マイダンジョン育成中

どらいあい

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第69話

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 昨日の夜の星空の光を映し出したあの海もとても綺麗だったが、青空の元の青く清んだ水平線がどこまで続く我がダンジョンの朝の海もやっぱり素晴らしい。

 これもある種の自画自賛か。
 そんなことをしてる私の目には3人の水着姿が映っていた。
 そう工藤さん、月城さん、アヤメが海で泳ぎ始めたのである。

 元からアヤメはどこかで調達した水着を用意して以前はよく海で泳いでいたのだが魚とか特にいなかった我がダンジョンの海だ。

 しばらく泳いだら飽きたらしく、それ以降は渓流釣りにはまったり温泉火山の温泉に通ったりと別のことに時間を使っていた。

 まあそのことはいいだろう。
 海で海水浴をしようと言ったのは工藤さんだった。

 以前からこの綺麗な海を見て泳いでみたいと思っていたそうだ、事前に月城さんにも話をしていて水着も用意していたようである。

 月城さん曰く、ダンジョンで泳ぐとか本当なのかとかなり警戒してたそうだ。
 まあ普通の人間はそうだよ、むしろ詳しい説明もなしに水着を用意させた工藤さんの勢いが凄かったんだろう。

 水着の種類になんて疎いアラサーの私にはよく分からないが。
 工藤さんはオレンジ色の水着。
 月城さんは白の水着。
 そしてアヤメは紺色の水着を着用している。

 そして我がダンジョンは気温も春の中頃から後半くらいで安定していて、何より海水の温度もそこまで低くはないらしい。

 流石に夏場に比べるとっと思うところだが実際に泳いでる3人が問題ないのなら大丈夫なのだろう。

 そして私はいわゆるライフセーバー。
 と言うかまずはないだろうが彼女たちの足がつったりだとか何かしら問題が起きた時に救命活動をするための見張りとして海に入らず普通に白い砂浜に腰を下ろしている。

 本音を言えば私も泳ぎたいなとアラサーはガラにもなく考えてしまう。
 しかしここはこの場で一番の年長者としてやるべきことをやるのが大人というものだろう。

 3人はただ泳いでるだけなのだがとても楽しそうだ。
 最もアヤメは泳いでいるというよりかは完全に海に身を投げ出して流れに身を任せている感じなのだが。

 沖に流されて行かないように注意してほしいな。
 一言いっておくか。
 アヤメに一言かけようとした時だ。
 月城さんと工藤さんの会話が耳に入った。

「本当に…この海は綺麗ですね」

「そうね、それにしてもこの海にいる魚はなんて魚なのかしら。とても綺麗」

「確かに、カラフルでそれでいて光を反射してる姿はまるで宝石みたいですね」

「似たようなの知らないのアンジェちゃ~ん」

「ダンジョンセンターで働いていろんなダンジョンの資源を持ってきましたから似たような物は知ってます、恐らくこういったダンジョンの魚は観賞用として…」

 よもや海水浴をしながらそんな話をしているとは思わなかったが、それを聞いた私はマジかと思った。

 アヤメに質問をする。

「アヤメ、もしかしてダンジョンの海に何か新しい魚が現れるようになったのか?」

「知らなかったの? この前の温泉火山が現れるようになったあたりからこの海にもいろんな海洋生物が増えたのよ~? もちろんこのダンジョン仕様のね」

 知らなかった。
 というかそんな話は全く聞いてないよ、少しくらいを報告してくれよアヤメさん。

 2人の話を参考に考える。
 どうも我がダンジョンの海にはさながらハワイとかにいるようなカラフルで綺麗な魚がいる模様。

 それは是非とも見てみたい、私は一度も海外旅行とかしたことはなくてそういった南国の海にダイブしてシュノーケルとかして泳いでみたいとか若い頃は思っていたもんだ。
 シュノーケル、買ってこようかな。

「ヒロキ君、そんなにダンジョンの海の中の魚みたいの? しょうがないな~それじゃあほいっと!」

 アヤメは片手を上げる。
 すると青い海の中から球体状の大きな物体が現れた。
 それは海の一部がそういう形になった物だ。

 その球体がこちらに向かってくる。
 最初は何だと思ったのだが、アヤメの説明が入った。

「ダンジョンが成長したことで私は新たなスキルを得たのよ、それがこの念動力って訳、触れずに物を動かしたりこんな風に形のない物でも浮かせたりすることも出来るわ」

 アヤメ、いつの間にそんな便利そうなスキルを。
 スキルっていうか超能力じゃないって感じもするけど、まあそんなことはどうでもいいだろう。

 アヤメの『念動力』とやらで空中に浮かせられた海水の球体。
 直径は私よりも大きく三メートルくらいはある。
 中には工藤さんと月城さんが話していた宝石のような魚たちがものすごい数泳いでいた。

 なんだこれは本当に宝石箱やないか。
 綺麗だな、綺麗すぎるよ。
 なんかこういうのを見るだけで心が洗われるようだ。

「ちなみにその魚たちの名前はみんなジュエルフィッシュよ。ダンジョンの資源の一つね、もしかしたら地球では個々に名前をつけられてたりするかもしれないわよ?」

「美しいダンジョンの魚はコレクターも多く、とても高い値で取引されていますよ」

 ハルカと月城さんの説明を聞いた私の洗われた心の中にマネーという暗い影が発生した。

 いかんね、欲望に目はくらみそうであるジュエルフィッシュが本物の宝石に見えてきた。
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