砕がプレートをキイックに差し出し言った。
「ご飯とふりかけだけならあるけど~、それでいい~?」
「おうぅ!」
それでいいんかい、よっぽどお腹が空いていたんだな。
「おい、そこの君ぃ、ハンバーグ残すのかぁ?それ貰ってもいいかぁ?」
やっぱり欲しかったんだなおかず。
僕達は食事を済ませ、また作業に戻った。
とりあえず道具班で今できる範囲のことはほとんど終わった。主な登場人物の服とか、細かい小道具とか。
あとは台本班と話して足りないものを聞いて作るのと、舞台に使う背景とかかな。
「みんな~もう寝よ~」
キイックがパジャマ姿でキイックの部屋から出てきた。
パジャマもちゃんと真っ黄色。
服で思い出したが、僕たち全員まだ赤ちゃんの服のままだ。囚人服から赤ちゃんの服
に着替えた時みたいに今のウコイックと同じ服は着ないのだろうか。
「もう行った人は分かると思うけど、2階に洗面所あるからそこで歯磨きしてきな~、あとトイレもあるよ~、寝る部屋は対抗戦の時のチームごとね~」
今日はもう寝るらしい、僕はチームのみんなと合流し、2階へ向かった。
洗面所には人数分の歯磨き…1つ余ったけれど。
落ちた人の分だったのかと考えてしまう。
まだ全部で2人しか落ちていないが、これから増えていくのだろうか…と不安に襲われた。
知ってる限りで2人なだけであっちではもうアオイックに落とされてたりするのかな…。
突然ドンっと体に衝撃が走った。
「大丈夫かぁ?元気なさそうじゃねえかぁ」
砕が背中を叩いたらしい、慰めのつもりだったんだろうが、何にせよ力が強いから感謝より痛みが勝ってしまった。
「だ、大丈夫だよ、いてててて」
「ほんとに大丈夫なのかぁ!?どこか痛いのかぁ?どうしたんだぁ!」
「砕君、うるさいわよ」
櫻さんはそう言うと、歯ブラシを咥えた。
「ふぉーふぇるんらから、ひるかりひらいほ」
なんと言ってるか分からないが、まあ注意しているのだろう。
「ふぁい」
いつの間にか砕も歯ブラシを咥えてた。
日向ちゃんも静かに歯を磨いてた、僕も歯磨きしよう。
歯磨きしてスッキリしたところで、僕達は部屋へ向かった、部屋と言ってもまだ決まってないけれど。
部屋はドアノブに鍵が刺さったままで扉も開いていて、使うチームが決まった部屋はその鍵が取られ、扉も閉まっているようだ。
まあ結局1つしか扉が開いてなかったからそこを使うことにした。
中はただただ2段ベッドが2つあるだけの狭い部屋だった。
2段ベッドの下が砕、上に僕、反対側は櫻さんが下、上に日向ちゃんで寝ることにした。
僕達は部屋の電気を消した。
さっきの落とされることへの不安のせいで寝付けない。
僕はトイレへ向かうため2段ベッドのハシゴを降りた。
「ねえ、稗田君…」
櫻さんの声だろうか。
「稗田君って赤ちゃんのところからここに来るまでに、何思い出した?」
急に何を…と思ったがなんとも真剣な言い方だったためちゃんと答えた。
「名前ですかね」
「名前だけ?」
そういえば名前以外は気にしてなかった…でも他に思い出した気がしなくもない。
「思い出した感はあるんですけど、それが何かちょっと…」
「やっぱりそうよね…私も何か思い出したはずなのに何を思い出したかが分からない、不気味な感覚よね」
櫻さんも同じだということに、少し安心した。
「私が思うにはね、思い出した記憶については、色々思い出す前の時に何かしら触れていると思うの」
「稗田君が名前思い出したのも名前が分からないって話があったからだと考えてるの、今稗田君は制服について分かる?」
制服、まあ幼稚園とか保育園でもあるし、小学校とかでも……あれ?
「まあ元から覚えてたかもしれないけど、今分かるでしょ、これも多分一番最初に制服についてウコイックが触れていたからだと思うの」
たしかにいつの間にか知っている…なんだこれ。
「他にも触れたけど分からないだけで、思い出してることはありそうだと思わない?」
「そうですね…」
櫻さんここまで考えていたのか、凄いな…
「ま、全部私の想像なんだけどね、おやすみなさいっ」
櫻さんは話を切り上げるように言った。
あ、そうだ、トイレトイレ。
僕はトイレへ向かう途中、2人の男とすれ違った。
階段降りて何しに行くんだろうか、まあいいか。
僕はトイレを済ませ部屋に戻り、布団に入った。
砕達は台本を熟読し、キイックから役が割り振られるのを待った。
台本班は細かい誤字脱字のチェックをずっとしている。
そして、「みんな~ご飯よ~~!」の声。
キイックが警官帽ではなくバンダナを頭に巻いてキイックの部屋から出てきた。
キイックはワゴンを押していて、その上には1つのプレートにご飯とかおかずとかが乗ってるのがいくつも用意されている、人数分だろうか。
重いはずだしワゴンで体が見えなくなるほどの小ささだが軽々押している、キイックも機械なんだなぁと思った。
…キイックの部屋ってどんな部屋なんだろ。
キイックがみんなに1プレートずつ配っていく、しばらく何も口にしていなかったのもあり、口の中に痛くなるほどヨダレが出ている。
「はい、ど~ぞ~」
やっと配られた、ご飯の上にふりかけ、ハンバーグにポテトが三本、小さなサラダもある。
子供の好きそうなプレートだが、もちろん大人でも大好き。
僕は無我夢中に食べた。
「おかわりってあるかぁ?!」
砕がプレートをキイックに差し出し言った。
「ご飯とふりかけだけならあるけど~、それでいい~?」
「おうぅ!」
それでいいんかい、よっぽどお腹が空いていたんだな。
「おい、そこの君ぃ、ハンバーグ残すのかぁ?それ貰ってもいいかぁ?」
やっぱり欲しかったんだなおかず。
僕達は食事を済ませ、また作業に戻った。
とりあえず道具班で今できる範囲のことはほとんど終わった。主な登場人物の服とか、細かい小道具とか。
あとは台本班と話して足りないものを聞いて作るのと、舞台に使う背景とかかな。
「みんな~もう寝よ~」
キイックがパジャマ姿でキイックの部屋から出てきた。
パジャマもちゃんと真っ黄色。
服で思い出したが、僕たち全員まだ赤ちゃんの服のままだ。囚人服から赤ちゃんの服
に着替えた時みたいに今のウコイックと同じ服は着ないのだろうか。
「もう行った人は分かると思うけど、2階に洗面所あるからそこで歯磨きしてきな~、あとトイレもあるよ~、寝る部屋は対抗戦の時のチームごとね~」
今日はもう寝るらしい、僕はチームのみんなと合流し、2階へ向かった。
洗面所には人数分の歯磨き…1つ余ったけれど。
落ちた人の分だったのかと考えてしまう。
まだ全部で2人しか落ちていないが、これから増えていくのだろうか…と不安に襲われた。
知ってる限りで2人なだけであっちではもうアオイックに落とされてたりするのかな…。
突然ドンっと体に衝撃が走った。
「大丈夫かぁ?元気なさそうじゃねえかぁ」
砕が背中を叩いたらしい、慰めのつもりだったんだろうが、何にせよ力が強いから感謝より痛みが勝ってしまった。
「だ、大丈夫だよ、いてててて」
「ほんとに大丈夫なのかぁ!?どこか痛いのかぁ?どうしたんだぁ!」
「砕君、うるさいわよ」
櫻さんはそう言うと、歯ブラシを咥えた。
「ふぉーふぇるんらから、ひるかりひらいほ」
なんと言ってるか分からないが、まあ注意しているのだろう。
「ふぁい」
いつの間にか砕も歯ブラシを咥えてた。
日向ちゃんも静かに歯を磨いてた、僕も歯磨きしよう。
歯磨きしてスッキリしたところで、僕達は部屋へ向かった、部屋と言ってもまだ決まってないけれど。
部屋はドアノブに鍵が刺さったままで扉も開いていて、使うチームが決まった部屋はその鍵が取られ、扉も閉まっているようだ。
まあ結局1つしか扉が開いてなかったからそこを使うことにした。
中はただただ2段ベッドが2つあるだけの狭い部屋だった。
2段ベッドの下が砕、上に僕、反対側は櫻さんが下、上に日向ちゃんで寝ることにした。
僕達は部屋の電気を消した。
さっきの落とされることへの不安のせいで寝付けない。
僕はトイレへ向かうため2段ベッドのハシゴを降りた。
「ねえ、稗田君…」
櫻さんの声だろうか。
「稗田君って赤ちゃんのところからここに来るまでに、何思い出した?」
急に何を…と思ったがなんとも真剣な言い方だったためちゃんと答えた。
「名前ですかね」
「名前だけ?」
そういえば名前以外は気にしてなかった…でも他に思い出した気がしなくもない。
「思い出した感はあるんですけど、それが何かちょっと…」
「やっぱりそうよね…私も何か思い出したはずなのに何を思い出したかが分からない、不気味な感覚よね」
櫻さんも同じだということに、少し安心した。
「私が思うにはね、思い出した記憶については、色々思い出す前の時に何かしら触れていると思うの」
「稗田君が名前思い出したのも名前が分からないって話があったからだと考えてるの、今稗田君は制服について分かる?」
制服、まあ幼稚園とか保育園でもあるし、小学校とかでも……あれ?
「まあ元から覚えてたかもしれないけど、今分かるでしょ、これも多分一番最初に制服についてウコイックが触れていたからだと思うの」
たしかにいつの間にか知っている…なんだこれ。
「他にも触れたけど分からないだけで、思い出してることはありそうだと思わない?」
「そうですね…」
櫻さんここまで考えていたのか、凄いな…
「ま、全部私の想像なんだけどね、おやすみなさいっ」
櫻さんは話を切り上げるように言った。
あ、そうだ、トイレトイレ。
僕はトイレへ向かう途中、2人の男とすれ違った。
階段降りて何しに行くんだろうか、まあいいか。
僕はトイレを済ませ部屋に戻り、布団に入った。
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