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30 ギャップ萌え
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コーラルさんと結婚するのか…結婚。
あぁ。
日曜日の昼、カフェのテラス席で久しぶりにライアンと世間話をするため待ち合わせをした。向かい合ってお茶を飲み、ため息ばかりの話を続ける。
「ライアン、僕は…僕はかおりんみたいな女の子が理想って、知ってるよ、ね?」
「あぁ。でもな、ハチ…かおりんみたいな女の子は現実世界には、いない。」
蜂太郎と同じく婚約したライアン(第三話参照)は、蜂太郎と心境違わず婚約者に対して諦めモードに入っていた。
ライアンの婚約者は三つ年上の牡丹の女性。家柄は申し分ないが見た目が…と、かなり落胆している。
しかし、コーラルさんと違う点は優しく、気立てが良く腰が低いとのこと。
…羨ましい。(涙)
僕は一生妻に尻に敷かれる人生を送るんだ。
「蜂太郎はコーラル嬢をお嫁にもらうのか?コーラル嬢に大学、病院経営ができるのかなぁ。」
「…さぁ。会食の、あちらの義父様の雰囲気から婿にこいって感じだったけど、僕の家もお嫁にきてもらわないと困る状況だし。」
「あぁ。お兄さん、な。…大変だなぁ。」
と、言いながらぜんぜん心配しているようには見えない。冷めたお茶を啜りながら街行く人達を眺めている。やはり、自分のことでいっぱいいっぱいになるよなぁ…(諦)
「あ。は、ハチ、話をしてたら…ほら。」
突然、ライアンが指差した。その先にコーラルさんがいた。
僕達に気付いたコーラルさんも一緒に歩いていたアリアナさんの腕を掴み僕達を指差している。
気まずい。
「こんにちは。…よ、良いお天気ですこと。あ、初めまして…。」
アリアナが先に挨拶してきた。コーラルさんはなぜかムスッとしている。
天気の話なんてどうでもいいよ…。
「初めまして。蜂太郎の友人の、ライアンと申します。コーラル嬢でいらっしゃいますよね。お話は伺っております。」
どんな話だよ。
「ライアン様?初めまして(二回目)、私アリアナと申します…お邪魔でなければご一緒して構わないかしら。この天気で喉が乾いちゃって。」
と言いながらアリアナがコーラルの脇腹を突く。少し嫌な顔をしてから軽く頷いた。
空いた椅子を整えてふたりを促す。席に着くとスタッフが来て注文を取った。アイスティーふたつ。
(チョコレートパフェもありますけど?)
(…わぁ、このカフェのチョコレートパフェ有名なのよね…。けど、知らない男の前ではがっつけないわ…くそぉ。)
「ライアン様って…間違っていたら申し訳ありませんが…。先日、牡丹のセーラ様とご婚約なさった方かしら?」
「…はい。」
さっきの暗い空気に逆戻りする…やめろ。
「セーラ様は私達の学校の先輩で…生徒会長をされていた方なの。…ご存知かしら。」
「はい。勤勉で、生徒からの人気もあったと伺っております。」
(そうなんだ。)(へぇ…真面目ちゃんなのねぇ。)
「素敵な方と巡り会えてお幸せですね。おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます…。」
空のティーカップを見つめながら、気まずそうな…でも、少し嬉しそうなライアンを見て僕はホッとした。が、コーラルさんの顔を見て現実に戻される。
僕のお嫁さんは、この女性。
成績優秀者かどうかもわからないし、学校生徒と喧嘩をするような女性だ…。ライアン、君は良いお嫁さんをもらったよ。(涙)
「コーラル嬢は学校ではどんな生徒さんで?きっと皆さんから人気なんでしょうね。」
(ライアン、ナイス!)
(は。)
「えっ、と…おしゃれで、みんなのリーダー的存在?…みたいな?」
(おしゃれなボス猿ってことか?)
(もっとあるでしょアリアナー!)
「ほう、薔薇の方は皆おしゃれと聞きますからね。他には頭脳明晰、とか…そちらは?」
「コーラルは…た、体育とかスポーツの方が得意で…。」
「スポーツが得意なのですか。大会などに出られたり?何の種目で?」
「……こ、コーラル…(小声)」
「……………。」
ないのかよ。
嫌な沈黙の後、タイミング良くスタッフがアイスティーを運んできた。…助かった。
コーラルさんはきっと、想像通り見た目だけで生きてきた人間なんだろうな、
「…数学のこと、言っちゃえば?」
「…え。」
…数学?
「数学が得意なのですか?」
アリアナさんがコーラルさんの様子を窺いながら尋ねたワードに意外性を感じた。
「…数学コンテストで、過去に一度…優勝したことはあります。」
えぇぇえぇぇっ(初耳)
「凄いじゃないですか!な、なぜ隠すんですか!?」
たしかに、凄い。(驚)
「い、いや、なんか…ヲタクっぽいというか…。」
ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜんっ!!
ギャップ萌え、キターーーッ!(惚)
「だから、大学は数学者の道を目指すためにって言ってたのに。急に勉強やめちゃって…ね?」
アリアナさんが本当に残念そうに話す。せっかくの才能なのに、なぜ?
「女がそんなこと極めたところで何も役に立たないじゃない…。女なら文系、文学に詳しくて家庭科が得意でって方がいいだろうし。数学が得意で何の徳もないもの。」
「そ、そんなことないよっ!コーラルさん、もっ、もったいないよ!」
やっと喋ったと思ったら……え。
「もったいない…って。これからまた勉強して大学に行けって勧めるつもり?」
「…え?コーラルさんがそうしたいならそうした方がいい、と思うけど?」
「…結婚するのよ?(あなたと)」
「結婚してからも大学は行けるじゃないですか。」
ライアンがごく普通(?)の提案をする。たしかに、結婚してからコーラルさんが家事をするのは想像できないし…なら、大学に通って数学者を目指す方がしっくり、
「嫌よ。共働きなんかしないわ。」
働けとは言ってない。
「…え。共働きするために大学に行けとは言っていないじゃないですか…ははっ…。なぁ、ハチ。」
「あ、あぁ。そ、そうだよ。」
「そうよコーラル。蜂太郎さんがそう言ってるんだし。結婚後、大学通ってみたら?」
「…時間とお金の無駄よ。お父様だってお金にならないことは許さないわ。大学に通うならそれなりの収入をってなるに決まってるし、」
「結婚したら義父様の言うことは関係ないじゃないか。コーラルさんの好きにしたらいいだろ?」
「…そんな。好き勝手にはできないわよ、」
「夫になる僕がいいって言ってるんだ。あと半年ある…受験に向けて今から勉強しよう!」
三人の視線が蜂太郎に集中する。
(蜂太郎さん、コーラルのために…良い人じゃない!(輝))
(ハチ、さっきまでの嫌々はどこに行った?)
(蜂太郎…い、いいの?!(嬉))
蜂太郎、株、爆上がりです。
あぁ。
日曜日の昼、カフェのテラス席で久しぶりにライアンと世間話をするため待ち合わせをした。向かい合ってお茶を飲み、ため息ばかりの話を続ける。
「ライアン、僕は…僕はかおりんみたいな女の子が理想って、知ってるよ、ね?」
「あぁ。でもな、ハチ…かおりんみたいな女の子は現実世界には、いない。」
蜂太郎と同じく婚約したライアン(第三話参照)は、蜂太郎と心境違わず婚約者に対して諦めモードに入っていた。
ライアンの婚約者は三つ年上の牡丹の女性。家柄は申し分ないが見た目が…と、かなり落胆している。
しかし、コーラルさんと違う点は優しく、気立てが良く腰が低いとのこと。
…羨ましい。(涙)
僕は一生妻に尻に敷かれる人生を送るんだ。
「蜂太郎はコーラル嬢をお嫁にもらうのか?コーラル嬢に大学、病院経営ができるのかなぁ。」
「…さぁ。会食の、あちらの義父様の雰囲気から婿にこいって感じだったけど、僕の家もお嫁にきてもらわないと困る状況だし。」
「あぁ。お兄さん、な。…大変だなぁ。」
と、言いながらぜんぜん心配しているようには見えない。冷めたお茶を啜りながら街行く人達を眺めている。やはり、自分のことでいっぱいいっぱいになるよなぁ…(諦)
「あ。は、ハチ、話をしてたら…ほら。」
突然、ライアンが指差した。その先にコーラルさんがいた。
僕達に気付いたコーラルさんも一緒に歩いていたアリアナさんの腕を掴み僕達を指差している。
気まずい。
「こんにちは。…よ、良いお天気ですこと。あ、初めまして…。」
アリアナが先に挨拶してきた。コーラルさんはなぜかムスッとしている。
天気の話なんてどうでもいいよ…。
「初めまして。蜂太郎の友人の、ライアンと申します。コーラル嬢でいらっしゃいますよね。お話は伺っております。」
どんな話だよ。
「ライアン様?初めまして(二回目)、私アリアナと申します…お邪魔でなければご一緒して構わないかしら。この天気で喉が乾いちゃって。」
と言いながらアリアナがコーラルの脇腹を突く。少し嫌な顔をしてから軽く頷いた。
空いた椅子を整えてふたりを促す。席に着くとスタッフが来て注文を取った。アイスティーふたつ。
(チョコレートパフェもありますけど?)
(…わぁ、このカフェのチョコレートパフェ有名なのよね…。けど、知らない男の前ではがっつけないわ…くそぉ。)
「ライアン様って…間違っていたら申し訳ありませんが…。先日、牡丹のセーラ様とご婚約なさった方かしら?」
「…はい。」
さっきの暗い空気に逆戻りする…やめろ。
「セーラ様は私達の学校の先輩で…生徒会長をされていた方なの。…ご存知かしら。」
「はい。勤勉で、生徒からの人気もあったと伺っております。」
(そうなんだ。)(へぇ…真面目ちゃんなのねぇ。)
「素敵な方と巡り会えてお幸せですね。おめでとうございます。」
「あ、ありがとうございます…。」
空のティーカップを見つめながら、気まずそうな…でも、少し嬉しそうなライアンを見て僕はホッとした。が、コーラルさんの顔を見て現実に戻される。
僕のお嫁さんは、この女性。
成績優秀者かどうかもわからないし、学校生徒と喧嘩をするような女性だ…。ライアン、君は良いお嫁さんをもらったよ。(涙)
「コーラル嬢は学校ではどんな生徒さんで?きっと皆さんから人気なんでしょうね。」
(ライアン、ナイス!)
(は。)
「えっ、と…おしゃれで、みんなのリーダー的存在?…みたいな?」
(おしゃれなボス猿ってことか?)
(もっとあるでしょアリアナー!)
「ほう、薔薇の方は皆おしゃれと聞きますからね。他には頭脳明晰、とか…そちらは?」
「コーラルは…た、体育とかスポーツの方が得意で…。」
「スポーツが得意なのですか。大会などに出られたり?何の種目で?」
「……こ、コーラル…(小声)」
「……………。」
ないのかよ。
嫌な沈黙の後、タイミング良くスタッフがアイスティーを運んできた。…助かった。
コーラルさんはきっと、想像通り見た目だけで生きてきた人間なんだろうな、
「…数学のこと、言っちゃえば?」
「…え。」
…数学?
「数学が得意なのですか?」
アリアナさんがコーラルさんの様子を窺いながら尋ねたワードに意外性を感じた。
「…数学コンテストで、過去に一度…優勝したことはあります。」
えぇぇえぇぇっ(初耳)
「凄いじゃないですか!な、なぜ隠すんですか!?」
たしかに、凄い。(驚)
「い、いや、なんか…ヲタクっぽいというか…。」
ぜんぜん、ぜんぜん、ぜんぜんっ!!
ギャップ萌え、キターーーッ!(惚)
「だから、大学は数学者の道を目指すためにって言ってたのに。急に勉強やめちゃって…ね?」
アリアナさんが本当に残念そうに話す。せっかくの才能なのに、なぜ?
「女がそんなこと極めたところで何も役に立たないじゃない…。女なら文系、文学に詳しくて家庭科が得意でって方がいいだろうし。数学が得意で何の徳もないもの。」
「そ、そんなことないよっ!コーラルさん、もっ、もったいないよ!」
やっと喋ったと思ったら……え。
「もったいない…って。これからまた勉強して大学に行けって勧めるつもり?」
「…え?コーラルさんがそうしたいならそうした方がいい、と思うけど?」
「…結婚するのよ?(あなたと)」
「結婚してからも大学は行けるじゃないですか。」
ライアンがごく普通(?)の提案をする。たしかに、結婚してからコーラルさんが家事をするのは想像できないし…なら、大学に通って数学者を目指す方がしっくり、
「嫌よ。共働きなんかしないわ。」
働けとは言ってない。
「…え。共働きするために大学に行けとは言っていないじゃないですか…ははっ…。なぁ、ハチ。」
「あ、あぁ。そ、そうだよ。」
「そうよコーラル。蜂太郎さんがそう言ってるんだし。結婚後、大学通ってみたら?」
「…時間とお金の無駄よ。お父様だってお金にならないことは許さないわ。大学に通うならそれなりの収入をってなるに決まってるし、」
「結婚したら義父様の言うことは関係ないじゃないか。コーラルさんの好きにしたらいいだろ?」
「…そんな。好き勝手にはできないわよ、」
「夫になる僕がいいって言ってるんだ。あと半年ある…受験に向けて今から勉強しよう!」
三人の視線が蜂太郎に集中する。
(蜂太郎さん、コーラルのために…良い人じゃない!(輝))
(ハチ、さっきまでの嫌々はどこに行った?)
(蜂太郎…い、いいの?!(嬉))
蜂太郎、株、爆上がりです。
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