咲き誇る陰で、

藤岡 志眞子

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22 ヲタクに陰陽は無い 。

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控え室の窓際に立ち外の景色を見ていると、アリアナが勝ち誇ったようなドヤ顔で話し掛けてきた。

「シルベスター・ドッカリー…タダのキモいヲタクじゃない。」

ぐさっ

「…アリアナ、講義前はダンス踊りたいって言ってたじゃない。」

「二次元の美少女と妄想で踊ってれば良いのよ。コーラル、あんな男やめてレオ様と結婚決めちゃいなさいよ?家柄が良くてもあんなんじゃ苦労するに決まってるわ。」

………。

「何がどう苦労するっていうのよ?レオナルドと結婚しても苦労はするはずだわ。」

「…どうしたの?この前まで好きじゃないって言ってたじゃない。…でも、悩んでたみたいだからアドバイスしてるのよ?」

何よ偉そうに。

「そうね、好きではないわ。でもヲタクだからレオナルドにした方が良いっていうのはおかしいんじゃない?」

「おかしくないわよ、コーラル…薔薇の御令嬢が美少女ヲタクと釣り合うわけないじゃない。まず、話が合わないわ。好みだってセンスだって、価値観だってバラバラよ。」

好みもセンスも価値観も、同じ意味では。

「好きではないけど…食べ物の好みも価値観もそう違わなかったわ。講義の話だってみんなが騒ぐほど変な内容じゃなかったじゃない。」

アリアナとの言い争いの声がだんだんと大きくなっていく。すると近くで聴き耳を立てていた同級生の(名前を忘れた)生徒が話に割って入ってきた。

「どこが変じゃないのよ?女子高生を前に話す内容じゃないわ。ヲタクのイベントの前座ならまだしも教育の場で話す事?」

何が教育の場、だ。まともに勉強もせず、親の権力で裏口入学した奴がよく言うよ。

「そうよ…き、気持ち悪いわ。わ、わたし、男の人、怖くなっちゃった…。」

リリア…こいつの名前は知っている。彼氏いるくせに何言ってるんだ。お前の彼氏だって何かしらのヲタクかも知れないのに。…いや、男なんてみんな何かのヲタクではないか。

「魔法とか言ってたけど、ヤバくない?現実と混ざっちゃってるのかしら。」

ユーリン。あんたの家、借金まみれなのにこの前舞踏会開いたんだって?現実見ないで大盤振る舞いしてる方がヤバくない?

「コーラル、権田原とは縁切りなさい?」

「ドッカリー様のことかしら?みんなして批判ばかり?良い内容だったじゃない。私たちのことを美少女と褒めた上で、ひとつでも好きなことがあれば夢や希望が持てる、やる気が出てこの国の経済が回るってことでしょ?」

「そ、そうだけど、」

「あんた達だって男好きじゃない。その男達のためにドレスを買ってコスメを買って、エステやサロンに通うじゃない。何が違うのよ?ヲタクが気持ち悪いって言ってるけど、あんた達だって(男ヲタク)でしょ?」

しーん

「こ、コーラル、どうした、の?」

アリアナが怪訝な顔でコーラルの顔を覗き込む。

「どうもしないわ。」

「へ、変よ?コーラルだって、ま、前までこういったヲタク嫌いって言ってたじゃない。」

「そんな事、言ったことあったかしら。」

「コーラル、」

「フィアンセを侮辱されると腹が立つのよ。」

「…え。」



ハッタリをかましてしまった。







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