6 / 8
園庭
しおりを挟む
「かんなちゃん、」
お弁当の時間が終わり、園児が一斉に園庭に駆け出す。他の友達と手をつないで走り出した柑奈の背中に真珠が声をかけた。
「かんなちゃん、あそぼう!」
「しんじゅちゃん、いまからまりちゃんたちとおままごとするの。しんじゅちゃんもいっしょにあそばない?」
「え、しんじゅ、かんなちゃんとブランコしたい。ブランコのろうよ。」
「しんじゅちゃん、」
柑奈と手をつないでいた茉莉ちゃんが割って話に入る。
「さいしょにかんなちゃんとあそぶやくそくしてたのは、あたしよ。」
「しんじゅもかんなちゃんとあそびたい。まりちゃんもいっしょにブランコする?」
「ブランコじゃなくておままごとするの。しんじゅちゃん、あっちいって!」
そう言って茉莉ちゃんが柑奈の手を引いて砂場に促す。
「まりちゃん、しんじゅちゃんもいっしょにおままごとしてもいいよね。ね、しんじゅちゃん、いっしょにおままごとしようよ。」
「やだ。おままごとなんてたのしくないよ。」
「たのしいよ?しんじゅちゃん、おかあさんやくでもいいよ?」
「ダメだよ!おかあさんやくはかんなちゃんだよ?」
「まりちゃんはなにやくなの?」
「あたしはこどもやくよ。しんじゅちゃんはおとうさんやくやってよ。」
「やだよ、しんじゅおんなのこなのに、おとうさんやくなんてやだよ。」
「だったらあっちいって!」
どんっ。
茉莉ちゃんが真珠の両肩を前から強く押した。その拍子に真珠は後ろによろけそのまま尻餅をついてしまった。尻餅をついて今にも泣きそうな真珠を見て茉莉ちゃんは、周りをきょろきょろと見てからごめん、と手を差し出した。が、
「まりちゃんなんてきらい、きらいだよっ!」
大声で泣き叫びながら言った。その声で保育士のひとりが事態に気が付き駆け寄ってくる。あたふたとこちらも泣き出しそうな茉莉ちゃんに、柑奈が「大丈夫だよ。」と声をかけた。
「かんなちゃんはしんじゅなの!まりちゃんはダメ!」
めちゃくちゃだ。
三歳の子供ながらに真珠はめちゃくちゃだ、我儘だ、と柑奈は思った。先生に対しても茉莉ちゃんに対しても横暴だし、自分の思い通りにならないといつもこうだ。しかし五分もすると何事もなかったかのように接してくる真珠に怖さも感じていた。そんな真珠は他の友達には見向きもせず執拗に柑奈だけを追っかけてくる。そのせいで柑奈は茉莉ちゃん以外とも仲良く遊ぶことが出来ないでいた。
この一件で他の友達からの遊びの誘いはされなくなった。とはいってもお遊戯やクラスで行う遊びの時は普通にみんなとしゃべったり遊んだりはする。しかし自由時間になると真珠を怖がり面倒くさがる友達は柑奈から遠ざかっていった。必然、柑奈は真珠と一緒にいる時間が多くなった・・・真珠しかいなくなった。
「かんなちゃん、」
「しんじゅちゃん。」
真珠のことは嫌いじゃないし面倒でもない。どちらかというと好きな方だ。けれど何か違う、もやっとした(違和感)を感じ始めていた。
お弁当の時間が終わり、園児が一斉に園庭に駆け出す。他の友達と手をつないで走り出した柑奈の背中に真珠が声をかけた。
「かんなちゃん、あそぼう!」
「しんじゅちゃん、いまからまりちゃんたちとおままごとするの。しんじゅちゃんもいっしょにあそばない?」
「え、しんじゅ、かんなちゃんとブランコしたい。ブランコのろうよ。」
「しんじゅちゃん、」
柑奈と手をつないでいた茉莉ちゃんが割って話に入る。
「さいしょにかんなちゃんとあそぶやくそくしてたのは、あたしよ。」
「しんじゅもかんなちゃんとあそびたい。まりちゃんもいっしょにブランコする?」
「ブランコじゃなくておままごとするの。しんじゅちゃん、あっちいって!」
そう言って茉莉ちゃんが柑奈の手を引いて砂場に促す。
「まりちゃん、しんじゅちゃんもいっしょにおままごとしてもいいよね。ね、しんじゅちゃん、いっしょにおままごとしようよ。」
「やだ。おままごとなんてたのしくないよ。」
「たのしいよ?しんじゅちゃん、おかあさんやくでもいいよ?」
「ダメだよ!おかあさんやくはかんなちゃんだよ?」
「まりちゃんはなにやくなの?」
「あたしはこどもやくよ。しんじゅちゃんはおとうさんやくやってよ。」
「やだよ、しんじゅおんなのこなのに、おとうさんやくなんてやだよ。」
「だったらあっちいって!」
どんっ。
茉莉ちゃんが真珠の両肩を前から強く押した。その拍子に真珠は後ろによろけそのまま尻餅をついてしまった。尻餅をついて今にも泣きそうな真珠を見て茉莉ちゃんは、周りをきょろきょろと見てからごめん、と手を差し出した。が、
「まりちゃんなんてきらい、きらいだよっ!」
大声で泣き叫びながら言った。その声で保育士のひとりが事態に気が付き駆け寄ってくる。あたふたとこちらも泣き出しそうな茉莉ちゃんに、柑奈が「大丈夫だよ。」と声をかけた。
「かんなちゃんはしんじゅなの!まりちゃんはダメ!」
めちゃくちゃだ。
三歳の子供ながらに真珠はめちゃくちゃだ、我儘だ、と柑奈は思った。先生に対しても茉莉ちゃんに対しても横暴だし、自分の思い通りにならないといつもこうだ。しかし五分もすると何事もなかったかのように接してくる真珠に怖さも感じていた。そんな真珠は他の友達には見向きもせず執拗に柑奈だけを追っかけてくる。そのせいで柑奈は茉莉ちゃん以外とも仲良く遊ぶことが出来ないでいた。
この一件で他の友達からの遊びの誘いはされなくなった。とはいってもお遊戯やクラスで行う遊びの時は普通にみんなとしゃべったり遊んだりはする。しかし自由時間になると真珠を怖がり面倒くさがる友達は柑奈から遠ざかっていった。必然、柑奈は真珠と一緒にいる時間が多くなった・・・真珠しかいなくなった。
「かんなちゃん、」
「しんじゅちゃん。」
真珠のことは嫌いじゃないし面倒でもない。どちらかというと好きな方だ。けれど何か違う、もやっとした(違和感)を感じ始めていた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる