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第1部『おっさんスライムとアルトレイクの街』

第9話『空を翔る美女と幻の島(2)』

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 ユオード大森林からハルマトリ湖、そしてハルマトリ湖の上空を阿呆みたいなスピードで飛行するフリーム。

 ハルマトリ湖上空を移動していると周囲に他の島がない場所に1つだけポツンと存在する島があった。

 島の砂浜に着地するフリーム、そして右手に掴んでいたスライムを砂浜に放り捨てた。
 スライムがプルプルと変身して人間の姿に戻る、アンセムである。

 アンセムは1度臨死体験でもした様な人間みたいな顔をしていた。

「ここが幻の島よ。島には変なモンスターも多いわ、まあそれはアンセムが何とかしなさい、島の大樹になる木の実はピンク色をしているから直ぐに分かるわ」

 アンセムは死にそうな顔で何とか呼吸を整えながら思案する。

(勝手な事ばっかりいいやがってこのトリ公……)

「ん?何か言いたい事でもあるの?」

「───いいえ、なんもありませんよ」

 アンセムは重い足取りで島の探索を開始する。

 島の木々は密林のそれに近い、道などないので剣を抜いて邪魔な植物を切りながら進んだ。
 湿度も高く汗をかく、しかし人間の姿で進んだ。

(この幻の島の守護者とやらが敵なのか味方なのか分からん以上、何処に目があるかも分からんからな。一応人間の振りをしておこう)

 一応『昆虫操作』の魔法を発動する。これで未知の毒虫などが自身に近づいてこない様に出来る。
 島の虫達は実にカラフルな赤色や黄色や青色、それとメタリックカラーなのが多かった。

「人間だった頃なら悲鳴もんのインセクト軍団だ」

 そんな虫達を探索にかり出して周囲の様子を確認していく。幻の島の探索は順調に進んだ。

 島の探索は1日ではとても終わらなかった、開けた空間に出たので夜営の準備をする。安全な場所を虫に案内させた。

 そこに住む虫達は案外色んな事を知っている、『昆虫操作』の魔法は滅多に使い手がいないニッチな魔法だが、実は有用な魔法なのだ。

(これ、普通の人間ならかなり危ないよ。何しろモンスターがいる密林の中で夜営するんだからな)

 携帯食で簡単に食事を済ませる、スライムであるアンセムは別に寝なくても疲れはしないので今晩は起きて周囲の警戒をした。

 翌日は朝早く行動を開始する、モンスターは虫がその存在を知らせてくれる。しかし1度はどんなモンスターがいるのか見てみようと思いモンスターがいる方に向かった。

(アレがこの島のモンスターか、中々に強いな)

 木陰から覗くと、そこには体長二メートル以上あり体毛が緑色のチンパンジーの様なモンスターがいた。
 チンパンジーは群れでいて少なくとも五匹以上はいる。戦うの自殺行為だと察した。

 アンセムはその場なら去ろうとした、しかしアンセムが隠れていた木の上にそのチンパンジーがいて鳴き声をあげる。

(しまった!まさかあの巨体でここまで気配を完璧に消せるとは………)

 他のチンパンジー達がアンセムに迫る、チンパンジー達は強い敵意を向けてきた。戦闘は避けられない。

「好奇心は猫を殺すってか?……仕方ない。やるか!」

 アンセムは変身する。
 変身したのは巨大な黄色いキノコに足が生えた様なモンスター、痺れマタンゴだ。

 チンパンジー達はアンセムを囲んで袋叩きにする。

 アンセムはチンパンジー達の攻撃でも大してダメージは受けなかった。攻撃を無視してそのキノコの身体のカサを動かして胞子をばら撒いた。

 胞子を吸ったマタンゴ達はたちまち身体が痺れ口から泡を吹いて倒れてしまった。

「縄張りを先に荒らしたのはこっちだし、命までは取らねぇよ。そのまま1時間くらい痺れててくれや」

(しかし切り札の変身能力を使っちまった、万が一島の守護者がこちらの動きを把握する能力を持ってたら……いやっあくまでも可能性の話だ、気にしてもしょうがないか)

 アンセムは人間の姿に戻る、ベルトポーチから1枚の地図を取り出した。
 アンセムは呪文を唱え魔法を使う。

「魔法の光よ、進む道を我に示せ」

 アンセムが使ったのは『導の星』と言う魔法だ、紙に使う魔法で紙に現れた星の光が指す方向に何かがある。

「この魔法、1種の賭けなんだよな。星の光が指す方には何かがあるけど、お宝があるかは分からないし下手すると強力なモンスターの寝床って可能性もあるし」

 『導の星』は運任せの魔法だった。だから初日は使わなかったがこれ以上時間をかけるとあのフリームが待つのに飽きたとかで島からどこかに行ってしまう恐れもあった。

 そうなればアンセムはこの島に取り残される。無論脱出出来るモンスターにでも変身すればいいのだがハルマトリ湖を泳いで脱出してユオード大森林を抜けてアルトレイクにまで戻る……。

(そんなの冗談じゃないよ!)

 故にアンセムは少し焦ってもいた、そこで賭けでも『導の星』を使った。しかしアンセムは虫達のお陰で危険かどうかを離れていても分かる。

「これで探索するスピードを上げる、こんな報酬もない依頼さっさと済ませてエールでも飲まないとやってられるか!」

 アンセムは島の探索を再開した。探索は更にスピードを上げても順調に進んだ。

 今度はモンスターの方に自分から近づく事は辞めて探索に集中した。ちなみに『導の星』は1回目は見たことない綺麗な花の咲いている場所まで案内された。

 2回目は体長15メートルはある3つ首の巨大なワニの寝床に案内されそうになった。
 そして3度目は密林を抜けた先を示していた。

(密林を抜けたか。そんでその先は左右を岩壁に挟まれた道にも見える場所に出たか…)

 アンセムは警戒しながら進んで行く。そして道を抜けた先には低い丘があり、そこにはかなり大きな大樹が1本だけ生えていた。

「アレが、島の大樹か?」

 一陣の風が吹いた。
 気がつくと数メートル先に黄緑色の肌をした大男が立っていた。








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