上 下
48 / 61
第1部『旅の魔法使いと水神の巫女』

ネクシア~復活の器~

しおりを挟む
 イオリアやザンクスやエサクなら共に戦いを守る事も構わない。

 けどこのイケメンまでとなると手が回らなくなる可能性が高い、ただでさえ彼の攻撃はあの自称魔王には効かないと事前のマジックサイトのやり取りで分かっているなら尚更だ。

「しっしかし!」

「しかしも案山子もありません。私達はこれからとても危険な存在と対峙する事になるでしょう、貴方では足手まといだ」

「!?」

 だってこのカインが強いのってその装備してる剣とか盾とか鎧に付与されてる魔法が強いだけなんだ。
 そしてその魔法は私でも無効化出来る、あの自称魔王もそれくらいは出来るだろう。

 なら自力で魔法も使えそうにない彼はイオリアやザンクスよりもやられる可能性が高すぎるのだ。
 そんなヤツまで決戦に連れて行く訳がないだろう。

 イオリアとは天と地程に対応が違う事は承知している。けど自称魔王はどう考えてもヤバイ相手だ、死なれたらやはり目覚めが悪くなるのでここは遠慮してもらいたい。

 結果カインは無言で棒立ち、私は他の皆を連れて青い渦へと飛んだ。


◇◇◇◇◇◇


 そして青い渦、要は転移ゲートを越えた先。

 私達はドーム状のとてつもなく広い広間にいた、そこは壁も床も真っ白い大理石のような物で作られた場所だった。

 そしてその中央に………青い球体が浮かんでいた。

 アレは、水だ。とても大きな水球である、しかしその塊から放たれる魔力とプレッシャーはアレがただならぬ存在だと私には告げる。

「皆さん、あの水の塊が恐らく魔王です。決して油断しないように!」

 私の声に全員が頷く、ちなみにエサクには引き続き姿を消してもらっている。万が一ネクシアを救出出来るチャンスとかあった時の為の助っ人枠である。

 他の面々も私の言葉を聞いて警戒をあらわにしているな、よし。

「アオノさんの言うとおり、アレが魔王ムゲラリガスよ。あの隠そうとしても隠しきれない邪悪な魔力がその証拠ね」

「なんて魔力なの、あんなのがこの世に存在するだなんて……」

「ユーリの剣で葬ってやるのです」

「俺の戦斧も忘れないでくれよ!」

 こちらの士気は上々、私達は水球の前に下りた。
 するとまたあの声が聞こえる。

『──貴様らは、何者だ?まるでこのオレの事を知っているような、その落ち着き払った態度!胸糞が悪いんだよ!アアッ!?』

 胸糞が悪いって、なんでそんな言い回しをコイツは…………まさかコイツ。

 いやっそれは後だ。私は一歩前に出て口を開く。

「貴方の予想は当たっています、私達はどうやらとある神から貴方を倒すように依頼を受けてここに来ましたからね」

「アッアオノさん!?それは……!」

 イオリアが思わず口を挟もうとしたが、リエリが制して止めた。
 私は言葉を続ける。

「まあっ私はただの旅の魔法使いなんですが……あっ私は青野と言いますよろしく」

『───よろしくだと?お前らは目の前にいるのがどんな存在なのか、理解していないのか?』

 私達から見える位置に、水球の中から人の姿が現れた。あの群青色の綺麗な髪は……ネクシア?。

 いやっおかしいぞ、彼女は少女くらいの年齢だったはずだ。しかしあの女性は十代後半から二十歳前といったところだ。

 ネクシアの姉?いやっこの異空間に私達より先に人が来ているなんて。

「────まさか」

『ふふふっ気づいたか?そうっこの女はさっき手に入れたネクシア本人だ』

 水球から現れた美女が口を開く、その声は間違いなくネクシア本人の物だった。

「ネクシアさんの身体を乗っ取ったと?」

『そうだ、この空間から出るには巫女とこの大海の杖が必要だったからな。その両方を確実に手に入れる為に、随分と長い時間をかけた。最初は外に思念を飛ばすのすら苦労したものだ……』

「……………」

『ああっ見た目が成長してるのは、オレがロリコンじゃないからさ。好みの姿に変えたんだよ』

 本当にコイツは人間を、いやっ自分以外の他の命をオモチャにか………ゴミとしか見ていないのだろう。
 マジ不愉快の権現だなこの自称魔王は。

『そしてもう一つ!言っておくが、今のオレは魔王じゃないぞ?神すら取り込んだオレは……更に偉大な神だ、分かるな?』

「───悪神やなんかでしょう?ああっそれとも、たたり神よりもタチが悪く御利益も期待出来そうにない矮小な神ですか?」

『………………死ね』

 そして私達と自称魔王との戦いの火蓋は切って落とされた。










しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

闇属性転移者の冒険録

三日月新
ファンタジー
異世界に召喚された影山武(タケル)は、素敵な冒険が始まる予感がしていた。 ところが、闇属性だからと強制転移されてしまう。 頼れる者がいない異世界で、タケルは元冒険者に助けられる。生き方と戦い方を教わると、ついに彼の冒険が始まる。 強力な魔物や冒険者と死闘を繰り広げながら、タケルはSランク冒険者を目指す。

あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。

▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ...... どうしようΣ( ̄□ ̄;) とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!! R指定は念のためです。 マイペースに更新していきます。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました

璃音
ファンタジー
 主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。 果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?  これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。  

処理中です...