俺は神殺し!…(偽)~ダンジョンでパパッと稼いで地上ではのんびりスローライフ~

どらいあい

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第五章 ブラック会社ダンジョン

第47話

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 暫定中ボスの間に侵入した。
 中はかなり広い円形状の空間。
 天井は高く、その天井には立派な天井絵が描かれていた。

 何体もの天使が空を舞う絵が描かれている、そんなんダンジョンにある必要あんの?

 そしてその広間の中央にたった1体のモンスターがいた。
 まるで人間の貴族のように無駄に凝った装飾の衣装を身につけ、手には立派な槍を持ったゴブリンだった。

 しかしただのゴブリンではない。
 手足は長く身長は俺より高い、髪の毛も生えている。
 肌の色は緑だ、顔立ちは口や鼻が大きく目つきが悪い、全体的に不細工な顔をしたリアルなゴブリン。

 ラノベもそうだが漫画やゲームで想像するあのゴブリンなのだがおそらく通常のゴブリンの上位種、ハイゴブリンと言ったところだろう。

 まさかこのブラック会社ダンジョンで初のモンスターが中ボスとはな。
 他のモンスターが一切出ないってことは、モンスターの数を可能な限り絞って代わりに強力なモンスターだけを用意したダンジョンってところなのか?

 ゴブリンのくせに見た目だけは立派な装備をしている、そこが妙に腹が立つ。
 中ボスの間に俺は足を踏み入れ進む、そしてそのハイゴブリンの様子をまじまじと確認する。

「…………?」

 ふと妙な面影を感じた。
 俺がこの町工場で最も嫌いだった4人の人間。
 碌でなし四天王。
 そのうちの1人になんとなく顔立ちが似ていたからだ。

 その男の名は腰布厚郎《このあつろう》、その名が体を表すような感じのやつで、常に七光りの腰巾着をしていた男だ。

 やたらとごまをすりまくり七光りに取り入っていた男だ、そして悪癖があり女と見れば直ぐにちょっかいをかける。
 むやみやたらと女に対して積極的なのだ、しかし女性から嫌われる男だった、男にも嫌われていたけどな。

 あいつのせいでこの会社は……いや、今はそんなことを思い出してる暇はない。
 とりあえずさっさとこの中ボスを掃除するか。

 俺はダンジョン産の武器『蜥蜴人の長剣』を構え、敵の出方を窺った。
 するとヤツは……喋りだした。

「へえっまさか日影くん、君がここに来るとはねぇ……」

「…………」

 その声は腰布の声だった。
 ちょっと待て。
 マジかお前。
 外見は冷静を装いながらも内心はかなりビビる俺。
 コイツはまさか……。

 いやっここはあくまでも冷静にだ、一つカマでもかけてみるか。

「…ゴブリンが人間の言葉を話すか、珍しいこともあるもんだ」

「見た目にケチをつけるなんて、君が僕に言えた義理かな?」

 俺はハイゴブリンの言葉を無視して切りかかる。
 一撃で始末できるはずだったが、俺の攻撃はバリアのようなものに阻まれてしまった。

 赤色の光を放つ半透明のバリアだ。
 『神殺し(偽)』の俺の攻撃をはじき返すとはな。
 と言うか今の攻撃で『蜥蜴人の長剣』がポッキリ折れてしまったぞ、最悪だ。

「そのバリア、お前の能力とかじゃないな、このダンジョンの力か。直接モンスターを攻撃できない仕様ってか? めんどくさいダンジョンだなここ」

「いきなり攻撃して一切詫びとかないの? いつも何考えてるかわかんないヤツだとは思ってたけど、やっぱり頭のおかしいヤツだったみたいだね」

「さっきからペラペラとゴブリン風情が人間様の言葉を使ってんじゃねぇ、不愉快だ」

 無駄話をしながら頭の中で整理する、この状況を説明出来る仮説……いや別の都市伝説を思い出した。

 探索者をやってれば禄でもないウワサの一つや二つは聞くが、こいつはその一つが的中したかも知れない。

 ブラック会社ダンジョン。負の感情が集積した場所にダンジョンが生まれるのであれば、日本という国はそのダンジョンが生まれる条件を含んだ会社というのがバカみたいに多いだろう。

 そんなブラック会社がダンジョンになった物をどこぞの探索者が小馬鹿にしたような態度でブラック会社ダンジョンと命名して広がったのが始まりらしい。

 ブラックをブラックたらしめる存在に貶めている連中だけがダンジョンに捕まり、モンスターのエサにでもされるのであればまだマシだったと言えるだろう。

 だが現実にはダンジョンというのはそのブラック会社の原因となる人間や経営者以外の理不尽にさらされている人間を、更なる理不尽で苦しめる存在なのだ。

 ブラック会社ダンジョンの都市伝説の一つ。

 そのブラック企業で最も憎まれ、恨まれ、拒否られ、負の感情を集めていた人間の性格を元にダンジョンには特殊な仕様が組み込まれた特殊なダンジョンが生成される。

 そしてそのダンジョンの発生に関係が特にある人間たちはダンジョンが生まれると同時に人間ではなく、そのダンジョン専用のユニークモンスターに変生するという。

 無論全てはただの都市伝説である、日本をはじめ、あらゆる国々のトップはそんなダンジョンの存在も人がモンスターに変生するなどという事象も何一つ認めてはいない。

 しかしコイツは。

「……日影くんさ、本当に俺のこと舐めてるよね。いい加減にしないと本気でキレるよ?」

「大して気も長くないくせに気取った態度をするな、さっさとかかってこいよ三下の腰巾着野郎」

「キッ……キサマァアッ!」

 腰巾着野郎と言う言葉に過剰なまでに反応している、やはりこのハイゴブリン……。

 都市伝説がただの眉唾物なら俺の目のにいるこいつは一体何なんだという話になるわけだ。

 マジで人間がモンスターに? 軽く恐怖するね。
 しかし俺は探索者だ、目の前に倒すべきモンスターがいるのなら………倒す。
 それだけだ。
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