36 / 100
第36話
しおりを挟む
私の言葉を聞いて工藤さんは少し自信ありげに話をしだした。
「紹介したいのは私が入っているクランのメンバーなんです」
「クランですか?」
クランとは探索者同士が固定で組んでいる集まりのようなものだ。
数人規模ならパーティーを組むと言い、十数人を超えるそこそこ大きな規模になるとクランと名称を変えるらしい。
この辺りはまさにゲームか何かから取ってきたようなやつだな。
正式なものというよりかは探索者同士で勝手にそう言っているらしい、仲の良い集まりようなものだ。
さすができる探索者の工藤さんだ、パーティーやクランどころか工藤さん以外に知り合いの探索者すら1人もいないほとんどソロぼっちみたいなポンコツ探索者である私とは違うな。
「あっもちろん他に伝手があるなら……」
「いえ………話を続けて下さい」
いや、そもそももう私は探索者ですらないんだ。
だってダンジョンを攻略するのではなくダンジョンを育てるのが今の私の目標になってるからね。
「しかしクランのメンバーだからといって格安になるというのはどういうことなんですか?」
「実はそのクランのメンバーってみんな私が在籍していた高校の後輩、つまり高校生なんですよね。だから学業を優先で放課後に探索するためにダンジョンに行ってる感じなんです」
「高校生ですか?」
がっ学生にこれからものすごい数のモンスターに襲撃されるダンジョンで戦わせようと?
工藤さんもなかなかすごいこと言い出すな。
綺麗な顔に似合わず後輩にはスパルタだったりするのだろうか…。
「彼女たちは学校の部活としてダンジョン探索をしてるの、だから報酬と言っても本来の探索者がもらうような大きな金額では依頼を受けることができないってわけなんです」
話はわかる、さすがに高校の部活で依頼を受けて金を稼ぎ過ぎるのは悪影響だとかって話だ。
まあ探索者関係の悪い依頼に巻き込ませない為の方便らしいけどな。
やはり闇バイト的な仕事がダンジョンにもあるらしいのだ。
怖いよね人間ってどこの業界にもその手の碌でなしが現れる。
「……しかしさすがに危険なのでは?」
「そこは私がきちんと説明をすれば学校に話を通すことは難しくはないと思います。それに一河さんたちがいるのでそこまで危険ということはないと思うんです、私もいますしね」
多分工藤さんはイフリートを瞬殺したことで私にも多少なりとも実力がある探索者であると勘違いをしている。
あんなのはハルカとアヤメがいて支援系スキルまで使ってもらって、反撃されると危険だから短期決戦を仕掛けて運良く倒しただけなのだが。
ハルカの方を見ると彼女はただ微笑を浮かべ静かに頷いていた、まるで工藤さんの意見を肯定するかのようだ。
ハルカがここで口を挟んでこないということは実際に頭数さえあれば熟練の探索者でなくてもいいという話は本気なのだろう。
つまり工藤さんの話は聞く価値があるということだ。
「……分かりました、それなら近いうちにその紹介したいという人たちを合わせてもらっていいでしょうか、直接会って判断したいんです」
「うん、それじゃあ今日のところは失礼するわ」
工藤さんは踵を返すとダンジョンセンターから出て行った。
「ハルカ、ダンジョンセンターで依頼を出す前に話はついたみたいだけどどうする? 一応ダンジョンセンターの方にも同じ依頼を出すかい」
「いいえ工藤さんの言う通り、多くの探索者を雇う事を思えば実力も不確かな相手に多くの投資することになるわ。今回の戦いは主にヒロキさんと私たち2人が戦うことに変わりはないから本当にダンジョンに慣れている人間であればそこまで高い実力を求めるつもりはないの」
う~ん個人的にはこんなアラサーに負担を強いるのは辞めて欲しいのだが…まあ仕方ないか。
私たちのダンジョンだし、やっぱり守るのは私たちの仕事って事なんだろう。
もう少し楽させてよとは言えない雰囲気だな……。
「じゃあ今回は工藤さんを全面的に信用して彼女のクランメンバーという高校生の子たちに期待をするということでいいんだね」
ハルカは「そうね」と返事をした。
せっかくダンジョンセンターまで来たのだが今日のところは一旦引き上げるとするか。
「紹介したいのは私が入っているクランのメンバーなんです」
「クランですか?」
クランとは探索者同士が固定で組んでいる集まりのようなものだ。
数人規模ならパーティーを組むと言い、十数人を超えるそこそこ大きな規模になるとクランと名称を変えるらしい。
この辺りはまさにゲームか何かから取ってきたようなやつだな。
正式なものというよりかは探索者同士で勝手にそう言っているらしい、仲の良い集まりようなものだ。
さすができる探索者の工藤さんだ、パーティーやクランどころか工藤さん以外に知り合いの探索者すら1人もいないほとんどソロぼっちみたいなポンコツ探索者である私とは違うな。
「あっもちろん他に伝手があるなら……」
「いえ………話を続けて下さい」
いや、そもそももう私は探索者ですらないんだ。
だってダンジョンを攻略するのではなくダンジョンを育てるのが今の私の目標になってるからね。
「しかしクランのメンバーだからといって格安になるというのはどういうことなんですか?」
「実はそのクランのメンバーってみんな私が在籍していた高校の後輩、つまり高校生なんですよね。だから学業を優先で放課後に探索するためにダンジョンに行ってる感じなんです」
「高校生ですか?」
がっ学生にこれからものすごい数のモンスターに襲撃されるダンジョンで戦わせようと?
工藤さんもなかなかすごいこと言い出すな。
綺麗な顔に似合わず後輩にはスパルタだったりするのだろうか…。
「彼女たちは学校の部活としてダンジョン探索をしてるの、だから報酬と言っても本来の探索者がもらうような大きな金額では依頼を受けることができないってわけなんです」
話はわかる、さすがに高校の部活で依頼を受けて金を稼ぎ過ぎるのは悪影響だとかって話だ。
まあ探索者関係の悪い依頼に巻き込ませない為の方便らしいけどな。
やはり闇バイト的な仕事がダンジョンにもあるらしいのだ。
怖いよね人間ってどこの業界にもその手の碌でなしが現れる。
「……しかしさすがに危険なのでは?」
「そこは私がきちんと説明をすれば学校に話を通すことは難しくはないと思います。それに一河さんたちがいるのでそこまで危険ということはないと思うんです、私もいますしね」
多分工藤さんはイフリートを瞬殺したことで私にも多少なりとも実力がある探索者であると勘違いをしている。
あんなのはハルカとアヤメがいて支援系スキルまで使ってもらって、反撃されると危険だから短期決戦を仕掛けて運良く倒しただけなのだが。
ハルカの方を見ると彼女はただ微笑を浮かべ静かに頷いていた、まるで工藤さんの意見を肯定するかのようだ。
ハルカがここで口を挟んでこないということは実際に頭数さえあれば熟練の探索者でなくてもいいという話は本気なのだろう。
つまり工藤さんの話は聞く価値があるということだ。
「……分かりました、それなら近いうちにその紹介したいという人たちを合わせてもらっていいでしょうか、直接会って判断したいんです」
「うん、それじゃあ今日のところは失礼するわ」
工藤さんは踵を返すとダンジョンセンターから出て行った。
「ハルカ、ダンジョンセンターで依頼を出す前に話はついたみたいだけどどうする? 一応ダンジョンセンターの方にも同じ依頼を出すかい」
「いいえ工藤さんの言う通り、多くの探索者を雇う事を思えば実力も不確かな相手に多くの投資することになるわ。今回の戦いは主にヒロキさんと私たち2人が戦うことに変わりはないから本当にダンジョンに慣れている人間であればそこまで高い実力を求めるつもりはないの」
う~ん個人的にはこんなアラサーに負担を強いるのは辞めて欲しいのだが…まあ仕方ないか。
私たちのダンジョンだし、やっぱり守るのは私たちの仕事って事なんだろう。
もう少し楽させてよとは言えない雰囲気だな……。
「じゃあ今回は工藤さんを全面的に信用して彼女のクランメンバーという高校生の子たちに期待をするということでいいんだね」
ハルカは「そうね」と返事をした。
せっかくダンジョンセンターまで来たのだが今日のところは一旦引き上げるとするか。
1
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
【完結】悪役令嬢の断罪現場に居合わせた私が巻き込まれた悲劇
藍生蕗
ファンタジー
悪役令嬢と揶揄される公爵令嬢フィラデラが公の場で断罪……されている。
トリアは会場の端でその様を傍観していたが、何故か急に自分の名前が出てきた事に動揺し、思わず返事をしてしまう。
会場が注目する中、聞かれる事に答える度に場の空気は悪くなって行って……
ああ、もういらないのね
志位斗 茂家波
ファンタジー
……ある国で起きた、婚約破棄。
それは重要性を理解していなかったがゆえに起きた悲劇の始まりでもあった。
だけど、もうその事を理解しても遅い…‥‥
たまにやりたくなる短編。興味があればぜひどうぞ。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
冤罪で自殺未遂にまで追いやられた俺が、潔白だと皆が気付くまで
一本橋
恋愛
ある日、密かに想いを寄せていた相手が痴漢にあった。
その犯人は俺だったらしい。
見覚えのない疑惑をかけられ、必死に否定するが周りからの反応は冷たいものだった。
罵倒する者、蔑む者、中には憎悪をたぎらせる者さえいた。
噂はすぐに広まり、あろうことかネットにまで晒されてしまった。
その矛先は家族にまで向き、次第にメチャクチャになっていく。
慕ってくれていた妹すらからも拒絶され、人生に絶望した俺は、自ずと歩道橋へ引き寄せられるのだった──
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる