俺は神殺し!…(偽)~ダンジョンでパパッと稼いで地上ではのんびりスローライフ~

どらいあい

文字の大きさ
上 下
90 / 110
第三章 雪山ダンジョンでの闘い

第90話

しおりを挟む
「よし日影、そっちの荷物は…そこに置いてくれ」
「分かった」

「山田さん、こっちの荷物は…」
「それならあそこに頼むよ」
「はいっ分かりました」

 雪山ダンジョンが消えたあの後、鉱石の山をどうしようかと悩んだ結果幾つものダンボールを用意してその中に入れて個別に運ぶことにした。

 幸い頭数もいたのであの鉱石の山を他の探索者たちに見られないようにブルーシートで隠したりだのして時間を稼ぎ、ダンボール箱の中にせこせこ詰めて別の場所に運ぶくらいはどうにかなった。

 ……まあ運ぶのにリアカーとか色々使ったから目立ちはしたけどな。

 その後、元同僚たちとも話し合った結果なんとあいつらは自分たちで金を出し合いシェアハウス的な物件を購入することにしたらしい。

 何でも自分たちのクラフトスキルの実験が集中してできる場所が欲しかったようだ。
 野郎しかいないシェアハウスか夢も希望もない言葉だな。

 まあ現実的にはそんなもんだよな。
 主人公以外全員若い女子だなんてシェアハウスはこの世に存在しないのさ。

 話がそれた、現在俺たちはそれぞれダンボールを運びそのシェアハウスの場所へと移動して建物に運び込んでる最中だ。

 ちなみにその物件はダンジョンショップ『探索者のたまり場』やダンジョン鍛冶屋『探索者の魂』の店舗が近くにある場所だったりする。

 あの辺りは確かに空き店舗が幾つかあったがまさかそこにコイツらがな…。

「田中、お前らここで店でも開くのか? ダンジョンショップ的なやつとかを」

「いやいや、ただ単に安くてそれなりに広い物件を探したらここになっただけだな。金になるんだったらするかもしれないが俺たちに商売ができるなんて思えないぜ?」

「そうか? 売るのが向かないならメタルドックとかを一定期間レンタルさせるサービスとか悪くなさそうだが…あのわんころたちはかなり強いぞ」

「レンタル? 確かに良いな、メタルドックを壊したりしたらクラフトに必要な素材を持ってこさせるとかすれば言いわけだし…」

 そんなやりとりをしつつ俺たちはダンボールを運び込んでいく。

「あ~~重い~先輩、何でこんなことまで私たちがしなくちゃいけないんですか?」

 今宮、こいつは雪山ダンジョンが消えた後、魔石やら何やらの換金で得た報酬を大量に懐に入れている。懐に余裕が生まれるとマジで何もしなくなるなコイツは…。

 報酬の金額で考えればこんくらいの労働はサービスに決まっているだろバカめ。

「これくらいでぶーたれるんじゃない、お前だって称号をセットしてステータス補正は受けてるだろう、こんなもん大して重いわけないだろうが」

「それはそうなんですけど、そこはか弱い乙女に肉体労働は似合わない的なやつですよ~」

「はあん?」

 こいつがか弱い乙女で通るなら世の中の女性のほとんどがか弱い乙女になるな、とんでもない話だ。
 おもわず変な声が出てしまったじゃないか。

「まあ確かに今宮ちゃんの言う通りかもな、ここら辺で休憩してくれ。後は俺たちの方だけでどうとでもなるから任せてくれ」

「任せろと言うのなら任せるが、まあ本当に後はダンボールを運ぶだけだしな」

「そうそうこんくらい会社で働く労働よりかはるかに楽だよ」

「俺たちとしては早くクラフトスキルをまだまだ試したくてしょうがないんだよ、マンガでも試行錯誤はスキルに慣れる基本だからな」

「試すのはいいがそんなポンポン使ってるとあの鉱石の量でもすぐになくなるからな、少しは考えろよ柳家」

「その時はまた先輩に鉱石の採取をお願いすることになるかもしれませんね」

「言っておくが今回のは初回だからまごころ価格だ、次からはそれ相応の値段だぞ佐藤」

 俺は念の為に釘を刺した、釘を刺された柳家と佐藤は若干がっくり来ている。
 当たり前だろ、今回この鉱石を集めるのにどんだけ時間かかって思ってんだ。

 そんなポンポンと時間がかかる面倒なだけの仕事を頼まれてたまるか、俺の目的はあくまでダンジョンではパパッと稼いでその稼いだ金で地上ではゆっくりと暮らすスローライフである。

 ……まあたまには気まぐれにこいつらとバカするために時間を使うのも悪くはないと思ってはいるがな。

「けど歩さんは頼まれると断れない人ですもんね~」

「その通りなんだよ守咲さん、日影のやつはわりと困ってる人間を無視することができないやつなんだよ~」

 人を勝手に善人みたいに言ってるんじゃないよ全く田中のやつは。
 その近くで山田は無言で頷いている、ダンボールを運びながら。

「おっそうだ日影、実は俺たちもあの後にダンジョンでまたアナウンスってやつを聞いてな、遂に称号を手に入れたんだよ。どんな称号か教えてやろうか?」

「知らん、どうせ寒い中でも体が動きやすくなるとかそんなショボい称号だろう、 俺には関係ない」

「おっよく分かったな当たりだ」

 なんとなく気恥ずかしくなったので俺は一度シェアハウスから外に出ることにした。

 俺を見送る連中の視線が妙にムカつく、特に今宮のやつな、露骨にニヤニヤしやがって。

 シェアハウスから出て一息ついた。
 あいつらもこっから先は自分たちなりに好きにやっていくんだろう。

 俺もだいぶ好き放題してるからな、あいつらが何をどうしたとしてもわざわざ口を出すこともないだろう。

 多少困っているようだったら助けに入るかもしれないがお互い良い大人だ。
 それぞれ勝手に生きていこうじゃないか。

 そんなことを考えながら無駄に騒がしいシェアハウスに俺は視線を向けた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...