上 下
50 / 57

第50話 泣かれた

しおりを挟む
 音すら消えた、用務員おじさんが準備した魔法と腐れダンジョンマスターが放った魔法がぶつかった瞬間、このダンジョン全体が揺れたと思ったね。

 凄まじい光と衝撃、音は殆ど聞こえなかった。
 しかし…なんとかこちらの被害はゼロ。セーフティポイントからこちらに強制転移させられた人達は無事である。

「……………んっんん?」
 あっディアナが目を覚ました。
「ディ…アナさん、無事です…か?」
「うっラベルか? ここは、一体何が起きて…ッ!?」

 目を見開くディアナ、少し驚かせてしまったらしい。何しろ身体の感覚が所々ないからな、今の用務員おじさんの状態はいまいちよく分からない。
 なんか身体中に黒いのが張り付いていてたり身体の一部が……炭化してるからな。

 何故に炭化? やはりファンタジーって謎ですね、とツッコミたいのに声が出にくい。

『防御魔法だけじゃ不十分だと分かっていたんだね、よくもまあそんな連中の盾になんてなったもんだよ。ここまでくると馬鹿だねお前』

「バカで……結構、お前レベルの…クズ…よりはマシです……ね」
『減らず口だね、もう魔力も残ってないだろう? アレだけ魔法をずっと使い続けてさ』

 正解である。正直、回復魔法とか使いたいけど魔力がなさ過ぎて何も出来ない。何故ならラナミス、エコー、バリーと続いてコイツだからな。
 完全にボスラッシュだよ、魔力が保つわけがないだろう、難易度ミスってるぞ運営と言いたい。

「ラベル!?」
「ラベルさん!」
「ラベルさん!」
「ラベ…おじさん!」

 ちょいちょい、何でも名前呼ぼうとしておじさんに戻したのデュミナさんや。その呼び方にこだわりでもあると言うのかい?
 なんかこちらに来そうだったので片手を向けて制止を促す、来たら死ぬのは彼女達も分かる筈だ。

 しかし止まりそうにない、そこにアルティエが来て四人を一人で押し留める。
「ダメダメダメ止まりなさい! あそこに行った絶対に死ぬからーーー!」

 案外役に立つじゃないの、影が薄い美人だと思ってたけど大した働きだよ。

『……さあっこれで幕引きだぶっ!』
 腐れダンジョンマスターが蹴りでぶっ飛ばされた、ヤツは不意打ちに驚く程弱いな。まあ不意打ちを仕掛けた相手が相手なので仕方ない。

 ソイツは着物メイドのリエールである。子分というか、お供的なエコーとラナミスが腐れダンジョンマスターを抑えにむかった。

「………ラベル様」
「君も……来ていたのかい?」
 リエールさんがこちらに来た、彼女のトレードマークである着物メイド服が若干ボロくなっている。

 理由は多分用務員おじさんの魔法を彼女が強化してくれたからだ、その為に他の人達よりも前に出ていたので少し腐れダンジョンマスターの魔法を受けたのかも知れない。

 用務員おじさんの魔法だけではここまでは防げないと踏んでいたからね、何故だろうと思ったら彼女が頑張ってくれたんだろう。

 あっ彼女から渡されたマントが駄目になってしまってる。ごめんリエール。

 そんなリエールは俺を真っ直ぐ見つめてくる。
「どうして、ここまでしてこの者達を助けるんですか? そこまでになってまで、この者達護る理由がリエールには分かりません」

「…………ふっ」

「ご自身の身体が今、どう言う状態か理解出来ていますか?」
「………少し…は」
 リエールが回復魔法を使った、喉が若干癒えて話が出来る様になる。魔力も少しだけど回復したっぽい。

「ヤツのあの攻撃は『炎獄の呪法』と言う呪いです。受けた相手は即死こそしませんが身体を内側から焼かれていずれ死にます、何故そんな攻撃を受けてまであの者達の盾になったのですか?」

「はは…はっ……成り行きですかね」

「その呪いはリエールの回復魔法すら邪魔します、もうっ私にも助けられません」
 ………リエールを泣かせてしまったな。
 こんな用務員おじさんの為に泣かせるのは忍びない、仕方ないのでリエールに手招きをしてこっちに来てもらう。

 少しシンドイけど、リエールの額に人差し指を当てる。なけなしの魔力を使って俺の記憶の一部を彼女の頭の中に直接伝えた。

 俺がわりとクズめの人間でも見捨てられない、その理由を彼女に伝える為だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

ファンタジー学園

kamesato
ファンタジー
ある女の子が高校に入学してとても不思議なことを体験する話

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

処理中です...