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第五章 トリプル七光りとの決戦
第108話
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そこは真っ白に何もない空間。
俺はもう一人の俺にそっくりな何者かとお互いを見ていた。
もう一人の俺は黒い靄を身に纏っている。
直感で分かる、これは俺のイメージだ。
謎の声が人の形にした何者かだ。
俺はその俺によく似た黒い霧の何者かに…お礼の言葉を口にする。
「ありがとうよ、お前のおかげでなんとか七光りを滅ぼすことが出来た」
「容易いことだ、そしてこれからは地上にいる他の七光りをも滅ぼしていくのだろう?」
その質問に俺は首を左右に振って答えた。
「それは出来ない、お前の力を借りるのはここまでだ」
「ッ! …何故だ、七光りたちはお前の生きる世界にとっても害悪のはず。そんな存在をお前は見逃すのか!?」
「気づいたんだ、いや本当はずっと前から分かっていた。七光りってやつらはその全てが完全な悪というわけじゃないって事に」
七光りというのは親の威光があって初めて成り立つものだ。
だがそれはその親がどのくらいの…ともかくそれなりに偉大な親であることが大前提となる。
そしてそれがどんな業種の仕事であれ血が繋がっていようとも親の才能を必ず子供が受け継ぐなどということはない。
親の能力をまともに受け継ぐことが出来なかったその七光りたちは目の前でそれができる親がいるのにその仕事をいくら見て説明されても同じような仕事が全くできず、結果も残せない自分の不甲斐なさに現実から目を背けるのだ。
そして何の中身のない妄言と戯れ言を自分の親によって与えられたそれなりの地位から撒き散らし、能力がないとわかっている連中を自分の周りに置いて少しでも自分を強く見せようとするのだ。
まるで小学生のいじめっ子が自分の仲間を集めて徒党を組むようなものだな。
その心の中では自分が孤立し周囲から 見放されるのが怖くて怖くて仕方がないのだろう。
そう思えば生まれながらにしてそんな宿命を背負ってしまったそういう一部の七光りが哀れにすら俺には感じてしまうのだ。
「だから何だというのだ、七光りの数々の愚行がそんな理由をがあれば許されるというのか!?」
コイツ、その七光りの親の思念の集まりなんだよな……まあそれは棚に上げとくか。
「…許されない、俺も許すつもりなんてないさ。ただなっ俺には一緒に禄でもない目にあった同僚たちがいてよ…」
そしてそいつらはスキルを得て俺と同じようにダンジョンにも行った。
色々あったが何とかなんとなく…俺よりも楽しそうだった。
その理由は簡単だ。
奴らは俺のように全力で七光りに復讐しようとかそんな事に一切のエネルギーを使っていないからだ。
少なくとも俺は奴らと一緒にいる時に一度も七光りに対する憎しみやら愚痴を聞いたことがない(働いていた時はめっちゃ聞いたけどな)。
「多分だがあいつらは過去に対して自分たちの中である種の決着をつけているんだ。だからあいつらは俺よりもずっと今を楽しそうに生きいる。そう俺には見えた」
「お前もそうするというのか?」
「そういうことだ、無論ウザい七光りが目の前にいたら叩き潰すがな…それじゃあダメか?」
黒い霧纏った俺のそっくりさんはしばし無言となりやがて言葉を紡いだ。
「……いやそれでいい、そうだな。お前の言う通り奴らの愚行とはその全てがもはや過去のものだ、過去は変えられない。奴らの行いをどれだけ糾弾しようともな」
「ああっそうだな」
だからこそ奴らという存在は全てさっさと過去のゴミ箱にでも棄てて俺は今を楽しく生きるようにしたいんだ。
「分かった、それでは…さらばだ。我々もまた過去を捨てて行くとしよう」
黒い霧を纏った俺のそっくりさんは消えていった。
コイツら、どこに行く気なんだろうか。
そして俺の意識が遠のいていく…。
そしてふと気がつくと俺はかつて不人気ダンジョンの一つであるスライムダンジョンだった場所。今は普通のボロボロな古民家の家の中にいた。
奴らを倒したことでダンジョンが消滅したのだろう。
まるで何もなかったかのような静けさが俺を包み込んでいる。
しかし俺の手にはドロップアイテムとして手に入れた石版がある。
俺とのあの神々しき七光り姉妹との激闘…その証であり戦利品だ。
「先輩、さっきから何を遠い目をしてぼーっとしてるんですか?」
「大丈夫だ、何でもねぇよ」
何か闇の力とか勝ち方とかがあれだったし……あのそっくりさんとのやりとりでチャラになったら良いなと思う俺である。
俺はもう一人の俺にそっくりな何者かとお互いを見ていた。
もう一人の俺は黒い靄を身に纏っている。
直感で分かる、これは俺のイメージだ。
謎の声が人の形にした何者かだ。
俺はその俺によく似た黒い霧の何者かに…お礼の言葉を口にする。
「ありがとうよ、お前のおかげでなんとか七光りを滅ぼすことが出来た」
「容易いことだ、そしてこれからは地上にいる他の七光りをも滅ぼしていくのだろう?」
その質問に俺は首を左右に振って答えた。
「それは出来ない、お前の力を借りるのはここまでだ」
「ッ! …何故だ、七光りたちはお前の生きる世界にとっても害悪のはず。そんな存在をお前は見逃すのか!?」
「気づいたんだ、いや本当はずっと前から分かっていた。七光りってやつらはその全てが完全な悪というわけじゃないって事に」
七光りというのは親の威光があって初めて成り立つものだ。
だがそれはその親がどのくらいの…ともかくそれなりに偉大な親であることが大前提となる。
そしてそれがどんな業種の仕事であれ血が繋がっていようとも親の才能を必ず子供が受け継ぐなどということはない。
親の能力をまともに受け継ぐことが出来なかったその七光りたちは目の前でそれができる親がいるのにその仕事をいくら見て説明されても同じような仕事が全くできず、結果も残せない自分の不甲斐なさに現実から目を背けるのだ。
そして何の中身のない妄言と戯れ言を自分の親によって与えられたそれなりの地位から撒き散らし、能力がないとわかっている連中を自分の周りに置いて少しでも自分を強く見せようとするのだ。
まるで小学生のいじめっ子が自分の仲間を集めて徒党を組むようなものだな。
その心の中では自分が孤立し周囲から 見放されるのが怖くて怖くて仕方がないのだろう。
そう思えば生まれながらにしてそんな宿命を背負ってしまったそういう一部の七光りが哀れにすら俺には感じてしまうのだ。
「だから何だというのだ、七光りの数々の愚行がそんな理由をがあれば許されるというのか!?」
コイツ、その七光りの親の思念の集まりなんだよな……まあそれは棚に上げとくか。
「…許されない、俺も許すつもりなんてないさ。ただなっ俺には一緒に禄でもない目にあった同僚たちがいてよ…」
そしてそいつらはスキルを得て俺と同じようにダンジョンにも行った。
色々あったが何とかなんとなく…俺よりも楽しそうだった。
その理由は簡単だ。
奴らは俺のように全力で七光りに復讐しようとかそんな事に一切のエネルギーを使っていないからだ。
少なくとも俺は奴らと一緒にいる時に一度も七光りに対する憎しみやら愚痴を聞いたことがない(働いていた時はめっちゃ聞いたけどな)。
「多分だがあいつらは過去に対して自分たちの中である種の決着をつけているんだ。だからあいつらは俺よりもずっと今を楽しそうに生きいる。そう俺には見えた」
「お前もそうするというのか?」
「そういうことだ、無論ウザい七光りが目の前にいたら叩き潰すがな…それじゃあダメか?」
黒い霧纏った俺のそっくりさんはしばし無言となりやがて言葉を紡いだ。
「……いやそれでいい、そうだな。お前の言う通り奴らの愚行とはその全てがもはや過去のものだ、過去は変えられない。奴らの行いをどれだけ糾弾しようともな」
「ああっそうだな」
だからこそ奴らという存在は全てさっさと過去のゴミ箱にでも棄てて俺は今を楽しく生きるようにしたいんだ。
「分かった、それでは…さらばだ。我々もまた過去を捨てて行くとしよう」
黒い霧を纏った俺のそっくりさんは消えていった。
コイツら、どこに行く気なんだろうか。
そして俺の意識が遠のいていく…。
そしてふと気がつくと俺はかつて不人気ダンジョンの一つであるスライムダンジョンだった場所。今は普通のボロボロな古民家の家の中にいた。
奴らを倒したことでダンジョンが消滅したのだろう。
まるで何もなかったかのような静けさが俺を包み込んでいる。
しかし俺の手にはドロップアイテムとして手に入れた石版がある。
俺とのあの神々しき七光り姉妹との激闘…その証であり戦利品だ。
「先輩、さっきから何を遠い目をしてぼーっとしてるんですか?」
「大丈夫だ、何でもねぇよ」
何か闇の力とか勝ち方とかがあれだったし……あのそっくりさんとのやりとりでチャラになったら良いなと思う俺である。
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