俺は神殺し!…(偽)~ダンジョンでパパッと稼いで地上ではのんびりスローライフ~

どらいあい

文字の大きさ
上 下
12 / 110
第一章 不人気ダンジョンと後輩

第12話

しおりを挟む
「もう本当にやってられませんよ、世の中本当にクソですよクソ! 世界なんて滅んじまいやがれってんですわーー!」

  今宮がめっちゃ酒を飲んで好き放題にくだを巻いている。
 酔っぱらい方が酷いなコイツ。

 俺があのコンビニを辞めることを伝え会社も辞めることを伝えると後輩が突如、酒をガバガバと飲み始めた。

 そして速攻で酔っ払いこの状態である。
 何がしたかったんだ本当にコイツは、俺にこの無様な姿を見せたかったとでも言うのだろうか。
 意味がわからないぞ。

「…っていうか何で先輩バイト辞めるんですか?」

「バイトなんてのはしたくてしてるわけないだろ、金がないからしてるんだ。必要がなくなればバイトなんかすぐにやめるに決まってるだろ」

「それじゃあ何ですか金の当てがついたとでも言うんですか、あの先輩に?」

「どの先輩だ失礼なヤツだな、まあそういうことだよ」

 今宮が俺をつり目で睨みつけてくる、それはさながらパチンコで大負けしたどっかのバカが連チャンでパチンコ玉がパンパンの箱を幾つも積んでるやつを横目で見るような、殺意とも言える仄暗い感情が宿った目であった。

 流石にこれはない。
 もうちょっとどうにかならないのだろうか、コイツのこのやさぐれ具合は。

「……一体どんなうまい話を見つけたんですが? ていうかそれっ簡単に誰でも大金が稼げる、みたいな闇バイトの類じゃないでしょうね?」

「そんなわけあるか、少なくとも金ってやつは多少は苦労して得なきゃいけないもんだってことくらい知ってるわ、俺みたいな馬鹿でもな、ああいうのはそんなことも本当に分からんどうしようもないやつが手を出すんだよ」

 俺も酒を一口飲む。

「…ふうっあるいは人間の弱いところに漬け込んで、自分を賢いと勘違いしてる本物の莫迦《ばか》が人を利用しようとするから闇バイトなんてのが生まれるのさ」

「まあそうっすね、そもそも普通に働いて問題なく稼げればそんなのするはずが……って、そんな話するだけで気分の悪くなります、そんなことはどうでもいいんですよ!」

 今宮がテーブルをバンバン叩いて俺の話のすり替えを拒絶した。
 なかなかやるじゃないか。

「一体どんな儲け話を見つけたって言うんですか」

「お前な、儲け話なんだぞ。そう簡単に言うわけが」

「いいからさっさと言うんですよ」

 今宮は顔をズイッと俺に近づけてきた。息が酒臭い、というかこいつどんだけ上から目線なんだよ今の俺は称号『神殺し(偽)』を持つ男だぞ。
 そう簡単には……。

 その後なんやかんやとうまくごまかそうと俺は言葉を尽くして戦った。
 しかし奴は自分の旗色が悪くなるとさらに酒を飲んで酔っ払うことで状況をひっくり返した。

 わけのわからない屁理屈をこねだし理不尽極まる戯れ言を言い始めるのだ、結果として小一時間の言い合いの末……俺はゲロった。

「コンビニを襲ったあのハゲ親父をぶっ倒したらものすごく強い称号を手に入れたから、以前引退した探索者に復帰したと?」

「その通りだ、つまり俺はもう探索者一本で余裕で食って生きていけるからバイトも焼き物作りも全部する必要がなくなったんだよ」

「なんすかそれ、コンビニ強盗 1人ぶっ倒すだけでそんな…そんな勝ち組人生が許されると思ってんですか、ふざけんじゃないですよ!」

「ふざけんじゃないですよってそんなに怒られてもな……」

「むしろそのコンビニ強盗に喧嘩ふっかけられたのは私……つまりその神殺しの称号を手に入れられたのを私のおかげじゃないですか!」

 こいつは何を言っているんだ?

「つまり先輩にはこの私に対して多大なる恩があるわけです、それを少しずつでも返すべきではないですかね?」

「……………………つまり、具体的には?」

「要はお小遣いをくださいってことですね、養ってとは言いませんので月に遊んで暮らせるだけのお金をくださいな」

 本当にこいつは何を言っているんだ。
 クズ度が限界突破してんぞ。

「お前…いくら酔っ払ってるからってそんなデタラメな言葉が通ると思ってんのか?」

「通ると思ってますよ、先輩こそちょっと強い称号手に入れて探索者としてうまくいきそうだからってね、あんまり好き勝手すぎますよ……なにより乙女心というのは全く考えていないです、それはね…罪なんですよ罪、それも重罪!」

「いやっ罪と言われても……お前のそのわけのわからない物言いの方がはるかにクソみたいな罪だろ。はっきり言うけどお小遣いなんかやらないぞ、俺はそんな他人を甘やかすような人間じゃないしそんな人間は大嫌いだからな」

「人からは甘やかされて育って人生舐め腐ったような生き方してる先輩がよく言えますよね」

「お前、俺に喧嘩売ってんのか? まあいいとにかく俺にできることといえば…手伝いくらいだな、お前がもし探索者になってダンジョンに行くって言うんだったら、気が向いたら手伝ってやるが?」

「……なるほど、探索者ですか」

 そう言うと今宮はスッと立ち上がり店を出ようとした。

「お前、あんだけ酒飲んどいて大丈夫なのか?」

「はいっ私は幾ら飲んでも酔っぱらいもフラつきもしないんで、用事を思い出したんでこれで失礼しますね先輩」

「……………は?」

 すると今宮はさっきまでの酔っぱらった感じが完全に消え去り素面でさっさと歩いて店を出て行く。
 つまりアイツの理不尽全開は全部芝居だったって事か?

「本当にめちゃくちゃなヤツだったな…」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】世界一無知のリュールジスは秘密が多い

三ツ三
ファンタジー
突如地底深くより出現した結晶異物体。 無差別に人々を襲い続ける存在。 「アンダーズ」 人類はアンダーズの圧倒的な戦力により大陸の半分以上を受け渡すことを余儀なくされた。 物言わぬ結晶体に人類が今もなお抵抗出来ているのは人間の体内にある「魔力」を利用することで稼働する。 対アンダーズ砕鋼器具「ブレイカー」 腰部に装着することで内に秘められている「魔力」を具現化する事が可能となった人類の切り札。 「魔力」を持ち「ブレイカー」を扱う事が出来る限られた者達。 「リベリィ」 彼等がアンダーズを倒す事が出来る唯一の希望であった。 そんな世界で「リュールジス」は一人旅を続けていた。 「探し物・・・」 混沌とした各地を身一つで歩き続けたが、一通の手紙が足を止めさせ彼の旅を終わらせたのだった。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

処理中です...