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number.9 本格始動
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暗くてじめっとしていて、勉強は捗りそうだが、やる事ない奴には居心地が悪そうな空間だ。
これから半日、この地下室に籠る。水と飯は冷蔵庫にあり電子レンジもある。トイレもふたつあるから気を遣わない。オレの待機する部屋は絵菜の部屋の隣り。机があって、ベッドがあって(極狭。)トイレ、シャワー室があって、一応テレビもある。(イヤホンで観ろ、とメモ書き発見。)暇潰しがすぐ尽きそうな環境だ。
ケータイも電波なしで使えない。ふと、絵菜の休憩室を見る。ベッドがあって(オレのやつより良さげ。)、サイドテーブルがあって、トイレと風呂場(浴槽有り。)がある。
たった三部屋。…ん。ドア…?オレの部屋に細長いドアがある。
開いた。中に入る。スチールラックがあり、医療品が並べられている…。
オレはここまで面倒を見るのか?訓練で習ってはいるが、人に治療で針を刺したことはない。点滴(生理食塩水)もある。準備万端過ぎだろ。
「ここでやるの…?」
地下室をぐるっと見渡して不安そうに言う。
オレよりいい部屋じゃないか。
「今回は半日だけだ。これからはもっとかかると思う。慣れろ。」
「………。」
おまえが今まで住んでた家よりいいだろ?
養護施設より環境は良い、贅沢だ。
パソコンからアラームが鳴る。開始だ。
絵菜がモニターの前に座る。手元の紙にボールペンを走らせる。制限時間は六時間。
地下室にはボールペンを走らせる音しか聞こえない。
一時間、三時間、五時間…。
あと三十分という時に音が止まった。
…終わったか??
「…ごめん。間違えた。」
え。
「ズレた。間に合わない…。」
パソコンからアラームが鳴る。残り十分。
「全部、間違ってるのか?最初から?」
「はい。ごめんなさい…。」
沈黙…。
パソコンからサイレンが鳴る…終わった。
ピコン
(解答を送信して下さい。)
(:絵菜が計算の失敗をしました。申し訳ございません。)
(::え。失敗?)
地上に上がり電話を掛ける。
「どういうこと?失敗…?」
「はい、計算に冒頭の方からズレが生じていたのを気づかずに続けてしまったようです。」
「第一ロック解除からやり直しだわ。」
絶望的な空気が漂う。
「最初からやり直しという事は、どれくらい時間がかかりますか。」
「第四ロックのヒントはおそらく同じものは使えないわ。無理難題が来る可能性がある。あと、数式の難易度も上がると書いてあったから…今までよりかなり時間がかかると。今回も制限時間がギリギリだし…。」
「…わかりました。」
「第一ロックから地下室で行うわ。然、そのまま滞在してもらえる?」
「…どれくらい。」
「第五ロック解除まで。景が行く予定だったんだけどミッションが入ってしまったの。」
三ヶ月くらいか…?地下室で?
「わかりました、交代が出来次第お願いします。」
「よろしくね。明後日第一ロックの数式を送るわ。」
初めてロックナンバーを入力されなかったブレインナンバーには何の変化も起きなかった。小窓の中の女性は相変わらず背を向けている。
女性の左内腿に刺青が確認できた。
数字の刺青。
(000008)
何のナンバーなのだろう。この女性を手当たり次第調べた結果、小皆教授の研究ファイルから同じナンバーと名前が確認できた。
(000008.Mishima Akai)
アカイ ミシマ
然と奏の母親だった。
これから半日、この地下室に籠る。水と飯は冷蔵庫にあり電子レンジもある。トイレもふたつあるから気を遣わない。オレの待機する部屋は絵菜の部屋の隣り。机があって、ベッドがあって(極狭。)トイレ、シャワー室があって、一応テレビもある。(イヤホンで観ろ、とメモ書き発見。)暇潰しがすぐ尽きそうな環境だ。
ケータイも電波なしで使えない。ふと、絵菜の休憩室を見る。ベッドがあって(オレのやつより良さげ。)、サイドテーブルがあって、トイレと風呂場(浴槽有り。)がある。
たった三部屋。…ん。ドア…?オレの部屋に細長いドアがある。
開いた。中に入る。スチールラックがあり、医療品が並べられている…。
オレはここまで面倒を見るのか?訓練で習ってはいるが、人に治療で針を刺したことはない。点滴(生理食塩水)もある。準備万端過ぎだろ。
「ここでやるの…?」
地下室をぐるっと見渡して不安そうに言う。
オレよりいい部屋じゃないか。
「今回は半日だけだ。これからはもっとかかると思う。慣れろ。」
「………。」
おまえが今まで住んでた家よりいいだろ?
養護施設より環境は良い、贅沢だ。
パソコンからアラームが鳴る。開始だ。
絵菜がモニターの前に座る。手元の紙にボールペンを走らせる。制限時間は六時間。
地下室にはボールペンを走らせる音しか聞こえない。
一時間、三時間、五時間…。
あと三十分という時に音が止まった。
…終わったか??
「…ごめん。間違えた。」
え。
「ズレた。間に合わない…。」
パソコンからアラームが鳴る。残り十分。
「全部、間違ってるのか?最初から?」
「はい。ごめんなさい…。」
沈黙…。
パソコンからサイレンが鳴る…終わった。
ピコン
(解答を送信して下さい。)
(:絵菜が計算の失敗をしました。申し訳ございません。)
(::え。失敗?)
地上に上がり電話を掛ける。
「どういうこと?失敗…?」
「はい、計算に冒頭の方からズレが生じていたのを気づかずに続けてしまったようです。」
「第一ロック解除からやり直しだわ。」
絶望的な空気が漂う。
「最初からやり直しという事は、どれくらい時間がかかりますか。」
「第四ロックのヒントはおそらく同じものは使えないわ。無理難題が来る可能性がある。あと、数式の難易度も上がると書いてあったから…今までよりかなり時間がかかると。今回も制限時間がギリギリだし…。」
「…わかりました。」
「第一ロックから地下室で行うわ。然、そのまま滞在してもらえる?」
「…どれくらい。」
「第五ロック解除まで。景が行く予定だったんだけどミッションが入ってしまったの。」
三ヶ月くらいか…?地下室で?
「わかりました、交代が出来次第お願いします。」
「よろしくね。明後日第一ロックの数式を送るわ。」
初めてロックナンバーを入力されなかったブレインナンバーには何の変化も起きなかった。小窓の中の女性は相変わらず背を向けている。
女性の左内腿に刺青が確認できた。
数字の刺青。
(000008)
何のナンバーなのだろう。この女性を手当たり次第調べた結果、小皆教授の研究ファイルから同じナンバーと名前が確認できた。
(000008.Mishima Akai)
アカイ ミシマ
然と奏の母親だった。
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