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第一章『冒険者として活動します』

第3話『緑地竜の森』

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私が再びファルセスの門に向かう。

冒険者になる事は出来たので次はお金を稼ぎたい。
何か食べたいし喉も本当に乾いた。

魔物の知識スキルをフルに活用すればあまり重くなくて高めに売れる素材を落とす魔物とかにも出会える事を期待したい。

「リュックサック、せめて大きめの布が欲しいな」

やはり身1つで異世界になんて来る物じゃないな、せめて通貨くらい少しは融通して欲しかったよ神様。

まあ愚痴を言っても仕方ない、やれる事をやるしかないのだ。
とりあえず食事の為に、そして今後の生活を考えた物を買い揃えられる様にって目標でレッツクエストだ。

あっ門番さんがいた、顔は怖いが面倒見のいい人って印象の人だったな。

「ん?お前か、どうだ?冒険者にはなれたか?まあ余程の理由がなければ誰でもなれるのが冒険者だからなれはしたんだろうが・・・」

「はい、貴方のお陰で無事に冒険者になれました。これから森にクエストに行きます」

「クエストってお前装備も・・・いやっそうか金が」

「はいっ恥ずかしながら無一文ですから何とか採集クエストを無事にクリアしてそこから必要な物を買い揃えて行こうかと」

「・・・う~ん、ちょっと待ってろ」

「・・・・・・・?」

すると門番さんは城壁の内側に建てられた建物に少し早足で向かった。
少し待つと戻ってきて、その手には門番さんが持っているのと同じ槍がもう1本握られていた。

私の前に立つとその槍をずいっと見せられた。

「持ってけ、流石にあの緑地竜の森に武器もなしで行かせたとか街の人間として有り得ねぇからな」

「しっしかしお金が・・・」

「元から廃棄予定のくたびれた槍だ、やるよ。一応戦闘には耐えるくらい作りはしっかりしてるから安心しろ」

それでも本当に貰っていいのかと言う私に、門番さんは槍を押し付ける様にして渡された。

「・・・・・ありがとうございます」

「構わない、死ぬなよ。冒険者」

そう言って背中を押してくれた門番さんだ、これはあっさり死にましたなんて真似は出来ないな。

右も左も分からない異世界に来て、他者からの好意が心に殊更しみる。

私は絶対に行きて戻るだと決意して森に足を踏み入れた。

「・・・・・そう言えばこの森をさっき、緑地竜の森とかって言ってたよな」


まさか、出るのかドラゴン。今後この森に出入りする時はずっと時間を停めとこう。

一応言葉を出さないで時間魔法を発動出来るか試す。

「・・・・・出来たな」

私の意思に応える様に世界から一切の音が消える、聞こえるのは私自信満々が出している音だけである。

そして私の近くには時の魔導書が浮かんでいた。

森のざわめきは消えた、さてっそれじゃあ行くか。

◇◇◇

森を進む事しばらく。

私が森に入るが特に大した物を見ることはなかった。
しかしファルセスの街からある程度離れ始めると森の景色は普通なのに随分と怖い生き物が目に映り始めた。

森だからか、虫の姿をした魔物が殆どだな。

「せっかく槍を貰ったのに、使わないんだよな」

だって私の攻撃スキルは魔力吸収1つで大体何とかなるからだ。

一応だが、魔物の知識スキルから得られる情報を確認しながら人間を襲う系の魔物だけを経験値とする様には心掛ける。

まぁレベル上げもついでなのでするようにと考えた次第である。

魔力吸収を発動して相手の魔力がカラになるまで魔導書に魔力を吸収させるだけだ。

流石は魔導書と言うべきか、吸収出来る魔力に限度がないかの様に魔物達の魔力を吸収していく。

どうして魔力がカラになると死ぬのかとか、なんで私の魔導書にまで魔力を吸収させられるのかとか、まるで分からない。

しかしそこはやはりファンタジーと言うべきかな、理屈でどうこうと語れる程、私はまだこの世界に詳しくない。

一応自然の森だ、魔物は時間魔法で無力化出来るが、やっぱり慣れない森を歩くとなると、足が痛くなったりして坂で足を滑らせて滑落死っとかも十分に有り得る話だ。

下に恐ろしきはおじさんの身体能力の低さである。

「レベルが上がるとステータスも上がるみたいだし、これのお陰で体力とかつかないかな?」

あっそういえばあの受付譲の女の子が言っていた。

この『魂の石版』はどうやら本当にこの世界を生きる知性のある存在は皆持っている物らしい。
そしてこの石版、念じる事で自身の体内に収納する事が出来るとか。

何でもこの黒い石版は個人情報の塊、簡単に他人に見せるものではないらしい。

「今のうちにこれも試すか・・・」

石版を手に取り、胸の高さに固定。

そして念じると?。
おおっ!本当に身体の中にスゥーーッと入っていったぞ。本当にこの世界、不可思議な現象多過ぎ。

そんでまた念じる、今度は出て来いと。

するとまたスゥーーッと胸の辺りから出て来た。

うんうん、これで石版の出し入れの練習は完了だ、ついでにレベルの確認でもしとくか。

名前『黒野次郎(39歳)』

性別『男性』

職業『無職』

レベル『4』

「・・・・え?」

ぼっ冒険者になった筈だぞ?未だに無職?ニート?まさかまだ冒険者を職業と名乗る資格はないと言うことか?。

心が不意打ちされて萎える。

それでもお腹は早く何か入れろと急かしてくるので涙をのんで更に森の奥に行くのだ。










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